ウルトラマンA全話解説

第50話 東京大混乱!狂った信号

監督:深沢清澄
脚本:石堂淑朗
信号怪人レボール星人、信号超獣シグナリオン登場
 冒頭、TACパンサーにて早朝パトロールを行っていた北斗と山中は軽トラックとの衝突事故に遭遇した。幸い怪我はなく、間違いなく青信号なので直進していたところに脇から出て来た軽トラックの運転手に抗議しようとしたところ、軽トラックから飛び出した運転手・小川ユキ(笛真弓)は北斗の信号無視を詰って来た。
 互いの主張は相手が信号無視をしたと言い張るもので、相手が信号無視をしたものと思い込んでいた。

 結局、超獣も絡まない衝突事故ゆえ、事故処理は警察に委ねられたのだが、警察は同じ公務員でTACの言い分を一方的に信用し、ユキが信号無視したと決めつけ、免停を告げた。たが野菜の配送を職としているらしいユキは免停になっては仕事が出来なくなる。山中の信号無視を責めていた怒りモードから、「本当のことを言って!」と懇願モードにシフトしていたが、勿論互いの主張が変わることなく、ユキは激昂してその場を走り去った。

余談だが、世にこの「本当のことを言って!」という台詞程虚しく、悲しいものも少ない。かかる台詞を吐く段階で、完全に相手の言っていることを「嘘」と決めてかかり、何を言っても信用しないのである(親や教師が子供に言う、「怒らないから正直に言いなさい。」もこれに準ずることも多い)。
勿論確信犯的に嘘を吐き通そうとする相手も退く訳が無いから厄介だ。

この話では、登場する「信号超獣」の肩書からも、信号が狂わされたことが容易に理解出来るので、山中もユキも「巻き込まれた被害者」であったこととして納得も出来るが、現実の世界では「双方とも正しい。」等という内容に双方が納得し、決着することはまずない(もしそうなら最初から揉めない)。
相手が嘘を吐いているとしか思えないときこそ冷静にならなくてはならないかも知れない。極めて難しいことだが、相手が正直者でも、嘘吐きでもそのまま突き進んで解決することだけはまずないだろうから。


 ともあれ、ユキが嘘を吐いている風もなく、自分だって信号を守っていた北斗はどうにも不可解さが拭えなかった。ユキの見間違いか、信号機の異常も疑ったが、眼前の信号は正常に作動していた。
 結局、ユキの後をついて様子見を見てみると、どうやらユキは幼い弟を養う為に一生懸命健気に働いているようだった。勿論仕事熱心だからと言って、善人だからと言って事故を起こさないとは限らない。人間は過失を犯すこともある生き物なのだから。
 改めてユキに状況を訪ね直す北斗だったが、ユキの主張は変わらず、弟を養う為にも事故は絶対起こせず、常に慎重を期した運転をしていることが重ねて告げられたのだった。

 だがそこへ都内各所にて信号機が一斉に異常を起こしたことでユキと山中が同時に青信号と信じて進むことが起こり得たと証明されることとなった。各地の信号機は色も点灯具合も出鱈目で、それが為に各地の交差点で衝突事故が多発しまくっていた。描写は無かったが、現実にこんなことが起きたら、暴力沙汰も数多く派生して起きただろう(勿論、言い合いのシーンは多発しまくっていた)。
 車輌と車輌がぶつかり合ったことによる怪我人の多発・火災・爆発・それらに付随した諍いは下手な超獣襲撃よりも遥かに厄介だった。山中と北斗は本部からの連絡で最寄りの交差点に向かうのも一苦労だった。そしてその混乱大きさを示すかのように、映像的にもかなりの時間が割かれていた」。

 さしもの山中・北斗も前例のない事態・混乱に普通の事故や信号機の故障じゃないことは察知しつつも、誰が何の為にこのような事態を巻き起こしたか丸で見当がつかなかったが、程なく事件を起こした張本人が名乗りを上げた。
 本ボシの正体は信号怪人レボール星人。星人は「レボール…レボール…」と連呼しながら、事件が自分達の仕業であることを告げ、東京都民に対して東京から出ていくことを要求した。要求に応じず、抵抗すれば、自分達の守護神である信号超獣シグナリオンを放ち、武力行使に出るとした。
 だが、次の瞬間、TAC本部では美川が超獣出現の報を受けており、TACは即座に出動した。「レボール星人……何て気の短い奴なんだ……。」と思い掛けたが、これはシルバータイタンの早とちりで、シグナリオンレボール星人の宇宙船に紹介的に投影されていただけだった。

 ともあれ、TACファルコンからは宇宙船に機銃掃射が為されたが、どうも幻影か視覚が歪んだ先の標的に撃っている様に透過したり、済んでのところで外れたりしていた。
 結果、レボール星人は自分達の守護神・シグナリオンに対して弾丸を放ったTACの攻撃を「抵抗行動」と見做し、報復に出ることを宣言して宇宙船も姿を消した。
 そして宣言通り、即座の報復が始まり、都内の信号機は次々と怪光線を放ち出した。

 赤信号からは高熱光線が発せられ、TACファルコン内の竜隊長達は高温を感じる程度で済んでいたが、屋外の一般ピープルは灼熱地獄に悶えた。
 青信号から発せられた光線を浴びた人々は真っ青な顔になって、脱力してその場にへたれ込んだ。北斗はその正体を「血液を蒸発させ、体温を急激に下げる」ものと即断し、山中も頷いていたが、血液が蒸発した日にゃ、即死だろ!?!(←北斗に介抱されていた男性は朦朧しながらも意識はあった。)
 そして残る黄信号からの光線は、浴びた人々を発狂状態に押し入れ、犠牲者達は力なく笑い続けていた。

 このとんでもない事態にTACはレボール星人を発見し、これを撃つしかないとしたが、星人は共鳴を上手く利用して発声源を察知されないようにしていた。だがTACファルコン内にて計器を見ていた吉村が音ではなく、電波の発生をキャッチしたことで事態は好転し出した。
 電波発生源は御都合的に山中と北斗のいた地点の地下で、そこには廃坑となった下水道があり、二人は即行、(アスファルトを塗って隠されていた)マンホールから地下下水道に潜入した。

 果たして、地下下水道にはレボール星人が都内の信号機を操っていると思しき設備の類が発見された。そして3名の者がいて、その中の1人(菊池英一)が例によって「レボール」を連呼しながら、第2の攻撃を予告していたから、標的に間違いはなかった。
 問題はそれを操る者達が見た目には地球人の下水工事作業員にしか見えないこと。短気な山中は即座の攻撃を考えたが、本物の地球人が催眠術などで操られている可能性を考慮した北斗はそれに待ったをかけた。これを受けて山中は自分が作業員(?)達の気を引き付けるので、その隙に設備を破壊するよう北斗に命じた。

 作業員(?)達の背後から、「やあ、大変ですね。」と愛想よく声を掛けたわざとらしい山中(笑)。まあ、陽動だからこれでも問題ないと云えば問題ない。勿論、こんな地下にいきなり無関係な、しかも武装した者が現れれば誰だって色めき立つ。
 山中の作戦は図に当たり、作業員(?)達は銃器を抜いて山中に襲い掛かったが、そこはTAC隊員、3対1でも引けは取らず、見事に彼等を誘き出し、その隙に北斗は機械類を破壊。返す刀で山中に加勢した。
 果たして、作業員達の正体はレボール星人。宇宙人としての姿を現すと、信号超獣を操る宇宙人らしく、その体色は青・赤・黄に分かれていた(笑)。ともあれ、相手が駆使するレーザー拳銃、狭い場所での動き辛さに苦戦した山中と北斗だったが、何とか星人達を倒すのに成功したのだった。

 地上に出た2人は、すべてがレボール星人の仕業であり、それと分からなかったとはいえ散々に責めたことを謝罪しにユキの八百屋を訪れた。こうして見るとやはり山中は短気でも気の良い奴である。ユキの方でも誤解が解けたと有ればその後はさばさばしており、3人は下水道の中で汚れに塗れた山中と北斗の顔を見合わせて笑い合うなど、実に和やかな和解が為されていた。分からず屋の多い、同作品では珍しい傾向だ(苦笑)。
 だが、次の瞬間再度都内の信号機が暴走し出した。レボール星人の設備は何故?と訝しがる北斗だったが、これはシグナリオンの仕業だった。

 レボール星人は今際の際に、自分達の攻撃が終わらないことを告げており、それを山中は「死んで何が出来る?」と一笑に付していたが、残されたシグナリオンが最後の報復に出るというのがそれだった。
 それを考えると、宇宙船に投影されていたシグナリオンの映像を目にしながらその姿を追わず、たった3名を殺害して機械を破壊しただけで「任務完了」としていた北斗と山中の甘さは問題と言える。
 ともあれ、シグナリオンに対して即座にTACファルコンとTACアローが迎撃に出たが、シグナリオンは前述の3色の光線、更には3色を合わせた破壊光線で抵抗し、TACファルコンとTACアローはいつもの「脱出!」に陥った(苦笑)。

 次々と破壊が為される中、山中と北斗は自分と関わりを持った八百屋だけでも守らんとして、地上からTACガンで攻撃するも、落石をわき腹に受けて山中はダウン。北斗は「建物の上から水平に目を狙うべき」という山中の指示に従ってビルの屋上から攻撃を仕掛けたが、ビルは破壊光線を受けて大破。その崩れるビルの中で北斗はAに変身…………やはりパターンが郷秀樹と似て来たな(笑)

 A対シグナリオンの戦いはこれと言って特徴のあるものではなかった。
 鈍重そうな見た目が災いしてか、殴り合いでは明らかにAに分があり、そのままでは勝てないと見たか、終盤になってやっとシグナリオンは自らの武器である光線攻撃に出た。
 青色光線を浴びたAはそれまでの優勢が嘘の様に劣勢に立たされ、更にはカラータイマーに3色光線を食らうと、全身を痙攣させて苦しんだ。だが、全身を縛る縄を気合で引き千切るかの如く光線の影響を振り払うと後はメタリウム光線一発で勝負を決め、シグナリオンレボール星人同様消滅することでこの世を去った。

 ラストシーンはユキの八百屋。改めて事件の解決と誤解に対する謝罪に訪れた北斗と山中だったが、そこには2人の警察官も同行していた。
 初めから女性は無実とともっていた、と調子のいいことを言う初老の警官を笑い飛ばしたり、帰宅した弟達がTACへの憧れを見せたり、としたほのぼのシーンで終結したことが、破壊や一般ピープルの苦しむ描写が多発した第50話における一服の清涼剤になったと云えようか?
 尚、ストーリーには全く関係ないが、この『ウルトラマンA』第50話が放映された日に菜根道場道場主はこの世に生を受けた。


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平成三〇(2018)年七月二九日 最終更新