仮面ライダーアマゾン全話解説

第21話 冷凍ライダーを食べる人喰い獣人!

監督:田口勝彦
脚本:村山庄三
イソギンチャク獣人登場
 冒頭、とある水族館から始まり、閉館後の見回りをしていた二人の警備員が妙な音を聞き付けた。二人の内後輩の方である田中(関係ないが、名前は終盤で判明)は、「波の音」と認識していた。都内のど真ん中で波の音など聴こえる筈はないとした先輩の方である井口(浅香春彦)も、妙な音が聞こえるのは事実で調べるべく館内に入ったが、そこでイソギンチャク獣人に襲われた。
 サブタイトルで「人喰い獣人」とされているイソギンチャク獣人だが、厳密には人を食い殺したりはしない。触手で人間を絡め取るとその血を吸い、逆に自分の血を送り込むことで相手を自分の僕とするのだった。
 僕となった方も腹部にイソギンチャク獣人同様の口腔部とそこから生える触手が出来、イソギンチャク獣人同様に人を襲うのだった。要するに「ゾンビにされた者が更に人を襲いゾンビにする。」というホラー映画の黄金パターンで、イソギンチャク獣人に襲われた井口はその間に守衛室に逃げて警察に通報しようとしていた田中の前に現れると、田中が安堵した次の瞬間に襲い掛かった。
 結局食い殺す訳ではないのだが、何故かイソギンチャク獣人も犠牲者も「人食い」とされていた。

 ともあれ、イソギンチャク獣人は水族館以外にも、工事現場の作業員、道行く人々、と次々に人間を襲い、自分の僕である人食い人間としてガランダー帝国アジトに連れて来たのだった。
 人食い人間をゼロ大帝に披露しつつ、「人食い人間大作戦」が順調であることを報告するイソギンチャク獣人。確かに倍々ゲームでネズミ算的に人食い人間が増え、全人類が人食い人間となれば、彼等はイソギンチャク獣人に完全服従するのだから、世界征服はその場で成功となる。
 ゼロ大帝はその日が一日も早いことを期待すると述べただけだったが、シンプルな分、展開に期待していることが伺え、イソギンチャク獣人は更に仲間を増やすことを配下に命じたのだった。

 場面は替わってオートレースの練習場。ジャングラー駆るアマゾンのライダーとしての上達ぶりに満足な藤兵衛。するとそこに一人の中年男性の運転する車に乗ったマサヒコとりつ子が現れた。この中年男性、冒頭でイソギンチャク獣人に襲われ、人食い人間にされた者だったのだが、当然その場にいる者達がそれを知る由も無かった。
 車には井口の息子で、マサヒコの友達であるイサムという少年が乗っており、元々アマゾンは井口が警備員を務める水族館に一緒に行く約束をしていた。それを忘れてバイクに夢中になっていたのだから、アマゾンはそれだけライダーとして染まっていたという表現だったのだろうか?
 ともあれ、マサヒコに促されて「トモダチ」の印を交わすマサヒコとイサム。そしてイサムに促されて井口も挨拶し、握手すべく右手を差し出した。当初は握手の意味を知らなかったアマゾンもここでは握手に応じたのだが、手を握った瞬間井口に異様なものを感じ、その手を振りほどくや身構えたのだった。

 勿論周囲は訝しがった。それに対するアマゾンの答えは、「こいつは人間じゃない。魚の匂いがする。」というものだった。視聴者的には「ああ、この親父も冒頭でイソギンチャク獣人に襲われて人食い人間にされてたもんな。」となるのだが、さすがに事情を何も知らない周囲にとってはストレート過ぎる物云い且つ、突拍子も無さ過ぎた。
 当然父親を人間じゃないと云われたイサムは愕然として怒りを抱いた。日本語そのものはマスターしても、社会人としての心の機微にはまだまだと云ったところだろうか?りつ子もさすがに咎めたが、アマゾンは持論を引っ込めなかった。
 イサムはすっかりアマゾンが嫌いになり、駄々っ子パンチをアマゾンの腹部に連打すると自分一人で行くとしてその場を去り、井口もアマゾンに対する嫌悪感は隠さず、りつ子とマサヒコだけ半ば強引に車に乗せて行ってしまった。
 井口についていくのは危ないと見てマサヒコと達を止めんとしたアマゾンだったが、井口を怪しむには証拠も根拠も無さ過ぎて、逆に藤兵衛に止められて走り去る車を見送るしかなかった。

 だが、そうなったからと云って指を咥えて見ているアマゾンではなかった。(視聴者的には)案の定、車は水族館とは違う方に向かい、訝しんだりつ子に対して井口は人食い人間となった腹部の口腔と触手を曝け出して姉弟に襲い掛からんとした。
 勿論この襲撃は追いかけてきたアマゾンによって阻止。しばしの取っ組み合い後、井口は遁走した。
 助けてくれた礼を云うマサヒコの傍らで、りつ子は事態がアマゾンの云った通りで、井口が「今評判のガランダーの人食い人間」にされていたと述べた。「今評判」とは、作戦進捗は順調でも、ガランダーの機密保持性はどうやら今回も「駄目だこりゃ」レベルだな(苦笑)。

 そして本当に機密を守る気が全くないのか、そこに「如何にもガランダーだ!」と云いながら、イソギンチャク獣人が現れた。不意打ちを食らわせつつ、「今度はこのイソギンチャク獣人様が相手だ!」と大上段に構えていたことから、どうやらこいつはかなり自信過剰な性格の様である。
 ただ、強さはその自信の程でもなかった。変身前のアマゾンに対して触手で絡め捕って、彼も人食い人間にすると息巻いていたが、触手は然程苦労した様子もなく振り解かれ、アマゾンライダーに変身されるとその格闘能力は明らかにアマゾンライダーに劣っていた。
 だが、大切断(←技呼称無し)で両腕を斬り落とされても瞬時に再生させていたので、生命力自体は強そうだったが、結局体を縮小させるや空を飛んで逃げた。
 ちなみにこのイソギンチャク獣人の容姿、全獣人の中にあって、キノコ獣人と並んでかなり不気味である。イソギンチャクを素体にした改造人間は決して多くなく、その生態からも概して不気味なものが多いのだが、このイソギンチャク獣人は「人食い」が強調され、口腔部とそこに蠢く触手がかなり強調されていたため、イソギンチャックやイソギンジャガーと比べても不気味だった。

 その間、イソギンチャク獣人と戦うアマゾンライダーよりも、父親の正体を未だ知らないイサムの方が危険と見たマサヒコとりつ子はその場を離れた。
 案の定、イサムは父であって父でないものを微塵も疑ってなかった。水族館で再会した父が一人であったことを一瞬は訝しんだが、井口が「あいつらは大法螺吹きのペテン師野郎」として、二度と付き合うなと云うとイサムは「お父さんがそう云うなら。」と受け入れた。
 余談だが、「〇〇ちゃんと遊んじゃいけません。」という親は正直好きじゃない。だが、親の立場に立てば(立ったことないが)「付き合うな。」と云いたくなるクラスメートが存在してもおかしくない社会である。子供の成長を真に望めば、自らの目と認識で友を選ぶ能力を身に着けさせることも大切で、その面における過干渉は子供の成長を阻害する。とは云え、子供の未熟さゆえ、明らかに悪影響を与えかねない付き合いを阻止しなければならないケースが無いとも云い切れないから難しい。

 閑話休題。「大法螺吹き」はともかく、「ペテン師野郎」とは、子供を捕まえて云うにはかなり違和感のある表現だが、イサムは父を疑わず、父子のみで本来は「本日休館」である水族館の機械室に入ろうとした。
 そこにマサヒコとりつ子が現れ、先のアマゾンよりは具体的に井口の正体を告げ、一緒に行ってはダメだと告げたが、さすがに説得は通じず、イサムは「絶交だ!」とし、井口はイサムと共に機械室に入ると、姉弟に「お前たちは帰れ!」と云って扉を施錠してしまったのだった。
 直後、マサヒコの叫びを聞き付けたアマゾンが室内に乱入し、イサムを襲おうとしていた井口から間一髪助けることは出来たのだが、タイミング悪くイサムは腹部も触手も目にしていなかったので、アマゾンの言を信じなかった。というより、眼前の父(の姿をしたもの)が第一だったのだろう。
 アマゾンも「父親じゃない!」、「ガランダーの手先」と云った言葉を用いて説得せんとしたが、年端も行かぬ身で母親を亡くしたイサムを男手一つで育ててくれた父への想いを述べながらその体に取り縋って号泣するイサムを前にすると、親の記憶の無いアマゾンもさすがにそれ以上の強弁が出来なかった。

 だが、実際に井口は井口であって井口でなく、ガランダーの手先と化していたことに変わりは無かった。密かにナイフスイッチが入れられるとアマゾンの足元にて落とし穴の口がぱっくり開いた。
 落下途中にアマゾンライダーへの変身を遂げるも、地下室に降り立つや頭上から透明の巨大カプセルが下りて来てアマゾンライダーを拘束。ライダーの力をもってしても破れぬ囲いに監禁されてしまったのだった。
 その地下室にはイソギンチャク獣人が待ち構えており、アマゾンライダーの弱点が南米育ち故の寒さにあるとしてカプセル内に冷凍ガスを送り込んだ。その途中、黒ジューシャによって藤兵衛・マサヒコ・りつ子も連行されてきて、イソギンチャク獣人は凍り付きつつあるアマゾンライダーの前で三人を人食い人間の餌にすると宣言した。

 この間、アマゾンライダーは身動き一つせず、一言も言葉を発さず、イソギンチャク獣人が凍結停止を命じた時には氷柱内に氷漬けにされた状態となっていた。
 そしてイソギンチャク獣人はこれを食らわんとして食卓に運ばせた。御丁寧にもガランダー帝国の紋章入りの前掛けを付け(笑)、左右に侍る黒ジューシャにはそのまま戦場で武器として使えそうなサイズのナイフとフォークを持たせ、ゼロ大帝の栄光を讃えながら黒ジューシャにアマゾンを覆っている氷柱を削らせた。
 この間、藤兵衛達は牢獄にぶち込まれていた。そこにはイサムもいて、続けて井口を含む人食い人間達が入り、にじり寄って来た。この時には井口を初め、人食い人間(にされた者)達は腹部を露わにし、イソギンチャク状の口腔と触手を見せていたのだが、イサムはそれでも「何かの間違い。」としていた。マサヒコ達の言を信じないと云うより、信じたくなかったのだろう。
 藤兵衛が三人を庇う様に間に入って対峙するも、黒ジューシャ達と戦うのとは勝手が違う。またもマサヒコは姿の見えぬアマゾンライダーに助けを求めるしかなかった。

 だが、この叫びはしっかりアマゾンライダーの耳に入っていた。ある程度氷柱が削れたところでアマゾンライダーは内部から氷柱を割って出てその雄姿を現した。生きていたことに驚くイソギンチャク獣人にアマゾンライダーは黒ジューシャから奪った巨大フォークをイソギンチャク獣人に突き付け、アジトを探る為にわざと冷凍されただけだと告げた。
 そう云いながら巨大フォークを突き付けられたイソギンチャク獣人は周章狼狽、それまでの自信過剰も何処へやら(苦笑)。次の瞬間にはジープで屋外を走り、それをアマゾンライダーがジャングラーで追っていた。
 そして逃走先に先回りしたアマゾンライダーはファイティングポーズをとって、「お前のために一人の子供の純真な気持ちが傷ついたんだ、許せん!」と怒りを露わにして一行に襲い掛かった。まあ、アマゾンのストレート過ぎた物云いに全く問題が無かった訳ではないが(苦笑)、元凶がガランダー帝国並びにイソギンチャク獣人にあったこと、父親が人食い人間にされた姿にイサムが傷ついたのはその通りだった。

 かくして最終決戦が始まった。
 前哨戦よりは善戦するイソギンチャク獣人だったが、やはり格闘の腕はアマゾンライダーが明らかに勝っていた。ただ、驚異的な再生能力を元にイソギンチャク獣人は粘り強く抵抗。大切断を二閃され、体を上・中・下に3分割されるも、即座にくっついた(ちなみにこの時の分割はガマ獣人ハンミョウ獣人と同様写真で表現された)。
 確かにイソギンチャクの中には種類にもよるが、千切れた触手からさえ全身を再生させる、プラナリア並みの再生能力を持つ種も存在する。だが、尻尾の取れたトカゲがやや短めの尻尾再生に留まるように、再生能力とて無限ではない。
 フリーザに右腕を斬り落とされたネイルが右腕そのものは再生出来つつも、ダメージや消耗した戦闘能力の回復までは出来なかったように、イソギンチャク獣人の再生能力も限界があった様で、緒戦同様大切断で両腕を落とされ、もんどりうって倒れたところに踏みつけるような飛び蹴りを食らうと口腔より黄色い泡を吐いて絶命したのだった。

 この間、藤兵衛は戦うに戦えない人食い人間相手に彼等を振り払うだけで精一杯だったのだが、人食い人間達はイソギンチャク獣人の戦死と共に、特撮界のお約束により(笑)元の体に戻った。
 どうやら人食い人間にされた時の記憶は無かった様で、何故自分達がこんなところに居るのかを訝しがっていったのだが、イサムは父が人食い人間じゃなくなったことを確信すると訝しがる父に抱き着いて号泣。周囲の人々も訳が分からないなりに安堵する中、マサヒコはアマゾンライダーが獣人を倒したお陰と断じ、それを藤兵衛も追認し、その場にいないアマゾンに礼の言葉を叫び、第21話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新