仮面ライダーアマゾン全話解説

第16話 ガランダーの東京火の海作戦!!

監督:内田一作
脚本:鈴木生朗
ゲンゴロウ獣人登場
 冒頭、とある墓地を黒ジューシャ4人が戸板を御輿的に担ぎ、その上に黒十字総統……じゃなかった、ガイゼル総統……じゃなかった、プロフェッサー・ギル……じゃなかった、一人の初老の男(安藤三男)が座していた…………何?わざとらしい?この俳優さんをチョイ役で見るなんて不可能ですよ……ホント……。
 初老の男は蓬髪に顎髭を生やし、長い節くれだった杖を持ち、これで毛を伸ばして白くするだけでプロフェッサー・ギルになれる容姿で、別の云い方をすると「人心を惑わす」系だった(苦笑)。
 そしてそれを尾行するアマゾンだったが、上手く撒かれてしまったのだった。

 そして場面は替わってとある駅前。
 そこには最前の男がアマゾンからの物産と称する品物を広げて露天商をしていた。視聴者的には怪しい人物であることは先刻承知だが、通りすがりのりつ子はそれを知らず、一際大きいゲンゴロウブローチが目に留まった。
 りつ子の連れは「エメラルドみたい。」と云ってその綺麗さに注目していたが(←どこがやねん(苦笑))、りつ子は「アマゾン原産」の文字に注目し、アマゾンが懐かしがると思って、購入せんとした。
 価格を聞くりつ子に露天商が示したのは1本の指。恐らく令和の世なら多くの人々が1万円と見るところだろうけれど、りつ子は千円と推測した。まあ、時代の流れで金の価値も下がったと云ったところか(苦笑)。
 だが、実際の価格は百円。勿論滅茶苦茶怪しい話だが、それ以上に露天商がりつ子に先んじて欲しがったりつ子の連れを拒絶し、りつ子にしか売らないとした方がもっと怪しかった。まあ、最初に名乗りを上げた者を最優先すると云う商売方針なら分からない話ではないが、そうしなければならない理由も見当たらない。

 ともあれ、売買は成立したのだが、怪しい展開は尚も続いた。
 ゲンゴロウブローチの着け方を尋ねるりつ子に、露天商は勝手にへばりつくと云う。言葉通り、ブローチはりつ子の襟元にへばりついたのだが、やがて首筋を回ると吸血にかかり、呆然とする律子にやがて露天商が噛み付き、ゲンゴロウ獣人の姿を現して吸血を続けた。
 その様子はりつ子視点でまるで白昼夢のようだったが、どうも一連の出来事はりつ子の連れには見えていなかった様で、やがてりつ子はその場に倒れ込み、その時になって連れは異常事態に気付いた様子だった。

 場面は替わってガランダー帝国アジト。
 そこでは例の露天商が黒ジューシャ達に浴槽の様な物へ何やらドラム缶から液体を注がせていた。そこに上述のゲンゴロウが戻って来た。その後の言によるとアジトにいた露天商が本体で、駅前にいたのは分身だったとのことで、その分身が浴槽の液体に触れると液体は忽ち発火した。
 恐らくは浴槽内の液体とゲンゴロウブローチが吸った生き血との化学反応だったとも思われるが、シルバータイタンの乏しい科学知識では人血と化学反応で発火する物質があるのかどうかも分からない(苦笑)。
 同時に、この発火を伴う所作に如何なる意味があるのかもわからなかったが、そこにゼロ大帝が姿を現した。そして世界征服計画の手始めとなる東京火の海作戦の遂行を命じた。その際、ゼロ大帝ゲンゴロウ獣人に「成功か、死あるのみ。」を示す為にビームランス(←設定名「青い雷」)でもって黒ジューシャの一人を消滅させた。
 十面鬼よりは人望もあり、組織から一人の裏切り者も出さなかったゼロ大帝だったが、失敗者に対する容赦の無さは十面鬼と同等か、それ以上で、脅しの為だけに黒ジューシャを殺害する辺り、改めて黒ジューシャに歴代悪の組織戦闘員と同様の悲惨さがカムバックし(苦笑)、ここにもゲドンとの差別化が描かれているように感じられるのだった。

 場面は替わってとある病院の一室。
 そこではりつ子が意識を取り戻していた。枕元には心配気な、それでも意識を取り戻したことに安堵するマサヒコ、アマゾン、藤兵衛もいた。どうやらりつ子は道端で酷い貧血を起こした搬送されたとのことで、まあそれ自体はゲンゴロウ獣人に吸血されたことと辻褄が合う。ただ、りつ子には露天商からゲンゴロウブローチを購入したことも、それを付けたことで血を吸われて意識が遠のいた記憶もあった。
 そしてその間、ゲンゴロウ獣人は東京火の海作戦を実行し、市山火薬工場を初めとする都内各所の火薬工場等に分身のゲンゴロウを放って放火し、各地で惨事を引き起こしていた。
 それによって熱でねぐらを襲われたモグラ獣人はこれをガランダー帝国の仕業と判断し、珍しく何者の仕業かと考え込むアマゾン達の元に報せた。

 報せを受けてアマゾンは即座にジャングラーで出動。程なく道々が火を上げる中ゲンゴロウ獣人を見つけたアマゾンはこれと格闘となった。
 ゲドン末期の獣人や、前話のハチ獣人は変身前のアマゾンを相手に互角以上に戦っていたが、それ等と比較するとこのゲンゴロウ獣人、どうも強い方ではないようだった。
 殴り合いではそこそこ互角か、アマゾンの上を云っていると見えなくも無かった(←負傷させていたし)が、鈍重そうな外見が祟ったものか、素早さや組合では変身前でもアマゾンに分があるようで、そうこうする内に両者はもつれ合って河川に飛び込んだ。

 Bパートに入り、河川から体を出したアマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身。こうなるとゲドン獣人は勿論、格上のガランダー獣人も基本、アマゾンライダーの敵ではなかった。
 アマゾンライダーは高所からの攻撃や、鈍重なゲンゴロウ獣人の体格を突く足払いを初めとした足技でゲンゴロウ獣人を翻弄。それに負けじ、とばかりに立ち木をもへし折る爪飛ばし攻撃を敢行するも、すべて躱されて功を奏さなかった。「大砲も当たらずば…。」である。
 三撃目がアマゾンに被弾したかに見えたが、これは擬態。不用意に近づいたところで蹴りを食らい、怯んだところを殴られまくると変身前に互角以上だった殴り合いすら不利に転じていた。殊に鈍重な体格故か、転ばされると手も足も出ず、怪しげな呪文を唱えて姿を消すと戦線離脱したのだった。

 場面は替わってガランダー帝国アジト。
 這う這うの体で帰還したゲンゴロウ獣人は忽ち四体の黒ジューシャ達に取り押さえられた。黒ジューシャ達が赤ジューシャ並みの待遇に戻れた貴重な一瞬だった(笑)。
 出撃前のゼロ大帝の言動からも、ゲンゴロウ獣人の命運が風前の灯火なのは誰の目にも明らかだった。案の定、ゼロ大帝は作戦途中にみっともない様で戻って来たゲンゴロウ獣人を詰った。
 これに対して、東京火の海作戦そのものは順調に遂行中であることを述べて遠回しに手柄と失態の棒引きを仄めかすゲンゴロウ獣人だったが、ゼロ大帝から帰って来た台詞は「やかましい!!」だった(苦笑)。
 かくして予告通りにゲンゴロウ獣人を処刑せんとしてビームランスの矛先を向けたゼロ大帝だったが、これに対してゲンゴロウ獣人は自分がアマゾンライダーに不覚を取ったのはエネルギー不足で、寒い季節に自分のエネルギーは長続きしない、それでも今一度りつ子の血を吸えば今度こそアマゾンライダーを倒し、東京を完全に火の海に出来る、と申し出た。

 吸血によるエネルギー補給と戦闘力との相関関係は分からないでも無いが、何故にりつ子にこだわるのか?とするゼロ大帝に、「あの娘の血は美味い…。」と漏らし、大慌てでりつ子がアマゾンの友達であると述べ、アマゾンの弱点を押さえていると仄めかすゲンゴロウ獣人小物過ぎ(苦笑)。だが、ゼロ大帝的には一度の助命には適う情報だったらしく、ゲンゴロウ獣人はもう一度だけ機会を与えられた。

 云い逃れっぽい云い分ではあったが、ゲンゴロウ獣人ゼロ大帝に申し出た通りに行動した。黒ジューシャ達を指揮して買い物途中のりつ子を襲い、その身を拘束するとりつ子の血を吸うことと、東京を火の海にし、焼け野原の後にガランダー帝国の新都を建設せんとの意を云い放ち…………組織の行動目標をべらべら喋る辺り、やはりこいつ、小物だな(苦笑)。
 そしてりつ子拉致をモグラ獣人から知らされたアマゾンがジャングラーで駆け付けたが、その前にりつ子は血を吸われていた(←車両に追いつけなかっただけかも知れんが、自分で助けに行かない辺り、まだまだモグラ獣人のガランダー帝国に対する潜在的恐怖心は大きかった様だ)。
 血を吸われたりつ子だったが、命に別条のある吸血量だった訳ではなく、アマゾンの呼び掛けに意識を取り戻した。朦朧とする中、アマゾンにゲンゴロウ獣人がコンビナートを襲う旨を述べていたことを告げて、自分に構わずそれを阻止するよう促して再度気を失うりつ子。完全和解しただけではなく、正義を優先する完全な仮面ライダーの仲間になっていたことが伺えるワンシーンだった。

 場面は替わってコンビナート。
 そこを高所より睥睨していたゲンゴロウ獣人は「あれに火を放てば東京湾は火の海だ!」ほくそ笑んでいた。焼け野原にした上で新都を築くのが目的なら、東京湾ではなく都内を火の海にしないと意味がない気がするのだがな(苦笑)
 それはさて置き、早速放火にかかるべく分身ゲンゴロウを放ったゲンゴロウ獣人だったが、それは早くも駆け付けたアマゾンライダーのコンドラーに叩き落されたのだった。

 かくして最終決戦となったが、勝負は一方的だった。ゲンゴロウ獣人の攻撃はアマゾンライダーに一撃を与える事すら能わず、逆にアマゾンライダーの攻撃は次々にゲンゴロウ獣人にヒットした。高所に逃れんとするもコンドラーに絡め捕られ、引き摺り降ろされ、散々殴られた挙句、眉間に大切断を食らうとそれが致命傷となった。
 息絶え絶えとなったゲンゴロウ獣人は分身を逃れさせるとハチ獣人同様「ガランダー帝国万歳…。」を唱えて絶命した。小物で、保身傾向の強い獣人だったが、どうやら組織に対する忠誠心はしっかり持っていた様だった。だが、辛うじて帰還させた分身もゼロ大帝のビームランスであっさり処刑されたのだった。

 分身を処刑したゼロ大帝は背後を振り向くと、「我がすべてを捧げる全能の支配者よ。」と語りかけた。作戦の失敗を報告し、許しを請い、加護を願うゼロ大帝全能の支配者(声:阪脩)は自分の力は無限として、ゼロ大帝に一日も早くガランダー帝国を地球上に建設することを命じて叱咤した。
 かくして第16話は終結。ジャングラーで引き揚げるアマゾンを映しながらナレーションはガランダー帝国の加害の大きさと、声だけ出て来た全能の支配者への謎に言及するのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新