ウルトラマンA全話解説

第6話 変身超獣の謎を追え!

監督:真船禎
脚本:田口成光
変身超獣ブロッケン登場
 冒頭は異次元空間から始まり、そこではヤプール人が奇妙の装置を用いて、ワニ(さほど大きいサイズには見えなかった)と宇宙怪獣を合成することで変身超獣ブロッケンを生み出していた。
 超獣の多くは地球の生物と宇宙怪獣を合成して生み出した一種のキメラ(合成獣)で、些か強引な例えと比較を行うと、従来の怪獣がショッカー怪人とするなら、ヤプール人の生み出す超獣はゲルショッカー怪人に擬えることが出来るかも知れない。

 場面は替わって宇宙空間。そこでは飛行機タイプの宇宙船が地球を目指して飛んでいた。機体には日の丸が掲げられていたが、この宇宙船は日本初の有人宇宙船・新星号で、月からの帰還の途次にあった。
 機内にいたパイロットは日本人宇宙飛行士第1号・小山彰隊員(小林昭二)で、機体の操縦・誘導を管理・コントロールしていたTACと通信していた。

 オペレーティングしていた美川は、大気圏に突入する際の数分間はTAC基地との連絡が不通になるので、事前の必要事項があれば伝える様に促した。小山は特に無い、としたが、竜隊長が通信を替わり、家族のことを告げるや、もうすぐ第2子が生まれることを呟き、もうすぐ帰還する旨を家族に伝えてくれるよう要請した。この辺りさすがに小林昭二氏らしい役どころである(笑)。
 その小林昭二氏だが、今更書くまでもないが『ウルトラマン』のムラマツキャップを演じたウルトラシリーズの大御大(仮面ライダーシリーズにとってもそうだが(笑))。キャップは『ウルトラQ』の第19話、『ウルトラセブン』の第47話、『帰ってきたウルトラマン』の第13話、第14話と必ずと言っていいほどウルトラシリーズに出演して来たが、この『ウルトラマンA』第6話が最後になったかと思うと些か寂しい限りである。

 ともあれ、TAC本部内では隊員達のさりげない会話を通じて小山の近況が「説明」(笑)されていた。月への1週間の孤独な任務に従事していた小山の息子・敦は1人で家を守り、妻は2人目を出産する為に入院中とのことだった。
 そして何を思ったか、北斗は敦を訪問したいと言い出し、竜隊長は小山のメッセージを伝えるよう要請してこれを了承した。
 だがその直後、小山は異次元人の襲撃を受けた。船体は火を噴き、船内温度の上昇を感じた小山はその旨をTAC基地に伝えんとしたが、通じなかった。大気圏突入はまだで、通信不能域に入っていなかったが、同様に船内温度の上昇を察知した美川の呼び掛けも伝わっていないようだった。
 そしてヤプールブロッケンに小山への憑依を命じ、その際のブロッケンの叫び声はTAC基地にも届いていたのだった。

 その頃、北斗は公園で遊ぶ敦少年(斎藤信也)に後1時間程で小山が帰還することを告げていたが、大喜びしていた敦の表情は、TACパンサーに入った竜隊長からの無線で凍り付くこととなった。それは宇宙船異常発生・救出行動開始を告げるものだったからである。
 ちなみに敦を演じた斎藤信也氏はこの『ウルトラマンA』の後番組・『ウルトラマンタロウ』に白鳥健一役でレギュラー出演したが、僅か1年の違いでも客演と出演の違いがあってか、この時の斎藤氏はかなり子供っぽく見えた。

 ともあれ、TACはTACファルコンにて全員出動し、山中と北斗はファルコンに搭載されているTACアローに搭乗していた。そして操縦していた吉村が炎を吹き上げる新星号を発見すると竜隊長は山中と北斗に出撃を命じた。
 2機のTACアローは消火剤を噴霧し、新星号の火を消し止めると新星号を曳航して見事にその救出に成功した。消化と曳航と云う何てことないシーンに見えるが、猛スピードで落下する機体に対して2機がタイミングを合わせて無事曳航するなんて、素人目にもよくよく考えれば物凄く難度の高い飛行技術が求められる筈である。
 それを短気な山中と能天気な北斗(笑)で見事に成し遂げたのだから、 TACが物凄く有能なチームに見えた(笑)

 場面は替わってTAC本部。竜隊長は小山、山中、北斗とともに入室。恐らくは着陸直後の小山の無事を確認し、山中、北斗を労ったのだろう。入室した竜隊長は改めて小山の生還を祝い、握手を求めたが、小山は差し出しかけた手を避けると、
 「私は生還出来ないなんて思っていませんでした。TACの科学力を信じていましたからね。しかし、申し訳ないが、一番最初に握手する人間は決めてあるんです。息子の敦です。」
 と竜隊長に告げた。
 先にその原因を書いてしまうと、小山が握手を避けたのは、ブロッケンに憑依され、その手が異形と化していたのを、握手を交わした際に気取られない為だったのだが、実に上手く言い逃れていた。
 小林氏が演じているから、という訳でもないのだろうけれど、小山隊員自身普段からそういう信念の人だったのだろう。竜隊長は握手を拒絶されたことに気を悪くもせず、小山を「君は立派な宇宙飛行士であると同時に、立派な父親だ。君の子供想いには感心するよ。」と称え、その意を尊重した。そして彼の様な人物が人類の未来を切り開く、としてTACで開発中である新ロケットエンジンのテストを依頼した。

 小山=ブロッケンは笑って「ただのロケットエンジンならお断りしますよ。」としたが、勿論そんな筈はなく、梶主任の説明では、従来の数倍のパワーがあり、「もはや光速さ。」というもの。従来の物が光速の数分の1だとしても秒速6万kmとは凄まじい世界である。
 そしてその性能に対して今野が「4次元の世界を覗けるかも知れないですね。」と口を挟んだ瞬間、小山(くどいが精神はブロッケン)の顔色が変わった。
 だがそれは感情によるものではなく、所謂「ターゲット・ロックオン」を表すもので、小山はその性能を絶賛すると、開発場所を聞く等、探りを入れる様子を見せた。この時点でテストパイロット要請に興味を示しつつも、即諾せず、まずは息子に会いたいとするところなど、かなり用心深い上に狡猾な超獣である。

 そして小山は北斗と夕子に送られて帰宅。道中、ヤプールによるテレパシーの内容から小山がブロッケンに憑依され、その目的がTACへの潜入・内偵にあることが示されていたのだが、その中でヤプールがTACの科学力を褒めていたのに少々違和感があったのはシルバータイタンだけだろうか?(笑)。
 ともあれ、小山は息子と再会し、それを喜び合う父子の姿も、出産の為に入院している妻のことを尋ねる様子も実に自然なものだった。その様子を微笑ましく確認した北斗夕子は早々に小山邸を辞した。帰り際、北斗は、自分の父親が赤ん坊の頃に世を去ったゆえに父親の記憶が無く、それゆえに小山父子の様子が羨ましい、と夕子に零していた。
 そう聞けば北斗が何かと子供に優しかったり、子供に関わったりする傾向がこの後も続いたことに納得するし、また、そのことを告げられた夕子が表情を曇らせていたのも、地球人ではない彼女が大勢の同胞と離れて1人地球に居る故であることを思えば、両者のキャラクター設定はなかなかによく出来ていることを今更ながらに気付かされる。ま、これはもっと後々に思うことなのだが。

 そして夜。眠りに就こうとした小山が就寝時になっても手袋を外さないことを訝しがる敦だったが、ブロッケンは憑依している対象の記憶も把握しているようで、「おねしょをしない御呪い。」を実践したことからも特に怪しまれることもなかった。
 そしてその頃、夕子はTACの第3研究室で竜隊長に命じられた夜警の任に就いていた。第3研究室は最前語られていた新型ロケットエンジンの開発が行われている場で、その所在は小山邸の近くでもあった。夕子はそこで父親の記憶が無いと語っていた北斗の台詞を反芻しながら夜警をしていた。
 そして小山邸ではブロッケンヤプールの指令を受けていた。だが小山が起きる様子はなく、逆に敦の方が目覚めて小山が手袋をはめたままであることに気付き、それを外した。すると中から現れた掌には目と口が1つずつあり、驚いた敦は家を飛び出て公衆電話に駆け付けるとTAC本部にこれを通報したが、宿直の山中と北斗は寝惚けているのか、いたずらとして一蹴してしまった。
 現実主義思考の強い山中はともかく、普段から異次元人の怪現象に接し、山中に信じてもらえない苦しみを味わっている北斗は信用してやれよな………。

 哀れな敦は山中・北斗のみならず、翌朝登校中の同級生達にもその言を信用されなかった。確かに「お父さんは宇宙人なんだ!」と言う物言いに説得力が弱いのも分かるが、何故怪獣や宇宙人が毎週の様に現れる世界でこうも頭ごなしに信用されないことが多々あるのかは第2期ウルトラシリーズにおける大いなる謎の1つと言えるだろう(苦笑)
 同級生達に相手にされず、忸怩たる思いに呆然とする敦だったが、そこへ北斗が現れた。昨夜の電話対応とは打って変わって北斗は敦に父親を宇宙人と思う根拠はあるのかと尋ねた。それに対して敦が父親の掌に目と口があると答え、北斗は確かに異様だ、と言う顔をしたのだが、昨夜の電話の時に聞けよな〜そうすれば敦は嘘つき呼ばわりされるという苦しみを味わわずに済んだのに………。
 ともあれ北斗は小山を尾行したのだが、気配を察知したブロッケンは手袋を取って、掌にある眼で北斗を視認すると、同じく掌にある口からガスを吐いて北斗を攻撃した。この攻撃に慌ててTACガンを放って応戦した北斗はこのことをTAC本部に通報。例によって山中は信じられない風を見せたが、敦の証言と自分の見たことが一致するという主張に竜隊長はこれを重視し、山中と夕子を第3基地に向かう準備を命じた。
 尚も渋りかけた山中も、「事実を確認することも大切。」と竜隊長に諭されるとあっさり納得。良くも悪くも単純な男である(笑)。
 一方、第3基地との連絡を命じられた美川は、同基地を警護していた今野と連絡を取り、小山が来なかったかを確認したところ、吉村と共に基地に入ろうとしていることが判明。竜隊長は即座にこれを止めるよう今野に命じると、山中からの準備完了の報告を受け、自らも出動した。

 場面は替わって第3基地。竜隊長の指示を受けた今野は小山とともにいた吉村を呼び止めたが、事情を説明している隙を突いて小山は基地内に突入。その正体を表して巨大化すると、第3基地の破壊に掛かった。
 第3基地はあっさり破壊され、更にブロッケンは鼻先からの火炎、触覚からのスネーク光線を発射して周囲の街並みも破壊に掛かった。
 今野・吉村、そして駆け付けた北斗も加わってTACガンを放つも、さすがにこれだけではダメージらしいダメージは与えられなかった。やがて3機の戦闘機に分乗した竜隊長達も駆け付けたが、北斗が敦を庇ってビル内に入り込んだため、吉村は隊長に無闇に攻撃するのは危険だと告げた(←そもそも敦が超獣に父親を返せとばかりに突っかかろうとしたのが原因)。
 その北斗はTACガンにカートリッジを付けて、光線銃にしてブロッケンを銃撃。通常のTACガンよりは聞いてそうだったが、それでも大ダメージには至りそうになかった。

 空中と地上でもビルを撃たない様に気遣いながらTACの面々はブロッケンを攻撃していたが、ブロッケンは執拗にビル内の北斗を攻め、目と口を持つ両手からも破壊光線を発し、ついに手の口が建物内にいる北斗を咥え込んでしまった。それを見た夕子はTACアローから脱出(←ちなみにアローは無傷!)し、第3話とよく似た形態でウルトラタッチが為され、ウルトラマンAが地上に降り立ったのだった。

 変身する際に大きなエネルギーが放たれたためか、ブロッケンはいきなり北斗を掴んでいた左腕を切断された。だが鈍重な体格故、フットワークではAに及ばないブロッケンは逆に体格を利してAを押しまくり、火炎、角、測角、両手を駆使する戦い振りを前に、BGMは端からA劣勢時に流れるものと化し、Aは打撃のヒット数で勝りながら、相手の頑丈さと体格に押され、メタリウム光線すら大したダメージには至らなかった。
 やがてスネーク光線を受け、カラータイマーも赤く点滅する中、意識も朦朧とし、地面に仰向けとなるA。そしてAの劣勢に呼応するかの様に空には暗雲が立ち込め、稲妻が走った。不吉なものを感じるTACの面々だったが、稲妻に見えたものは遥かM78星雲から送られてきたウルトラサインで、Aはそのサインの中に必殺技を放つポーズを取る兄弟達の姿を見出し、「立て!撃て!斬れ!」の暗号メッセージを受け取るとAはあっさり元気を取り戻した。
 そして、設定によると「エネルギーを大量消費するために使用にはウルトラの星からの許可が必要。」とされる大技・ウルトラギロチンが放たれた。一見A版八つ裂き光輪ともいえる技だが、額からエネルギーを充填するように放たれた光のギロチンは4つに分かれると忽ちブロッケンの首と触覚の付け根と両手首をすっ飛ばしてこれを討ち取り、直後にその肉体は爆発・四散した。
 うーむ、名前が「ブロッケン」なのに自分がベルリンの赤い雨を受けるとは………えっ?作品が違う?ごもっとも(苦笑)。

 そしてラストシーン。
 TACの面々並びに敦は瓦礫に前に佇む小山に気付き、その元に駆け寄った。だが一同がその名を呼んでも小山は反応しない。最後に竜隊長が「小山…。」と呼び捨てで呼び掛けると無表情で振り返った。
 顔を見た敦は即座に駆け寄ろうとしたが、山中がこれを制した。勿論これはこれまでの展開を鑑みれば当然の用心と言えた。まあそこまでは良いのだが、目の前の存在であることを完全否定して撃とうとしたのは頂けない。せめて敦に見せない様にしろよな………正体がどうあれ、父親の姿をしているんだからさぁ………。
 だが山中に続いてTAC隊員達がTACガンを構えるも竜隊長がこれを制止。彼が注目するよう促した小山の足元からは影が飛び出し、その影が常人のそれになると小山は超獣の影響を完全に脱し、意識を取り戻したのだった。
 小山は敦の呼び掛けに答え、父子は今度こそ本当の抱擁を交わし、直後に小山は竜隊長とも固い握手を交わした。そして充分な休養後にまた任務に戻るよう励まされると、もし今度超獣に襲われるようなことがあれば自分の方が乗り移ってやる、と公言。「どうやって?」とツッコむのは野暮だろうか?(笑)
 そして小山夫人が第2子(男の子)を無事出産したとの一報が入り、父子は赤ん坊に会いに行くため、TAC隊員一同の元を去って行った。
 道々父子は影踏みをしながら移動し、ナレーションは影の無い人を見たら宇宙人と思え、と告げていたが、最後の意識取戻しまで、影に関するアクションや描写は一切無かったぞ!?


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平成三〇(2018)年七月一〇日 最終更新