仮面ライダーアマゾン全話解説
第15話 出たぞ!恐怖のゼロ大帝!!
監督:内田一作
脚本:伊上勝
ハチ獣人登場
冒頭、とある河川近くの公園で事件は起きた。公園で遊んでいた子供達が白い煙に巻かれたかと思うと、その煙は催眠ガスで子供達は忽ち昏倒し、黒ジューシャ達に連れ去られた。ちなみに子供達を連れ去った自動車はこの後何度も登場するガランダー帝国御用達の車両なのだが、黒いボディに黄色い斑が彩られていて、はっきり云って、趣味が良いとは云えない(苦笑)。
まあ、シルバータイタンのセンスは置いておいて、子供達が正に連れ去られようとするとき、それを一人の青年が目撃し、青年は果敢にも拉致を止めようとしたが、最後尾にいた黒ジューシャに叩きのめされた。
「目撃者は消せ。」が基本方針である悪の組織にしてはとどめも刺さず、青年はすぐに起き上がったので、甘い組織かな?と思いかけたが、すぐに公衆電話から110番通報をしようとしたところをハチ獣人が襲い掛かった。
哀れ、青年はハチ獣人が口吻から放った長大な針を喉に受けて殺され、その上顔面が白い粘液に覆われたかと思うとやがて粘液は発火し、青年はまともな遺体すら残らなかった。恐らくはゲドンに劣らぬガランダー帝国の残忍性を初っ端で見せる為の者だろうけれど、この間110番通報は繋がりっぱなしだったので、やはり組織としての詰めは甘いようだった(苦笑)。
小山の中腹にアジトを構えるハチ獣人は黒ジューシャ達に拉致してきた子供達を運ぶよう命じた(その際、彼はアジトを「巣箱」と呼んでいた)。獣人とジューシャの関係において、ゲドンでは獣人達の監視役が主だったが、このガランダー帝国では歴代悪の組織の改造人間と戦闘員のそれに戻っており、早くも獣人の指示を受けて黒ジューシャが駒として動かされていた。戦闘員の優遇時代は短かったな(苦笑)。
ともあれ、ガランダー帝国の活動は着々と進んでいる様で、既に十数名の子供達が洗脳された様子で隈取と口にハチ獣人と同様の大針を加え、全身タイツを纏っていた。これに対し、ハチ獣人はもっと多くの子供を集めるよう黒ジューシャ達に命じていた。ゲドンはアマゾンの持つギギの腕輪奪取に執着する余り、食糧としての人間狩りや目撃者の口封じ以外には余り殺人を初めとするテロ行為を行っておらず、手段が目的と化していたことでかなりスケールの小さい組織となっていたが、それとは対照的にガランダー帝国は世界征服を優先し、手段となり得る腕輪奪取は副次的なものとしている分、テロ組織としてはゲドンより数段恐ろしい組織で、その片鱗を初っ端で披露したシーンと云えた。
実際、拉致された子供の数の数倍の人々人が悲しんでいると思うとその脅威は段違いである。
直後、ハチ獣人は経過報告の為ゼロ大帝に拝謁していたのだが、報告を受けたゼロ大帝はハチ獣人の成果近況に満足していると述べつつ、くれぐれも滅びたゲドンの二の舞を避けるよう告げ、組織の目的はあくまで世界征服であるとして、ギギの腕輪に固執していた十面鬼を批判。ハチ獣人もこれに同意し、自分達の行動を「ギギとガガの争いにあらず。」とし、すべての人間をガランダー帝国の支配下に置く為に現在の行動を続ける旨を誓った……………物凄く気の長い話だ(笑)。
場面は替わって冒頭で青年が惨殺された電話ボックス。そこでは警察による現場検証が行われていたのだが、人型に白粘液の焼け焦げた跡が残されていた。
遺体の見つかった状況を残す為に遺体の周囲を白墨や白テープで象るように線引きする描写・シーンは過去の報道や刑事ドラマではよく見かけた。個人的感傷だが、昭和47(1972)年のあさま山荘事件の後に発覚した山岳ベースリンチ殺人事件の遺体発見現場で複数の遺体を象る白線と献花・線香の写真を見た時、遺体の痕跡が複数あるのを示す様に妙な旋律を覚えたのを昨日のことのように覚えている。
実際に凄惨なリンチで殺された遺体が複数並んでいるシーンを見た方がよっぽどトラウマになると思うし、原爆投下や空襲後の写真で幾つもの焼死体が並んでいる写真は何度も見ているのだが、直接じゃない分、余計に想像が恐怖を増幅し、駆り立てるのだろうか?
ともあれ、現場を通りがかった藤兵衛は、「110番通報した男が溶けた。」と野次馬に効かされ、怪訝に思った。ほんの数日前ならかかる不可解な事件に対して即座に「ゲドンの仕業か?」となるところだが、ゲドンは既に滅んでいる。
だが、藤兵衛からこのことを聞いたアマゾンはすぐに新しい組織の仕業と断じた。ゲドンに居ない黒いジューシャを目の当たりにし、ガガの腕輪も黒ジューシャに持ち去られて行方不明な状態では不安を抱かない方がおかしい。
この時点で初めてゲドンに替わる悪の組織が台頭しつつあることを知った藤兵衛はアマゾンと共にガランダー帝国に対する捜索に掛ったのだが、直後に「子供が攫われた!と叫ぶ主婦に助けを求められた。
藤兵衛が事情を聴いている間にアマゾンは高所に移動していた。恐らく状況から「攫われて間なし」と見て、高い所にて視界を広く持つことで攫われた子供・攫った犯人の手掛かりを得ようとしたのだろう。
程なくアマゾンはジャングラーに騎乗。その時には彼の視界には既にガランダーの怪しい車(笑)が移っていた。追跡し、忽ちこれに追いついたアマゾンは車に飛び移って強制停車させると黒ジューシャを絞め上げて、彼等が何者で、何の目的で子供を攫うのかを詰問した。
頑強に口を割らない黒ジューシャだったが、しばらくするとその背後からハチ獣人が襲来。この時点ではまだアマゾンには相手が獣人であるとしか分からなかったが、このハチ獣人、「俺を獣人と呼ぶところを見ると、貴様がアマゾンか?」とか、「ゼロ大帝様はアマゾンに構うなと云われたが、目の前いたのを見逃すものか!」等と、結構重要なことを口走っていた(笑)。
ゼロ大帝を崇拝しているかのような言動・態度から、忠誠心は高く、行動的だが機密保持には向いていないタイプの様である(苦笑)。
かくしてなし崩し的に戦闘となったのだが、このハチ獣人、変身していないとはいえ、アマゾン相手に互角以上に渡り合い、アマゾンは目の前で黒ジューシャに攫われる少女を助けることが出来なかった。
設定ではガランダー獣人はゲドン獣人の2倍の強さを持つとなっており、この戦闘も新組織がゲドン以上の恐ろしい組織であることを示す目的があったのだろう。結局モグラ獣人が土中からの奇襲でハチ獣人の足を引っ張った隙を突く様に戦線離脱したのだった。
次に会ったときこそアマゾンを倒す、と自信満々なハチ獣人が飛び去ったのを確認したアマゾンはそれとは逆に少女を助けられなかったばかりか下手すれば自分も危なかったことに悔しさを滲ませながら土中に身を潜めるモグラ獣人のところにいくと手掛かりを求めた。
ゴルゴス亡き今、彼に替わって獣人を操る存在に心当たりがないか?と尋ねるアマゾンに最初モグラ獣人も心当たりがあるのかないのかよく分からないまま記憶を辿っていたが、唯一つのキーワードである「ゼロ大帝」を耳にした途端、恐怖に駆られ、「(その名前を)口にするのも恐ろしい大物。」として、関わりたくないとの意を示してそれ以上の証言を拒んだ。
類推するに、モグラ獣人はゲドンの一員として他の悪の組織についても多少の知識を持っていて、どこかでガランダー帝国やゼロ大帝のことを知りつつも、恐ろしい組織として徹底的に(記憶から除去したくなるほど)関わり合いになるのを避けて来たのだろう。そして記憶の片隅に潜在的な恐怖心があったことを思えば、前話にて黒ジューシャに攫われるマサヒコを助けず傍観していたのも少しだけ理解が出来ると云えなくもない。
結局関わり合いを恐れて、知っていることを教えてくれとするアマゾンの要請に「それだけは勘弁してくれ!」と云って土中に逃げたモグラ獣人が残したキーワードは「ガランダー帝国」という組織名だけだった。
一方、アジトに戻ったハチ獣人は「ハチの子」と呼ぶ教え子達への洗脳教育に余念がなかった。拉致されてきた子供達はハチ獣人に絶対服従する尖兵としての教育を受け、大針状の手槍をもってアマゾンの人形を突き刺す訓練に従事し、一声ハチ獣人が命じれば黒ジューシャにも襲い掛かった。
まあ、あくまで訓練で、黒ジューシャも命を落としたり、大怪我を追った様子は無かったが、赤ジューシャよりも明らかに粗略に扱われ、歴代悪の組織戦闘員と同じ悲惨さを背負うようになったことに同情の念を禁じえなかった(苦笑)。
そしてそんなガランダー帝国への恐怖からアマゾンへの協力を拒んだモグラ獣人だったが、仲間に危険な目に遭っては欲しくない様で、アマゾンを探すマサヒコの前に現れ、新組織が子供を攫っているので、出歩かない方が良いと忠告した。
だが、アマゾンに絶対の信頼を置くマサヒコはむしろ自分が攫われればアマゾンへの協力になると解釈して「攫われてみてえや。」と、モグラ獣人をして「嫌な子」と云わしめる言を吐くのだった。
とはいえ、年端も行かない子供がそんな決意をされては、身内は堪ったものじゃない。人攫いを探しに行くと云う置手紙を見たりつ子は気が気じゃない様子で藤兵衛にアマゾンと共にマサヒコを探すことを依頼し、藤兵衛もこれに応じた。
その頃、手掛かりを求めてとある神社を散策するマサヒコは一人の少年と遭遇した。目の周りを薄黒く染められ、無表情で、抑揚のない喋り方をしながらしゃべる様は、チョット特撮番組に慣れた者なら洗脳または催眠状態を絵に描いた様な有様だったが、マサヒコは何の異常も感じなかったから、そこは勇気があっても子供である(苦笑)。
まあ、マサヒコの名前を口にし、遊びに来ないかとする誘いを変にも思わなかったところを見ると、その少年は前々からの知り合いなのだろう。ならばチョット無感情的なだけでは取り立てて怪しいと思われないのも無理はないかも知れない。
誘われたマサヒコは自分の方でも相談したいことがあるとして、少年に誘われるままについて行った。勿論、そのままあっさり捕まり、ハチの子の仲間入りをさせられたのだが、まあ余り責めては可哀想だ。
そしてそのマサヒコの行方を追うアマゾン・藤兵衛・りつ子だったが、アジト内に手掛かりを残さないまま攫われたマサヒコが簡単に見つかる筈も無かった。自分の為にマサヒコが攫われたと項垂れるアマゾンに藤兵衛が「お前のせいじゃない。」と云えば、りつ子も、「そうよアマゾン、元気出して。」と続けた。本当にりつ子は変わったものである。
だが、そこへ当のマサヒコが元気一杯にアマゾンの名を叫びながら駆け寄って来た。当然三人はまずは安堵し、次いでどこに行っていたのか?と詰問した。ここはもう少し叱らないとね。ストーリーの構成上、マサヒコが無茶な行動をするのは無理もないが、子供番組であるなら、教育指導的な内容や意味合いも大切で、本来ならかかる無茶な行動は戒められねばならないことは何らかの形で視聴者にも知らしめるべきである。
ともあれ、マサヒコは攫われた子供達の手掛かりを掴んだと云う。視聴者的には捕らえられ、洗脳されたシーンを抜きにしてもマサヒコの瞼が青白く染められていることから「洗脳されているな(笑)。」というの丸分かりなのだが、アマゾン達にしてみれば重要な手掛かりである。
マサヒコに手を引かれ、敵アジトに向かわんとしたアマゾンだったが、マサヒコが手をとった瞬間異変を察知した。体温が異常に低いことからマサヒコが洗脳状態にあることを察知したアマゾンはそのことを誰にも告げず、マサヒコの案内するまま敵アジトに近くに到着するとマサヒコを縛り上げ、猿轡噛まし、草むらに軟禁した。
もがくマサヒコの顔相はやがて隈取が洗われ、明らかに異常を認めたアマゾンは「ひどいことをする。」と呟いた。「自分がマサヒコを縛り上げていることは棚に上げてか?」と突っ込むのは酷かな?(苦笑)
まあ、案内を受けたままアジト内に入っては罠に落ちる可能性が高いし、罠に落ちなくてもガランダーがマサヒコを人質に取ることも考えられるから、マサヒコを拘束して単身潜入するのは決して間違いでは無かろう。
見張りの黒ジューシャを二人ほど打倒して洞窟内に潜入したアマゾンは攫われた子供達を発見したが、洗脳状態にある子供達は大針をかざしてアマゾンににじり寄って来た。勿論アマゾンには彼等を打ち倒すなど出来ない。
だが、何故かハチ獣人が乱入して来るとただの戦闘になってしまった。
今度は、アマゾンは即座に仮面ライダーアマゾンに変身。変身前のアマゾンに対しては優勢に勝負を運んでいたハチ獣人だったが、相手がアマゾンライダーとなるとその優位は完全に失せていた。
アマゾンは野生で生きてきた元々の強さが顕著で、変身前でも結構強力なイメージがあるが、それでも変身することで段違いの強さを得ると見るべきなのだろう。格闘はアマゾンライダー優位に展開し、口吻から発射する大針も次々と躱され、終いには叩き落される始末だった。ま、これも「ハチ獣人がしょぼい。」と云うよりは「アマゾンライダーが強力」と見るべきなのだろう。ゲドン獣人の大半が特殊能力駆使時を除けばアマゾンライダー相手に殆んど優位に立てなかったのもむべなるかなと云えよう。
殆んどの攻撃を躱され、毒針付きの臀部を飛ばした時こそ一矢を報いた形になったが、それもさしたるダメージを与えた様子は無く、二撃目では蹴り返されて自分がダメージを受ける始末だった。
そして大切断で眉間を割られたハチ獣人は黄色い体液を大量噴出。追い打ちを掛ける様に顔面と首筋に二撃の大切断が加えられ、完全に勝負が決した。自身の体液に埋もれたハチ獣人は、「ゼロ大帝に栄光あれ、ガランダー帝国の万歳……。」という捨て台詞を残して戦死した。
組織初出の獣人として、「裏切者を出したゲドンとは違う。」という印象付けがこのハチ獣人に課せられた番組上の役割だったのだろう。いずれにせよ、大幹部でもない平の怪人が断末魔で組織と首領を讃えるのは珍しい。
そしてそんなハチ獣人の死に様を見つめるアマゾンライダーの耳には、いくら抵抗しても無駄だとの嘲りと哄笑を浴びせるゼロ大帝の声が響いて来たのだった。
ハチ獣人を打倒したアマゾンは拘束していたマサヒコの元に戻った。アマゾンはハチ獣人が飛ばした臀部から橙色の袋を取り出すとそれをマサヒコに飲ませた。要するに洗脳はハチ獣人の毒液がもたらした薬効によるもので、尻尾に解毒液が収納されていたのは些かご都合主義的な気がしないでもないが(笑)、分からない話でもない。
普通毒物を用いたテロを行う者は解毒剤も用意しておくものである(現実の世界でも毒ガスサリンでのテロを行ったオウム真理教は解毒剤PAMを常備していた)。最強の矛と盾を用意するのは定石で、また解毒剤は元となる毒から生成される血清的なものも多い。
いずれにせよ、無事子供達は解毒によって洗脳を解かれ、助けられた子供達が崖の上から手を振るのに見送られながらジャングラーでアマゾンとマサヒコは走り去りつつ第15話は終結………………そんな山中に置き去りにせずにちゃんと連れて帰ってやれよな(苦笑)。
余談だが、この第15話からエンディング曲・「アマゾン、ダダダ!!」の歌詞が2番に変更された。1番の歌詞には「ゲドン」の名前が含まれており、2番にはそれが無い。恐らく第14話でゲドンが滅んだことに合わせたのだろう。ただ、映像はOP・EDともに変更がなく、クモ獣人と赤ジューシャがそのまま出ているのであった。
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令和六(2024)年二月三日 最終更新