仮面ライダーアマゾン全話解説

第17話 富士山大爆発?東京フライパン作戦!

監督:折田至
脚本:松岡清治
ガマ獣人登場
 恐らく、多くのアマゾンファンにとって、この第17話ほど、コミカルさにおいて印象深い回は無いのではなかろうか?この全話解説の全24話すべてを読まずとも、この第17話だけ読む人も多いのではないだろうか?それだけ、第1話、最終回、ゲドンの最期を描いた第14話、モグラ獣人殉職の第20話を別格にすれば、最も印象深い話と云えよう。

 冒頭はガランダー帝国アジトから始まった。そこではゼロ大帝が作戦本部付の黒ジューシャ達が提出した世界征服作戦計画書を次々と没にしていた。
 ゼロ大帝は滅んだゲドンと同じ轍を踏まないことを何より重視していたようで、そのことを踏まえた上で計画書を提出させた訳だが、その審査結果を告げるべく、四人の黒ジューシャが御前に召喚された。
 そして告げられた審査結果は「全員落第!」だった。その訳を聞かせて欲しいとする黒ジューシャにゼロ大帝が告げたのは、「第一に研究不足!第二に面白くない!第三にこれでは滅んだゲドンの作戦と同じことだ!」というものだった。
 多くの特撮ファンが注目し、笑いの種にしている「面白くない!」だが、血も涙もない悪行の中に面白さを求めるゼロ大帝は、もしかしたらパルティア王朝の子孫ではなく、遊び心を重視する江戸職人の末裔なのかもしれない(笑&大嘘)。

 まあ、「研究不足」や「ゲドンと同じ」はともかく、「面白くない」に納得しかねたものか、それとも作戦立案段階で任務失敗者とされることに納得しかねたものか、尚も抗弁しようとした作戦本部付の黒ジューシャ達だったが、「問答無用!」の一言で哀れ四人ともビームランスの前に消されたのだった。
 直後、「不愉快だ!」としてその場を去らんとしたゼロ大帝だったが、それを別の世界征服作戦計画を提案せんとしたガマ獣人が呼び止めた。「私めの世界征服作戦」と聞くや、いきなり「お前も死にたいのか!?」とビームランスを向けるゼロ大帝、そうとう先の計画書が気に入らなかったらしい(苦笑)。

 まあ、それでも狼狽えながら話すガマ獣人の計画が採用されたのだから、ゼロ大帝にもそれなりの度量はあった様である。少なくとも十面鬼よりは(苦笑)。
 ともあれ、ガマ獣人の提案し、採用されたサブタイトルと同名の「富士山大爆発東京フライパン作戦」だが、特撮界でも屈指の有名さを誇るインパクトとコミカルさに裏打ちされたものだった。
 それは活火山である三原山の溶岩を、現在休火山である富士山の地下に誘導させることで富士山の噴火を誘爆。それによって生じた大量の溶岩をトンネルから東京の地下に流し込むことで、東京のアスファルトが熱されたフライパンの如く東京都を焦熱地獄とする、と云うもので、都民達は「煎られた豆の如く跳びはねながら狂い死にする」(ガマ獣人談)とのことだった。
 確かにこれは、ゼロ大帝が作戦本部付の黒ジューシャ達に突き付けた「面白くない!」とクリアーしたものだった。

 かくしてゼロ大帝ガマ獣人に失敗すれば死との念を押して作戦遂行を命じた。考えるまでも無いことだが、この作戦、面白い以上にスケールが大きかった。三原山から富士山迄溶岩を誘導するトンネルを掘り、更には富士山から東京の地下に誘導するトンネルが必要なのである。また、都内に溶岩が流れ込めばそれで終わりでもないだろう。東京都下、少なくとも23区全域に溶岩を渡らせるとなると相当な人手が必要なのは誰の目にも明らかで、その人員を確保する為、まずは富士山に向かう観光客が襲われた。
 催眠ガスの様なもので多くの観光客が眠らされ、小用に出ていた友田フジオ(大沢総一郎)だけが難を逃れた。ただ、そのフジオも目の前で拉致される父(竹田将二)の身を案じて叢を飛び出したところでガマ獣人にその姿を見られていた。そのフジオに簡単に逃げられたのだから、このガマ獣人、発想・容姿のコミカルさはぴか一でも、身体能力は期待出来そうになかった(苦笑)。

 それでも獣人は獣人、その残忍性と能力は一般ピープルには充分脅威で、連行された工事現場で強制労働を厭うて逃げ出さんとした女性は忽ち舌で絡め捕られ、頭部から発せられた毒ガスに巻かれるや瞬時に白骨死体と化した………。
 こうなると拉致された人々に否も応も無かった。先に拉致されて来ていた人々は足枷に鉄球を付けられ、事あるごとに鞭打たれ、そんな人々をガマ獣人は「栄光あるガランダー帝国の作業員」としていたが、実態はベタなまでの奴隷そのものだった。
 まあ、悪の組織が強制労働させる為に人員となるものを拉致して来るのは黄金パターンだが、従事させる作業の作戦名を口走る辺り、やはりこいつも大物からは程遠かった(苦笑)。

 そんな中、「富士山大爆発」と聞いて、一人の男性が服従拒否を口にした。男性はフジオの父・友田で、息子の名前に「フジオ」と名付けるほど富士山を愛しており、富士山を破壊するような作戦には断固服従出来ない、と云い放った。
 「殺されてもか?」と脅しを掛けたガマ獣人に答えない友田だったが、結局ガマ獣人は「先にトンネルを掘るのだ!」と返しただけだった。

 場面は替わって拉致現場。そこに偶然来ていたマサヒコとりつ子にフジオが邂逅したことで、事件はアマゾンの知るところとなった。停留所でもない道端にエンジン掛けっ放しのバスが止まり、難を逃れた少年から「黒い人達に連れて行かれた。」と聞かされたりつ子とマサヒコがガランダーを疑うのに大した推理力は要しなかったことだろう。
 それにしてもエンジン掛けっぱなしでバスをその場に残す辺り、ガランダー帝国の辞書に「証拠隠滅」という言葉は無いらしい(苦笑)

 その頃アマゾンはジャングラーを乗り回し、それを藤兵衛が双眼鏡で様子見しながらほくそ笑んでいた。どうやら藤兵衛の夢(=オートレースチャンピオン育成)に付き合っていた様だった。そこへマサヒコが駆け付け、アマゾンはマサヒコを乗せるとそのまま現場に向かった。
 だが、アマゾンとマサヒコが戻った時には、まだ回っている独楽を残してりつ子とフジオも消えていた。勿論黒ジューシャに襲われたもので、恐らくアマゾン達が駆け付ける直前のことだったのだろう。程なくアマゾンの耳には助けを求めるりつ子の声が聞こえた。

 程なくアマゾンの駆るジャングラーは後部座席にりつ子とフジオを乗せた2台のバイクに追いつくと、コンドラーを放って黒ジューシャの首に縄を巻き付け、引き倒すと云う荒技を敢行した。しかし、この荒技、食らった黒ジューシャも怖かっただろうけれど、普通に考えてりつ子・フジオにとっても恐ろしい手法だったな(苦笑)

 ともあれ、現場にはガマ獣人もいて、ガマ獣人は長い舌を伸ばすとアマゾンの首に絡めてこれを拘束した。

 取っ組み合いを見る限り、ガマ獣人は然程強そうでもなかったが、先手必勝的に舌で首を締め上げられたアマゾンの不利は否めなかった。それでも何とかこれを振りほどいたアマゾンだったが、ガマ獣人は極端に大きい頭部を持ち上げ、これを投げ付けた。
 ガマ獣人は謂わば、二つの頭を持ち、人間体が巨大なガマを被っているスタイルだった。ガマ部分を持ち上げた下から顔が現れたのに吹き出した視聴者も多かったと思われる(笑)。間違いなくこのガマ獣人、作中一のインパクトとコミカルさの持ち主だった。
 そんな苦戦をする中、モグラ獣人の助けで土中に難を逃れたアマゾン。それを見て、「あのゲドンの生き残りめ!」と悪態を突くガマ獣人だったが、すぐに「まあいい。」としてろくに確認もせずその場を立ち去った(案の定、アマゾンとモグラ獣人は穴の入り口付近に潜んでいた)。爪甘いな、コイツ(苦笑)。
 ただ、この大立回りの間にりつ子とフジオは攫われていた。即座にこれを追わんとしたアマゾンだったが、それをモグラ獣人が「傷の手当てが先だ。」として押し留めた。勿論りつ子の安否が懸念される状態でアマゾンが我が身を振り返る訳なかったのだが、モグラ獣人ガマ獣人の居場所なら大体の見当はつく、としてアマゾンを宥めた。
 ガランダー帝国登場当初は黒ジューシャにすら恐れを為していたモグラ獣人だったが、ここに来て急に頼もしくなったものである。まあ、それも3話後に迫った殉職を前にしたものだと知る故、些か寂しくもあるのだったが………。

 場面は替わって強制労働現場。相変わらずそこでは過酷な工事が励行されていた。疲労の為に倒れる者も後を絶たない様で、倒れた人を運んでいるところで更なる労働をガマ獣人に強いられた友田は、これ以上は無理だと抗議したのだが、ガマ獣人はそれならもっと活きの良い人材を攫って来いと命じた。
 獣人相手にも云うべき云う硬骨漢・友田はそれを拒んだが、そこにフジオとりつ子が黒ジューシャに連れて来られたのは見せられは否も応も無かった。そしてそんな強制労働の賜物か、一人の黒ジューシャが三原山から富士山に溶岩を導く第一トンネル第一区が敢行したのとの報告をもたらした。
 ちなみに声で丸分かりだが、この黒ジューシャは大野剣友会の中村“ヨロイ元帥”文弥氏(笑)。バスの運転手は同会の小沢章治氏(笑)。十面鬼の顔役御免後も大野剣友会の皆々様は八面六臂の大活躍だった(笑)。

 ただ、その後の展開は笑っていられなかった。
 ガマ獣人達にとって、強制労働によって動けなくなった作業員は「用済み」で、第一トンネルが開かれるや、彼等は誘導された溶岩に飲まれた………。そしてこの溶岩はフライパン作戦の一部を為したようで、都内のマンホールから炎が噴き出し、被害を被った地域の中にはモグラ獣人のねぐらも含まれていた。
 マンホールから火が噴き出すだけでも大変な恐怖だが、水道の蛇口を捻ると炎が噴き出したり、ただ歩いているだけの舗装道路が熱せられた鉄板と化したり、あちこちから熱による煙が漂ったりする光景は正に地獄絵図だった。
 過去作「本当は怖いゲドン」の様な具体数検証を行ったことは無いが、ガランダー帝国による人的被害がゲドンのそれを大きく上回るのは想像に難くない。話数が少ないのに、である(ゲドン編は14話、ガランダー編は10話)。そしてこの惨劇にはガランダー帝国と事を構えることに消極的だったモグラ獣人も「許せんぞ!」との想いを禁じ得ないのだった。
 だが、この間、ガマ獣人の名を受けた友田によって、藤兵衛も拉致されたのだった。絶対強制労働による大量過労死の穴埋めになっていないよな、これ(苦笑)

 その頃、拉致された現場でりつ子と再会した藤兵衛が、「どこでどうしているのやら……。」とぼやいていた対象のアマゾンだが、モグラ獣人に勧められたように、傷の治療―傷口を氷で冷やすもの―に専念しつつ、マサヒコと共にいた。
 そこにモグラ獣人が現れ、藤兵衛が黒ジューシャに攫われたことを告げた。語気を荒げ、「藤兵衛は何処だ?!」とモグラ獣人に詰め寄るアマゾン。勿論アマゾンは目上に対する礼儀を知らない訳ではないのだろうけれど、恐らくそれは日本語の文法的なもので、そもそもが野生児として成長し、ヒエラルキーという概念がない世界で生きてきたアマゾン故、興奮すると対人関係に上も下もないのだろう。
 ともあれ、即座にジャングラーに騎乗し、現場に急行するのだった。

 その頃、現場では藤兵衛が文弥さん黒ジューシャ(笑)から作業内容の説明を受けていた。内容は第二トンネルを掘ると云うもので、説明から三原山−富士山間の溶岩誘導が第一トンネルによるものと知った藤兵衛は怒り心頭となり、そんなことに加担するものか、とばかりに傍らにあった鶴嘴を手にりつ子とフジオを庇いつつ、抵抗の意を示した。
 そしてそこへジャングラーに乗ったアマゾンライダーが突入。藤兵衛は自分が庇っている間に逆方向に逃げたりつ子とフジオを救うよう要請した。そのりつ子とフジオの前にはガマ獣人が立ちはだかったのだが、横合いの岸壁を破ってモグラ獣人が乱入。モグラ獣人はりつ子とガマ獣人の間に割って入ると、自分が来た穴から逃げるよう促した。
 これまで通報役に徹していたモグラ獣人が誰かの為に具体的に動いた、実に嬉しいシーンである。

 果敢にもりつ子を庇ってガマ獣人に体当たりするモグラ獣人だったが、哀しいかな、ゲドン獣人とガランダー獣人では格が違い、渾身の体当たりも左手一本で止められてしまうのだった。
 だが、直後にりつ子の悲鳴を聞き付けたアマゾンライダーが乱入。モグラ獣人は救出並びに時間稼ぎという意味において立派に大役を果たしていた。更にアマゾンライダーがガマ獣人・黒ジューシャ達と大立ち回りを演じる間にもモグラ獣人は先頭に立って藤兵衛・りつ子・友田父子・その他強制労働させられていた人々の避難誘導を行っていた。

 獣人という異形の存在が多くに人々を追随する姿はなかなかにシュール且つ、悪の組織に生み出された者が多くの人々を助けるために尽力する嬉しいシーンでもあった。殊に主人公であるアマゾン自身、番組開始当初はその野生児としてのスタイルが奇異の目に曝されていたことを思えば、尚更である。
 そしてその間、富士山爆発東京フライパン作戦も、ガマ獣人の命も終焉を迎えつつあった。黒ジューシャ達を次々と打ち倒すアマゾンライダーを前に工事現場から飛び出していた程だから、既にガマ獣人に勝算は無かったのだろう。勿論こうなると作戦遂行など夢のまた夢である。

 ガマ獣人とて黙って殺られた訳ではなく、アマゾンライダーと黒ジューシャ達がやり合っている間隙を縫って長舌や巨頭部を駆使して必死に応戦した。だが、舌で絡めての毒ガス攻撃はあっさり振りほどかれ、巨頭投げ付けもアマゾンライダーがフジオの独楽にヒントを得たスピンキック(宙返りからのキック)に返されしまった。
 すべての技を返されたガマ獣人にもはや勝ち目は無かった。アマゾンライダーは大切断を放つとガマ獣人の体を縦一文字に切断。返す刀で横一文字にも大切断を一閃し、ガマ獣人の体は四等分され、爆死したのだった…………写真の四等分だったから、余り迫力無かったけどね(苦笑)。

 ちなみにこの間、工事は中途半端状態で放置されたようで、アマゾンライダーVSガマ獣人の対戦終了直後、溶岩が尚も工事に従事していた黒ジューシャ達を襲い、その命を奪っていた。『怪獣VOW』シリーズでもツッコまれていたが、これはゼロ大帝が述べていた「研究不足」に該当するな(苦笑)。
 そして作戦失敗に切歯扼腕するゼロ大帝。だが、怒りをぶつけるべき相手得あるガマ獣人はもうこの世に居ず、ゼロ大帝全能の支配者に作戦失敗を報告するのだったが、それに対する全能の支配者の言は、自分の力が無限で、一日も早い帝国建設命じると云う、前話の終盤と全く同じもの。余り威厳無いな、コイツ(苦笑)。

 ともあれ、無事の再会を果たした友田父子は雄大にして、命名の基となった富士山の不滅を口にし、マサヒコ達にアマゾンへの礼を述べてスケート場に向かい、平和裏に第17話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新