仮面ライダーアマゾン全話解説

第18話 ゼロの恐怖!大地震作戦!!

監督:折田至
脚本:鈴木生朗
ハンミョウ獣人登場
 冒頭は剣崎航路標識事務所なる灯台から始まった。その近辺の草むらにハンミョウ獣人と黒ジューシャ達が珍妙で大掛かりな機械を擁して潜んでいた。
 機械はサブタイトルから多くの視聴者が予想したと思われるが、地震発生装置で、その発動により灯台が真っ二つに破壊され、中では住み込みと思しき家族が被災した。

 崩れるように倒れて来た家具の下敷きとなって亭主の高田(綾川香)は動けず、その妻は意識を失っていた。娘のミサコ(天野美保子)だけが動ける状態で母を救うべく119番通報をせんとしたが、倒壊の影響か電話は通じなかった。
 屋外へ直接助けを求めんとして出たミサコだったが、そこでハンミョウ獣人一味を目撃し、不運にもこれに気付かれてしまった。
 勿論ハンミョウ獣人はミサコの前に立ちはだかり、「我々ガランダーの姿を見た者生かしてておけん。」と身構えたのだが……………自分で組織名を口走って機密保持もあったもんじゃないな(苦笑)。まあ、その場で消すなら名前出しても問題ないと思っていたかも知れないが。

 結局ミサコは断崖絶壁へと追いやられ、転落したのだが、それまでに取り押さえられない黒ジューシャ達間抜け過ぎ(苦笑)。挙句の果て、転落したミサコは偶然そこに居合わせたアマゾンに抱き止められて助けられ、崖上からそれを見ていたハンミョウ獣人は撤退を指示した。
 関係ないが、市川治氏が声を当てたこのハンミョウ獣人、妙な外国人訛りで話していた。『仮面ライダー』第6話・第7話で氏が声を当てたハインリヒを連想したのはシルバータイタンだけではあるまい(笑)。

 場面は替わってガランダー帝国アジト。
 そこではハンミョウ獣人ゼロ大帝に実験成功を報告していた。ハンミョウ獣人の言によると地震を発生させた装置はゼロ装置という名で、限定された小さな範囲のみに地震を起こさせることが可能で、目的とした灯台だけを真っ二つにしたその性能をハンミョウ獣人は丸で自分手柄のように語り、ゼロ大帝もその報告に満足し、ゼロ装置をもって都内のめぼしい各所を破壊することで都民に混乱をもたらすことを命じた。

 だが、ミサコを助けたアマゾンによって高田一家が救われたことでガランダーの目論見はアマゾンとその仲間の知るところとなった。聖マリアンナ医科大学病院(←第14話でマサヒコが入院したのと同じ)では幸い一命を取り留めた高田夫妻が収容されていた。
 余談だが、高田を演じた綾川香氏は『仮面ライダーX 』の第12話で超能力少女を持つ父親を演じていた。その時の役どころは科学者だったのだが、全く違う役どころである灯台守をこの話では演じていた訳だが、それぞれの役割を忠実に演じつつ、父親カラーもふんだんに出していたから、その演技力の高さには唸らされるものである。

 ともあれ、12時半頃に地震があったとする高田の証言を藤兵衛は怪訝に思っていた。というのも、ゼロ装置による地震は灯台だけを襲ったので、高田一家以外は誰も地震に遭っていなかった。
 一方の高田も灯台が折れる程の地震が周りに影響しない筈がないと踏んでいたから藤兵衛との会話は噛み合わず、藤兵衛はアマゾンに「頭を強く打ったらしい。」と耳打ちする有様だった。
 ただ、アマゾンは実際に灯台が折れるのを目にしていたし、高田一家が入院を要するほどの重傷を負ったのは明白な事実。加えてそこにミサコが地震を起こした者として、「昆虫のお化けと黒い人達」、「ガランダー帝国とか云った。」という重要証言をしたことで、高田一家の話に疑いの余地はなくなった。やはり組織の名前を口走ったのはハンミョウ獣人の失策だったな(苦笑)。

 だが、丸でガランダーの仕業と察知した瞬間を狙ったかのように今度は病院が地震に襲われた。アマゾンと藤兵衛は高田一家を院外に避難させ、装置をジープに乗せて逃げる黒ジューシャを見掛けたアマゾンは即座にジャングラーでこれを追った。
 しかしこれはガランダーによる誘引で、ジャングラーに飛び乗る形でハンミョウ獣人が襲い掛かって来たのだった。このハンミョウ獣人、ガランダー獣人の中にあって取り立てて強いとも弱いとも云えない獣人だったが、戦闘能力はともかく、機密保持能力は皆無に近かった
 連発した地震がガランダーの仕業か?とアマゾンに詰問されればあっさり肯定するわ、聞かれもしない装置名を口走るわ、使用目的は口走るわ、で機密の「き」の字も無かった(苦笑)。
 変身前のアマゾン相手に特に優位に立った訳でもないのに、自らの戦闘能力を「見たか!」と叫んでデカい口を叩いていたことからも、沈黙に耐えられない性格かも知れなかった。
 結局、羽根の様な手裏剣を投げ付けた間隙を縫って撤収したのだった。

 かくして余り強さを感じさせないハンミョウ獣人だったが、ここで逃がしてしまったことで直後、都内各所がゼロ装置による地震に襲われた。地震群発に伴い、火山が噴火し、ダムが決壊し、各所で火災が発生し、モグラ獣人のねぐらも鉄砲水に襲われた。
 ミサコを連れていた藤兵衛は避難途中でマサヒコ・りつ子と合流し、共にアマゾンの元に向かったのあった。

 Bパートに入り、藤兵衛達は樹上で傷の治療をしていたアマゾンと合流。そこにも地震が襲ってきたかと思われたが、これは土中からモグラ獣人が出て来ただけだった(苦笑)。地震で「俺のマイホームは滅茶苦茶だ。」とかなり人間臭くなったモグラ獣人が何とも印象的だったが(笑)、藤兵衛からは「お前のマイホームどころか、東京中がめちゃくちゃだ。」と云われ、初めて一連の地震がガランダーの仕業と知って驚くのだった。いつもの情報伝達係が、今話ばかりは逆だった(笑)。
 だが、さすがは情報探索に優れたモグラ獣人、ゼロ装置の存在と名前を知り、「土の中のことなら俺に任せろ。」として、ゼロ装置が発動すればすぐに知らせる、と豪語した。

 ちなみに一同のこの会話、ガランダー帝国によって盗聴されており、モグラ獣人の豪語は完全に筒抜けだったのだが、やばいのはハンミョウ獣人の方だった。作戦遂行中であることをアマゾン達に知られていたことがゼロ大帝の耳に入り、当然彼の怒りを買った。
 巻き添えと云おうか、見せしめと云おうか、この失態の為に三人の黒ジューシャがビームランスで消され、その穂先をゼロ大帝から向けられつつ、「お前もこうなりたいか?」と難詰されたハンミョウ獣人は忽ち「任務成功or死刑」の二者択一を迫られる身となったのだった。

 後の無くなったハンミョウ獣人は次のシーンでは早くもアマゾンと対峙。そしてアマゾンの方でも決着を急がんとしたものか、早々にアマゾンライダーに変身した。こうなると格闘では完全にアマゾンライダーが勝っていた。
 だが、ハンミョウ獣人も全くの馬鹿では無かったか、或いは後がない故に手段を選ばない態勢でいたものか、ゼロ装置を利用することでアマゾンライダーを地下1000メートルの地中に落とし、そこに岩石が雨霰と降り注いだ。
 これにてアマゾンライダーの動きを完全に封じたと確信したハンミョウ獣人は次の破壊目標が新幹線であることを宣し、その場を立ち去ったのだった。

 この一部始終を見ていたモグラ獣人は「こりゃえらいことになったぞ…。」として即座にこのことをマサヒコとりつ子に報せた………自分では動かないのね(苦笑)。だが、二人を連れて来たとて、地下1000mの深さに埋められたアマゾンライダーを通常の人間で為す術があろう筈も無かった。
 一方、埋められたアマゾンライダーだが、岩石に囲まれて身動き取れないものの、周囲を土砂や砂塵で隙間なく埋められた状態ではなく、意識もあった。ただ、そうは云っても、密閉空間に監禁されたままでは如何に改造人間でも窒息死しない保証は無かっただろう。
 当然、マサヒコもモグラ獣人に「お前、何とかならないのかい?」と詰め寄るのだが、それに対するモグラ獣人の回答は、「それが申し訳ないけど、駄目なんだよ。何しろ1000m、それも岩の中と来ちゃあなぁ。俺の縄張りはせいぜい10mの土の中でしかないんだ。」という何とも頼りないものだった………否、実在するモグラに忠実に考えるならこれは致し方ないと見るべきだろう。それに人類の科学力をもってしても、地下1000mと云えば上空1000mや水中1000mより遥かに到達困難な領域である。
 実際、ハンミョウ獣人も自力ではなく、完全にゼロ装置に頼ったもので、マサヒコは地下に向かってアマゾンライダーに呼び掛けるしか出来なかった。

 この呼び掛けはアマゾンライダーの耳に届いていた。1000mの岩の中にて声が聞き取れるとは恐るべき聴力だが、それ以上にチートなのはギギの腕輪だった。もし自分が岩盤の中に閉じ込められたままでは、一体誰がガランダーの悪行を阻止するのか?と自問自答するアマゾンライダーの意志に応える様に、圧力を受けたギギの腕輪アマゾンライダーの体を鉄や岩をも溶かす程の高温に発熱させ、同時に背鰭を初めとする体中の鰭が挙げ敷く振動し、忽ちアマゾンライダーは地上に返り咲いたのだった。
 ナレーションは、「アマゾンライダーの隠された能力の一つである。」としていたが、ガランダーにしてみれば、「そんなの、有りぃ?!」と云いたくなるご都合能力にしか見えないだろう(笑)。

 生還したアマゾンライダーに歓喜の声を上げて駆け寄り、縋りつくマサヒコとりつ子。1000mの地下から岩盤を溶かして飛び出した直後のアマゾンライダーに近寄れば火傷じゃすまない気がするのだが(苦笑)、地上に出る直前に冷却する機能まで働くとすれば、ギギの腕輪のチート性は半端じゃない(笑)。
 ともあれ、モグラ獣人はガランダーが新幹線の破壊を狙っていることを伝え、アマゾンライダーはジャングラーに騎乗して急行した。

 そして河原にてスイッチの入ったゼロ装置だったが、ジャングラーのアタックを受けて作動開始の1秒前(お約束(笑))で機能停止した。アマゾンライダーが生きていたことに驚いている間に即行で大切な装置を破壊されたことでハンミョウ獣人の任務継続は不可能となった。
 もはやハンミョウ獣人に残された行動は報復と任務失敗の咎を埋める為にアマゾンライダーを倒すしかなかった。だが、ゼロ装置に頼れないとなるとハンミョウ獣人に勝ち目は無かった。
 黒ジューシャ達はあっという間に蹴散らされ、アマゾンライダーとハンミョウ獣人の最終決戦となったのだが、ハンミョウ獣人は2、3発アマゾンライダーを殴れた程度で、特に足技を駆使されると丸でアマゾンライダーの敵ではなかった。
 そして裏拳と肘打ちの連打に戦意喪失したところで大切断が眉間に炸裂し、ハチ獣人ゲンゴロウ獣人同様、ハンミョウ獣人も頭部から体液を多量に迸らせて絶命したのだった。ちなみに直後に横一閃の大切断を受けて上半身と下半身の泣き別れにもされたのだが、ガマ獣人同様に写真を切った映像で表現され、迫力にもかける為、これは蛇足に見えた。
 恐らくアマゾンライダーの大切断が威力を増して云っているのを表現したい制作陣の意図があったと思われるが、黒ネコ獣人を首ちょんぱした映像・アクションの方がよっぽど迫力があったと云える。

 その後、病院では無事高田一家が退院し、藤兵衛・マサヒコ・りつ子が共にアマゾンのお陰であることを讃えていた。「アマゾンって、イカす。」とほほ笑むミサコがチョットおませだったが、それに親指を立てて応えるマサヒコも何だかである(苦笑)。親友のアマゾンが褒められて嬉しいのは分かるが、マサヒコの手柄でもないだろうに(苦笑)。
 そしてラストシーンはガランダー帝国アジト。そこでは例によってゼロ大帝全能の支配者に作戦失敗の報告を行っており、さすがに作戦が次々と失敗する事態に全能の支配者もご機嫌斜めで、ゼロ大帝に対してハンミョウ獣人に勝る獣人を送るので新たな作戦を立案する様促していた。
 ということは、すべての獣人がゼロ大帝の指揮下にある訳じゃないという事になる。卑しくも「大帝」としては些かスケールが小さくなってしまうが、組織の在り様を検証するには残された話数が余りにも少なかったことが今更ながら惜しまれるものである。
 ともあれ、これにて第18話も終結した。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新