仮面ライダーアマゾン全話解説
第23話 にせライダー対アマゾンライダー!!
監督:内田一作
脚本:鈴木生朗
オオサンショウウオ獣人登場
冒頭、ガランダー帝国のロゴの入った爆弾が爆発した。その爆弾は一つの島を木端微塵に粉砕し、後には核兵器炸裂時特有のキノコ雲が上がっていた。
この爆発は実験で、実験成功を受けて全能の支配者はゼロ大帝に祝いの言葉を掛け、ヘリウム爆弾というこの爆弾が東京で炸裂すれば、京浜地帯はおろか、日本の3分の1が焼け野が原と化すと推測し、その威力に対する期待を見せていた(現存する水爆でも東京駅上空で炸裂すれば、その被害は埼玉県・千葉県・神奈川県にも及ぶ)。
そして「その死の灰の上に我らのガランダー帝国を築き上げるのだ。」と命じる全能の支配者………そんな死の大地を支配することに意味があるのだろうか?
現実の世界にて、実験や事故による惨禍を除くなら、核兵器が武器として使用されたのは昭和20(1945)年8月9日の長崎への原子爆弾投下が最後である(令和6(2024)年2月3日現在。永久に長崎が最後であって欲しい………)。それまでも核兵器が実戦で使われそうになったことは何度かあり、核兵器がある限りその危機は潜在するのだが、それでも何十年と使われずに来ているのには、核兵器による惨禍がもたらす非人道性も有るのだろうけれど、結局核兵器を炸裂させた土地に占領する価値すらも亡くなってしまうからとシルバータイタンは見ている。
死の灰に覆われた焼け野原を得る意味など無く、そこからも核兵器など存在する価値のない兵器であることを全世界の為政者が認識して欲しいものである。
閑話休題。さすがにこれ程の威力を発揮する超兵器となると、在庫が豊富にある訳ではなく、ガランダー帝国にて残されたヘリウム爆弾は一発のみで、全能の支配者は失敗は絶対に許されないとし、ゼロ大帝も万全を期して事に当たることを宣言したのだった。
場面は替わって岡村邸。邸内のテレビはガランダーによるヘリウム爆弾炸裂を報じていた。勿論マスコミはガランダー帝国の存在を知らないので、ガランダー帝国の名も、ヘリウム爆弾の名も出ず、爆心地が八丈島の南方であること、近くを航行していた飛行機・船舶に被害が出たこと、すべての核保有国が関与を否定していること、水爆の数十倍の威力であることを報じていた。
これを聞いたりつ子は一大事が起きたとベッドに眠るマサヒコに呼び掛けるも返事がない。業を煮やしたりつ子が布団をめくり上げると中から現れたのは弟・マサヒコならぬ、巨大なオオサンショウウオだった。
さすがにこれにはりつ子も息を呑まざるを得なかった。
一方、当のマサヒコは別の部屋にいて姉の狼狽を察知して駆け付けた。そんな姉弟の前で寝床にいたサンショウウオは更に巨大化してオオサンショウウオ獣人となった。このオオサンショウウオ獣人、ワニ獣人同様、素体となった生き物がそのまま巨大化したもので、ガランダー帝国のベルトすら嵌めておらず、二本足で立つことを除けば獣人と云うより怪獣に近かった。
そのオオサンショウウオ獣人にりつ子は傍らにあったラジカセをぶつけると屋外へ逃れた。だが門前には黒ジューシャ達が待ち構えていた。ゲドン以来、岡村姉弟がアマゾンの関係者であることは先刻承知され、実際に何度も標的にされたことのある姉弟だったが、敵が自宅にまで押し寄せて来たことは無かったので、凄い恐怖だったと思われるし、先手先手を打ってくるガランダー帝国側も最終決戦の意志を固めていることが伺えた。
幸い、藤兵衛が車(←何故かいつものジープじゃなくて、「や」のつく自営業者が乗るような車)で乱入したことでその場を脱したマサヒコとりつ子だったが、程なくオオサンショウウオ獣人は車の背面にへばりついていた。追いついてへばりついたのか、岡村邸の前で既にへばりついていたのかは不明だが、鈍重そうな見た目に反して素早い奴である。
だが、りつ子がそれに気づくも、藤兵衛とマサヒコが振り返った時にはその姿は消えていた。車を降りて確認するもその姿は見えず、そうこうする内に前後をガランダーのトラックに挟まれた。
勿論黒ジューシャ達には藤兵衛が立ち向かったのだが、りつ子とマサヒコを庇いながらでは如何にも分が悪い(←前々話でもそれで捕まっている)。だがそこへアマゾンが現れ、忽ち黒ジューシャ達を蹴散らした。
タイミング良く来てくれたことに感謝する藤兵衛達。アマゾン曰く、黒ジューシャ達が藤兵衛の車を追っているのを見掛けて自分も追って来たとのことで、藤兵衛はアマゾンに事のいきさつを説明し、ガランダーの襲撃を受けた岡村邸は危険なので二人を別の場所に移そうとしてると話した。
アマゾンは、それなら良い場所を知っているから案内するとしたので、アマゾンを助手席に乗せて出発せんとした。すると、助手席に乗ったアマゾンは「早く出せ。」と丸で藤兵衛に命令するかの様な口調で出発を促した。
違和感を抱きつつも車を出す藤兵衛。実際、駆け付けた時からアマゾンは終始不機嫌気味の表情で声にも抑揚が無かった。
ともあれ、アマゾンの案内で車を走らせる中、車はどんどん街中を外れた。途中、行先やヘリウム爆弾のことを離すも何処かアマゾンはぶっきらぼう。やがて藤兵衛がヘリウム爆弾をガランダーの仕業と見ていることを口にするとアマゾンは不気味に笑い出した。
異常を感じて車を止めた藤兵衛に、「さすがだな立花藤兵衛。」と云い放つその声は岡崎徹氏のそれではなく、オオサンショウウオ獣人のCVである辻村真人氏のそれだった。偽アマゾンは核実験がガランダーによるものであることをカミングアウトするとオオサンショウウオ獣人の正体を現し、「娘と小僧は貰っていくぞ!」と云って藤兵衛を車外に突き出すと待機していた黒ジューシャに運転させて走り去っていってしまったのだった。
突き出された際に軽い負傷をしたものか、足を引きずりながら悪いことの続発をぼやきながら歩く藤兵衛。そこにジャングラーに乗ったアマゾンが現れた。一瞬喜びの表情を浮かべた藤兵衛だったがすぐに顔色を曇らせた。ほんの少し前に偽アマゾンと遭遇しているのだから無理もない。
一方、ジャングラーに乗るアマゾン(←いつもより若干鼻声気味だった。このとき、岡崎氏は風邪でも引いていたのだろうか?)は何があったのかまるで知らなかった。つまりそこで藤兵衛に遭遇したのは偶然だったのだが、そんな偶然がおかしいと見られたものか、藤兵衛は傍らにあった棒きれを得物にアマゾンに殴り掛かった。
勿論アマゾンは面食らった。棒切れを受け止め、突然の暴挙を藤兵衛に糺す。自分を偽物とする藤兵衛に「本物だ!と云えば、藤兵衛は「証拠を見せろ!」と詰問(←無理ない話会ある)。
これに対してアマゾンはマフラーの色…………じゃなかった(苦笑)………偽物にギギの腕輪が有ったかを尋ねた。記憶を辿った藤兵衛は最前黒ジューシャ達を蹴散らしていた偽アマゾンにギギの腕輪が無かったことを思い出し、ようやく眼前のアマゾンが本物であることを認めた。
アマゾンにとってギギの腕輪を外すことは死を意味するので(←ここで『仮面ライダーディケイド』のワンシーンを持ち出さないで下さい(苦笑))、ギギの腕輪を装着していなかったことは偽物であることを判断する確証となる。しかし、例え紛い物でもそれに見えるものを装着していたらどうなっていたのだろう(苦笑)。
ともあれ誤解を解いた藤兵衛は改めてマサヒコとりつ子が攫われたことを告げた。一方のアマゾンは姉弟が襲われたことは知らなかったが、ヘリウム爆弾に関する報道は知っていて、ガランダーの仕業と睨んでいた。いずれにしてもまずは攫われたりつ子とマサヒコの救出である。アマゾンは単身ジャングラーを走らせてその場を去ったのだが、二人の会話は近くに潜む黒ジューシャに盗聴されていた。前話で誰もアマゾンを尾行出来ないって豪語してなかったっけ(苦笑)。
野暮なツッコミはさて置き、今回のガランダー帝国はヘリウム爆弾が一発しかないこともあってか、かなり先手先手を打ってくるのが感じられた。オオサンショウウオ獣人は縛り上げたりつ子とマサヒコをゼロ大帝の御前に連れ来て、自分の任務を問われると姉弟をたてに作戦の障害となるアマゾンを倒すことだと復命した。
普段のガランダーならアマゾンの介入を避けつつ作戦を遂行せんとするのだが、今回は先にアマゾンを倒そうと云うのだから、やはりいつもと姿勢が違った。まあ、どの道毎回介入されているのだが(苦笑)。
そしてゼロ大帝はやり直しの効かない今回の作戦への決意を示すかの様に、失敗者の運命を見せつける様に傍らにいた3人の黒ジューシャをビームランスで消してしまったのだった。
うーん………悪の組織に仲間を殺すシーンがあってはいけないとは云わないし、所謂「見せしめ」は悪の組織らしいのだが、それでも何の咎も無い仲間を示威の為だけに殺すシーンは何度見ても戴けん…………あってはいけないとは云わないが、殺した後の高笑いだけはやめて欲しかった。格がに十面鬼並みに落ちますぜ、大帝様よぉ………。
ともあれ、その直後、ゼロ大帝はアマゾンがアジトに接近しているのを察知した。アマゾンは乗り捨てられた藤兵衛の車を発見し、手掛かりを得んとして車の扉を開けたのだが、これは罠。ドアにはロープが結び付けられてあり、扉が引かれることでロープが引っ張られ、起爆装置が作動し、車は忽ち炎上したのだった。
ここでAパートが終わり、所謂えげつないCMの入り方(「次週へ続く」だったらもっとえげつない(苦笑))だったが、Bパートに入るとすぐにアマゾンは土中から這い出て難を逃れた姿を見せた。
多少は痛い目を見たようで悪態を突いていたが、それでもアジトは近い筈と見て探索を続行するアマゾン。そして河原を歩く内に異様なものを踏んづけたのだが、それはオオサンショウウオ獣人だった。
少しネタ晴らしをするとこのオオサンショウウオ獣人はガランダー帝国最後の獣人である。それゆえか総合的に見て難敵に入る方だとシルバータイタンは見ている。尻尾による連打を駆使し、プロレスで云うところのネックハンギングツリーでアマゾンを絞め上げていたので、腕力を初め戦闘能力は変身前のアマゾンに勝っていると見えた。
さすがに早々に変身せんとしたアマゾンだったが、ここでオオサンショウウオ獣人は二の矢を放った。崖上にて黒ジューシャに取り押さえさせたマサヒコとりつ子を指し示し、変身すれば二人の命は無いとした。元々姉弟を拉致したのは人質とするのが目的であることが最前のアジトで明言されてはいたが、やはり今回のガランダーは形振り構わない姿勢が随所に伺えた。
変身を封じたアマゾンからギギの腕輪を奪わんとするオオサンショウウオ獣人。だが人質状態のマサヒコとりつ子はアマゾンを追って来た藤兵衛が彼得意のバックスタブ(←過去作「奮闘!立花藤兵衛」も参照して頂けると有難い)で救い出した。
これをみたアマゾンはコンドラーで自分も崖上に上がり、藤兵衛達の周囲にいた黒ジューシャ達を蹴散らすと藤兵衛にマサヒコ・りつ子を連れて逃げるよう促した。だが、そこにオオサンショウウオ獣人が立ちはだかり、逃げるのは不可能だと宣した。
というのも、マサヒコとりつ子の体にはオオサンショウウオ獣人の毒液が注入されており、二人の手はオオサンショウウオ獣人と全く同じものに変貌し、顔面も鱗(?)で覆われ出していた。
我が身の変貌に思わず顔を伏せる姉弟。それに対してオオサンショウウオ獣人は何とかして欲しければ俺と戦えと促した。
悪の組織の怪人に似つかわしくない条件だが、りつ子とマサヒコはオオサンショウウオ獣人の挑発がヘリウム爆弾で東京及び日本の3分の1を吹っ飛ばす迄の時間稼ぎであることを知っていた。それゆえ二人は変わり果てた顔を上げ、自分達に構わず先にヘリウム爆弾を何とかするようアマゾンを促した。
藤兵衛もヘリウム爆弾が東京・日本のみならず、世界にも多大な惨禍をもたらすとしてアマゾンを促したが、結局友情の方が勝ったものか、アマゾンは藤兵衛に二人の避難を託してオオサンショウウオ獣人と対峙したのだった。まあ、去ろうとしてもオオサンショウウオ獣人が妨害に掛ったとは思うがね。
ともあれ、緒戦にして最終決戦が始まった。
アマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身。これを見てオオサンショウウオ獣人はにせアマゾンライダーに姿を変えた。そしてサブタイトル通りにアマゾンライダーとにせアマゾンライダーの対決が展開されたのだが、正直、この変身にはこれと云った意味は見いだせなかった。あるとすれば『キン肉マン』に出て来たカラスマンが云うところの「精神的な嫌がらせ」だろうか?
アマゾンライダーと同じ姿をしても、眼前の本人は勿論、遠巻きに見ていた藤兵衛・マサヒコ・りつ子にも騙される要因が無ければ、騙す理由も無かった(ほぼ同じことが『仮面ライダーX 』第29話で偽Xライダーに変身したカメレオンファントマにも云える)。
そしてそっくりに化けた容姿も、アマゾンに変身していた時同様ギギの腕輪を欠いていたので、肝心なところで完璧を遠ざけていた(この辺りの考察は過去作「偽ヒーローの作り方」も参照して頂けると有難い)。
ともあれ格闘は続いた。「何にでも化けられるのが俺の武器だ!」と豪語するオオサンショウウオ獣人だったが、能力までは完コピ出来なかった様で、結局こいつもアマゾンライダーの敵ではなかった。ただ、それでも最後の獣人だけあって、頑張った方ではあった。
殴り合いもそれなりに善戦していた。最終的には殴り倒されて変身能力も失われたが、一方的にやられっ放しという訳ではなかった。
大切断で右腕と尻尾を斬り落とされても、素体となったオオサンショウウオばりに右腕を再生し、尻尾はくっ付く等して応戦続行に臨んでいた。だが、この再生能力も限界があり、再度尻尾を斬られ、右腕を飛び蹴りで蹴り落とされるともう再生は叶わず、保護色で姿を消して遁走。アマゾンライダーは藤兵衛に残された血(体液?)を頼りにガランダー帝国のアジトを突き止め、ヘリウム爆弾を止めるとした。
そして這う這うの体でアジトに帰還したオオサンショウウオ獣人。アマゾンライダーに敗れたとの報告を受け、「おめおめ生きて戻ったと云うのか?」と冷たく難詰するゼロ大帝。これに対してオオサンショウウオ獣人は「処刑されるのは覚悟の上です。た、ただご報告を……。」とだけ云って、命乞いも云い訳もせず、その後の処置を待った。
この潔さには冷酷なゼロ大帝も多少は感じ入るところはあったものか、血の掟の例外にしなかったものの、「ようし、貴様の仇は必ず取ってやる。安心して死ね。」と、悪の組織としてはまだ温情ある台詞を投げ掛けてビームランスでもってオオサンショウウオ獣人を処刑したのだった。
かくして最後の獣人・オオサンショウウオ獣人も最期を遂げた。そしてマサヒコとりつ子の体も元に戻った、特撮界のお約束により(笑)。元に戻った我が身を振り返り、オオサンショウウオ獣人の死とアマゾンの勝利を一行は確信したのだった。
そしてそのアマゾンは遂にガランダー帝国のアジトを突き止め、黒ジューシャ達を蹴散らして侵入。だがアマゾンを挑発するかのようなゼロ大帝の声を追ってアジト内を歩むアマゾンを待っていたのは落とし穴だった。
落とし穴の底には落ちてきた者を串刺しにせんとする大きな針が何本も待ち構えていた。アマゾンの運命や如何に?というえげつない引きで次話に続いた訳だが、まあ、次話は最終回なので、まだ良しと云えるだろう(笑)。
余談 今回登場したオオサンショウウオ獣人はシルバータイタンにとってガランダー帝国所属の怪人に在って一押しの獣人である。能力よりもその性格を買って過去作「菜根版怪人戯文」にて「変身と不変心」の二つ名を贈っているので、こちらも参照して頂けると有難い。
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令和六(2024)年二月三日 最終更新