仮面ライダーアマゾン全話解説

第9話 ゆけアマゾン!カニ獣人の島へ!

監督:田口勝彦
脚本:伊上勝
カニ獣人登場
 冒頭、アマゾンは憎きゲドンを壊滅させんとしてそのアジトを探して方々を彷徨っていた。勿論簡単に見つかれば苦労は要らないし、放映が続かない(苦笑)。手掛かり無くして巧妙に世間から隠れたゲドンを探すのは雲を掴むような話だった。
 そしてその秘密アジトに潜伏する十面鬼は食事中(正確には吸血中)だったのだが、頗る不機嫌だった。早い話血がまずいと云うのである。どうも古今東西、食人や吸血を行う化け物にとって年寄りよりは若者、男よりは女の血肉が好まれるのがお約束の様で、若い女の生き血を求めるのは良いのだが、どうものその求めようがエロ親父のようだった(苦笑)。

 そんな十面鬼から「人攫いにはうってつけ」として召喚されたのが今回のカニ獣人である。このカニ獣人もまたカニをそのまんま巨大化させた容姿なのだが、任務を拝命しただけでなく、アマゾンを御前に引き据えると宣言した。
 頼みもしない内からアマゾンを生け捕ると宣言したことが余程気に入ったものか、十面鬼は成功の暁にはカニ獣人をゲドン獣人の最高位に据えると宣言し、カニ獣人は任せろと云わんばかりに、配下である人食い蟹や、毒泡攻撃を捕虜相手に誇示するのだった。

 場面は替わってとある郊外。そこではアマゾンとトモダチの印を交わしたマサヒコがラジオを持参し、情報収集手段として勧めていた。だが、小さな箱から声のする機械はアマゾンからすると新たなカルチャーショックだった。
 そのラジオからは連続少女誘拐事件が報じられ、「まさかゲドンの仕業では?」とマサヒコが訝しがっているその最中にアマゾンの耳に襲われている少女の悲鳴が聞こえてきた(マサヒコには聞こえなかった)。
 アマゾンは即座に悲鳴のする方向へ急行。マサヒコがそれを追うとそこにモグラ獣人が現れ、アマゾンが興味を示さなかったラジオを自分に貸せ、と促した。「モグラがラジオをどうすんのさ?」と訝しがり、「生きていくのに少しは社会勉強しなきゃ長生き出来んもんな。」と(一応は真剣に)答えるモグラ獣人に「馬鹿みたい!」とするマサヒコ。どうもまだまだ本当の意味での仲間にはなれていない様である。
 そのモグラ獣人も、アマゾンの行方を思うマサヒコに対して、「奴か?奴はゲドンのジューシャに捕まった女の子を助けに行ったんだよ。」と全くの他人事だった。まあなし崩し的にゲドンを裏切り、人間社会で生きていくことを決意したばかりの獣人に完全な正義感をいきなり求めるのは酷かもしれんが。

 その情報にゲドンの罠では?と訝しがるマサヒコだが、半分当っていた。
 少女を攫う赤ジューシャ二人組は当然アマゾンとまともに戦う訳がなかった。ショートテレポートを繰り返し、アマゾンをビルの屋上に誘導し、アマゾンが万能ベルト・コンドラーを前作のライドルロープの如く駆使して、ビルを登攀したりしてこれを追うと、ちょうどアマゾンがビルとビルの間をロープにぶら下がって渡っている最中にカニ獣人が現れ、ロープを切ってしまったのだった!
 幸い、切られたのは片方だけなのですぐにビルに張り付いて体勢を立て直し、程なくアマゾンはカニ獣人と対峙。カニらしく甲羅を初めとする外骨格の固さや長大な鋏を駆使した攻撃はそこそこ善戦していたが、体格的に背後を取られたり、転ばされたりすると弱かった。
 結局、アマゾンが少女救出を優先した為、命を落とさず済んだカニ獣人だったが、このままアジトに戻っては(言及されていた訳ではないが通例から云って)命はない。何としてもアマゾンを殺すと息巻くのだった。

 とは云え、まともに掛かって勝ち目はない。そんな強敵に勝つ定石は相手のウィーク・ポイントを突くことである。カニ獣人はラジオ放送に聞き入っていたモグラ獣人の首を挟むとこれを脅しに掛った。
 突如訪れた絶体絶命の危機に「これでもまだゲドン獣人の精神は忘れていないんだぜ…。」と口走るモグラ獣人。そんなカニ獣人に対して、自分の質問に答えれば十面鬼に帰参の執り成しをしても良い、として「アマゾンの弱点」を尋問した。
 所謂、硬軟両面という奴で、「無いんじゃないかなぁ?」と呟くモグラ獣人にその首を締め上げ、命が懸かっているのだから真剣に考えろ!と更なる脅迫で回答を捻り出すよう強要した。
 死への恐怖からマサヒコの存在を仄めかすモグラ獣人。「ヒーローの身近な人物」は格好のウィーク・ポイントなのだが、「ガキ」と聞いて、「ガキに用は無い!」と一喝するのだから、カニ獣人の思考も何処かぶっ飛んでいる(苦笑)。
 まあ、背景には当初の命令である少女誘拐も絡んでいるから、モグラ獣人が次善のターゲットとしてりつ子の存在を仄めかすと、「それだ!」と手を打ち、助命や執り成しの約束を反故にしてモグラ獣人を用済みとして殺さんとした。
 約束反故を詰るモグラ獣人カニ獣人が返したのは、「ゲドンに約束など無い!」…………死神博士やタイガーネロも発した定番台詞やね(苦笑)。

 結局、アマゾンが現れたと偽り、カニ獣人が気を取られた隙に穴倉に逃げ込むモグラ獣人。居もしないアマゾンの名を出して自分を謀ったことを詰るカニ獣人に、助命の約束を反故にして重要情報を騙し取ったことを詰るモグラ獣人はどっちもどっちと云えなくもなかったが、命惜しさとは云え、敵にとんでもない情報を伝えてしまったことに罪悪感を抱いていただけまだモグラ獣人の方が可愛げがあった。

 直後、再度アマゾンの行方を尋ねて戻って来たマサヒコに力なく詫びるモグラ獣人。当初はモグラ獣人がラジオーカニ獣人とのいざこざの渦中で壊れた―を壊したと思って、それを詰ったが、さすがにモグラ獣人が詫びている真意、姉が危ないと知ると顔色を変えてアマゾンの名を叫ぶのだった。

 その声を聞き付けてマサヒコの元に現れたアマゾンはマサヒコとモグラ獣人の二人からりつ子を守って欲しいと懇願されるとそれを快諾した。ただ、情報としてはカニ獣人がりつ子をアマゾンの弱点として狙っていることだけしか分からず、いつ何時何処に現れるかも分からない。恐らくアマゾンには護衛として張り付いていることぐらいしか思い浮かばなかったのだろう。
 だが、そんなアマゾンに対してりつ子は前話でアマゾンを庇ったことや、第5話で英雄気取りをしない人物と信じていたことや、折に触れて「ゲドンと戦えるのはアマゾンしかいない。」と述べていたのを「忘れた!」と云わんとしているかの如く、アマゾンに対して邪険に応対した。

 突如現れた腰蓑一丁男に連れである友人・フサ代(古屋エリ)が軽い悲鳴を上げると、いきなり「早速友達を脅かして何の用なの?アマゾン!」と塩対応。拙い日本語で護衛の遺志を継げると「守る?私を?止めて頂戴よ!私は何も悪いことなんてしてないわ!」…………チョットずれてるな、何も警察から身を守ろうというのではない(苦笑)。当然、アマゾンはゲドンのことを告げるのだが、それに対するりつ子の答えは、「ゲドン、ゲドンってもうたくさん!」………まあ、これは分からなくはない。悪の組織に怯え続ける日々なんて誰にとっても堪ったものでは無い。だが、それに続くりつ子の台詞が酷過ぎた。
「いいこと?ゲドンが日本に来たのは、貴方が日本に来たからなのよ。貴方がアマゾンに帰ればゲドンもいなくなるわ。日本から出てってよ!……………後に和解が成立するとはいえ、昭和のヒロインが発した台詞としては屈指の酷さであろう。第三者が聞いていてそう思うのだから、ナレーションが語るまでもなくアマゾンが傷ついたのは誰の目にも明らかだった。アマゾンの方では「トモダチ」であるマサヒコの姉であるりつ子もまた「トモダチ」だと思っていたから、その「トモダチ」にこんなことを云われては茫然として立ち去る背中を見送るしかなかった。

 直後のフサ代と連れ立って歩くりつ子との会話から、フサ代もまた第2話の正子同様アマゾンの存在を知っていたことが判明した。その会話から丸でアマゾンがゲドンを連れて来た様なりつ子の云い様は聞いていて不快だったが、状況として全くの間違いでもないから性質が悪かった。
 実際、アマゾンが離れたことでゲドンの魔手は迫り、赤ジューシャに尾行されている気配を何となく感じた二人は走って逃げようとしたところで(車のパンク修理を終えた直後の)藤兵衛と遭遇した。
 二人の顔色が悪いのを見て車で送ろうとした藤兵衛だったが、そこにカニ獣人が現れ、二人のうちどっちがりつ子か?と迫った。勿論藤兵衛が答える訳なく、傍らにあった木の枝を棍棒代わりに立ち向かったがさすがに相手にならず、ぶっ飛ばされて気絶。面倒だとばかりにカニ獣人はりつ子とフサ代の両方を拉致した。まあ、二人とも攫えばどっちかがりつ子であることに間違いは無いし、二人とも違ったとしても十面鬼の求める若い娘の生き血は得られるから、妥当な判断だとは云える。

 直後、アマゾンが現れ、藤兵衛からりつ子が攫われたと聞かされた。だが、最前そのりつ子から酷い罵声を浴びせられたアマゾンはショックが抜けておらず、「りつ子、アマゾン、嫌い…。」と云って腰を上げようとしなかったが、攫ったのがゲドンと聞かされるや即座に救出に向かった。
 りつ子とフサ代を連行してジープで逃げる赤ジューシャ達はボートに乗り継いで沖合の小島に向かった。その小島は人食いカニ島という、誰が何の由来でそんな名前を付けたのか?とツッコみたくなる、ストーリー準拠としか云い様の無いネーミングの島だったが、中間報告を受けた十面鬼カニ獣人のホームレンジとして期待し、冒頭での宣言通りにカニ獣人を獣人最高位に就けなくては、としていたので、かなり期待していたと思われる。

 そんな人食いカニ島にアマゾンは泳いで渡り、簡単に上陸を果たせたが、早速カニ獣人が現れ、気絶して柱に縛られているりつ子とフサ代を示した。その足元には人食い蟹が群れていて、カニ獣人は自分の指示があり次第二人は食い殺されるとしてアマゾンの動きを封じた。
 かかる状態では手出しもならず、「ギギの腕輪を寄越せ!」と襲い掛かるカニ獣人に逃げ惑うしかないアマゾンだった。そしてその鋏がアマゾンの首を捕えて尚、「手を出す、二人、死ぬ…。」と心で呟いていたが、いざギギの腕輪が奪われるとなると意を決したように仮面ライダーアマゾンに変身した。
 そして変身を遂げると、人質の存在はアマゾンライダーにもカニ獣人にも忘れられた状態となった(苦笑)

 アマゾンライダーは普通に攻撃を仕掛け、カニ獣人も何故か人質の存在に言及しなかった(←正直、こっちの方が不可解(苦笑))。上述通り、大きめの武器と堅牢な外骨格でそれなりに善戦するカニ獣人ではあったが、アクション的にもアマゾンライダーの方が一枚も二枚も上手だった。
 特殊能力である毒泡攻撃も発したが、ナレーションの「アマゾンにはカニ獣人の泡など通用しないのである。」の一言で片付けられた(笑)
 結局フットカッターで右の鋏を折られるやカニ獣人はその切断面から大量出血。更に二撃の大切断を受けてゲドン獣人の中でも一、二を争う大出血の果てに討ち死にし、赤い泡の中に呑まれたのだった。

 カニ獣人を討ち取ったアマゾンは人質の足元にいた人食い蟹を蹴散らし、まずフサ代を、次いでりつ子を解放した。さすがに自ら自分達を助けに来てくれたことにりつ子は素直に感謝した。その際にフサ代がアマゾンのことを「りつ子の云っていたような人じゃなかった。」としていたので、どうもりつ子は「ゲドンを引き連れてきてしまった。」という事実以外にも偏見混じりにアマゾンを悪く云っていた様だった。
 ともあれ、些か単純ではあるが、ここに岡村りつ子のアマゾンに対する嫌悪感は雲散霧消した。「ゲドン倒した…。」とだけ告げて、激情をぶつけるように海原に吠えていたアマゾンを見ていたりつ子はその夕暮れ、感謝の気持ちを込めて「日本の冬は寒いのよ。」と云って、以後アマゾンの定番コスチュームとなる上着をプレゼントした。
 シルバータイタンは過去作にて「寒さ対策ならせめて長袖をプレゼントしろよ。」と突っ込んでいたが、よく見りゃ、このときから二の腕を覆うアームカバーも装着していたからちゃんと寒さ対策は考えていたんだよな(苦笑&反省)。
 そんなアマゾンの様子を見て、「アマゾンだけが何故モテる?」とぼやくモグラ獣人だったが、これって、モテてるのか?

 ともあれ、アマゾンは上着に対し「嬉しい。」とし、ここにアマゾンとりつ子の完全和解が成立。この後のストーリーにて時としてマサヒコが攫われたり、怪我を追ったりしてもりつ子がアマゾンを悪く云うことは無かった。かくして一つの大団円を迎えて第9話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新