仮面ライダーアマゾン全話解説

第10話 黒ネコ獣人 保育園をねらう!!

監督:田口勝彦
脚本:鈴木生朗
黒ネコ獣人登場
 冒頭、宵闇の中、いきなりアマゾンと黒ネコ獣人の戦で話は始まった。猫の獣人らしく敏捷性に優れる黒ネコ獣人は跳躍して高所からの爪攻撃を繰り返し、体術においてアマゾンと互角以上に渡り合っていた。
 BGMがゲドンのテーマソング・「アマゾンたおせ」ということもあってか、アマゾンは劣勢に立たされ、その動きは引っ掻き傷からの出血が多いこともあってか、精彩を欠いていた(実際の猫による引っ掻き傷も、爪の鋭利さから、見た目以上に深い傷であることが多い)。

 珍しくアマゾンは時々撤収する姿勢を見せ、それに対して黒ネコ獣人が素早く先回りしてアマゾンを奇襲したりしていたので、作中でも珍しい展開だった。ともあれ、結構長めの白兵戦が展開されたの果てにアマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身した。

 こうなると黒ネコ獣人は格段優位でもなくなった。よくよく見ると黒ネコ獣人は跳躍力・敏捷性において変身前のアマゾンと互角以上でも、それ以外−取っ組み合いや噛み合いではアマゾンライダーの方がやや有利で、頑丈さでは比べるべくもなく、程なくして今度は黒ネコ獣人が撤収した。
 かくして、「何とか追い払った」状態のアマゾンだったが、戦いによるダメージは大きく、心配して話し掛けて来たモグラ獣人に応えず、そのまま昏倒してしまったのだった。

 その原因は程なく、ゲドンアジト内にて語られていた。
 そこでは十面鬼が人血を吸引しており、顔の一つは「朝の一杯は格別」としていた。どうも十面鬼にとっての生き血」は、「酔っぱらい親父にとっての酒」に等しいようだ(笑)
 そんな食事に上機嫌の十面鬼だったが、そこに黒ネコ獣人がいるのに気付くと、直ちにアマゾン抹殺の首尾を問うた。勿論黒ネコ獣人は口籠るしかなかった(苦笑)。

 こうなると例によって、ゴルゴスを初めとする九つの顔は口々に黒ネコ獣人の不首尾を責め立て、これまでの敗北獣人同様の処刑をちらつかせ、「皮を剥ぐ。」と述べる者もいた。三味線でも作りたいのだろうか?(笑)

 そんな詰問に対して、黒ネコ獣人はアマゾンを毒爪で傷つけており、遠からずアマゾンは毒に当たって死ぬので、それからゆっくりギギの腕輪を取ればいい、として、一応の云い訳に成功したのだった。
 つまり、引っ掻き傷を受けたアマゾンの動きが精彩を欠いていたのも、黒ネコ獣人撤収後に昏倒したのも、すべては爪から傷口に刷り込まれた毒によるものだった。

 場面は替わってとある河原。そこでは立花藤兵衛がジョギングに励んでいたが、疲れて一服しようとしたところで煙草がそもそも体に良くないとして吸うのを辞めたのだが、火の点いたまま捨てたものだから、着地地点の地下から現れたモグラ獣人に怒られることとなった。確かにこれは藤兵衛さんが悪い(苦笑)。
 だが、たばこのポイ捨てなどの二の次、三の次で、藤兵衛にとってはモグラ獣人に地中から引きずり出されて現れたアマゾンが傷だらけで意識朦朧状態であったことの方が問題だった。

 すぐに医者に診せよう、とした藤兵衛だったが、当のアマゾンは医者よりも自作の薬の方が良いとしてこれを拒んだ。だが、アマゾンに変わってそれを作ろうにも、意識朦朧のアマゾンとはなかなか意思疎通が出来ない。とにかく河原に根転ばせる訳にもいかないので、近くにあった聖マリア保育園に担ぎ込んだ。
 その際、「お前、力無いな。」として藤兵衛に替わってアマゾンを搬送したモグラ獣人だったが、呼び鈴を押した途端藤兵衛に「お前を見たら気絶するぞ。」と云われていたのはチョット可哀想だった。
 モグラ獣人自身、「どうせそうだろうよ!」と半ば捨て鉢気味に吐き捨てて地中に潜ってしまったが、完全な善意で搬送に協力してくれた者に対して、藤兵衛ももうチョット言葉を選ぶべきだったと思われてならなかった。

 ともあれ、屋内から人が出て来たのはモグラ獣人が姿を消した後だった。保育園の名前が示す様に、園はミッション系で、中から出て来たのは一人のシスターだった(大井小夜子)。
 シスター早苗を演じた大井小夜子さんは『ウルトラマンレオ』の第36話にて高倉長官の一人娘・あや子を演じていた。『ウルトラマンレオ』の放映は『仮面ライダーアマゾン』より先で、実はこの『ウルトラマンレオ』にはマサヒコ役の岡村氏も、りつ子役の松岡氏も、バゴー役の明石氏も客演している。
 偶然と云えばそれまでかも知れないが、僅か24話しかない『仮面ライダーアマゾン』関係者が何人も出ていると思うと、やはりチョットした因縁は感じてしまうのだった。

 シスターは傷だらけで異装のアマゾンを少々訝しく思いつつも快く寝所を貸し、看病に努めてくれた。恐らく全24話においてアマゾンが肉体的に最も苦しんだのはこの第10話と思われるが、傷口の消毒を受けても尚、毒による影響で灼熱感に苦しんだ。
 そこへモグラ獣人から(拉致同然に(笑))連れて来られたマサヒコとりつ子も姿を見せ、藤兵衛とマサヒコがアマゾンの為に薬となる野草摘みに出かけたのだった。

 その頃、黒ネコ獣人はゲドンアジト内でまったりしていた。
 普段獣人達に高圧的な赤ジューシャが膝枕させて喉笛を撫でていたのだから、赤ジューシャは案外猫好きかもしれない(笑)。だが、そんなのんびりした時間は十面鬼の召喚で中断された。
 呼ばれても尚のんびり起き上がり、遅かったことを詰められると「急いできました。」と平然と宣うこの獣人、かなりいい性格をしている。それに対して、十面鬼の顔の一つが「嘘をつくな。」と云っていたので、もうこれはいつものことなのだろう。
 肝心のゴルゴスは、遅参自体はたいして咎めなかったが、アマゾンの居場所が判明したと告げ、今度こそギギの腕輪を持たずして帰って来ることは罷りならないとしたのだった。

 一方、床に横たわるアマゾンは園庭から聴こえてくる「ふるさと」(←保育士兼シスター達、園児達、りつ子が歌っていた)を耳に、自分が遥か昔限りなくふくよかな暖かさに包まれていた夢を見て、それが知識でしか知らない母の温もりではないかと夢想していた。
 だが、そんな微睡みは黒ネコ獣人の襲撃で破られた。勿論回復し切っていない状態で応戦せざるを得ないアマゾンだったが、寝ていたことで多少は回復していたようで、周辺にある枕を初めとする物品を利して黒ネコ獣人の攻撃を凌ぐと、コンドラーを抜いて、中に収納されていたアイスピック状の細剣を抜き、黒ネコ獣人の右目に深々と突き刺したのだった!
 致命傷は免れたものの、さすがに掛かる一撃を受けては黒ネコ獣人も一時撤収する他なかった。またこの間に薬草を取り終えたマサヒコと藤兵衛も戻っており、既にペースト状にされていたそれを塗り込んだアマゾンは次のシーンでは園児達のお遊戯に参加出来る程に回復していた。

 余談だが、この『仮面ライダーアマゾン』の前作、『仮面ライダーX 』の劇場版にて、怪人キャッティウスに襲われた立花藤兵衛がアイスピックでその目を突き刺して応戦したシーンがあった。この第10話でアマゾンがコンドラーで右目を突き刺したシーンはそれを彷彿とさせるものだが、何か関係があるのだろうか?

 全然関係ないが、道場主が小学生の頃、近所を「片目のジャック」とあだ名される黒い野良猫がうろついていた。ニックネーム通り、その片目を何者かに潰されていたのだが、昭和中期には黒猫と片眼に何か因果関係でもあったのだろうか?

 「ただの偶然。」である可能性が鬼のように高いのだが…………。

 ともあれ、黒ネコ獣人はこのまま十面鬼の元に帰る訳にはいかなかった。今度こそギギの腕輪持参で帰らないと命が無いのもそうだが、片眼を潰されて恨み骨髄になっていることもその一因だった。
 当然、彼は園の側に潜んでいた。しかもアマゾン達が興じていたのはかくれんぼ。これはもうゲドンに「襲って下さい。」と云っているに等しかった。程なく、藤兵衛が赤ジューシャの姿に気付いた。ただならぬ様子に「ゲドンって、何ですか?」と尋ねるシスターに、「恐ろしい奴等です!人間の敵です!」と説明する藤兵衛……………あのさあ、手負いの所を匿って貰ってるんだから、危険性ぐらい事前に話しとけよな!しかも僅か2話前に食う為に小学校を襲っているような連中なんだぞ………(呆)

 そんなシルバータイタンの難詰はさておき、すかさずりつ子が、園児達が皆居るかの確認をシスターに促した。するとカズオ君なる園児の姿が見当たらず、程なくカズオ君を抱える赤ジューシャの姿をりつ子が捉えた。
 まあ、多くの人々が推測可能だと思うが、これは完全にカズオ君が狙いではなく、アマゾンを誘き出す為の陽動である。案の定、篝火台に放置されたカズオ君を抱きかかえたところで足元から黒ネコ獣人が襲ってきた。
 最前の園での襲撃では場所が室内であることが災いしてか、黒ネコ獣人もその敏捷性・跳躍力を活かせないようだったが、今度は屋外だったので、緒戦同様跳躍混じりの攻撃を仕掛けて来た。

 さすがにカズオ君を庇いながらでは不利な戦いを強いられたアマゾンは緒戦同様体のあちこちに引っ掻き傷を負わされたが、薬草を塗り込んでいたためか、今度は毒爪の影響を受けた様子は無く、やがてカズオ君を逃がすことに成功するとアマゾンライダーに変身した。こうなるとさしもの黒ネコ獣人も敵ではなかった。
 ただ、それでも黒ネコ獣人はゲドン獣人の中でも善戦した方で、跳躍力を利した格闘ではそこそこアマゾンライダーと五分に渡り合った。しかしそれ以外では完全にアマゾンライダーに分があり、途中アマゾンライダーが膝蹴りを連発させると次第に劣勢に追いやられ、最後には大切断で首ちょんぱされて勝負は決したのだった。ちなみに大切断による断頭はこれが最初である。

 そしてラストシーン。平和を取り戻した園内でお遊戯する園児達の傍らでアマゾンがマサヒコに動揺を教わっているのを遠巻きに藤兵衛が見守ると云う平和の内に終了。ナレーションが最後に「毒の爪を持つ恐ろしい黒ネコ獣人は遂にアマゾンライダーの必殺技に倒された。だが、ゲドンの魔手は罪も無い子供達にまで伸びようとしてる。負けるなアマゾン、戦えアマゾンライダー!」と締め括っていたが、サブタイトルにもある保育園襲撃はアマゾン達が休息を求めたことに始まっているから、何とも複雑なものが在る。
 まあ、前話でりつ子との和解が成立し、純真な子供達も、敬虔なシスター達もアマゾンに全く偏見を持たず親切・親密にしていたから、この段階でのかかるツッコミは野暮かも知れない(苦笑)。
 ここは、アマゾンにもようやく偏見に害されていない温かい視線に恵まれるよう、ストーリー環境が進歩した、と受け止めるべきであろう。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新