仮面ライダーアマゾン全話解説

第22話 インカ人形 大東京全滅の日!?

監督:田口勝彦
脚本:伊上勝
モモンガー獣人登場
 冒頭はとある山中で始まった。一人の猟師が空を飛ぶモモンガー獣人を猟銃で打ち落とした。猟師は自分が打ち落とした得物を探して滝壺の下までやって来たのだが、当然の様にモモンガー獣人に襲われた。
 さすがに猟師も自分が打ち落としたのが怪物だとは思っていなかった様で、人間大の獣が「探しているのは俺か?」と云いながら迫って来ては、「化け物!」との悲鳴を上げずにいられなかった。
 それでも猟銃を放って抵抗したのだが、飛行中の獣人を落下させる効果はあっても、地上でしっかりと立つ獣人には効果が無かった。そしてにじり寄ったモモンガー獣人は毒ガスを吐いて浴びせ、哀れにも猟師は白骨死体にされてしまったのだった………。

 自分を撃った相手に害意を抱く気持ちは全く分からないでもなかったが、直後の、「馬鹿めが、狙うに事欠いてこのモモンガー獣人を狙うとは!」の台詞は戴けなかった。『怪獣VOW』シリーズでもネタにされていたが、「撃って下さい。」と云わんばかりの的の大きさと無防備な飛行スタイルだったもんなあ(苦笑)

 ともあれ、白骨死体となって尚それを踏み躙るネチネチ精神のモモンガー獣人だったが、程なくゼロ大帝の召喚を受けて、その御前に現れた。ゼロ大帝はインカリヤなる猛毒のサンプルが届いたとして、モモンガー獣人にまずは耳かき一杯分の量を奥山村に用いてその威力を試すよう命じた。
 そして上空から投下されたインカリヤは空気に触れると大量の青酸ガスを発し、奥山村の村民達を次々と死に至らしめたのだった。山中の一村然とした奥山村ではあったが、一村丸ごとが死に至らしめられたと云うのはとんでもないテロ行為で、それが耳かき一杯の量で為されたとあっては恐ろしい毒物と云わざるを得なかった。
 加えて、奥山村の惨劇を観察するモモンガー獣人の元には明日六時に羽田空港にインカリヤが到着するとの一報が黒ジューシャから伝えられた。どれだけの量が届くのかは分からないが、フル活用されれば膨大な犠牲が出るであろうことは容易に想像出来た。

 そして翌朝、サングラスに咥え煙草と云う怪しさと人相の悪さを絵に描いた様な運び人が空港に降り立った。するとその背後にいた一人の男性が、迎えにきた妻と娘の元に駆け寄ろうとしたことで両者は衝突し、両者の前に人と鳥が合体したような形の人形が転がった。このシーンを見た時、シルバータイタンは思った…………「ここでインカリヤ入りの人形と普通の人形が取り違えられるんだな。」と…………うん、誰でも想像つくな(苦笑)。
 男性とその妻、更には娘までが詫びながら散らばった荷物を拾おうとしたのだが、運び屋は不機嫌に「触るな!」を連呼し、自分の物を回収すると一家に一瞥をくれてその場を去った。

 だが、この一家、娘・マルコが偶然マサヒコの知り合いだったため、一年振りにアマゾンから返ってきた彼女の父・南信夫博士(柿沼真二)をマサヒコもアマゾンと共に迎えに来たことから話が急展開した。
 南はマサヒコとは旧知だが、一年間日本を離れていたためか、アマゾンのことを知らなかった様で、アマゾンを呼ばれる青年に対し、「私もアマゾンに行ってましたが。」と偶然の一致を面白がる風だった。
 だが、そのマルコが手にしていた人形を見たアマゾンは怪訝なものを感じた。アマゾンの知識では古代インカの人形は呪に用いられるもので、それ自体が怪しく見えたのだろう。マルコが「これと同じものをさっきの人も持ってたわ。」と云うのを聞くとその行方が気にならずにはいられなかった。

 そして最前の怪しい男は一同から然程離れていない場所でガランダー帝国から迎えに寄越された車に乗り込もうとしていた。そこに黒ジューシャがいることに気付いたアマゾン(←ガランダー帝国も黒ジューシャスタイルで空港に行かせるなよな(苦笑))は単身ジャングラーでこれを追った。
 アマゾンの存在は知っていても、彼を初めてみた運び屋は追われていることに狼狽えたが、迎えに来ていた黒ジューシャは意外に肝が据わっており、無線でオートバイ部隊にアマゾン迎撃を要請すると車体からは煙幕を発し、アマゾンの追跡を文字通り煙に巻いた。
 入れ替わりにオートバイ部隊が現れ、勿論これに不覚を取るアマゾンではなかったのだが、二人打ち倒したところで、追跡が負けたことが確信され、運び屋を乗せた車も、残る二台のバイクもまんまと逃げおおせたのだった。

 場面は替わってガランダー帝国アジト。
 運搬を終え、労いの言葉をゼロ大帝から受けた運び屋は得意満面でインカリヤが、古代インカ帝国がスペインに滅ぼされる寸前に開発に成功した最強の毒物であると述べた。それを聞いたゼロ大帝は、インカリヤを活用することなくスペインに滅ぼされたインカ帝国とは異なり、ガランダー帝国は世界征服に有効活用するとしながら人形の蓋を開けたのだが、視聴者のほぼ全員が予想した様に、人形の中にインカリヤは無かった。
 怒り心頭のゼロ大帝を前に運び屋は羽田でぶつかった、同じ人形を持った一家を思い出し、大慌てで本物を取り戻すとしてゼロ大帝に許しを乞うたが、ゼロ大帝は「その役はお前ではない!」と云い放って、モモンガー獣人を招じ入れた。
 運び屋に羽田での詳細を聞かなくて良いのかな?とシルバータイタンは思ったのだが、どうやらゼロ大帝は空港にアマゾンがいて、追跡してきたことを知っていたようで、モモンガー獣人にインカリヤが入った本物の人形の行方はアマゾンを張っていれば分かるとして人形奪還を命じ、それを拝命したモモンガー獣人は作戦実行前の血祭として、任務に失敗した運び屋に毒ガスを浴びせ、猟師同様の白骨死体にしたのだった。
 直後、処刑の様を見て高笑いするゼロ大帝を見て、「何か十面鬼に似て来たな………。」と思ったのはシルバータイタンだけだろうか?(苦笑)

 場面は替わってとある郊外。
 そこでマサヒコはアマゾンをマルコの家に誘ったのだが、アマゾンは「今はいけない。」とした。はっきりとは云わなかったが、ガランダーの運び屋を見失ったのを何とかしなければと思っていたのだろう。
 マサヒコはアマゾンを誘ったのが、マルコの父・南がアマゾンと話したがっていたためで、アマゾンが来れないことを残念がり、アマゾンもまた残念がっていた。アマゾンもアマゾン帰りの南から育ちの故郷の話を聞きたかったと見えた。
 ともあれ、マサヒコは一人で南邸に行くとし、インカの人形を見るのを楽しみとしていた。そして二人の会話を付近の林に潜んで盗聴していたモモンガー獣人はインカリヤの手掛かりを得たとほくそ笑み、マサヒコを追った。
 だが、アマゾンを尾行したつもりでいたモモンガー獣人だったが、実際にはその尾行・潜伏を事前に察知されており、逆にアマゾンはこれを尾行し返すのだった。

 程なく、モモンガー獣人は南邸に侵入し、人形を見ていたマサヒコとマルコの前に姿を現すと人形を渡せと強要した。助けを求めるマサヒコに、「奴は俺に気付いていない。」としたモモンガー獣人だったが、最前のシーンが示していたように、逆尾行してきたアマゾンがモモンガー獣人の前に現れ、本能で天敵の存在に気付くジャングルの動物と同じく、誰もアマゾンを見張ることは出来ないと豪語した。
 しばしの格闘後、屋外に出たモモンガー獣人だったが、そこにアマゾンライダーが現れ、大立回りとなったのだが、やはりコイツもアマゾンライダーの敵ではなく、絞め上げられてマルコの人形を狙う訳を喋るよう強要された。
 いったんシラを切ろうとしたモモンガー獣人だったが、「通用すると思うか?」と云いながらアマゾンライダーが絞め上げると「云う!云う!」と豹変(苦笑)。そして「手を緩めてくれ。」の黄金パターンで拘束を解かれるとあっさり前言を翻して、人形の奪還を宣言しつつ、飛んで逃げてしまったのだった。猟師への執拗さと云い、運び屋への揶揄と云い、こいつも小物感満載だった(苦笑)。

 Bパートに入り、件の人形を囲み、アマゾン、藤兵衛、マサヒコ、りつ子、南一家の7人が、何故にガランダー帝国がこの人形を狙うのかを訝しんでいた。モモンガー獣人を実際に目の当たりにしていたマルコは獣人を「あの怪獣のお化け」と表現して(苦笑)その再来を恐れつつも、人形を手放すことには断固として反対した。
 結局アマゾンが家の外を見張り、藤兵衛とマサヒコが宅内・室外を、りつ子が一家と共にマルコの室内に待機し、人形を守らんとした。だが、普通に考えていつ来るか分からない襲撃者から護衛し続けるのは容易ではない。余り詳しくはかけないが、うちの道場主はかつて仕事上のトラブルで取引先の社長宅を張り込んだことがあったが、何時出て来るか分からない相手をずっと見張るのはかなり辛かった。

 そうこうする内にマルコ宛に小包が届いた。だが怪しんだアマゾンが開封を止め、箱に耳を当てると中からはコチコチと云う時計のセコンド音が聞こえて来た。べたやな(笑)。案の定、中から登場したのは時限爆弾。慌てて「捨てろ!捨てろ!」と叫ぶ藤兵衛に、「まだ大丈夫だ。」としたアマゾンは走り去るバイクの音を聞き付けるや時限爆弾をもって屋外に飛び出した。

 忽ちジャングラーでもってバイクを駆る黒ジューシャに追いついたアマゾンは「爆弾は返すぜ。」と云って、これを黒ジューシャ達に炸裂させた。しかし、直後に大網を持つ二人の黒ジューシャを駆使して現れたモモンガー獣人によってアマゾンは大網を被せられた拘束状態に陥った。
 「人形を取るつもりか?」と問うアマゾンに、モモンガー獣人は人形を取るのではなく、あの家=南邸を爆破するとした。拘束状態のアマゾンを前に我が事となれりと慢心したものか、モモンガー獣人は人形にはインカリヤの毒が入っており、家諸共人形を爆発させればインカリヤが猛毒を発し、東京全滅は達成されると豪語した。
 インカリヤ自体はアマゾンも知っており、その毒性に戦慄するアマゾンに対して、「その目で大東京の全滅を見るが良い。」として、爆弾を抱えて飛び立った。勿論アマゾンにとどめを刺さずにである(苦笑)。

 如何に拘束しているとはいえ、黒ジューシャ二人でもって網をかぶせているだけである(苦笑)。この二人、黒ジューシャにしては優秀で、拘束状態のアマゾン相手とはいえ、二人掛かりでそこそこ痛めつけもしたのだが、そうは云ってもいつまでもアマゾンを拘束するには能わず、大網も最後には振り解かれてしまった。黒ジューシャはよく頑張ったと云え、モモンガー獣人の詰めの甘さの方が責められるべきであろう。

 拘束を脱したアマゾンはジャングラーに乗ってモモンガー獣人を追い、騎乗した状態でアマゾンライダーに変身した。この間、モモンガー獣人は南邸に向けて何本もの爆弾を投下したのだが……………コントロール無さ過ぎだった(苦笑)
 家そのものへの被弾は一発もなく、また爆弾の威力自体も焼夷弾に等しかった。いくら人形を破壊し、中のインカリヤが空気に触れさせることが出来れば良いと云っても、焼夷弾程度の威力で直接命中していないとあっては、インカリヤ発揮に至る筈もなかった。

 そうこうする内にアマゾンライダーはコンドラーを放って最後の一発を南邸とは離れた工事現場付近に落とさせ、モモンガー獣人をも地面に引きずり下ろした。やはりコイツ、冒頭にて猟師に撃たれた時同様、飛行時の守備力が弱過ぎた(苦笑)。
 そして案の定と云おうか、戦いが始まるとやはりモモンガー獣人もアマゾンライダーの敵ではなかった。だが、その間、南邸内で起きたとある偶然から危機的状況が生まれようとしていた。

 邸内では、爆撃の振動によるショックか、人形の頭が取れたことで中に収められていたインカリヤが出て来た。中から物が出て来たことでガランダーの狙いがそれであることは誰にでも推測出来たのだが、それが何なのか知らない藤兵衛とマサヒコは燃やして処分しようとした。
 二人は屋外に飛び出すと、最後の爆弾が起こした小火の中にインカリヤを当然とした。これに気付いたアマゾンライダーはモモンガー獣人と戦いながら危険を伝え、その場から逃げるように必死に促した。
 しかし、アマゾンライダーの云いたいことは充分に伝わらず、藤兵衛は火中にインカリヤを投げ込んでしまった!幸い、火中を外れ、その手前に落ちたのだが、燃え盛る炎がいつインカリヤに引火してもおかしくない程度の距離しか離れていなかった。

 これを見てか、見ずか、アマゾンライダーに敵わないと見ていたモモンガー獣人だったが、自分と一緒に死ねと云い出した。思うに、抵抗を続け、アマゾンライダーがインカリヤの元に駆け寄るのを阻止出来ればその内引火によってインカリヤの猛毒が東京を全滅させると踏んでいたのだろうか。
 だが結局、モモンガー獣人の戦闘能力では仮面ライダーアマゾン版ライダーキックであるアマゾンキックの前に爆死・戦死したのだった。アマゾンライダーがキックで止めを刺した例として、対獣人カタツムリ戦や対イソギンチャク獣人戦もあったにはあったのだが、蹴り技が呼称され、このアマゾンキックがその名を出されたのはこれが最初で最後だった。

 かくしてモモンガー獣人は討ち取られた。だが、今にも引火しそうなインカリヤは取り残されたままだった。もっとも、敵を倒した以上邪魔者はもはやなく、アマゾンライダーはすぐにインカリヤを取り上げ、駆け寄ってきた藤兵衛とマサヒコに、二度と空気に触れさせない為にも地中深く埋めると宣言。かくしてインカリヤが処分された上は、もはや南邸も、インカの人形もガランダー帝国に狙われる理由がなくなり、一家には平和が戻ったのだった。

 そしてラストシーンはガランダー帝国のアジト。
 またも作戦に失敗し、歯噛みするゼロ大帝に、全能の支配者は事ここに至ってはゼロ大帝自身による直接対決が不可避であることと、それに失敗すればゼロ大帝といえども過酷な処分が待っているであろうことを暗に仄めかし、ゼロ大帝本人もそれを自覚していることを述べたのだった。
 いよいよガランダー帝国との決着も迫りつつあることを仄めかしつつ、第22話は終結したのだった。


次話へ進む
前話へ戻る
『仮面ライダーアマゾン全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和六(2024)年二月三日 最終更新