ウルトラマンA全話解説

第45話 大ピンチ!エースを救え!

監督:筧正典
脚本:石堂淑朗
ガス超獣ガスゲゴン登場
 舞台は宇宙空間から始まった。人工衛星ジュピター2号が黒煙に巻かれ、消息を絶ち、そのことがTACに通報された。TACでは万が一にもジュピター2号が地上に落下したら大惨事になるとのことが懸念されることから、日本上空を通過する時間を見計らって上空をパトロールし、何としてもジュピター2号を発見せんとした。
 しかし、そんな危機感を漲らせるTACを尻目に、子供達は天体望遠鏡で件の人工衛星を自分達が発見せんと息巻いていた。そんな中、ユタカ(石井秀人)という少年がかなり性能の良い天体望遠鏡を所持していたことを半ばやっかんで旧友達は彼の天体マニア振りを「星馬鹿」と罵っていた。星のことしか考えていないから「星馬鹿」というのは言葉の表現としてはまま正しいが、大勢で囃し立てる半いじめ傾向は梅津ダンが降板しても変わらないのね………(嘆息)。子供番組なんだから、大勢で1人をからかうシーンを出すなとは言わないが、それが日常茶飯事なのは社会的影響への観点からもかなり問題があるな。

 そんな心無いからかいに遭うユタカはガス会社の夜間警備員を務める父親(小高まさる)との二人暮らしで、静かながらも互いが互いを思いやる家庭に過ごし、人工衛星を見つけることに更なる意欲を燃やしていた。そしてその夜、父親が夜警に出ようとしたその時、人工衛星と思しき飛来物が赤熱しながら大地に降り立ったのを父子は目撃した。
 だが、まんの悪いことに、父親が警察とガス会社に通報するも、警察が駆け付けた頃には飛来物は冷却してガスタンクに飛来しており、警察官は「酔っ払いによる悪戯」と断じた(その日が誕生日だった父親は少量の酒を飲んでいたことが災いした)。
 ガス会社の主任(石山克己)も戯言と断じ、哀れ父子は嘘つき扱いを受けた。既に麻痺しつあるが、本当にこの作品に登場する者達には分からず屋が多過ぎる………人工衛星が消息を絶ったのは世界的なニュースだったし、いくら飛来物のガスタンクへの擬態がぱーぺきでも、あんな巨大建造物が1つ増えて大騒ぎにならない筈が無い

 かかる仕打ちを受けてさすがにユタカとその父は黙っていられなかった。父親は無表情で物静かな人間の割には行動派らしく、自らガスタンクを調査せんとしたが、ユタカが放射能汚染や超獣の影響を懸念したため、父子はTACへの通報という手段を取った。
 そしてそのTACでは人工衛星らしきものの動きを前夜にレーダーで捕らえていた。美川は人工衛星が相変わらず消息不明なのを「上空で燃え尽きた。」と推測したが、山中はレーダーが捉えたエネルギー出力量から美川の推測を否定した。そこへユタカからの通報があり、それを受けた竜隊長はユタカにガスタンクに近づかないよう告げ、北斗と吉村に現場調査を命じた。
 これまでのTACなら、電話を取ったのが竜隊長だから信用されたと見るところだが(笑)、竜隊長は通報された該当箇所がBW地点で、TACのレーダー分析と一致することを理由としていたから、前回に引き続き、TACは合理的に人を信用する組織になったものである(笑)。だから人間不信の役割はチョイ役に降られたのかな?(苦笑)

 ともあれ、ユタカの家に駆け付けた北斗と吉村は、吉村が掲げた分析器によりガスタンクの中に超獣の反応が見られることを探知し、北斗はその旨をTACに、吉村はユタカの父に代わってガス会社に連絡した。
 前夜ユタカの父の通報を取り合わなかった主任も、TAC隊員の言は完全に信用した様で、すぐに駆け付け、TACに対しても協力的だった。公的機関の権威って大切なのね(笑)
 主任の前にユタカの家に来ていた竜隊長は超獣の卵(←中を誰も見ていない筈なのに何故かそう決めつけられていた)を攻撃する準備(←言及は無かったが、準備された武器はシルバーシャークに違いなかった)を整えたが、ガスタンクへの引火を懸念し、主任に相談し、ガスタンクのガスを抜くこととし、今野がこれに協力した。
 ところが何故かガスは周囲に漏れだし、人工衛星に潜む超獣の卵がこれを食していることが断じられた。

 事態の急転を受け、竜隊長は基地に1人残っていた山中にTACスペースでの攻撃を命じた。待機を命ぜられたのが最も血の気の多い山中だったのは少々不可解だったが、こういうことだったのか(笑)。
 だが、当然と言おうか、必然と言おうかTACスペースによる攻撃は超獣打倒に至らず、ガスタンクの中からはガス超獣ガスゲゴンが出現してしまった。状況からガスゲゴンの体内にはガスが充満していると見た竜隊長は銃火器での攻撃を禁じ、山中も接近飛行でガスゲゴンを牽制するしか出来なかった。
 そしてそうこうする内に鞭状の両腕を振るってグドンみたいに暴れるガスゲゴンによって街中は次々に破壊され、ユタカの家も破壊されてしまった。これを受け、ユタカはTACが無闇に超獣を攻撃したからだとし、主任もTACが早く超獣を倒さないからだと詰った。相変わらずの分からず屋オンパレードだったが、目の前で自宅を破壊されたユタカの気持ちを考えれば子供っぽい八つ当たりも少しは分からなくもない。でも、 TACを呼んだのは自分だよな、ユタカよぉ?(怒)

 北斗は住民避難が完了しているのだから攻撃すべし、としたが、竜隊長はガスゲゴンの体内にあると推測されるガス量から無人でも街が燃え尽きるのを懸念し、ガス中和剤を用意してから本格攻撃に入ることとし、山中には冷凍弾での牽制攻撃を命じた(この間も各地の工場からTACの無策を詰る抗議が相次いでいた)。
 多少後手に回った感が有ったとはいえ、この第45話におけるTACの行動は理に叶っていた。山中がTACスペースから放った冷凍ガス弾は炎を吐いて暴れるガスゲゴンの動きを凍結させて停止させた。惜しむらくは一時的な効果に終わり、接近した山中は逆襲を食らって「脱出!」となったが、TACファルコンが来るまでの時間稼ぎにはなった。
 そしてTACファルコンとTACスペースから散布された中和剤は、ガスゲゴン自体を倒すには至らなかったが、ガスゲゴンによる火災と炎吐を食い止めたのだからこれにも意義はあった。だがこちらも惜しむらくは長続きせず、山中同様に北斗も接近したところをガスゲゴンの返り討ちに遭った。勿論墜落したTACスペースからはAが飛び出した訳だが(笑)。

 ガスゲゴンは、上背は有っても、無駄に長い鞭状の腕でバランスが悪く、両頬の頬袋も視界の妨げになっていたのか、格闘戦では明らかにAに劣っていた。だが、ガス中和剤の効き目が切れたことでガスや炎を乱射されるとAは苦戦を強いられ、おまけに引火への懸念から光線技を放つことも出来なかった。
 それでもTACが空中と地上からガスゲゴンの注意を引き付けてくれたのが幸いし、ガスゲゴンの隙を見つけたAはこれを羽交い絞めにすると上空高く舞い上がった。無論ガスゲゴンを地上に影響を与えない上空で始末する為で、TACもこれに追随した。
 そして宇宙空間に到達するとAはガスゲゴンから離れ、頃合いと見た竜隊長は攻撃を命じ、今野が発動させた機首レーザー砲は一撃でガスゲゴンを木端微塵に粉砕した!
 完全な独力ではなかったが、ガスゲゴンの肉体に与えたダメージを考えると、純粋にTACファルコンの機首レーザー砲の性能で倒したと言え、ファイヤーモンス戦に続くTACの貴重な2勝目が成立したのだった(大拍手)!!

 そしてラストシーン。ユタカの望遠鏡は無事だったらしく(家が再建した物か、引っ越し先かは不明)、ユタカはその晩からまた星が観察できると意気込み、そこに北斗が高性能レンズをプレゼントして、両者による笑顔の和解で、一般ピープルがウザくても、TACにとって意義深い第47話は終結したのだった。


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平成三〇(2018)年七月一六日 最終更新