仮面ライダーアマゾン全話解説

第3話 強くてハダカで速い奴!

監督:山田稔
脚本:大門勲
カマキリ獣人登場
 冒頭はゲドンのアジトから始まった。アジト内ではゴルゴスが不気味な呪文を唱え続けており、巨岩の口腔より大量の泡が発せられるとその中から一体の獣人が生まれ出て来て、それを9つの顔が見守っていた(←ちなみにこの第3話から、9つの顔もゴルゴス同様真っ赤な色になっていた)。
 泡の中から生まれ出たのカマキリ獣人。そのカマキリ獣人十面鬼が与えた命令は人々を殺して回るという物騒なものだった。まあ悪の組織がやらかすことは皆物騒なのだが、この命令が取り分け物騒なのは、「殺人事件を起こせばそれを調べにアマゾンがやって来る。」と踏んでのもので、詰まる所アマゾンを誘き寄せて襲って殺してギギの腕輪を奪うのが目的な訳で、その為に巻き添え的に殺される人々を意に介していない身勝手振り・冷酷振りに注目すればである。

 場面は替わって岡村邸。そこではアマゾンへの接し方を巡ってマサヒコとりつ子が口論(というのは過言だが)となっていた。
 マサヒコは亡き父の服をもってアマゾンに会いに行こうとしていたのだが、りつ子はそれに難色を示していた。第1話で伯父である高坂教授を殺されたことで既に父親を亡くしていた岡村姉弟は互いが互いをこの世に唯一人残された肉親とする身だった。
 アマゾンに接触することでゲドンとの事件に巻き込まれてマサヒコの身に万が一のことが起きるのを心配する余り、マサヒコにアマゾンと会うなと告げるりつ子だったが、これは決してアマゾンへの悪意ではない。ただただマサヒコを危険から遠ざけたいだけで、恐らく理屈としてはゲドンが悪いのであって、アマゾンが悪い訳ではないことを理解しているのだろう。
 結局、マサヒコがアマゾンに強くて優しかった亡き父の影を追いつつ、友達としていることに絆される様にリンゴとお菓子をマサヒコに持たせていたのだから、決して分からず屋という訳ではなかったのだろう。

 場面は替わってとある川。そこではアマゾンが食糧にすべく魚を捕まえていて、首尾よく魚を捕えて満面の笑みを浮かべていたが、突如響いてきたバイクのエンジン音に顔を曇らせた。
 川の近くにはオートレース会場があり、何台ものバイクが爆音を轟かせ、次々と走り去っていったのだが、このエンジン音、野生児アマゾンにとっては極めて不快なものだった。前話における電車もそうだが、アマゾンが成長してきた南米アマゾンのジャングル奥地にはエンジン音はなく、そんなアマゾンにとってエンジン音は、「騒々しいもの、嫌なもの、危険なもの、恐ろしいもの」(ナレーション談)だった。
 一方、レース会場にはアマゾンとは違う意味で次々走り去るバイクに目を向ける者がいた。カマキリ獣人である。十面鬼から与えられた命令通り、カマキリ獣人は自分を生んだ十面鬼同様口腔部から泡を吐き、レーサー達を行動不能に陥らせ、次々と襲撃。それによりゴールには誰一人現れず、審判や見物客達が訝しがっていた。
 そしてカマキリ獣人が更なる殺害標的として見定めたのはゼッケン3番の男で、外したゴーグルの下から現れた顔は立花藤兵衛!!前作『仮面ライダーX 』の最終回からカウントして3週間ぶりにブラウン管にその姿を現した訳だが、眼前の怪人に抗する術もないまま逃げ惑っていたが、そこはそこ、歴代悪の組織と戦っていただけのことはあって、抵抗は出来ずとも容易に襲われるままでいた訳ではなく、蔦を登ったり、川に向かったり、と片足を泡で可動不能状態に陥らせられても諦めず抵抗し、助けを求め続けた。

 そしてその声を聞き付け、駆け付けて来たのは我等がアマゾン。
 即座に駆け付け自分を助けてくれるも、現れた男の風体に戸惑う藤兵衛。そんな藤兵衛の視線に気づくことなく、白兵戦を展開するアマゾンだったが、滝下に着地すると、赤ジューシャに取り押さえられた藤兵衛の前でアマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身した。
 5例目の変身を目の当たりにした藤兵衛が驚愕したのは云う迄もない(注:仮面ライダーアマゾンは6人目の仮面ライダーですが、作品を通してみる限り、藤兵衛がライダーマン・結城丈二の「変身」を目の当たりにするシーンが確認出来ないため、「5例目」としています)。
 そして驚く藤兵衛を赤ジューシャ達が取り押さえ兼ねたことで藤兵衛は滝に転落。それをアマゾンライダーが救わんとしたことで二人して滝壺に姿を消し、両者は戦線を離脱することとなった。

 アジトに戻ったカマキリ獣人と赤ジューシャ達は事の顛末を報告し、行方不明となったアマゾンが生きているか、死んでいるかで十面鬼の顔達の論議が紛糾したが、結局ギギの腕輪を手に入れる方針に変更はなく、生死確認を含めたアマゾン捜索が命じられた。
 その頃、アマゾンは負傷した藤兵衛とともに川岸に逃れ、座していたが、藤兵衛は変身をした眼前の男の素性が気になって仕方なかった。だが、それを尋ねてもこの時点ではいくつかの単語を知るだけのアマゾンとは会話が成立しなかった。
 幸い、そこにマサヒコがやって来たことでコミュニケートが可能となった。ちなみにマサヒコはその場にいた藤兵衛を「誰?」としていたが、藤兵衛は高坂教授の友人で、その甥であるマサヒコのことも覚えていた。恐らく高坂教授には子供がいなかったから、教授が生前我が子同然にしていたマサヒコを覚えていたのだろう。
 だが、マサヒコは以前に会った時幼かったものか、「元有名なレーサーの……いやいや今だってバリバリだ!」とする藤兵衛を「知らないな。」と一蹴し、「余りアマゾンに馴れ馴れしくしないで欲しいな。」と何処か邪険だった。
 まあ、設定年齢小学校二年のマサヒコゆえ、大事な友人を独り占めにしたい気持ちがどこかにあるのだろう。ただ、「アマゾン」の名を聞いた藤兵衛は「これが高坂の云っていたあの男か……。」と呟いた…………高坂教授、何人に話してんねん?(苦笑)
 まあ、ゲドンという悪の組織を知っていた高坂教授が、かつて幾つもの悪の組織と戦ってきた藤兵衛の過去を知っていれば、彼がバゴーやアマゾンについて知るすべてを話していたとしてもおかしくはないのだが。
 ともあれ、五度変身する仮面ライダーと知り合ったことで藤兵衛は何処か嬉しそうだった。

 だが、元々教え子だった本郷猛、ある日突然知り合った一文字隼人・風見志郎・神敬介達とアマゾンはかなり勝手が違った。アマゾン御手製の薬で足の負傷が幾分楽になったことに礼を述べる藤兵衛だったが、言葉が余り通じない。
 しかしマサヒコとは心が通じる様子にどうしたものかと思案していた藤兵衛だったが、そこに男性の声で悲鳴が聞こえた。

 アマゾンが駆け付けるとそこにはカマキリ獣人に殺された釣り人が横たわっていた。だがカマキリ獣人はすぐに逃走。入れ替わるように殺された釣り人の仲間三人が現れ、仲間が死んで倒れていることに驚き、アマゾンを詰問したが、アマゾンは弁明が出来なかった。
 激しく頭を振るも、言葉を発しないアマゾンを、人殺しと決めて掛かった釣り人達は仲間の仇とばかりにアマゾンに殴り掛かった。何とか自分がやったのではないことを伝えんとしたいアマゾンは抵抗する訳にもいかず、ただただジェスチャーで殺人犯であることを否定する様に頭を振り続けたのだが、釣り人達にその意は伝わらなかった。
 やがて逃げるように山小屋に飛び込んだアマゾンは、最前自分に浴びせられた暴言を思い返し、自分が犯人じゃないことを信じて貰えない憤りから、山小屋内の者に八つ当たりする様に暴れた。
 視聴者にはアマゾンの気持ちを代弁したナレーションでその思うところが分かったのだが、それを聞かされていない人から見れば、ただただ物を投げては叩きつけて壊している様にしか見えなかった。

 そんなアマゾンに同情の意と、励ましの言葉を掛ける藤兵衛だったが、アマゾンは最前浴びせられた「馬鹿野郎!」という言葉を連呼。だが藤兵衛はそれを真正面から受け止め、その怒りをエネルギーとするよう呼び掛けるのだった。

 場面は移ってとある海岸。
 一頻り感情を露わにしたことで多少は落ち着いたものか、アマゾンは海岸に座り込んでぽつねんとしていた。そのアマゾンに藤兵衛は最前助けてもらったお礼としてプレゼントがあると告げた。
 言葉の意味は分からずとも、「プレゼント」とという耳慣れない言葉に多少の関心を抱いた様子のアマゾンだったが、プレゼントの正体がバイクと知ると、忽ち嫌悪感を露わにし始めた。
 藤兵衛にしてみれば、助けてもらったお礼であり、今後ゲドンと戦う為の戦力提供でもあり、「君、これ、乗る」と促すも、アマゾンは「俺、乗らない!」と絶叫して拒否反応を示した。
 勿論拒否られたからといって簡単に引き下がる藤兵衛ではない。「君、乗る!」、「乗らない!」の押し問答となり、到頭業を煮やしたアマゾンは藤兵衛を突き飛ばすや、バイクをリフトアップし、海中に投げ込んでしまったのだった。

 予想外過ぎる反応に、「これは今までのライダーとは相当違うわい…このへそ曲がりめ!」と困惑の表情と言葉を発した藤兵衛だったが、「こうなったら意地でも乗せて見せるからな!」と云い放っているのを見ると、どっちの方が臍曲がりか分かったものでは無かった(苦笑)
 そして次の瞬間笑顔になった藤兵衛は、「こういうこともあろうかと思ってちゃんと用意してきたんだ!」と云って披露したのは2台目のバイク………「こういうこともあろうか」って……………どんな想定なんだよ、藤兵衛さん(苦笑)。しかし2台ものバイクを即座に用意出来る財力は羨ましい………。

 ただ、今度は藤兵衛も無理に乗せようとはせず、「乗る乗らないは別として、説明だけはさせて貰うぞ。」として、ハンドル部分をメインにアクセル・ブレーキ・クラッチの説明を展開した。そしてエンジンを吹かせるとクラッチを切り、ギアを入れた後にクラッチをゆっくり繋いで発進するという基本動作を見せ、「これはお前より早いんだ!」と説いたが、元々エンジン音を嫌悪していたアマゾンには説明が耳に入っている様子は無く、ただただ不快な物が現れたとしか映っていなかった。
 そんなアマゾンを挑発する様に藤兵衛は「乗りたいとは思わんか?」と投げ掛け、「悔しかったら追いついて見ろ!」とした。そして挑発に乗ったアマゾンとバイクと駆けっこになった訳だが、好悪はどうあれ、バイクに関心を向けさせたことでほくそ笑んでいた藤兵衛だったが、アマゾンに気を取られ過ぎたことでハンドル捌きを誤り、海中に転倒したのだった。

 濡れた体を温めるべく、焚火を行い、パンツ一丁で火に当たる藤兵衛の姿を笑うアマゾンだったが、これに対して藤兵衛は、「何がおかしい?おまえだって裸じゃないか!」と返して笑い返したのだが、これが一つのコミュニケートとなって両者が打ち解ける元となったようだった。
 その直後、薪を集めていたマサヒコが赤ジューシャに襲われ、助けを求める声を聞き付けたアマゾンはマサヒコを助けたい一心であれほど嫌ったバイクに躊躇なくまたがるや、即座に走らせ、マサヒコ達の元に駆け付けた……………うーん……個人的な愚痴になるが、一応シルバータイタンも普通自動二輪免許を持っている。普通免許を取得してから二輪免許に挑んだから、学科も技能もかなり少なかったのだが、それでもちゃんと教習を受けながら●時間延長した記憶を振り返ると、上述の藤兵衛の説明だけでバイクを乗れるようになったアマゾン凄過ぎ………羨ましい………。

 ともあれ、アマゾンは忽ち赤ジューシャを蹴散らしてもマサヒコを救い出したが、そもそも今回のゲドンはカマキリ獣人によるアマゾンの直接襲撃が目的で、ここに最終決戦が展開された。
 アマゾンは遅れて駆け付けてきた藤兵衛にマサヒコを連れて避難するようジェスチャーで促すと自身は仮面ライダーアマゾンに変身した。そしてその最終決戦だが、これは何とも云えない戦いだった。
 というのも、このカマキリ獣人、全くと云って良い程喋らないので感情や思考が読めない(一応、山下啓介氏がCVではあったが)。特別強くも無ければ弱くも無かったが、解せないのはカマキリがメインウェポンとしている蟷螂による切断力を発揮することも無ければ、レーサー達を襲う際に使った麻痺性の泡を吐くことも無かった。
 ようやく口泡を浮かべたかと思うと、その泡がアマゾンライダーに向けて発射された訳ではなく、泡はカマキリ獣人の全身を覆い尽くすと海中に倒れ、そのまま絶命したのだった。

 何とも良く分からない死に様だったが、推測するに、これは敗北を悟ったカマキリ獣人による一種の自害だと思われる。第1話でも、第2話でも十面鬼は敗れて逃げ帰ってくることを許さなかった。部下に対してそんな考えを強要していたのだから、自分で生み出した獣人なら端からその思想をインプットしているであろうことは想像に難くない。
 いずれにせよ海岸での戦いにアマゾンライダーは勝利し、陸地に戻るアマゾンライダーをマサヒコと藤兵衛が笑顔で迎え、まだまだ謎や未知との遭遇が多い中、アマゾンライダーは真の意味で仮面ライダーになろうとしていることを匂わせつつ、第3話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新