仮面ライダーアマゾン全話解説
第12話 見た!ゲドンの獣人改造室!!
監督:山田稔
脚本:伊上勝
トゲアリ獣人登場
冒頭、ススキが群生する原っぱをアマゾンがジャングラーを疾走させていた。それを遠巻きに見ながらアマゾンのライディングテクニックに満足していた藤兵衛は側に居たマサヒコに「オートレース・チャンピオンを育てる。」と云う本郷猛以来の夢をマサヒコに語っていた。
だが、藤兵衛よりもアマゾンの気持ちに敏感なマサヒコは、ゲドンを倒した後のアマゾンは南米のジャングルに帰ると推測し、藤兵衛の夢は叶うまい、と冷めた様子だった。
長年の夢を否定されてご機嫌斜めの藤兵衛だが、アマゾンのライディングを讃える言葉も、もう一周して欲しい旨も上手く伝わらず、マサヒコが云えばすぐに伝わったことに藤兵衛も心の繋がりではマサヒコに及ばないことを認めざるを得ないのだった。
マサヒコに促されてもう一周せんとするアマゾン。この「もう一周」の時に悪の組織に襲撃されるのはマスカーワールドの定番なのだが(笑)、この時はリスタート直前に起きた。
それもいきなり銃声と悲鳴が聞こえると云う物騒なもので、一人の男(中原正之)が幼女を小脇に抱えて、拳銃でもって抵抗しながら警察官から逃げていた。
悪態を突き、拳銃を発射させながら逃げる男を、数名の警察官、幼女の両親、若干名の野次馬が追い、当然それを座視しているアマゾン、藤兵衛、マサヒコではなかった。途中、男が強盗殺人犯で、幼女を人質にしていることを野次馬の一人から教えられる中、強盗犯はある建物の中に入り込むと幼女のこめかみに銃口を押し付け、それ以上追えば幼女を殺すと威嚇した。
こうなると下手に接近出来ないのだが、良くも悪くもそんな常識の通用しないアマゾンは警察官達の間隙を縫って、警官達が止めるのも聞かず潜入を試みた。そんなアマゾンを補佐する様に、強盗犯を説得してその注意を自分に向けさせる藤兵衛だが、強盗犯はすっかり興奮し、聞く耳を持たなかった。
そうこうする内にアマゾンはこっそり強盗犯に肉薄し、コンドラーを利したターザンキックから上手く強盗犯の手から拳銃を取り落とさせ、相手がこれを拾い上げるのを許さず、忽ちこれを叩きのめした(ま、当然の結果やね)。
強盗犯は程なく後から来た警察官によって逮捕され、パトカー内に連行され、幼女・ひろみも無事両親の元に返された。警官達は何事も無かったかのように強盗犯を連れて立ち去ったのだが、野次馬達の話によると警官達が駆け付けた時には犯人はのびていたとのことで、つまり警官達は潜入後のアマゾンを見ていなかった。
状況を不思議がる野次馬に得意気にアマゾンの手柄であることを話そうとした藤兵衛だったが、これはマサヒコの腹パンチで止められた。秘密にするのがアマゾンの願いとのことだったが、第5話でのことがトラウマになっていたのであろうか?
そしてそのアマゾンだが、一連の騒動を赤ジューシャ達が見ていたのを見つけ、またも悪巧みが為されるのを懸念するのだった。
勿論、悪巧みは実行された。強盗犯を護送する2台のパトカーの前にオートバイチームの赤ジューシャ二人が現れ、進路を塞ぐ彼女達に抗議の声を上げる警官達に催眠ガスが巻かれ、その場にいた全員が眠らされた。
警官達が次々に倒れるのを見て、これ幸い、とその場を逃れんとした強盗犯だったが、自身もガスを吸って昏倒(笑)。しかし、ゲドンの狙いは正にこの強盗犯確保で、赤ジューシャライダーは強盗犯をバイクに乗せたまま走り去った。
直後に先ほど赤ジューシャに気付いていたアマゾンが駆け付けたが、それを一人の赤ジューシャが迎撃。それに後れを取るアマゾンではなかったが、応戦している間にライダーチームには逃げられ、迎撃してきた赤ジューシャを生け捕りにしたのみだった。
場面は替わってゲドンアジト。
そこに先程の強盗犯が警察官ならぬ赤ジューシャ達によって十面鬼の前に連行されてきた。強盗犯は十面鬼や赤ジューシャと云った異形異装に取り囲まれ、自分が悪夢を見ているのか?地獄に来たのか?と戸惑いを隠せない様子ながら、尚も抵抗する姿勢を見せていた。
そんな凶悪犯を拉致してきたゲドンの目的はスカウトだった。十面鬼の言によると、拉致してきた強盗犯は村田源次という名で、前科10犯。次捕まれば死刑は間違いないと云うものだった。
そんな自分の悪行・罪状を突き付けられて「覚悟は出来ているぜ。」と虚勢を張る村田を十面鬼はゲドンの獣人に改造するのに相応しい人材として、気に入った旨を述べた。
十面鬼は村田に死刑になるか、ゲドンの獣人となって思う存分悪事を働くかの二者択一を迫った。まあ、どう答えても自分達のしたいようにしたとは思うが(苦笑)。問われた村田は、最前死刑に対する覚悟は出来ているとしたものの、本音では「死刑何て真っ平(御免)だ。」とのことで、弱気を見せたくはないが、逃れられるものなら逃れたいと云うのが本音だった。
しかも生への執着はかなり強いようで、「ゲドンの獣人」が何のことか分からずとも、「死刑よりはマシ。」として十面鬼が宣告したトゲアリ獣人への改造手術を受け入れたのだった。
かくしてサブタイトル通りにゲドンの獣人改造室が最初で最後のお披露目となった。培養液の様な物に付け込まれる前のパンツ一丁の村田の顔面には隈取とも、手術痕ともつかぬ文様が見られ、原作『仮面ライダー』を彷彿とさせた。そもそもライダー達が仮面を被るのは、悪への怒りと共に顔面に浮かび上がる手術痕を隠すのが目的で、これも原点回帰だろうか?
次いで、首から下を既に獣人とされていた村田の頭部に元の脳髄が埋め込まれようとし、レントゲン写真の中で骨とトゲアリを融合させるような描写が展開された。そんな手術を執刀したのは赤ジューシャ達と同じアイマスクに白衣を纏った男達で、これまたこの第12話が最初で最後の出番だった。
その手術中、アマゾンは捕らえた赤ジューシャを縛り上げ、薪を拾い集めていた。それを見掛けたモグラ獣人は「焼いて食べるつもりだな。」と解釈し、自分も薪拾いを手伝ってご相伴に預かろうとした。ということは、こいつも人肉を食ったことがあると云うことなんだろうな、余り想像したくないが(苦笑)。
これまでの展開からも見ていていたことだが、改めて赤ジューシャが獣人達の監視役で、何かあるとすぐに十面鬼に密告する、何とも獣人達にとってうざい存在であることが述べられた。まあ、監視役が嫌われるのは世の常ではある。
勿論、アマゾンの目的は食べる事ではない(苦笑)。頃合いを見てわざと赤ジューシャを逃がし、それを尾行することでゲドンのアジトを突き止め、十面鬼を倒すことが目的だった。そんなアマゾンの決意を賞賛しつつも、十面鬼が恐ろしい存在であることを忠告するモグラ獣人。成程、最終決戦が徐々に迫りつつあることへの伏線と云う訳やね。
そして場面は替わってゲドンアジト。
村田をトゲアリ獣人に改造する手術が終わったことが十面鬼に報告され、その成果を披露するかのように簡単な模擬戦闘が行われた。十面鬼はトゲアリ獣人の素体となっていた村田源次を選んだことに相当期待していたようで、早速トゲアリ獣人に捕らわれの身となっているジューシャの奪還と、アマゾン抹殺、ギギの腕輪強奪を命じた。
任務失敗した獣人には容赦のない十面鬼が、捕らえられた赤ジューシャの救出を命じていたのは、改めて赤ジューシャが歴代悪の組織の戦闘員とはかなり趣の異なる存在であることが伺えて興味深かった。
そして命令を受けたトゲアリ獣人はそれらを快諾して出撃した。尚、この後二度と元の素体である村田の姿が出ることはなく、自分の逮捕に関わったアマゾンへの怨みよりも、「相手にとって不足無し」という戦意を示し、傲岸不遜だったのが「十面鬼様」と呼んでいたことからも、元の村田源次としての個人は抹消されている様子だった(元の村田のキャラクターを活かすなら、トゲアリ獣人のCVを市川治氏が担うのはミスマッチであろう)。
場面は替わって、赤ジューシャが縛られている広場。そこにマサヒコとりつ子がアマゾンを尋ねてやって来た。だが、そこにいたのは縛られている赤ジューシャとも見張りのモグラ獣人だけで、アマゾンの姿は無かった。
当然岡村姉弟はモグラ獣人にアマゾンの居所を尋ねるのだが、モグラ獣人の回答は要領を得ないまま、二人に見張り交代を一方的に告げて土中に姿を消してしまった。そんなモグラ獣人の無責任振りに呆れつつも、なし崩し的に赤ジューシャ監視を引き受けた姉弟。
そんな二人に赤ジューシャは水を飲ませて欲しいとせがみ、りつ子が水を汲むべくその場を離れると、今度はマサヒコに苦しいから縄を緩めて欲しい、と懇願した。勿論、かかる懇願には『三国志演義』で曹操が呂布に告げた様に―「虎を縛るのに緩めれるものか。」―であるべきなのだが(笑)、さすがにマサヒコはそこまで非情になれなかった。
案の定、マサヒコが縄を緩めた途端に振り解いて赤ジューシャは逃走に掛かった。立腹してそれに追いすがらんとしたマサヒコだったが、それを止めたのは誰あろう姿を見せていなかったアマゾンその人だった。
つまり赤ジューシャにゲドンアジトへの道案内を担わせる為にも、本当に「脱出に成功した!と思わせる必要があった訳で、ある意味、マサヒコはアマゾンの期待通りに動いた暮れた訳で、「心配ない。」と告げると単身赤ジューシャを尾行・追跡した。
やがてアジト近くまで来た赤ジューシャの前にトゲアリ獣人が現れた。その姿を見て、初対面の筈なのにトゲアリ獣人の名を口にする赤ジューシャがステキ(笑)。そんな赤ジューシャに「よく逃げられたな?」と投げ掛けたトゲアリ獣人だったが、勿論これは皮肉である。
だが、それが皮肉と気付かない赤ジューシャは得意気にアマゾンの居ない隙を突いたと述べたのだったが、トゲアリ獣人はアマゾンの意図を完全に読んでいて、わざと逃がされたことに気付いていない彼女を馬鹿者として罵った。
てっきり自力で逃げおおせたと思っていた赤ジューシャは、お釈迦様の掌の上の孫悟空状態だったと告げられて狼狽。トゲアリ獣人は自分の論を証明する様に体の棘を一本抜くとそれを投げ、その先には投げられた棘を受け止めたアマゾンがいた。
そんなアマゾンに「自分から出向いてくるとは良い度胸だ!」と云い放ったトゲアリ獣人は口から蟻酸を吐いて襲い掛かって来た。岩肌に当たるや発火・炎上するとは随分珍しい蟻酸である(笑)。
その蟻酸攻撃に翻弄されたアマゾンは高所から転落。そのせいか動きに精彩を欠き、格闘はトゲアリ獣人優勢に進む中、両者格闘の間隙を縫って高所から赤ジューシャが岩を落とし、その下敷きにされたアマゾンは気絶してしまったのだった。
そのアマゾンを前にして、「見たか、俺の力を!」と吠えるトゲアリ獣人………否、赤ジューシャの機転でしょうが(苦笑)。
ともあれ、トゲアリ獣人はアマゾンを連行して十面鬼の面前に戻って来た。
これにはさすがに十面鬼も御満悦で、遂にギギの腕輪とガガの腕輪が一つになり、これにてゲドンが世界を征服する夢が現実味を帯びてきたことを受け、顔の一つがトゲアリ獣人を「ゲドンの誇り」と褒め称え、ギギの腕輪取り外しを命じた。
だが、多くの視聴者が読んでいたと思うが、気絶はアマゾンの擬態で、ギギの腕輪を取らんとしたトゲアリ獣人と赤ジューシャを振り払うと初めて至近距離で対峙した十面鬼ゴルゴスに「ガガの腕輪を取る!」と宣した。
これに対してアマゾンが生きていることで十面鬼がトゲアリ獣人を叱責すると思いきや、アジト内に単身乗り込んだアマゾンを生きては帰れんと罵り、トゲアリ獣人と赤ジューシャ達に包囲されたアマゾンに巨岩口腔部から発火性の赤い粘液を吐いてアマゾンに襲い掛かった。
炎にたじろぎながらもアマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身。それに対して十面鬼はアマゾンライダーに「そこで死ね。」と宣して天井部の大穴から上空に脱し、入れ替わりに無数の落石がアマゾンライダーを襲った。
勿論こんな攻撃で仮面ライダーが死ぬ筈もなく(笑)、やがてアマゾンライダーが基地外に出て来たのだが、そこは巨大な石仏の上で、どう見ても『仮面ライダーX 』第16話で再生した直後のアポロガイストと神敬介が対峙したの同じ場所だった。GODアポロン宮殿の跡地を十面鬼が再利用……………な、訳ないか(苦笑)。
ともあれ、地上にはトゲアリ獣人が待ち構えており、「殺してやる!」と息巻いていた。かくして仮面ライダーアマゾンVSトゲアリ獣人の最終決戦が刊行された。
恐らくトゲアリ獣人はゲドン獣人の中にあっては強い方だとは思われる。元の人間・村田源次であったときの素体からして十面鬼から期待されていたが、どうも期待されていたのは能力よりも悪魔的な人格への比重の方が大きかったようで、やはり全体として戦闘能力はアマゾンライダーに劣っていたようである。
簡単にやられた訳ではないし、体術的にもそこそこ善戦していたが、何故か緒戦で多用しまくった蟻酸攻撃を行わず、特に足首への回し蹴り(プロレスどいうところのアース・クリップ・キック)を食らった際には何度も転ばされていた。
結局頚部に大切断を受け、鼬の最後っ屁的に蟻酸を噴出させ、それが終わると頭部が転げ落ちて最期を遂げたのだった。
直後、上空に高笑いしながら十面鬼が現れた。
十面鬼はアマゾンライダーに、「ゲドンの獣人はまだまだおるわ!」とゴルゴスが云ったのを皮切りに他の顔達も、「今日の所は見逃してやる」、「ゲドンは不死身だ!」、「アジトはまだまだあるのだ!」と口々に云いたいこと云っていたが、これらの言が単なる虚勢であることはゲドン編がこの後2話で終わることからも明らかである(笑)。
そしてラストシーン。
空に数々の凧が舞う広場で、アマゾンとマサヒコが新年の挨拶を交わしていた。その挨拶がどうもちぐはぐなことに業を煮やしたマサヒコはアマゾンに日本語を教える教師になると宣言。児童書を手に字を覚えることから練習する二人の元に振り袖姿のりつ子が現れると云う一種のファンサービスを見せて、第12話は終結したのだた。
次話へ進む
前話へ戻る
『仮面ライダーアマゾン全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る
令和六(2024)年二月三日 最終更新