仮面ライダーアマゾン全話解説

第24話 やったぞアマゾン!ゼロ大帝の最後!!

監督:内田一作
脚本:鈴木生朗
 最終回にして、第23話の続きである。当然冒頭は前話のダイジェストから始まった。
 ガランダー帝国は八丈島南方でヘリウム爆弾の実験に成功し、それを用いて東京、京浜地方はおろか、日本全土の3分の1を破壊し、そこにガランダー帝国の新都を築かんとしていた。
 そしてアマゾンはそれを阻止すべく、倒した獣人が残した血痕を頼りにガランダー帝国アジトに辿り着いたが、仕掛けられた落とし穴を落ちて行ったのだった。

 そんな大ピンチを匂わせて終わった第23話の続きで始まったこの第24話だが、アマゾンはコンドラーを配管に巻き付けてあっさり危地を脱した。さすがに最終回でダラダラした展開は出来なかったと見える(笑)。
 そしてその間、ゼロ大帝は指令室の黒ジューシャ達にヘリウム爆弾への時限装置装着を命じ、爆破させる時刻をゼロ・アワー=本日午後1時として、所定の場所に取り付けることを命じた。ゼロ・アワーが来れば時限装置が働くだけでなく、指令室からのリモート・コントールでも起爆は可能との二段構えだった。

 かくして11時50分にヘリウム爆弾を積滞したガランダー帝国の(例のダサい(苦笑))車両は出発した。この間、アマゾンはアジト内に仕掛けられた数々の罠に苦しめられていたが、ガス・トラップを辛うじて突破したところで遂にゼロ大帝の元に辿り着いたのだった。
 アマゾンを迎えたゼロ大帝の台詞は、「儂の可愛い部下の獣人どもを数多く殺してくれた憎っくき奴め。」だった。十面鬼ほどではないにせよ、散々獣人達に「失敗=死刑」をチラつかせ、実際にゲンゴロウ獣人の分身やオオサンショウウオ獣人を処刑し、時には脅しの為だけに黒ジューシャ達を殺してきたことを思えば、「どの口が云ってんだ?」と云いたくなる(苦笑)が、まあ、前話でオオサンショウウオ獣人を処刑する前に仇は必ず取ってやるとしていたから、あくまで「血の掟」とやらに従っていただけで、必ずしも獣人達への想いが無いとは云い切れない。
 ともあれ、ゼロ大帝はアマゾンに対し、ガランダー帝国の名の下に死刑に処すると宣言し、黒ジューシャ達にアマゾンを捕えるよう命じた。勿論黒ジューシャ達に後れを取るアマゾンではない。何人か蹴散らしたところで仮面ライダーアマゾンに変身し、ついに主人公と悪の親玉が対峙したのだが、ゼロ大帝は余裕綽々だった。
 自分はアマゾンライダーなど一つも恐れていないと豪語するゼロ大帝は実力を見せるとしてビームランスを作動させた。するとその穂先から迸った火花を浴びた瞬間、アマゾンライダーの変身が解除されてしまったのだった!
 信じられない表情で再度変身したアマゾンライダーだったが、やはり同じ所作でもって変身を解除された。ゼロ大帝が云うには、ランスの穂先から出るビームがギギの腕輪と同調し、そのエネルギーを無効化してしまうとのことだった。そして無効化したことでエネルギーが消耗した為か、アマゾンは目に見えて疲労し、ゼロ大帝の下知を受けた二人の黒ジューシャにすら抵抗出来ず、鎖でもって縛り上げられてしまった。

 アマゾンを捕え得意満面のゼロ大帝はゼロ・アワーの前にアマゾンを処刑すると宣告。余程勝利及び作戦成功を確信していたのか、アマゾンに問われるままにヘリウム爆弾を置いた場所(新宿西口パインビル地下)、起爆させる手段(指令室からのリモート・コントール)、起動時間(午後1時)まで口走った。あ〜あ、云わなきゃ良いのに(苦笑)。
 これに対してアマゾンはそんなものを新宿で炸裂させればゼロ大帝達もただでは済まないとしたが、当該アジトは地下数百メートルにあり、ヘリウム爆弾と云えども平気とのことで、余裕をかますかのようにその姿を消したのだった。

 この間、ゼロ大帝の命令を受けてヘリウム爆弾を運んでいた黒ジューシャ達は新宿西口パインビルの地下に設置を完了させた。設置完了は正午で、黒ジューシャ達は急いでその場を後にした。
 一方、藤兵衛・マサヒコ・りつ子はアマゾンの身を案じ、その後を追い、オオサンショウウオ獣人の血痕を辿っていた。やがてアジト近辺まで来たところで藤兵衛は姉弟にススキの陰に隠れるように命じ、自身は単身アジトに向かった。
 その手前でヘリウム爆弾設置から戻って来たガランダーの車両に気付いた藤兵衛は物陰に姿を隠し、車を降りた六人の黒ジューシャが通り過ぎたところで最後尾にいた黒ジューシャを殴って昏倒させるとそのコスチュームを剥いで黒ジューシャに化けて先行の5人に続いてアジトに潜入した。
 この短時間における藤兵衛の工作が如何に困難で、物凄い精緻さで行われたものであるかは、過去作「奮闘!立花藤兵衛」を参照して頂きたい。藤兵衛が悪の組織のアジトに潜入した例は他作品にも見られるが、この『仮面ライダーアマゾン』第24話におけるそれは、その中でも最も優れた者で、立花藤兵衛という男、世が世なら超一流の諜報員になれたであろうと思わせるものが有った。

 ともあれ、藤兵衛は潜入に成功した。アジト内には上述の罠が健在だったが、戦闘の黒ジューシャが解除スイッチを入れたことで危なげなくゼロ大帝の御座まで到達した。そうだよな、自分のアジトに仕掛けられたトラップに嵌る様な間抜けな奴なんていないよな、普通は(笑)
 そして御座に入り、縛り上げられたアマゾンを見て息を呑む藤兵衛。勿論驚きの声を上げる訳にはいかず、報告するリーダーの背後で黙して侍立するしかなかった。
 この時点で時刻は午後0時半。ゼロ大帝はアマゾンに前言した通り、その死刑執行を宣言した。その執行を兼ねて、ゼロ大帝はアマゾンのギギの腕輪を貰うとして、黒ジューシャにガガの腕輪を持ってくるよう命じた。この後の結果を知る者としては云いたくなる………「あ〜あ、止めときゃ良かったのに。」と(笑)。

 程なく、黒ジューシャが持ってきたガガの腕輪をゼロ大帝に手渡した。このガガの腕輪と、アマゾンのギギの腕輪を一緒にすることで超エネルギーを得ることが出来ることにほくそ笑むゼロ大帝。ゲドンと同じ轍を踏まない為に余りギギの腕輪奪取を重んじてはいなかったが、あくまで方針の問題で、超エネルギー獲得自体はかなり渇望していた様だった。
 勿論そんな超エネルギーを悪の組織に渡す訳にはいかないが、それ以前の問題としてギギの腕輪を奪われることはアマゾンの死を意味する。拘束された状態でも辛うじて腕の動く範囲を駆使して変身を試みたアマゾンだったが、やはりビームランスで無効化されてしまうのだった。

 だが、ここでゼロ大帝は最大の失策をやらかしてしまった。アマゾンからギギの腕輪を外していない状態でガガの腕輪を持ったまま近付いたことで二つの腕輪は赤く光ると激しく同調した。結果、ガガの腕輪は必死に握り締めるゼロ大帝の手から離れてしまい、アマゾンに左腕に固定されているギギの腕輪と合体してしまったのだった。
 合体した腕輪は強く、白く明滅するとその衝撃か、アマゾンを拘束していた鎖も解け、アマゾンは仮面ライダーアマゾンへの変身を試みた。変身は成功し、これに対してゼロ大帝はそれまで同様ビームランスを放ったのだが、今度は通じなかった。

 狼狽えるゼロ大帝にアマゾンライダーは、「分かったか?二つの腕輪が一つになるとき、この俺の体に何物にも負けぬ超エネルギーが漲り渡るということを!」と云い放った。推測だが、その絡繰りを知っていたからこそ、バゴーも、そして十面鬼も弱点となり得ることを承知の上で双方の腕輪を腕に移植したのではなかろうか?いずれにせよ、十面鬼が、そしてゼロ大帝が渇望した古代インカ科学の超エネルギーは仮面ライダーアマゾンのものとなった。
 そして一連の流れを見ていて、危機を転じて好機となったことを悟った藤兵衛は黒ジューシャのマスクを脱いでアマゾンライダーに駆け寄った。

 これを見て、「二人とも殺してしまえ!」というゼロ大帝の命令を受けて群がってくる黒ジューシャ達を蹴散らしながら各々の行動を宣言するアマゾンライダーと藤兵衛。アマゾンライダーはアジト内にあるヘリウム爆弾のリモート・コントロールスイッチを切ると宣言すれば、藤兵衛は仕掛けられたヘリウム爆弾の起爆装置を外すと宣した。
 その為にヘリウム爆弾の在り処を尋ねる藤兵衛にアマゾンライダーは新宿西口パインビル地下と告げた。こういうことになりかねないから、やはり拘束した相手であっても爆弾の在り処は云わない方が良かったのよね、ゼロ大帝よ(苦笑)。

 両者の行動を阻止せんとする黒ジューシャ達だったが、勿論彼等にアマゾンライダーを止められる筈なく、アマゾンライダーに追跡から守られた藤兵衛はガランダーの車に乗ってりつ子・マサヒコと共に新宿西口に向かった。
 そして午後0時40分、すべての黒ジューシャが打倒され、仮面ライダーアマゾンとゼロ大帝は1対1で対峙した。ビームランス・青い雷を得物とするゼロ大帝だったが、穂先から出るビームが効かない以上、文字通り無用の長物だった。そもそもランスとは馬上槍を意味し、騎馬にてその走力を利して絶大な力を発揮する武器で、歩兵が用いるにはアンバランスで使い勝手の悪い武器である。
 実際、ゼロ大帝も剣や拳で戦っている時の方がまだ善戦していた。ただ、武器の性能を抜きにしてもやはり戦闘能力はアマゾンライダーの方が一枚も二枚も上手だった。まともにやり合ったのでは分が悪いと見たものか、ゼロ大帝はアジトを駆け回り、地の利を活かす様に剣や拳で不意打ちを繰り返したが、形勢を逆転させるには至らず、大切断で右腕を斬り落とされた。
 左腕一本でも徹底抗戦を試みるゼロ大帝は形勢回復の為その場を去らんとしたのだが、何とその途中で落とし穴の上を通り、落下して串刺しになってしまったのだった
 十面鬼よりは人望も威厳もあったゼロ大帝だったが、自分のアジト内に仕掛けられた罠に自分が嵌って死ぬと云うのは数ある特撮作品の中でも空前絶後の間抜けな死に様と云えた。
 まあ、最後の結果だけを見て個人の能力や人格を全否定するのもナンセンスだからこれ以上揶揄するのもなんだが、道場主の甥二人このシーンを初めて見た時(当時7歳と4歳)が大爆笑したことだけ付け加えておこう(笑)。

 ともあれ、かくしてゼロ大帝は倒れた。だがヘリウム爆弾はまだリモート・コントロールのスイッチも、起爆装置も健在だった。時にゼロ・アワーの5分前。
 アマゾンライダーは指令室に乱入。一方の藤兵衛は約3分前にヘリウム爆弾を発見した。だが、装置はおろかビスさえ外れず、藤兵衛はマサヒコとりつ子に逃げるよう促したが、二人とも藤兵衛が死ぬなら自分達も一緒としてその場を離れず、藤兵衛は再度起爆装置に挑んだ。
 そしてアマゾンライダーは生き残っていた黒ジューシャを絞め上げ、リモコンスイッチの在り処を詰問したが黒ジューシャは口を割らず。業を煮やしたアマゾンライダーは配電盤の様な物を自棄糞的に破壊し出したのだったが、運良くこれが功を奏し、リモート・コントロールが切れるとともの、起爆装置のセコンドも停止した。
 これを見て藤兵衛はアマゾンのお陰であると確信し、関連はよく分からんが、起爆装置がこれで外せるとした。

 ともあれ、水爆の数十倍の威力を持つヘリウム爆弾の脅威はこれで完全に去った。一安心と云ったところだが、そんなアマゾンライダーの背後から全能の支配者が不気味に笑いながらその姿を現した。ちなみにその姿は白装束に目出しの三角帽を被ったもので、丸でK●K団の団員だった(苦笑)
 アマゾンライダーにとってはその存在すら今の今まで知らなかった者なので、当然何者かと誰何し、それに対して「全能の支配者」と名乗ると、自分がいる限りガランダー帝国は滅びないとした。
 勿論これを捨て置くアマゾンライダーではない。玉座の様な所に立ったところで全能の支配者の白装束を剥ぎ取ったアマゾンライダーだったが、その下から姿を見せたのは何とゼロ大帝 (爆笑)
 ただ、自己のアジト内に仕掛けた罠で落命と云うのは余りにも惨めだったので、全能の支配者の正体がゼロ大帝だったのは、正直ほっとした(苦笑)。驚くアマゾンライダーにゼロ大帝は「ゼロ大帝は不死身だ。驚いたか?儂は支配者としてガランダーやゲドンなどすべての悪の団体を支配すると同時に、ガランダー帝国の王者でもあるのだ!」と述べた。
 詰まる所、帝王であるゼロ大帝は名前の通り、端からガランダー帝国の首領兼最高権力者で、通常は暗殺回避や、他の組織を裏で操る便宜上、影武者を玉座に立たせていたのだろう。現実の企業でも代表取締役が渉外の都合上対外的には「社長」を名乗らず、「専務」や「マネージャー」を名乗ることがあるのと似ていると云えようか?
 ちなみにガランダー帝国がゲドンを裏から糸引いていたことは明言されているし、当初モグラ獣人が極度にガランダー帝国を恐れていたことからも納得出来るのだが、「すべての悪の組織」にショッカーからGODが含まれるかは不詳である。

 ともあれ、全能の支配者改め真のゼロ大帝はアマゾン殺害を宣言し、何本ものジャベリン(投擲槍)を放って攻撃を仕掛けて来た。だが、結局のところ、戦闘能力においてこのゼロ大帝もアマゾンライダーの敵ではなかった。
 ジャベリンは1本も命中せず、逆にアマゾンライダーが拾い上げたジャベリンにどてっ腹を刺されて悶絶。影武者同様大切断で右腕を斬り落とされ、残された左手でジャベリンを抜いて苦悶しながらアマゾンライダーを刺さんとするも通じず、その左腕も大切断で斬り落とされた。
 そして悶絶するゼロ大帝に背を向けると右腕を頭上高く掲げるとスーパー大切断(←アクション的には通常の大切断と変わらず)でもってゼロ大帝を首ちょんぱし、遂にラスボスを倒したのだった。
 ゼロ大帝の死に伴い、当然の様にアジトが崩壊し、ここにガランダー帝国も壊滅。勿論基地自爆にアマゾンライダーが巻き込まれて落命することは無かった(笑)。

 そして作品そのもののラストシーンを迎えた。
 腰蓑一丁で日本にやって来た男・アマゾンは白いスーツ、薄紅のカッターシャツ、茶色のネクタイといういで立ち(←岡崎氏の自前らしい)で南米アマゾン行きの船に乗り込んだ。勿論、港には立花藤兵衛、岡村マサヒコ、岡村りつ子の姿もあった。
 「どうしてもアマゾンに帰るの?」と問うりつ子に、アマゾンは「俺の故郷はアマゾンだからな。」と云って肯定した。そりゃあ、ゲドン・ガランダーと半年間戦った日本より、大自然の過酷さがあっても平和裏に22年成長したジャングルの方が心情的に故郷と云えるだろう。
 歴代仮面ライダーが新たな戦いや自らを鍛える為に旅に出るのとは異なり、純粋な「帰国」と云えた。
 そんなアマゾンに涙を流しながら、「もう帰って来ない?」と問うマサヒコだったが、それに対して寂しげに、そして気まずそうにしつつもアマゾンは答えず、船に乗り込んだ。
 船中の人となったアマゾンを見送りつつ、「あいつはいつかまたきっと日本にやって来るよ。」と述べる藤兵衛。「いつ?」とマサヒコが問えば、「日本が悪い奴等の為に脅かされるようなときにだ。」と藤兵衛は答えた。
 そして無表情に何処かを見つめるアマゾンを映して『仮面ライダーアマゾン』全24話は完結したのだった。

 ちなみに立花藤兵衛が岡村マサヒコに最後に云った「日本が悪い奴等の為に脅かされるようなときにだ。」と云う台詞、シルバータイタン的には仮面ライダーシリーズの原作者である石ノ森章太郎先生が生前に残した「時代が必要とするとき、仮面ライダーは甦る。」の名言が連想される。
 これは云い換えれば、「仮面ライダーが不要な世の中が好ましい。」とも取れる。アマゾンと再び会うことを渇望するマサヒコには悪いが、アマゾン個人の立場に立つと、アマゾンがジャングルから出ずに済むような世であって欲しいと思ってしまう次第である。勿論それじゃあ後々の作品が成り立たないのは分かるのだがね(苦笑)。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新