仮面ライダーアマゾン全話解説
放映データ
- 製作/毎日放送・東映
- 全24話
- 1975年10月19日〜1976年3月29日
スタッフ
- 原作/石ノ森章太郎
- プロデューサー/平山亨、阿部征司
- 監督/塚田正熙、山田稔、内田一作、田口勝彦、折田至
- 脚本/大門勲、鈴木生朗、伊上勝、村山庄三、松岡清治
キャスト
アマゾン/仮面ライダーアマゾン(岡崎徹)、立花藤兵衛(小林昭二)、岡村マサヒコ(松田洋治)、岡村りつ子(松岡まりこ)、モグラ獣人(声:槐柳二)、十面鬼ゴルゴス(声:沢りつ夫)、ゼロ大帝 (中田博久)、全能の支配者 (声・阪侑)、ナレーター(納谷悟朗)
主題歌 |
オープニング | エンディング |
「アマゾンライダーここにあり」 | 「アマゾン、ダダダ!!」 |
作詞 | 石森章太郎 | 八手三郎 |
作曲 | 菊池俊輔 | 菊池俊輔 |
歌 | 子門真人 | 子門真人 |
仮面ライダーアマゾンについて
第一期仮面ライダーシリーズの第四作目。世界観としては過去作である『仮面ライダー』、『仮面ライダーV3』、『仮面ライダーX 』に続き、『仮面ライダーストロンガー』以降のライダー作品とも同一の世界であるが、第3話までは前作関係者は登場せず、悪の組織であるゲドン・ガランダー帝国も歴代悪の組織との関連が作中にて語られることは無かった(見方によっては、ガランダー帝国がすべての黒幕だったと云えなくもない)。
一般に本作は「原点回帰」を目指したものと云われている。
本来「異形のヒーロー」とされた仮面ライダーは原作にてその容姿も昆虫然として人間と大きくかけ離れ、宿敵であるショッカーの在り様もホラー色が強く、悪の組織による悲惨な犠牲も多かったが、この『仮面ライダーアマゾン』にはそのこだわりが強く、歴代仮面ライダーと単純比較をすると極めて異色でありながら、同時に原作な忠実な存在ともなっている。
当然、歴代ライダーと異なる点は多い。それまでの主人公達が大学生で、家庭的には不遇でも優秀な才能と愛情に恵まれた前半生を送って来たに対し、本作の主人公・アマゾンは幼少期に飛行機事故で両親を失い、自身も同事故の為に南米アマゾンのジャングルで野生児として育ったと云う、昭和ライダーシリーズに在って極めて稀有な前半生を過ごした。
野生児育ち故に当初は人語を解さず、暗示に従ってやって来た日本の大都会にカルチャーショックを受け、奇異の目を向ける人間達に拒絶反応を示し、何度もアマゾンに帰りたがった(実際に、すべてが解決した後にアマゾンに帰った)。
悪の組織であるゲドン・ガランダー帝国もかなり特異である。
歴代悪の組織が当代最新鋭の科学を組織の技術力としたのに対し、本作に出て来た組織は古代インカ帝国の超科学を武器としており、両組織が垂涎の的としたのは古代インカ超エネルギーを秘めたギギの腕輪とガガの腕輪で、それ以外にも改造技術・毒薬・破壊装置にも古代インカ超科学が活用され、現代科学が活用された気配は見られなかった。
殊にゲドンは、首領である十面鬼ゴルゴス自身古代インカ一族の裏切り者で、極めて利己的に古代インカ超科学の粋を欲したため、ゲドンによる悪行はピンポイントなものが多く、その行動範囲は地域限定的且つ、組織維持(食糧確保・機密保持)に根差したものが大半だった。
また、悪の組織らしい利己主義的且つ過剰な厳罰傾向がモグラ獣人と云う裏切者を生み、これがレギュラー化したのも前例のない、且つ稀有な例としてストーリーを特異なものとした。
続くガランダー帝国は、ゲドンほどにはギギの腕輪のみに固執せず、世界征服の先鞭的に破壊活動を幾つも目論んだが、事前に十面鬼のガガの腕輪を奪っており、これとギギの腕輪に固執したことが組織滅亡の遠因となった。
そんな両組織との戦い、アマゾンの大自然と大都会東京の文化的ギャップに苦しみつつも、アマゾンは自身のすべてを素直に受け止め、「トモダチ」とした岡村マサヒコとの友情を育みつつ、日本語や拳闘・バイク運転能力を身に着け、立花藤兵衛の支援を受けて自らを襲うゲドンの獣人達を返り討ちにし、ガランダー帝国のテロ行為を阻止して戦い続け、日本の平和を守りつつも自らのアイデンティティを崩すことは無かった。
令和6(2024)年2月3日現在、『仮面ライダーアマゾン』は昭和・平成・令和を通じて最も少ない全24話で完結しているが、周知の通りこれは放送局が変更した際の、世に云う「TV局の腸捻転」と呼ばれる事情によるもので、放映開始前から全24話なのは確定していて、決して人気が無かった訳ではなく、それどころか飾らない個性や、独特のアクションや在り様は根強い人気を持ち、歴代ライダーが勢揃いするとどうしても目立たないライダーが一人二人出て来るが、この仮面ライダーアマゾンが「目立たない」と云うことはあり得ない(笑)。
個人的な好みだが、シルバータイタンの中でも仮面ライダーアマゾンは好きなライダーとして常に上位に位置し、その血を引いたものか、道場主の妹とその二人の男児もアマゾンが好きである(妹は等身大アマゾン人形の前で、アマゾンの構えを取って満面の笑みで写真を撮っており、その横で当時3歳の次男坊がドン引きしていた(苦笑)。まあ当然その写真は公表出来ないが)。
「仮面ライダーアマゾン」主な登場人物
アマゾン/仮面ライダーアマゾン(岡崎徹)
本作の主人公。本名・山本大介(←作中でこの名はナレーション以外登場しない)。乳幼児の頃に南米アマゾン上空にて両親と搭乗していた飛行機が事故で墜落。両親と死に別れ、野生児としてアマゾンのジャングルで生き延びて来た。
十面鬼ゴルゴスの反乱を受けて部族滅亡の危機を迎えたインカの長老バゴーから古代インカの超科学の粋を込めた秘宝・ギギの腕輪を左腕に移植する改造手術を受け、これを託される。
今際の際のバゴーから日本に行く暗示を受け、帰国し、仮面ライダーアマゾンとなってギギの腕輪を狙うゲドン及びガランダー帝国と死闘を繰り広げる。
野生に育ったため、当初は人語を解さず、戦闘スタイルも噛む、引っ掻くといった野獣のそれだったが、ストーリーが進むにつれて日本語をマスターし、パンチやキックと云った格闘もマスター。
変身前でも獣人達とそこそこ戦えるだけの戦闘能力を有し、特にジャンプ力は昭和ライダーの中でも最高の40mに達し、上空から鰭状のアームカッターを駆使する大切断が必殺技。
来日直後は都会の文明への忌避反応や、自分に奇異の目を向ける人々の視線に耐えられず、同時に岡村りつ子からは自分がゲドンを日本に招いた張本人の様に云われたことに居た堪れず、アマゾンへの帰郷を渇望したこともしばしば。
そんな中、最初の「トモダチ」となった岡村マサヒコとの友情や、歴代仮面ライダーの師父・立花藤兵衛の励ましを受け、ゲドン・ガランダー帝国を滅ぼした後にアマゾンに凱旋帰国した。
立花藤兵衛(小林昭二)
第3話から登場。『仮面ライダーX 』完結後、本作における本職は不明。世界レーサーを育てる夢は今も健在どころか、本人もレーサーとして現役。第3話でレース中にカマキリ獣人に襲われているところを助けられたことでアマゾンと邂逅する。
当初、人語を解さず、バイクを毛嫌いするアマゾンが今までの仮面ライダー達と勝手が違うことに戸惑うことも多かったが、ジャングラーを製造したり、警察に捕まったアマゾンの身元引受人となったり、と歴代ライダー同様のサポートを本作でも為した。
岡村マサヒコ(松田洋二)
城南小学校二年生で、高坂教授の甥。日本におけるアマゾン最大の「トモダチ」。好奇心と友情の塊でアマゾンに日本語を教えた師ともなる。年齢の割に生意気なところもあるが、いざとなったら傍らの棍棒を手に獣人に立ち向かう勇気(無謀さ?)も持っている。
岡村りつ子(松岡まり子)
マサヒコの姉で、高坂教授の甥。本作におけるヒロインだが、アマゾンと交流することでゲドンとの事件に巻き込まれるマサヒコを案じる余り、自分達が危ない目に遭うのはアマゾンが日本に来たからだと詰っていたこともあって、当初の人気は低かった。
第9話でカニ獣人から助けられたことを機に心を開くようになり、それまで腰蓑一丁だったアマゾンに手製の上着を贈った。
モグラ獣人(声・槐柳二)
第5話より登場。ゲドンの獣人として十面鬼ゴルゴスにアマゾン抹殺・ギギの腕輪奪取を命じられるも、戦いに敗れたことで天日干しの処刑に曝されたところをアマゾンに助けられた。
当初は敵の情けを受けることに反発的だったり、裏切者に対する制裁の恐ろしさからアマゾンを裏切ってゲドンに帰参することを考えたりもしたが、なし崩し的とはいえ最終的にアマゾンの「トモダチ」となる。
戦闘は不得手の様で、同じゲドン獣人であるカニ獣人や獣人ヘビトンボに後れを取り、格上であるガランダーのキノコ獣人には手も足も出なかったが、モグラ特有の地中を潜行する能力を生かし、情報収集や人質救出などに活躍。
第20話で殺人カビを入手する為にキノコ獣人に接触した際に芝居を見破られ、致命傷を負わされるも、カビを持ち帰ったことで解毒剤精製に貢献した直後にアマゾン達に看取られて息を引き取った。
長老バゴー(明石潮)
南米アマゾンの密林奥深くに住まう古代インカ帝国の末裔一族の長老。弟子であった秘術師ゴルゴスの反逆に遇って、一族を滅ぼされ、自らも瀕死の重傷を負う。
古代インカ科学の粋を集めたギギの腕輪をアマゾンに移植する改造手術を施し、日本に行って高坂教授に会えとの暗示を与えて絶命。
十面鬼ゴルゴス(声・沢りつ夫)
ゲドンの首領。元はバゴー率いる古代インカ帝国末裔の一族で、バゴーの弟子たる秘術師だったが、古代インカ超科学の独占とそれを利用しての世界征服の野望に憑りつかれ、キーパーツの片割れであるガガの腕輪を自らの腕に移植・改造。9人の悪人の頭脳を埋め込んだ巨大人面岩を乗馬代わりにゲドンを率いてバゴー一族を滅ぼした。
その後、ギギの腕輪を託されたアマゾンが日本に向かった後、アマゾン抹殺・ギギの腕輪奪取を獣人達に命じる一方で、組織として人肉・人血を常食していたため、食糧確保のテロも数々起こした。
歴代悪の組織首領・大幹部と比べても残忍度が酷く、作戦に失敗したり、アマゾンに敗れて逃げ帰ってきたりした獣人達を次々残酷な方法で処刑し続けたためか、人望は欠片もなく、モグラ獣人・獣人ヘビトンボと云った裏切者も出た。
第14話で仮面ライダーアマゾンと裏切った獣人ヘビトンボとの戦いにてガガの腕輪を持つ右腕を斬り落とされたことで戦死した。
ゼロ大帝 (中田博久)
ガランダー帝国の帝王。パルティア王朝の末裔で、様々な光線を発するビームランスを得物としていた。ギギの腕輪に固執していた十面鬼とは異なり、世界征服に向けた大規模なテロ作戦を次々と敢行。
十面鬼同様残忍な首領で、部下の獣人や黒ジューシャ達を様々な失敗や敗北に対して処刑していたが、部下の行動を完全に把握する管理能力に優れていたものか、裏切者は出なかった。
最終回にてアジトにて仮面ライダーアマゾンと対戦し、敗色濃厚となってアジト内を駆けまわる中、アジト内の罠に自分が落ちて落命。
全能の支配者 (声:阪侑)
ガランダー帝国の首領にして、その正体は真のゼロ大帝。普段はゼロ大帝(影武者)のみに声を聞かせるだけの完全に隠れた存在で、本人の言によるとゲドンを初めとする悪の組織を裏で糸引いていたとのことで、この台詞を根拠に、ショッカーからGOD迄の悪の組織を裏で糸引いていたと推測する特撮ファンも多い。
K●K団の様な装束ととんがり帽子覆面を被っていたが、その下から出て来た姿は影武者のゼロ大帝と全く同じ物。最終回で仮面ライダーアマゾンに敗れたことでガランダー帝国は壊滅した。
悪の組織考・「仮面ライダーアマゾン」編
ゲドンとは
古代インカ帝国の末裔であるバゴー一族の秘術師ゴルゴスが一族を裏切って組織した暗黒結社。古代インカ超科学の力で世界征服を目論み、そのキーパーツであるガガの腕輪を入手したものの、ギギの腕輪はバゴーによって仮面ライダーアマゾンに託されたため、これを追って日本に上陸した。
「ゲドン」とは古代インカの言葉で「偉大なる悪の帝国」との意味を持つものらしく、最終的な目的は世界征服だったが、その為の力を得んとして、ギギの腕輪奪取及び食糧(人肉・人血)確保に固執していたため、歴代悪の組織に比べてその規模は矮小。
但し、その残忍さは決して歴代悪の組織に劣るものではなく、食糧・口封じの為に多くの人々が犠牲となった。その辺りは過去作「本当は怖いゲドン」も参考にして頂けると嬉しい(笑)。
十面鬼を首領として、その下に戦闘員兼諜報員である赤ジューシャ(全員女性)、科学者、獣人達がいるが、そのヒエラルキーは曖昧。赤ジューシャが獣人に命令したり、処刑に携わったりしていたことから、赤ジューシャの方が上位と見る声が多いが、トゲアリ獣人は赤ジューシャに尊大だった。またモグラ獣人の台詞から嫌な監視役と見られていた模様。
第12話のラストで初めてアマゾンと対峙した際に十面鬼はアジトや獣人はまだまだ数多く備えていると云って、組織力を誇示していたが、実際にはその翌週に出て来た獣人ヘビトンボが最後で、組織規模は決して大きくなかった。
ガランダー帝国とは
古代パルティア王朝の末裔で、現代において世界を統べる第二のパルティア帝国を建国せんとする秘密結社。ギギの腕輪に固執したゲドンとは異なり、破壊活動(主に東京壊滅)を主としたテロ作戦で世界征服に邁進し、その過程でアマゾンを討ち取ればギギの腕輪が手に入り、十面鬼戦死の際に奪取したガガの腕輪とで古代インカの超エネルギーが入手出来るとしていた。
戦闘員は全員男性の黒ジューシャで、諜報活動の多かった赤ジューシャよりは頻繁にアマゾンライダーと格闘し、戦闘員の悲哀を再現していた(笑)。黒ジューシャはその他にも作戦立案にも携わっていた者もいて、多方面に活動していたと思われるが、作戦が「面白くない。」との理由や、獣人に威を示す為だけの理由などで理不尽に処刑された者も少なくなく、赤ジューシャより悲惨な目に遭っていた。
黒ジューシャと獣人との関係ははっきり明示されていなかったが、獣人が作戦実行の陣頭指揮を執っていたり、アマゾン迎撃の号令を発していたりしたことから、従来の悪の組織における改造人間と戦闘員の関係に近いと思われる。
その獣人はゲドン獣人より格上であったことがキノコ獣人の台詞と戦闘から明らかにされている。
ゲドンを初めとする悪の組織を裏で糸引いていたとのことで、その中にショッカー・ゲルショッカー・デストロン・GODが含まれるか否かは明らかではないが、ガランダー帝国登場当初、モグラ獣人は黒ジューシャを見ただけで怯えていたので、ある種の存在感は持っていたと思われる。
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令和六(2024)年二月三日 最終更新