ウルトラマンA全話解説

第49話 空飛ぶクラゲ

監督:菊池昭康
脚本:石堂淑朗
水瓶超獣アクエリウス、宇宙電気クラゲユニバーラゲス登場
 冒頭、謎の飛行物体が宇宙から地球に飛来したところからストーリーは始まった。TACのレーダーはこの動きを捕捉し、速度や事前情報から遊星や月ロケットとは考え難いとしていた。やがて飛行物体はとある寺の上空(TACのレーダー上では「TC地点の上空4000メートル」に当たる)で黒煙を発して機体を覆い隠すとレーダーからも消えた。

 ともあれ飛行物体からは1人の水瓶を背負った少女(広瀬隆子)が降り立った。そして夜が明けると少女は村の中を闊歩し出したのだが、ギリシャ神話を意識したような衣装は村人ならずとも変に映り、飛行物体を覆い隠していた黒煙も一目で「変な雲」を断じられる代物だった(苦笑)。
 だが見た目は可憐or滑稽でも、こ奴等の正体は水瓶座第3星から地球を植民地として、地球人を奴隷にせんと目論む完全な侵略者で、水・空気・緑・奴隷対象が申し分ないと報告する少女は母船からはアクエリウスと呼ばれ、更なる調査と占領準備を命じられていた。

 アクエリウスに対して、「こちらはエネルギー補給を進める。」と告げていた母船からは黒煙と共に宇宙電気クラゲユニバーラゲスが飛び出し、近辺を飛ぶセスナを襲い、燃料を強奪し始めた。
 勿論巨大生物(身長85m・触手の長さ70m)に襲われた上に燃料を奪われたセスナ機は墜落する他なく、その痕跡は村人達の知るところとなり、通報を受けたTACからは今野・吉村・北斗がTACファルコンで飛来することとなった。

 忽ち空中戦が展開されたが、TACファルコンからの機銃掃射はユニバーラゲスに致命傷を与えるには至らず、逆に触手に捕まり、振りほどこうにも燃料が無く、機体は山中に叩きつけられ、北斗達はいつもの「脱出!」を敢行した(苦笑)。
 事の成り行きを見守っていた熊吉(高松しげお)を初めとする村人達(畠山麦、柳亭小痴楽、その他大勢)は人柄が良いらしく、パラシュートで降下してくる北斗達の救出に向かわんとした。だが、そこにアクエリウスが現れ、自らを「神の使い」と称し、黒雲の中には「神」がいるとして、それを攻撃したTAC隊員達を縛って連行するよう命じた。
 勿論村人達もまだ年端も行かない少女にしか見えない者にいきなり「神の使い」と言われてもそれをそのまま受け入れるほど単純でも御人好しでもなかった。アクエリウスを無視して北斗達の救出に向かわんとしたが、アクエリウスは指先から光線を放って村人達を脅迫して服従を強いた。とんだ「神の使い」があったもんだ(苦笑)

 ともあれ、謎の光線をいきなり周囲に照射された村人達にとっては充分恐ろしい存在で、村人達は脅えながら彼女を「神の使い」と認めて、服従することをひれ伏しながら誓った。
 アクエリウスは先頭で跪く熊吉に改めて「神」の怒りを解く為にもTAC隊員達を縛って連行してくるよう命じた。
 村人達は命ぜられるまま北斗達を捕らえ、祭壇らしきものの前に立てた柱に3人を縛り付けた。それに対して、北斗達は黒雲の中に神など居らず、少女が宇宙生物に違いない、と村人達に呼び掛けたが、村人達はアクエリウスに対して服従体勢に入っており、アクエリウスは北斗達を「悔い改めない。」として、暗に火炙り対象であると告げた。
 そして洗脳の一環なのか、他に目的があるのか、「苦しさと悲しさを捧げよや いつの日か神の御手に抱き止められる為に」の歌詞で始まる歌や神への祈りを村人達と共に捧げ、一列になると先の歌を歌いながら山頂に向かった。
 アクエリウスによる洗脳がどこまでの物かは不鮮明だったが、村人の1人(畠山麦)にカレーの匂いを嗅がせたら正気に戻らないだろうか?………………何?作品が違う?ごもっとも(苦笑)。

 程なく、救いの手が現れた。TACファルコンが撃墜されたのを受けて竜隊長が増援に寄越した山中で、山中は北斗とアイコンタクトを取ると見張り役の村人を(北斗が喚いて注意を引き付けている隙に)張り倒し、北斗達を介抱した。
 さすがに展開上、山中は副隊長格らしい動きを見せ、アクエリウスの正体を暴くと宣言し、今野・吉村には近くにレーザー光線を搭載して待機させたTACファルコンを隠しているのでそちらに向かうように命じると、北斗共にアクエリウスを追った。
 山中と北斗は山頂付近で村人達を留めたアクエリウスが1人になり、母船と連絡を取り合っているのを目撃し、その目的を認識すると攻撃に掛かったが、上手く逃げられてしまった。直後、今野・吉村とも合流したが、祭壇から逃げた上にアクエリウスに逆らうTAC隊員達を「罰当たり」として暴徒化した村人達に包囲された。
 フィクションでも、現実でもこういう状態に陥った群衆は言葉でいくら言っても聞く耳を持たない。だがそこへタイミング良く竜隊長と美川がTACスペースで飛来し、ジェット噴流でもって宇宙船を覆い隠す黒雲を吹き飛ばした。
 これにより、宇宙船が文字通り白日の下に晒され、アクエリウスが神なのではなく、神を騙る宇宙人であったことが衆目にも明らかとなり、洗脳は解かれた………………最初っからそうせんかい!!(笑)

 ともあれ、正体を暴いたTACスペースを撃墜せんとしてユニバーラゲスが飛び出したが、山中は吉村にビッグレーザー5での攻撃を命令。第2話ではカメレキングの卵を壊せなかった武器だったが、その後約1年の間に改良が為されていた様で、一撃とはいかなかったが、三度の照射でユニバーラゲスを消し去り、記念すべきTACの3勝目をもたらした!
 一方、竜隊長&美川のTACスペースも宇宙船を撃墜するのに成功し、船内に潜む者はアクエリウスに後々植民してくる開拓団の為にも戦闘を続行するよう告げて墜落した。

 同胞の遺言を受け、その墜落を涙流しながら見つめていたアクエリウスは北斗に銃撃されるや巨大化して水瓶超獣アクエリウスとしての正体を現した。北斗は山中達に恐慌状態の村人達の避難誘導を託し、自身は単身アクエリウスと対峙した。
 だが、TACガン1挺での応戦では分が悪く、崖から転落した北斗はウルトラマンAに変身した…………なんか本当に最近変身パターンが郷秀樹に似て来たな(苦笑)。
 ともあれ、アクエリウスは電撃を発する爪と、左肩についた花から出す毒噴煙で序盤戦こそAを苦しめたが、すぐにAは体勢を立て直し、電撃キックでもってこれを倒した。

 直後、Aはアクエリウスの遺体を地中に埋めたらしく、巨岩を墓標代わりに立て、合掌してその冥福を祈る姿を見せていた(←なかなかに稀有なシーンである)。アクエリウス達水瓶座第3星人達は侵略者には間違いなかったが、もしかしたらバルタン星人や『仮面ライダーBLACK RX』のクライシス帝国のように帰る故郷を持たない存在だったのかも知れない。勿論だからと言って地球人サイドが黙って侵略を受け入れる訳にはいかないが、略奪目的の侵略者と、終の棲家を求めての侵略者は違う見方をするべきかも知れない(結果的に同じことを行い、倒すべき存在だとしても)。
 ともあれ、この戦勝により、村には平和が戻り、TACの面々は村人達の感謝の声を背に帰途に就いたのであった。


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平成三〇(2018)年七月二八日 最終更新