仮面ライダーアマゾン全話解説

第2話 十面鬼!神か?悪魔か?

監督:塚田正煕
脚本:大門勲
獣人吸血コウモリ登場
 冒頭、サブタイトルより先に第1話のダイジェストが流された。
 バゴーの暗示に従って日本に来たアマゾンは十面鬼率いるゲドンと、その先兵であるクモ獣人に襲われる最中、マダラオオトカゲの改造人間仮面ライダーアマゾンとなり戦いに勝利したのだが、彼と彼の境遇の秘密を知る高坂教授はそれを伝える前にクモ獣人の手に掛かってしまい、自分が何故襲われるのか?腕に嵌った腕輪は何なのか?何故異形の姿に変化するのか?すべてが分からない状態で、唯一人心を通わせたマサヒコの存在だけが僅かな心の慰めとなっていた。

 そんなアマゾンはある夜、アマゾンのジャングルでは決して見ないであろう電車の放つ光、発する轟音、その巨体に狼狽していた。一種のカルチャーショックだろう。そしてそれがどんなものか分からないアマゾンは僅かに接触することで軽い怪我を負った。
 それを、シェパードを連れて散歩中だった女性・正子(荒牧啓子)が目撃し、駆け寄って来た。

 普通なら夜中にパンツ一丁で徘徊して負傷している物凄い形相の男を見れば、若い女性なら悲鳴を上げて逃げ出しそうなものだが、この正子はりつ子の友人で、マサヒコからアマゾンのことを聞かされており、風貌や立ち居振る舞いから眼前の男がアマゾンであると推察し、警戒心を解かないアマゾンに対して委細構わず止血の為のハンカチを撒くと、マサヒコを呼んでくると告げた。なかなかに肝の座った女性である。
 だが、マサヒコが急ぎ駆けつけてきたその場にアマゾンはいなかった。と云っても逃走した訳ではなく、獣人吸血コウモリの襲撃を受けており、一騎打ちが展開されていたのだった。

 飛行機事故のため乳飲み子の身でアマゾンの奥地に放り出され、以来23年間野生児として生きて来たアマゾンは身体能力に優れ、変身前の生身でもゲドンの獣人相手にそこそこ互角に戦っていた。
 程なく、仮面ライダーアマゾンに変身。いよいよ決着か思われたその刹那、正子の連れていたシェパードが勝負に乱入し、それによって獣人吸血コウモリは投げ飛ばされたのだが、その先は正子の下で、獣人吸血コウモリは行き掛け駄賃とばかりに正子を襲い、正子は血を吸われた。
すぐにアマゾンライダーが割って入って引き剥したのだが、正子は重傷を負い、彼女の介抱を優先したため、獣人吸血コウモリには逃げられてしまったのだった。

 かくしてアジトに逃げ帰った獣人吸血コウモリだったが、ゲドンの首領十面鬼ゴルゴスが敗北を許さない残酷なボスであることは既に第1話にて視聴者にも周知だった。
 案の定、逃げ帰ったことを難詰される獣人吸血コウモリ十面鬼は我が身を捨てても敵を倒すのがゲドンの掟で、結果としてそれを破った獣人吸血コウモリに対して一切云い訳は聞かないという態度を取り、「そんなに命が惜しいか?」と難詰した。
 これに対して、「自分の命はゲドンに捧げています。」と告げた獣人吸血コウモリだったが、十面鬼はこれを全く信用せず、「腰抜け!」との罵声を浴びせた。
 だが、ここで巨岩に埋め込まれている9つの顔の1つ(中村文弥)が獣人吸血コウモリを弁護した。最前の一騎打ちの詳細は赤ジューシャによって事細かく十面鬼に報告されていたようで、顔の1つは獣人吸血コウモリの「詰めの甘さ」を指摘しつつも、アマゾンを「あと一歩まで追い詰めた」という一面を持ち出し、その実力に「見るべきはある」として、獣人吸血コウモリに今一度のチャンスを与えるべしと進言した。うーん、ヨロイ元帥をやっていた人がこの台詞を云っていたと思うとチョット嬉しい(笑)
 他の顔達も、傷の癒えぬ内にアマゾンを討つべきだとしてゴルゴスもこれを受け入れた。

 ここで改めて十面鬼はゲドンの目的とそれに至る道筋を配下の者達に(そして視聴者に分かる様に(笑))説明した。ゲドンの最終目標は歴代悪の組織同様世界征服である。そしてその目的を達成する為に十面鬼は古代インカ科学の超エネルギーが必要だとしていた。
 そしてそのエネルギーの扉を開くカギは2つで、1つは十面鬼の右腕に移植されたガガの腕輪で、もう一つがアマゾンの左腕に移植されたギギの腕輪で、この2つが1体となることで古代インカの超エネルギーが我が物になるとのことだった。
 勿論、世界を征服する手段は構想すれば他にいくらでも考えられるのだろうけれど、結論を先に書くと十面鬼は徹底的にギギの腕輪、そして古代インカの超エネルギーを入手することにこだわり、他の手段は一顧だにしなかったのだった。

 場面は替わってとある病院。そこには獣人吸血コウモリに血を吸われた正子が収容されていたのだったが、正子は目に見えて重体に陥っていた。母親とりつ子とマサヒコが見舞う中、正子は静脈のあちこちを浮き上がらせ、息も絶え絶えで苦悶し、見て居る方も辛くなるほどだった。
 医師の見立てでは、現代医学ではどこが悪いのかが分からない状態で、彼女を助けるために全力を尽くすことを誓いつつも、原因究明に長い時間が掛ると見込まれ、言外の含みに救命まで正子が持つかどうかの覚悟を固めるよう促していた…………うーん正子の苦しみ様と病状も怖いけど、これ程の内容を無表情で淡々と語る医師も怖かったな(苦笑)

 ともあれ、医師と母親が席を外した直後、マサヒコとりつ子は窓の外にいるアマゾンに気付いた。アマゾンも正子を心配して見舞ってくれていると捉えたマサヒコをこれを迎え入れようとしたが、りつ子がそれを制した。
 りつ子はそもそも正子がこんな目に遭ったのも、アマゾンが現れたからとし、アマゾンに立ち去る様告げつつ彼を痛罵した。この時点でのアマゾンはりつ子の云っている言葉は分からずとも、恐らく剣幕と表情から自分を拒んでいることを察したらしく、何も云わず立ち去った。
 これに対して、アマゾンが正子を助けたとするマサヒコは姉を罵ってアマゾンを追ったのだった。

 だが、当のアマゾンはりつ子の罵りに落ち込むより、何としても正子を救わんとしていた。そこら辺の草を集めては磨り潰し、口に含んでは様子を窺っていた。一方ゲドンでは獣人吸血コウモリの指揮の下、何人かの人々がアジト内に捕らえられていた。
 その目的は食糧として貯蔵することでゲドンは人肉を常食、人血を常飲するカニバリスト達で、既に血を吸われて無力化したと思しき人もいれば、正にこれから貯蔵されんとして怯える人もいた。過去作「本当は怖いゲドン」でゲドンという組織に恐ろしさを検証したことがあるが、人肉常食はこちらがゲドンに敵対したり、関わったりする意思がなくても、ゲドンの方が常時食糧として狙い襲ってくるという脅威を持ち続けることを意味し、日常的な恐怖と無縁でいられないことの恐ろしさを述べたことがあった。実際、これから「食われる」という認識を与えられ、捕らえられ、無力化されるってすごい恐怖だろうなあ…………そして吸血コウモリの改造人間である獣人吸血コウモリは文字通り吸血によってエネルギーを補給していたのだった。

 場面は替わって小野寺病院。
 小瓶に御手製の薬を持って正子の病室にやって来たアマゾンだったが、さすがに前日のりつ子の態度が気になってか、密かにマサヒコだけに合図を送り、屋外に呼び出し、心配するその問いには答えず薬を渡した。
 当初はアマゾンが持参した物が何か察しなかったマサヒコだったが、アマゾンが正子に飲ませることをジェスチャーで示したことでマサヒコはそれが薬であることを察した。全然ストーリーに関係ないが、古代において全く言葉が異なる外国人同士が最初にコミュニケーションを取った時もこんな感じだったのだろうか(さすがに中世以降は中国語やオランダ語を間に挟んだようだったが)?
 ともあれ、薬をマサヒコに託したアマゾンはまだまだ少ない語彙量しか持ち合わせない身で、「ゲドン潰す」と宣言してその場を去った。
 程なく、森の中を走り回る赤ジューシャを見つけ、これを追ったアマゾンだったが、これは誘引作戦だった。

 場面は替わって正子の病室。そこでは案の定と云うべきか、薬を巡って岡村姉弟が喧嘩になっていた。マサヒコは正子を助けるために薬を飲ませようとするのだが、りつ子は完全に疑い、「毒かもしれない。」とまで云っていた。
 まあ、これは一概にりつ子を責められない。完全に善意によって渡されたものでもあっても、医師でもない、言葉すら喋られない野生児が持ってきた物とあれば、その効用を疑わしいと考えるのが自然だろう。医師がその場にいれば、「困るよ、患者におかしなものを与えちゃあ。」という話になる。そんな正体不明の薬を服用させて治ればいいが、本職の医師にすら原因の掴めない病に窓の外から病状を見ていただけの男に薬を持って来られても、まずは「本当に効くのか?」となるだろう。
 ただ、僅かに意識を取り戻した当の正子がアマゾンの持ってきた薬を求めた。正子は自分を化け物(=獣人吸血コウモリ)から助けてくれたアマゾンを信用出来るとして、半ば引っ手繰るようにマサヒコの手から瓶を取って薬を飲み込んだのだった。

 程なく、誘き出されての形ではあったが、とある海岸でアマゾンと獣人吸血コウモリは対峙し、海岸・断崖・近くの森林と場を移しつつ最終決戦が展開された。
 はっきり云って、戦闘能力では元々野生児として鍛え抜かれたポテンシャルを持ち、古代インカ超科学の粋を集めたギギの腕輪は持つアマゾンライダーにとってゲドン獣人は敵ではなかった。実際、この勝負、アマゾンライダーは殆んど危な気なく展開していた。ただ、森林の一部で飛翔能力を活かしたことで少しだけ獣人吸血コウモリが優位に立ち、まだまだ実戦二回目で噛み付く・引っ掻く・組み付くのみが基本攻撃パターンしか持たないことで多少の時間が掛る勝負となっていた。まあこれも正子の病状が徐々に回復するのを並行して見せていたからだろう。
 やがて正子は顔色も完全に元に戻り、その頃にはアマゾンライダーは大切断獣人吸血コウモリの胸部を×を描くように切り裂き、獣人吸血コウモリが撤収したことで勝負が決したのだった。

 少し話が逸れるが、シルバータイタンは過去作「注目のコウモリ型改造人間」にて歴代仮面ライダー作品に登場したコウモリ型の改造人間を検証したことがあり、当然そこではこの獣人吸血コウモリも採り上げているので、未見の方や、見たことあるけど内容を忘れた方も一読して頂ければ幸いである。
 珍しく二度目のチャンスを与えられながら、前話のクモ獣人同様這う這うの体で逃げ帰った獣人吸血コウモリを待ち受けていたのはやはり死の制裁だった。

 傷の痛みに苦しみながらアジトに戻った獣人吸血コウモリに対して十面鬼がその名を告げると忽ち四人の赤ジューシャがこれを取り押さえた。そして続け様に「よくもこの十面鬼の顔に泥を塗ったな!」と怒りも露わに、「ゲドンの恥晒しめ、貴様は死刑だ!」と宣告した。
 死刑宣告に対し、組織に命を捧げているとした前言が大嘘であったことを示す様に、「どうぞ命ばかりは御助けを!」と懇願した獣人吸血コウモリだったが、勿論聞き入れられる訳はなく、「殺れ!」という号令一下、獣人吸血コウモリを襲い死刑執行を担ったのはその部下である吸血コウモリ達だった。
 結局、獣人吸血コウモリは部下によってその身を僅かな血液しか残らない程い喰い尽くされるという、前話のクモ獣人以上に無残な死に様を晒したのだった。

 ちなみに上述の過去作にても触れていることだが、「顔に泥を塗られた」と思っているのは首魁であるゴルゴスではなく、彼を庇い、今一度のチャンスを与えるよう進言した文弥さんの顔だと思う(笑)。
 また、獣人吸血コウモリの声を当てたのは市川治氏で、普段どちらかと云えば悪の組織の改造人間でもカッコいい系のキャラの声を当てることが多い市川氏が保身の塊であるような怪人の声を担い、醜態を演じるのは稀有であることを本作にても重ねて述べておきたい。

 場面は移って小野寺病院。そこでは薬石効あり、正子が命の危機を脱し、全快を遂げていた。正子の母とりつ子は言葉少ないながらも満面の笑みで全快を喜び、一方のアマゾンはまだまだ自らの境遇に謎の多い中、ゲドンへの怒りを込めて海に吠え続けるのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新