仮面ライダーアマゾン全話解説

第13話 迫る!十面鬼!危うしアマゾン!!

監督:塚田正煕
脚本:伊上勝
獣人ヘビトンボ(幼虫)登場
 冒頭、郊外の道を走っていた立花藤兵衛の愛車・スズキのジムニーがエンコした。歴代悪の組織と戦う修羅場を何度も藤兵衛と共に走り抜けて来たことを思えば、寿命を向けていてもおかしくない気はした(結局、『仮面ライダーストロンガー』最終回まで藤兵衛の足であり続けた)。
 とにかく、ボンネットを開けつつ故障が頻繁であることをぼやく藤兵衛の背後から、「藤兵衛さん、困っているね。手伝おうか?」との声が掛った。「それは有り難い。」と云いつつ振り返った藤兵衛の視線の先にいたのはアマゾン。
 アマゾンが話す筈ない、と訝しがる藤兵衛だったが、声の主は間違いなくアマゾンで、日本語をマスターしたアマゾンに驚く藤兵衛にどや顔で出て来たマサヒコが、「僕がアマゾンに特訓したのさ。」と胸を張った。
 まあ、フィクション故、「喋れるようになりました。」の一言で片付けられると云えばそれまでだが、実際に人語を解さなかった野生児に短期間で会話をマスターさせたのだとすれば、マサヒコはもっと威張って良いと思う。

 マサヒコに云わせると、「元々アマゾンは頭が良い。」とのことで、マスターも早かったとのことだった。まあ、本郷猛以来、歴代仮面ライダーは文武両道で、アマゾンの実父も大学教授だったから、素質は高くてもおかしくない。
 少々個人的な愚痴が混じるが、うちの道場主は、本当に頭のいい人間−所謂天才−は脳の質そのものが人より優れているのではないか?と思っている。世の中に「勉強は出来るが、運動は丸で駄目。」という人間はごまんと存在するが、道場主が「(資質・素質からして)本当に頭が良い。」と考える人間は大抵文武両道に優れている。
 実際、大学時代、体育会に所属していた道場主は一部リーグには旧帝大系の大学が名を連ねていたイメージが強い。勿論どこの大学にも青ビョウタンはいたと思うが、天才肌ではない故に、運動を初めとするすべてを排してがり勉に努めた人間がそうなる傾向にあり、本当に優れた人間(と云うと語弊があるが)は勉強以外の部活や趣味に充分時間を使いつつも一流大学に行けていた気がする。選手として優れていた人間に成績悪い奴いなかったもんなあ…………その点、うちの道場主は三流選手で終わり、卒業時の成績も然程優れていた訳でもなかったもんなぁ………。

 閑話休題。個人的な愚痴は置いておいて、アマゾンが日本語をマスターしたことで対ゲドン戦が優位になることをほくそ笑む藤兵衛とマサヒコだったが、その喜びを打ち消すかのようにりつ子が緊急事態を告げて来た。
 百合ヶ丘上空に怪物が現れ、大勢の人々が溶かされたと云うのである。

 そんな怪事件を知らされれば、風が吹いただけでも悪の組織の仕業にされかねない特撮番組のお約束(笑)で、ゲドンの仕業に違いないと一同は断じ、アマゾンは即座にジャングラーで百合ヶ丘に急行。藤兵衛とマサヒコもこれに続いた。ちなみにエンジンのかからなかったジープは業を煮やした藤兵衛が蹴りを入れたことで発動。これもお約束だな(笑)。

 場面は替わって百合ヶ丘。現地で人々を襲っていたのは獣人ならぬ十面鬼ゴルゴスその人(?)だった。相変わらず上空を飛ぶ度に高笑いするコイツの姿は百合ヶ丘駅前を中心に多くの人々が目撃・戦慄していた。ここまで来るとどうでも良いが、最初の数話あれほど組織の存在を隠すことに躍起になっていたのは何だったのやら(苦笑)
 とは云え、現れた十面鬼の目的は示威行動を兼ねた殺戮だったから、目撃していた人々にとってはとんでも無い恐怖且つ、滅茶苦茶な災難だった。巨岩口腔部から発せられた白泡に塗れた多くの人々が、りつ子の云っていたように溶けて殺されたのだから、とんでもない話だった。
 そこへアマゾンが駆け付けた訳だが、十面鬼に云わせると一連の襲撃自体がアマゾンを誘き寄せる為の罠とのことで、それを告げられたアマゾンはアマゾンで、それを知っていながら追って来たとのことだった。まあ、どっちにしても直後に行われたのは単純戦闘だったので、罠の有無はどうでも良かった(苦笑)。
 今日こそアマゾンを殺してギギの腕輪を奪う、と息巻く十面鬼は巨岩口腔部より銃撃を敢行。内蔵火器が機関銃かバズーカははっきりとしなかったが、周囲に次々と上がる爆炎の中から仮面ライダーアマゾンが登場した。
 これに対して十面鬼は「ブラック・オン・ゴールド!」と叫ぶと周囲は闇に包まれ、巨岩による体当たりと銃撃でアマゾンライダーへの攻撃を仕掛けたが、特に功を奏するでもなく、逆にアマゾンの方が大切断で顔の一つを縦一文字に切り裂いた。

 この攻撃を受けた「顔」は死亡して、忽ち石化した。これは十面鬼にとって心身ともに相当なダメージを与えたらしく、物凄く狼狽えると戦意喪失し、そのまま空を飛んで撤収したのだった。
 それを見届けたアマゾンも撤収しようとしたのだが、そこへライフルによる狙撃がアマゾンを襲った。勿論当たる筈もなく(苦笑)、アマゾンは忽ち狙撃手である若い女性(戸島一実)を取り押さえた。
 曲がりなりにも撃たれた訳だから、その腕を捩じり上げつつ、何故自分を狙うのか?と詰問するアマゾンに対し、女は父親の仇として狙った返した。「アマゾン、誰も殺さない!」と殺人を否定するが、十面鬼に父を殺されたとする彼女はその言を信じなかった。
 まあ、異形の存在をすべてゲドンと見做していればそう凝り固まるのも分からなくはないが、そこに藤兵衛とマサヒコが現れてアマゾンの云っていることが事実で、自分達はゲドンと戦っている者だと釈明したことで、女は自分の誤解を認めて謝罪し、アマゾンもそれを受け入れた。

 謝罪とその受け入れをもって解決として引き上げようとした三人だったが、そこに女が待ったを掛けた。自分も一緒に闘わせて欲しいと云うのである。
 悪の組織と戦うことの恐ろしさを良く知る藤兵衛は反対し、アマゾンも同じ理由で藤兵衛に賛成したが、彼女は仲間にしてもらえなくても一人でも戦うと宣う。これを聞いたアマゾンは、「一人で戦うの、もっと危ない。」としてやむなく彼女を仲間に加えることに藤兵衛とマサヒコも同意し、仲間兼友達となったことに感謝した女は名古屋美里と名乗ったのだった。
 ちなみにこの美里を演じた戸島一実さんは過去に『仮面ライダーV3』の第49話にも客演しており、その時には都会デビューに憧れる余り、デストロンの還元に乗ってその手先となってしまう少しおバカな少女役だったが、この第13話では親の仇討ちに燃える女戦士を演じていた訳で、キャストとして調べるまで同じ人物であることにシルバータイタンは全く気付かなかった。それだけ彼女の演技力が高いのだろう。

 ともあれ、仲間となった一行はとある山小屋で善後策を練っていた。小屋の中でアマゾンと藤兵衛が焚火を焚き、マサヒコと美里が薪拾いに出ていたのだが、アマゾンは十面鬼の顔の一つを殺したことを藤兵衛に告げ、十面鬼は遠くに行けないと述べていた。何を根拠にそう判断したのか全く分からないが(苦笑)、藤兵衛は逆に十面鬼が遠くに行けないことで薪拾いに出ているマサヒコと美里の身を案じ、二人して山小屋を出た。

 アマゾンと藤兵衛が危惧した様に、二人はゲドンの襲撃を受けていた。ただ、二人を襲ったのは十面鬼ではなく、獣人ヘビトンボだった。獣人と出くわしたマサヒコと美里が発した助けを求める声を即座に聞き付け、急行したアマゾンだったが、その前に勇敢と云おうか、無謀と云おうか棒一本を手に「此畜生!」を連呼しながら立ち向かったマサヒコは獣人ヘビトンボの攻撃を受けて負傷した。
 直後に到着したアマゾンは藤兵衛にマサヒコと美里の避難誘導を依頼し、そのまま獣人ヘビトンボとの格闘に入ったが、ゲドン最後の獣人(とこの時点ではまだ明らかにされていなかったが)なだけあってそれなりに強い様で、変身前のアマゾンに対しては優位に格闘を進め、アマゾンも不意打ちで援護射撃してくれたモグラ獣人に助けられる形でその場を逃れたのだった。

 場面は替わって上述の山小屋。マサヒコを運んで一同は引き揚げて来た訳で、意識ははっきりしているものの、マサヒコはあっきらかに病院搬送が必要だった。
 一先ずマサヒコは藤兵衛が病院に連れいていくことになり、アマゾンと美里と後から来たモグラ獣人がまだ周囲に潜伏しているであろうゲドンを懸念して残る形となった。
 途中ジープに乗るまでの間に藤兵衛とマサヒコがゲドンに襲われることを警戒して、アマゾンがジープまで送っていくこととなったのだが、「アマゾン、気を付けてね。」と声を掛ける美里に例によって、アマゾンばかりが女性に愛想よくされることにモグラ獣人がふてたのだが、それに対してアマゾンが美里の代わりに(笑)、「モグラさん、気を付けて。」と愛想を振った。
 それを見て、「こりゃあいい(笑)。」と笑う藤兵衛。日本語会話が可能になるとこんなシーンも描かれると云う訳なんだな、あのアマゾンが冗談を飛ばす様になったのだから(笑)。

 ともあれ、ジープまで無事に藤兵衛とマサヒコを送って行ったアマゾンだったが、ゲドンの魔手は山小屋の方に向かっていた。
 小屋の中では焚火を前に美里とモグラ獣人がよもやま話をしていて、父を亡くして苦労した美里が今は仲間がいることを喜び、その仲間に自分もカウントされていることに喜ぶモグラ獣人だったが、その喜びを打ち消す様に獣人ヘビトンボが乱入してきた。
 少々ビビりもっても、自分を仲間としてくれた美里の為に体を張るモグラ獣人だったが、変身前とは云えアマゾン相手に優勢に戦いを進める獣人ヘビトンボに全くと云って良い程抗し得ず、気絶に追いやられ、美里は拉致された。

 直後、美里の悲鳴を聞き付けたアマゾンが山小屋に戻り、モグラ獣人を介抱しながら何が起きたかを尋ねた。モグラ獣人は起きたまんまを話し、疑われてもいないのに自分が美里を守って必死に獣人ヘビトンボと戦ったことを信じて欲しいと訴えた。余程仲間として見られたのが嬉しかったんだろうな。後々モグラ獣人が人間体を見せることなく最期を遂げることを知っている身としては、この必死さにもある種の悲しみを感じるのであった。

 ともあれ、まだ遠くに行っていないと推測したアマゾンは獣人ヘビトンボを追う、とし、それに対してモグラ獣人は「美里さんを助けるんじゃないのか?」との疑問を呈した。獣人ヘビトンボは美里を拉致したのだから、「獣人ヘビトンボを追う。」=「美里を助ける。」で良いと思うのだが…………まあ、伏線だな(笑)。
 やがて、アマゾンは美里を担いで移動している獣人ヘビトンボに追いついた。
 アマゾンの目論見は獣人ヘビトンボを尾行してゲドンのアジトを突き止めることにあったが、獣人ヘビトンボはそれを読んでおり、尾行にも察知して、美里を下ろすとアマゾンに出て来るよう呼び掛けた。
 姿を現し、「アジトを教えてはくれないのか?」と宣うアマゾン。冗談に続き皮肉も云うようになったのだから、会話が流暢になると性格も若干変わるのだろうか?
 勿論それを阻止する為に立ち止まった獣人ヘビトンボが教えてくれる筈もなく(苦笑)、美里の命をたてにギギの腕輪を寄越せ、と迫った。

 こういう人質を利用した脅迫に対して、「私に構わず戦って。」はお約束で(笑)、美里もそう述べたのだが、それに対するアマゾンの回答は、「アマゾン、戦う。」だった。驚いた獣人ヘビトンボが当然の様に、人質がどうなっても良いのか?と問うたが、それに対するアマゾンの回答は、「ゲドンのジューシャの命、アマゾン、知らん。」だった。
 そう、美里は赤ジューシャだったのである。アマゾンは山小屋にてモグラ獣人と顔を合わせた瞬間に美里が怖がらなかったことから、その時から美里の素性を疑っていた。
 バレちゃあしょうがない的に正体を見せた美里は少しアマゾンと格闘するとそのまま姿を消し、直後にアマゾンと獣人ヘビトンボとの一騎打ちとなった。

 緒戦同様、変身前のアマゾン相手なら互角以上に渡り合える獣人ヘビトンボ。さすがにこれに対してはしばしの格闘後、アマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身した。何度か述べたが、こうなると基本、ゲドン獣人はアマゾンライダーの敵ではない。さしもの獣人ヘビトンボも程なく大切断2発を食らって両腕をすっ飛ばされた。
 ほぼ戦闘不能に陥った獣人ヘビトンボを押し倒し、その首を締め上げてアジトの在り処を吐かそうとするアマゾンライダー。だが獣人ヘビトンボはそれを拒み、やがて口から青白い泡を吹き始めた。

 カマキリ獣人の最期を彷彿とさせるような姿だったが、これは攻撃でもなければ、自害でもなかった。やがて泡は獣人ヘビトンボの全身を包み、蛹状態となった(怪人図鑑などでは、トンボはトンボでもヤゴに等しい容姿であるこの第13話の獣人ヘビトンボは「獣人ヘビトンボ (幼虫)」と紹介されることが多い)。
 そして蛹状態の獣人ヘビトンボは断崖を転げ落ち、その行く手に気を取られたアマゾンライダーの隙を突く様に暗転した上空から十面鬼が襲来。巨岩口腔部から機銃(の様なもの)を照射しながら迫って来た十面鬼はやがてアマゾンライダーを巨岩の下敷きにし、これまでに無い危機を迎えたところで第13話は終結し、第14話に続くのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新