ウルトラマンA全話解説

第47話 山椒魚の呪い!

監督:古川卓己
脚本:石堂淑朗・山元清多
液汁超獣ハンザギラン登場
 事件は山奥の村・日原村で起きた。突如出現した液汁超獣ハンザギランが次々と村の家屋を破壊して回っていた(←行動的には単純に徘徊し、時折寝転がっているだけに見える)。
 通報を受けたTACは北斗・吉村・美川を急派し、彼等はTACパンサーで駆け付けた。だが、その時にはハンザギランの姿は消えており、家々を壊されただけではなく、牛や馬まで食われた村人達は茫然自失状態だった。

 村人達の証言を元に状況を本部に報告した美川は追跡調査を行うと告げ、本部からも山中・今野がTACスペースで駆け付け、空と地上から追跡が行われた。
 上空から大きめの洞窟(と言っても超獣が出入りするサイズではなかったが)を見つけた山中の誘導でそこに駆け付けた北斗達はもうもうと煙が立ち込める中、1人の少女(西村ひろみ)が気絶しているのを発見し、これを保護した。
 煤で汚れていたものの、外傷もなく、すぐに気付いた彼女だったが、気を失った状況ははっきりせず、超獣に襲われたのでは?との推測に対しても、超獣自体を知らないとの回答が返って来た。

 聞けば、少女は近くの鍾乳洞に祖父と2人で住んでいるという。つまり近所を歩いていた訳だが、それにしても現代劇で「鍾乳洞に住んでいる。」というのは些かやり過ぎではないだろうか?特撮番組に限らず、厭世的な人物が町や村を離れて人が通わぬであろう場にひっそり住むケースはままあるが、それでも掘っ立て小屋ぐらいは立てており、最低でも縄文時代並みの暮らしはしているが、ここまで来ると旧石器時代並みである。住民票はちゃんと所持出来ているのだろうか?

 ともあれ、保護した少女を連れて、彼女が祖父と住むという鍾乳洞を訪れた北斗達。当然洞内に電気が来ている筈が無く、懐中電灯の明かりを頼りに進むのだが、光を様々な色に反射する景色を綺麗だと感嘆していたのだから、コイツ等の感覚もかなりずれている(苦笑)。通常は老人と年端も行かない少女がこのような場に住んでいることを疑問に思う筈なのだが……。
 ともかく、洞内を進むと奥に囲炉裏があり、そこに少女の祖父(巌金四郎)がうたた寝していた。互いに挨拶を交わし、ここで初めて少女の名が坂上サユリであることが判明した。坂上老人は変な所に住んでいることを除けば人間的にはおかしな人物でもなさそうで、サユリが山中で突如意識を失い、そこをTACの面々に救われたことを知ると丁寧な礼を述べてもいた。
 ただ、TACが近くまで来た理由が、麓の村がオオサンショウウオの超獣に襲われたと聞くと、「まさか…。」と呟いて、暗に信じられない風を示した。

 超獣襲撃を信じないというよりは、「オオサンショウウオ=ハンザキ(←半分に裂いても生きるというオオサンショウウオの生命力を指して、そう呼ぶ地方は多く、日原村の村民達も一様にそう呼んでいた)の超獣」が信じられないという風だった。
 だが、頭から疑っていた訳でもなさそうで、次第に北斗達の話に耳を傾けるようになったのだが、逆に徐々に人格的に破綻した面を垣間見せ出した。日原村の壊滅で多くの死傷者が出たことを露骨に喜び、オオサンショウウオの「庄兵衛」をペット(←オオサンショウウオは特別天然記念物で、法律に違反している)として一緒に暮らし、散歩まで共にしていたことを告げた。
 一応、サユリの証言で村人と仲が悪かったことや、それは村人達が除草剤の散布等で地域のオオサンショウウオを絶滅に追いやったことを憎んでのものであることがすぐに分かったので、全く理解の出来ない話ではなかったが、それでも普通ではなかった。

 さすがにサユリは村の壊滅を「因果応報」として高笑いする祖父を窘めてはいた。一方でTACの面々は庄兵衛が白い体色であることを怪訝に思っていて、吉村は洞窟に住んでいるからでは?と推測していたが、コイツ等はオオサンショウウオが保護色を持つことを知らないのだろうか?
 そんなズレたTACの問題意識だったが、それでも展開から庄兵衛がハンザギランではないか?との疑問は当然の様に抱いており、北斗は日原村がハンザギランに襲われている時の庄兵衛の「アリバイ」を遠回しに尋ねた。それに対して、サユリが庄兵衛は大人しく、笛で自分や祖父の言うことは何でも聞くから違うと回答していたが、これでは証言が事実でもアリバイにならないどころか、オオサンショウウオ離れ(?)している庄兵衛が益々怪しく映るだけだった。う〜ん………何かズレとるのう、この第47話は………。

 いずれにしてそれ以上サユリや坂上老人を訊問する根拠もなく、北斗も一応は庄兵衛以外にオオサンショウウオに関連する存在が無いことから質問した旨を告げると坂上宅(?)を辞した。
 勿論、だからと言って庄兵衛に対する疑念が解消した訳ではなかった。まあ、他に疑ってかかる対象が無いと言えばそれまでだが。
 ともあれ、TAC本部にて様々な状況から庄兵衛への疑惑を捨てきれずに考え込む北斗だったが、それに対して美川は北斗がサユリのことを悩んでいるとからかい気味に指摘。他のTAC隊員達もそれに釣られる様に笑っていたが、まあこれは普段何かと子供達と仲の良い北斗のパターンを見れば、それなりに考えられるからかいの範囲内であろう。
 そんなからかいを受けて、自分の考えを述べた北斗だったが、それを受けて他の面々が真剣に考察し出したということは、例によって北斗はまた自分の考えを周囲に話さず、内心だけで抱えていたのだろうか?だとすると普段自分がTAC内で信用されないことに対する振り返りは皆無と言わざるを得ない。
 だが、そんな北斗の疑問の声を受け、オオサンショウウオがハンザキとも呼ばれる由来を語った吉村はオオサンショウウオ自体を「超獣の様なもの」と言っていたから、今回は普段真面目な吉村までもがチョットズレていた。

 その頃、サユリと坂上は庄兵衛を散歩に連れて行こうとしていた。それに前後する会話から、坂上老人がオオサンショウウオ保護の活動資金に窮して家を抵当に借金し、それが為に持ち家を失い、洞窟生活を余儀なくされていたことや、そこまで必死に行った保護活動に見向きもしなかった村人達を坂上が憎んでいる旨が遠回しに、かつ自然な流れで示されていた。この辺りの構成はなかなかに上手かった。
 だが物陰に姿を消した庄兵衛はハンザギランに変身し、再度暴れ出した。この変身を即座に普段洞内で浴びない太陽光線を浴びたから、と断じていたサユリの洞察力は結果として見事なのだが、展開的にはかなり安直。だがそんな考察以上に異様だったのは直後の2人の反応だった。
 坂上老人はハンザギランの正体が庄兵衛であったことを喜び、もっと破壊活動をするよう声援するアブナさを見せた。一方で庄兵衛が超獣と化して破壊活動を行っていることを悲しむサユリは一見まともに見えたが、悲しむ理由が「もう一緒に遊べない…。」だったから、やはりこの第47話は何かとズレていた。

 暴れるハンザギランに驚愕した村人は即座にTACにこれを通報した。TACファルコンとTACスペースの到来を目視したサユリは庄兵衛に指示する際の横笛を吹くとハンザギランは元の庄兵衛に戻り、2人と1匹は鍾乳洞に戻った。
 一連の推移を見て、既に復讐は成れりと言わんばかりに狂喜する坂上。それに対して決して復讐を、ましてやそれに伴う破壊を望んでいないサユリは祖父に庄兵衛をもう外には出さないことを懇願したが、それに応じる祖父の目は完全に笑っていた。
 一方、またも超獣が姿を消した後に到着する形になったTACの面々は、恐慌状態に陥って村から出て行こうとする人々の証言から、もはや坂上老人・サユリの飼う庄兵衛を抑えるしかない、と考えたが、竜隊長がいきなり大勢で押し掛けても逆効果と考え、まずは祖父と孫をこっそり張り込むことになった。ま、この辺りは多少以前よりは人の機微を考える様になったな、TACも(笑)。

 だが、その夜、坂上は庄兵衛を連れて天井の抜け穴から洞窟を抜け出した。抜け穴の存在を知らない北斗にそれに気付く術はなく、翌朝目を覚まして祖父と庄兵衛の姿が見えないことに気付いたサユリに告げられてようやく事態の急変に気付いた(止むを得ないと言えなくもない)。
 かかる展開を受けて、サユリも話が祖父ながら坂上が復讐を目論んでいるとしか思えず、北斗に祖父を止めるよう懇願した。程なく、ハンザギランが姿を現し、村に向かっているのを確認した北斗はTACに出撃を要請した。

 ハンザギランはさほど攻撃力の有る方でもなく、口から吐く白い溶解液は狙いを外しまくっていた。だが、サンショウウオの超獣らしく、とにかくタフだった。TACファルコン機首からの光線銃攻撃と、TACスペースからのミサイル攻撃の連打にダメージを受け、追い込まれている様には見せつつも、なかなかとどめには至らなかった。
稚拙な吐瀉攻撃も長時間続けられては、TACファルコンもTACスペースもいつまでも躱し切れず、やがてはこれを食らってしまった。
 地上に不時着したTACの面々はやがて横笛を吹いて庄兵衛=ハンザギランに復讐を代行させんとしている坂上と遭遇した(更なる復讐の為、庄兵衛を一時休ませんとして戻ってきたところだった)。
 ハンザギランを利用しての復讐実行に取り憑かれた坂上は、自分がハンザギランを操っていることをあっさり認め、TAC隊員達は勿論、孫のサユリの説得にも耳を貸さなかった。

 だが、笛でサンショウウオを操ること自体が根拠なき話だったためか、ハンザギランは日常的に接するサユリも襲おうとし、これを庇わんとした坂上は手にしていた笛を取り落とし、笛は溶解液を浴びてぶっ壊れた。
 これにより完全に制御を失ったハンザギランは坂上を殺害。溶解液を浴びた坂上は遺体すら残らなかった。目の前で祖父を殺されたサユリは呆然とするしかなかったが、ハンザギランはそのサユリにも襲い掛かった。それを救わんとして北斗はAに変身し、話もかなり終盤になって両者の決戦に至った。

 対TAC戦同様、攻撃力は大したことのないハンザギランだったが、とにかくタフで、いくら攻撃しても死ななかった(←光線技を全く浴びせてなかったのだが)。これには困り果てたAだったが、ハンザギランが庄兵衛の太陽光線を浴びて超獣化したものであることをサユリから聞いていたAはエースバリアを発動した。これはメトロン星人Jr.ドラゴリーに放った同名の技とはチョット異なり、ハンザギランの動きを封じるのではなく、太陽光線がハンザギランに降り注ぐのを遮断するように使われた。
 Aの狙いは過たず、ハンザギランは元のオオサンショウウオに戻った。さすがにフィクションとはいえ、特別天然記念物を殺すシーンを描写するのにはためらいがあったのだろうか?(苦笑)。

 結局、庄兵衛は二度と太陽光線を浴びて超獣化しない様に鍾乳洞内に戻され、その出入り口は岩石でもって封じられた。些か甘い処置の様な気もしたが、もっと問題だったのは傷心のサユリだった。
 たった1人の肉親(=祖父)を失い、たった1人の友(=庄兵衛)とは二度と会えない定めとなり、完全孤独に陥ったことを悲しむサユリを思うと救いのないラストだった。
 だが、竜隊長は新たに6人の友がいることをサユリに告げた。それはTACの面々のことで、傷心の少女を慰める為とはいえ、公務で動いている年の離れた成人男女を「友」と言い切るのは少々無理があるのを感じないでもなかった。だが、竜隊長の言葉を承認するようにサユリに優しく微笑みかかるTAC隊員達の笑顔は本当にいい笑顔をしており、高峰・沖田・山本・佐野・西氏等の俳優としての(表情を作る)技量の高さが遺憾なく発揮されていた(普段の山中の厳めしさが完全に失せていた!)。
 その優しい笑顔と、ナレーションで説明されたその後のサユリの境遇(←竜隊長の姉に引き取られて幸せに暮らした)が犠牲と破壊の多かったこの話に幾許かの救いをもたらして第47話は終結したのだった。


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平成三〇(2018)年七月二八日 最終更新