仮面ライダーアマゾン全話解説

第4話 走れ!怒りのジャングラー!!

監督:山田稔
脚本:大門勲
獣人大ムカデ登場
 冒頭、場面はゲドンアジトでいまだ仮面ライダーアマゾンを仕留められていないことをいきなり十面鬼に怒られている獣人大ムカデがいと哀れだった。ただ、十面鬼獣人大ムカデにそこそこ期待している様で、刺し違えてでもアマゾンを倒すと宣言する獣人大ムカデに対して、珍しく満足げで、巨岩の9つの顔達は口々にアマゾンを誘き出して倒すよう促し、赤ジューシャで編成されたオートバイチームが姿を現した。
 ゲドンの赤ジューシャは、普段赤の全身タイツを纏い、(ガランダー帝国の黒ジューシャもそうだが)腕からエル●ス・プレ□リーかジュ〇ィ・オン▲の如く無数の糸を垂らしていて、戦闘員と云うより取り巻き妖精っぽくて、スーツアクトレスの方々には誠に申し訳ないが、どうにも色気を感じなかった。
 逆に、獣人大ムカデの号令一下、姿を変えた薄紅色のライダースーツ姿の方が色気を感じたものである。まあシルバータイタンの趣味っちゃあそれまでかも知れないが………。

 場面は替わって車のスクラップ工場。そこでは大きな図面を前に立花藤兵衛が対ゲドンへの戦意を燃やしつつ、ニューマシンの製作に取り掛かろうとしていた。ネタばらしになるが、ライダーファンには見え見えなので先に書いてしまうが、アマゾンライダー専用マシーン・ジャングラーの製造である。
 だが、そんな藤兵衛の奮闘を知らず、アマゾンは何故自分がゲドンに狙われているのかを疑問に思い、少しずつ上達していく日本語でマサヒコに尋ねた。「それが分かれば苦労しないよ。」とぼやくマサヒコだが、口調とは裏腹にアマゾンの悩みと真剣に向き合っていた。
 手掛かりを求めて伯父・高坂教授のアルバムを丹念に調べていた際にも、相変わらずりつ子がアマゾンに関わるのを感心しない旨を遠回しに伝えていたが、マサヒコは「悪いのはゲドン」であり、アマゾンが悪い訳ではなく、自分一人でも孤独な彼の支えになることを改めて宣言した。
 「相変わらず」と書いたものの、りつ子も決して分からず屋な訳ではなく、理屈では悪いのはゲドンであって、アマゾンが善人なのも、そんなアマゾンをとことん信じて味方するのが弟の良いところであることも充分承知しているのだろう。とはいえ、まだ年端も行かないマサヒコガがアマゾンとゲドンの抗争に巻き込まれるのを懸念する気持ちも本物だから、何とも複雑だったようで、「しょうがないな。」とぼやく他ないようだった。

 程なく、マサヒコはアルバムの中に高坂と親し気に移っていた山村創造(二瓶秀雄)という人物に気付き、彼なら何かを知っていると踏んでアマゾンを伴って山村邸を訪れたのだった。
 果せるかな、山村はゲドンの秘密を知る人物だった。だが、マサヒコが高坂との関係から辺りを付けた様に、ゲドンの方でも一足先に山村を危険視し、口封じに動いていた。結局、マサヒコ達が山村邸に来た時には赤ジューシャ達が捜索している最中で、当の山村は娘の正美をつれてとあるホテルに隠れ潜んでいた。

 山村は、ゲドンの秘密を知る自分を必ず殺しに来ると見て、その怯え様は「もううちには帰れない。」との諦観を抱く程だった。だが、マサヒコと同い年、一、二歳年下と見える正美には訳が分からなかった。
 しかし、如何にゲドンに怯えたからと云って良く分からない逃避行である。海外に高飛びするならまだ分からないでもないが、ホテルに隠れ潜むなんて如何に大金をもって移動していてもいずれ資金は尽きるし、正美の就学問題なんかどうするつもりなんだろう?見たところ手荷物も少なそうだったし………。
 ただ、山村の潜伏は御世辞にも巧みとは云えなかった。ゲドンに追われる身なのに正美が愛犬と散歩しているものだから(一応、山村は許可していなかったが)、程なく赤ジューシャの嗅ぎ付けるところとなり、マサヒコにまで目撃されている始末だった。赤ジューシャを追ってアマゾン(←自分の境遇を知りたくて必死だったので、苦手な都会を駆けずり回っていた)が、マサヒコを追って藤兵衛が追随してきたから、ストーリーは急速に進んだ。

 40階ある高層ホテルの最上階で、部屋数も多いことからそれなりに考えての潜伏だったと思われるが、正美が部屋に戻った直後に父子は赤ジューシャに襲われ、直後にマサヒコ&藤兵衛が飛び込んだ。襲っていたのは二人の赤ジューシャで、当然藤兵衛がこれに抵抗したのだが、さすがに一般人と子供二人とプードルを守りながらはきつかった。
 まあ、程なくアマゾンが(窓から)飛び込んできて、赤ジューシャ達は撃退された。

 一難去ったところで、場所は山村邸に移り、藤兵衛がメインとなって山村からアマゾンやゲドンのこと、高坂の知っていたことを聞き出さんとしたのだが、山村は非協力的だった。アマゾンに悪意があるのではなく、ゲドンへの極度の恐れから、「関わりたくない!」の一念で凝り固まっていて、「私は知らない!」の一点張りだった。
 だが、ゲドンへの恐れ振りからも山村が何がしかの機密を知っているのは誰の目にも明らかで、山村自身、「知らない!」を連呼しつつも、それがゲドンへの恐れからであることは明らかにしていた。何より、関係の無い者達も平気で巻き添えにする残忍性と組織力を恐れ、その害が愛娘に及ぶことを最も恐れていて、その頑なな態度を解くのは容易ではなかった。

 確かに山村のゲドン観は正しかった。一先ず引き返そうとした山村に一先ず出直すことを口にした藤兵衛だったが、山村はもう関わらないで欲しいとした。だが、藤兵衛は山村父子を守らなければならないとして、これで終わら差ない旨を告げ、情報を得られなかったことに肩を落とすアマゾンに対しても、山村の頑なさがゲドンへの恐怖から来るものであることを諭し、遠回しに山村を責めないように促していた。この辺り、さすがに三作品に渡って悪の組織と戦い、老若男女様々な人々と接してきた立花藤兵衛である。この役割をマサヒコに求めるのは無理があるしな(苦笑)。

 Bパートに入り、一夜が明けて尚、アマゾンは山村邸を張っていたが、山村は自宅の地下道から正美と共に密かに逃亡を図っていた。だが、その出口には獣人大ムカデが待ち構えていた。その奇声を頼りにアマゾンはすぐに地下道を見つけ、屋外に出たが、そのとき既に山村父子は捕らえられてジープに乗せられ、そのまま拉致されようとしていた。
 即座に追うアマゾンだったが、いくら野生児にして改造人間のアマゾンでもこれはきつかった。だが、撒かれかけたその刹那、そこへ藤兵衛とマサヒコが冒頭で製作していたアマゾン専用マシーン・ジャングラーを押してやって来た。
 前話で成り行きからとは云えバイクの運転をマスターしていたアマゾンは躊躇うことなくジャングラーに騎乗して、追撃に掛った。それを見ていた藤兵衛は本当に嬉しそうだった。恐らく、藤兵衛がマシーンを自作したのは『仮面ライダー』における新サイクロン号以来のことで、余程嬉しかったと見え、ジャングラーを藤兵衛が作ったことに驚くマサヒコに、高坂教授がアマゾンから持ち帰った設計図通りに作ったことを話すのも、自慢話の様に嬉しそうだった。

 ともあれ、ジャングラーに乗るアマゾンはすぐにその視界に山村父子をジープに乗せて逃走する三人の赤ジューシャ達と、それに並走する2人の赤ジューシャライダー達を捕えた。
 車中に拘束された山村は自分達をどこへ連れて行くつもりだ?と尋ねるも、赤ジューシャは「黙っていろ!」と云いたい気にフォイルを山村の咽喉元に突き付けるだけだった。とかく、赤ジューシャは歴代悪の組織の戦闘員の中でも話し合いが通じない存在だった。
 その後、二人の赤ジューシャをバイクから叩き落したアマゾン………映像の合成具合から、実際にバイクを走らせながらやっていたアクションでないのは分かるのだが、上半身裸でバイクアクションって、凄い恐怖だっただろうなあ………一応、岡崎氏はスタントマンの訓練も積んだことがあるらしいのだが、後年、『非情のライセンス』の撮影中にバイクで事故って負傷し、それが元で芸能界を引退した事実を知っているだけに、バーバリアンスタイルでのバイクアクションには少々眉を顰めてしまうものである。

 ともあれ、アマゾンはジープに乗り込み、車中の赤ジューシャ達を叩き落とすと運転していた赤ジューシャを絞め上げて強制停車させると山村父子を縛っていた縄を噛み切って、その戒めから解き放った。
 ともにその場を逃れんとした三人だったが、その行く手に獣人大ムカデが立ちはだかった。山村は両者の戦いの間隙を縫ってその場を正美と共に離れたが、結論から云えばこれはアマゾンの庇護下から離れるという命取り選択だった。
 程なく赤ジューシャが自分達を追ってくるのに気付いた山村は正美を別方向に逃がし、赤ジューシャ達を自分の方へ誘き寄せ、結局自身は追いつかれてしまった。

 その間、獣人大ムカデと対峙していたアマゾンは右足を噛まれて負傷したことでそのまま戦うのを不利と見たものか、このタイミングでアマゾンライダーに変身した。基本、変身後のアマゾンライダーが獣人相手に後れを取ることはなく、この獣人大ムカデとの戦いも然したる苦戦はしなかったのだが、獣人大ムカデはその長い体による締め付け攻撃を行うことで、アマゾンに決定的な打撃を与えることは能わずとも、時間のかかる戦いに持ち込むことには成功した。
 その間、アマゾンの視界には赤ジューシャ達に襲われる山村の姿が映っており、これには焦りを感じずにはいられなかった。山村は「私は何も喋らん!」と云って、ゲドンへの敵意がないことを仄めかす形で助命を請うたが、赤ジューシャから帰って来た台詞は「我々の秘密を知った者はすべて消す!」で、とかくこいつ等は話し合いが通じない存在だった。
 結局、哀れにも山村はフォイルで滅多刺しにされ、致命傷を負った。瀕死の山村に出来るのは、娘を案じ、喋らないことを約束して助命を請うのに一切聞く耳を持たなかったゲドンを呪うことだけだった………。

 一方、アマゾンライダー対獣人大ムカデの格闘は組打ちをメインとして進行し、アマゾンライダーは噛み付きをメインとした行動を行っていたが、最後には大切断で喉笛と脳天をカチ割って勝負を決めた。
 勝利したアマゾンライダーは即座に瀕死の山村の元に駆け付けた。辛うじてまだ息の合った山村だったが、助かりそうにないのは誰の目にも明らかだった。山村はアマゾンに非協力的な態度を取ったことを詫び、早くに協力すべきだったことを後悔していた。
 まあ、これは結果論でしかない。我々視聴者はゲドンが敵視したが最後、一切交渉に応じずただただ殺しに来るだけの邪悪且つ短絡的な組織であることを知っているから、「山村もさっさと協力していれば良かったのに……。」と無責任に云えるが、同じ立場に立たされたら逃げを選ぶ者も少なくないだろう。
 いずれにせよ、こうなった以上山村には息のある内にアマゾンに伝えるべきを伝える他なかった。だが虫の息の山村はゲドンが十面鬼の率いる組織で、ガガの腕輪を持ち、それがアマゾンのギギの腕輪と対を為す存在であることを伝えようとしたところで力尽きた。
 結局、それ以上のことが伝わる前に山村創造も殺されたしまった訳だが、するとそれ以上の機密が伝わらなかったのを安心したかのようなタイミングで上空に十面鬼が現れ、山村の次に死ぬのはアマゾンライダーであると宣言しながら高笑いし、巨岩に埋まった9つの顔もそれに追随する様に高笑いし、そのまま飛び去ったのだった。

 もし山村の口から重要情報がアマゾンに伝わったら即座にアマゾンを殺すつもりで側近くに待機していたのでは?と推測してしまったのだが、機密が殆んど漏れなかったことで撤収…………もしかして、アマゾンの事怖がっている?
 まあ十面鬼の真意は不明だが、勝負には勝っても、機密を巡っては最後の手掛かりを絶たれたのだから、珍しくゲドンの狙いが達成されたこととなり、悔しさと怒りを静かに滾らせるアマゾンライダーだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新