仮面ライダーアマゾン全話解説

第5話 地底から来た変なヤツ!!

監督:内田一作
脚本:鈴木生朗
モグラ獣人登場
 この第5話から、OPの映像が少し変わった。と云っても、アマゾンライダーがジャングラーで走るシーンがほんの数秒加わっただけで、大半は変わっていない。まあ、とにかく「仮面ライダー」である以上、OPにバイクシーンが無い状態を続ける訳にはいかなかったのだろう。
 別の云い方をすれば、前話からこの第5話OPにかけてが、アマゾンが真に仮面ライダーアマゾンとなった時と云えるのかもしれない。

 冒頭、アマゾンはとある山中で相変わらず自分が何故にゲドンに狙われるかが分からず、苛ついていた。視聴者には既知だが、ゲドンの狙いはギギの腕輪強奪である。そのゲドンだが、アジトでは十面鬼が御食事タイムで、人血を吸引していた。
 この話から第4話まで黄色い目に黒眼だった十面鬼の瞳が発光し、下の犬歯が2本長くなり、不気味さを増していた。一方、9つの顔は生き血を呑むことで顔色が赤みを増すことが判明。殆んど説明なしでも第1話・第2話にて肌色だった顔が突如赤くなったことに納得が出来たのだから、大したものだった(笑)。
 そして食事を終えた十面鬼は新たにモグラ獣人を召喚し、それまでの獣人同様、アマゾンの抹殺とギギの腕輪強奪を命じたのだった。

 場面は戻ってとある山中。相変わらず何故ゲドンに狙われるかが分からず悩み続けるアマゾンだったが、そこに銃声が聞こえた。音の方に駆け付けるとそこには散弾銃で撃たれた鳩が死んでいた。アマゾンは猟銃を持っていた男・大島(平松慎吾)を見つけると、何故に罪のない鳩を殺したかを難詰。大島はまともに答えず、鳩の死骸を寄越せと云っていたから食うつもりだったのかもしれない。
 アマゾンの拙い日本語能力と、聞く耳持たない態度の大島とでは会話が成立する筈もなく、大島はアマゾンにまで銃口を向け、発砲までしたが、勿論アマゾンがそれに後れを取る筈もなく、大島から銃を取り上げた。
 銃を奪われたことで自分が撃たれることを恐れた大島だったが、アマゾンはその銃身をひん曲げて使用不能にしただけで、怯えて逃げる大島に何をするでもなかった。だが、程なくその大島がモグラ獣人に襲われ、悲鳴を上げたことでアマゾンがそこに駆け付けた。

 どうもモグラ獣人による大島襲撃は、例によって騒ぎを起こすことでアマゾンを誘き出さんとするゲドンの恒例手段の様で、アマゾンとモグラ獣人との格闘が始まったのだが、モグラ独特の地中からの奇襲で下半身を土中に引き摺られ、身動きが出来なくなったアマゾンに大島が攻撃を加えて来たのだった。
 相手の思惑はどうあれ、自分を化け物から救ってくれた筈のアマゾンに攻撃を加えたのだから、大島が先のアマゾンによる難詰を根に持っていた屑っぷりが明らかになった。その上、その場を逃れた大島を待っていたのは彼を追って山狩りをしていた警官隊だった。その警官隊を率いていた警察官の台詞から、大島は強盗殺人犯であることが判明した。

 激しく警官隊に抵抗していた大島だったが、モグラ獣人の攻撃を振り払ったアマゾンがそこに現れたことで取り押さえられ、御縄となった。凶悪犯逮捕に感謝の言葉を述べる警察官(←警部らしい)だったが、名前や住所を尋ねても「アマゾン」としか答えず、頭を振るだけでは怪しむ他なかった。
 露骨に怪しむ部下を制して、一応は丁寧対応で参考人としての署までの動向を求めた警部だったが、意味の分からないアマゾンは「俺、悪くない!」と叫んでこれに抵抗。結局公務執行妨害で逮捕されてしまった。
 本来のアマゾンの力なら取り押さえに掛る警官隊を蹴散らすことなど訳なかったと思われるが、さすがに警官とはいえ、一般ピープル相手に本気になれなかったのだろう。

 場面は替わって、ゲドンアジト。ここではモグラ獣人十面鬼による裁きに掛けられていた。ギギの腕輪を持たずして帰って来たモグラ獣人に対し、警官に姿を見られることを避けたが為にアマゾンに逃げられたとする弁明を一応聞きはした十面鬼だったが、全く信用していなかった
 目撃されることを避けたモグラ獣人の判断に対して、その是非は全く問わず、ただただゴルゴスも9つの顔も「云い逃れ」としか受け止めず、モグラ獣人に死刑が宣告されようとしていた。
 するとそこに、意外にも赤ジューシャが助け舟を出した。この『仮面ライダーアマゾン』におけるゲドンの戦闘員・赤ジューシャは戦闘員と云うより、諜報員に近く、警官が現れたために追撃を断念したとするモグラ獣人の主張が嘘ではないことを証言した。
 実際、赤ジューシャの役割は直接戦闘よりも獣人達の監視の方に主任務があり、この報告を受けて十面鬼は今一度モグラ獣人にチャンスを与えることを許可した。勿論これは最後のチャンスで、次に逃げ帰れば「お前は苦しみ抜いて死ぬことになる。」との脅しを付け加えるのを忘れない十面鬼だった。

 場面は替わって城南警察署。ここには犯人逮捕に協力した功労者でありながら、その風体と挙動を怪しまれ、詰問に抵抗したことで公務執行妨害とされたアマゾンが収監されていた。そこへ立花藤兵衛が身元引受人として現れたことでアマゾンは釈放された。後に藤兵衛は身元引受人になるのに苦労したと云っていたが、恐らくアマゾンが如何なる人物なのかを警察に理解させるのに苦労したのだろう。
 だが、釈放されて尚アマゾンは不機嫌だった。何も悪いことをしていないのに「怪しい奴」と見做され、逮捕までされたことで機嫌が悪いと思われたが、さにあらず。アマゾンという野生児が逮捕されたことをニュースで知って飛んできたのは藤兵衛だけではなく、城南署の前には特ダネを求めるマスコミ関係者が大挙しており、その好奇の視線をアマゾンは逸早く察知するとともに、激しく憎悪していた。

 放映当時(昭和49(1974)〜昭和五50(1975)年)のマスコミって確かに令和の世から見れば記事を得る為には礼儀も遠慮も無かった。タメ口で聞きたいことを聞き、断りもなく写真(←それも強烈なフラッシュ付き)を撮りまくり、アマゾンの心情など意にも解さない。
 令和の世では肖像権の侵害や個人情報の問題からもここまで露骨な取材攻勢はかけられないだろうけれど、アマゾンに対するマスコミの視線は好奇の目で、アマゾンでなくとも不愉快になったことだろう。
 結局アマゾンは窓から署外に飛び出し、マスコミを嫌う余り、嫌いな筈の人工物で固められた繁華街・地下街をしかめっ面で走り回り、心の中で「人間嫌いだ!」を連呼してそのまま行方を眩ましたのだった。

 当然藤兵衛はアマゾンの行方を捜したのだが、アマゾンの行方を追っていたのは藤兵衛だけではなかった。モグラ獣人もまたアマゾンを探していた。そしてそれまでの展開から岡村姉弟に当りをつけていたのだろう。
 そのとき、アマゾンが凶悪犯を捕まえたとの記事にマサヒコは喜んでいたが、りつ子は逆に心証を悪くしていた。
 マスコミがアマゾンをヒーローとしたことに対して、りつ子はアマゾンが英雄気取りをしていると誤解して、「そんな人じゃないと思っていた。」としていたから、アマゾンその人には悪意を抱かず、公正に見ようとしていたのが見て取れた。あくまでゲドンとの抗争に自分達が巻き込まれるのを疎んじていただけで、りつ子が完全にアマゾンに心を開くにはまだ少し時間が掛るのだが、りつ子のアマゾンを見る目の変遷を追う上で非常に興味深かった。

 一方で元々アマゾンが大好きで、アマゾンを英雄視していたマサヒコはアマゾンが世間一般に対して英雄になるのを当たり前のように振舞っていたが、その絶賛振りを傍近くに潜んでいたモグラ獣人に聞かれており、アマゾンを誘き寄せる為の格好の人質になるとしてマサヒコは拉致されたのだった。
 身を挺してマサヒコを庇わんとしたりつ子だったが、さすがに獣人では相手が悪く、簡単に払いのけられ、一縷の望みを託して藤兵衛に事の仔細を告げた。たった一人残された愛弟を攫われたとあってはアマゾンに対して好きも嫌いも云ってられないのだろう。
 勿論連絡を受けた藤兵衛はすぐにでもアマゾンにこのことを伝えたかったが、昨夜ブチ切れたことで飛び出していったアマゾンの行方を藤兵衛もつかめていなかった。とはいえ、マサヒコがゲドンに攫われたとあってはそんなことも云ってられない。藤兵衛はりつ子と合流すると方々を捜し歩いた。

 場面は替わってとある海岸。そこにはホームシック(?)になっていたアマゾンがいた。
 アマゾンの心を何より悲しませていたのは、大都会にいる人々と心を通わせられなかったことにあった。乳飲み子のみぎりに南米のジャングルに遭難したアマゾンに日本にいた記憶は無かったが、それでもナレーションによるとアマゾンは日本に懐かしさを感じていたという。瑪羅門選ばれし七人が初めて来た筈の瑪羅門総本山に懐かしさを感じたのと同様と云えようか?………何?例えが良く分からん?じゃあ、ピッコロが初めて来た筈のナメック星に懐かしさを感じたのと同じ心境と云えようか?(笑)

 ともあれ、日本人の血筋に刻まれたDNAが懐かしさを想起させていたのだろうけれど、アマゾンは海を越えて南米アマゾンに帰りたい気持ちでいた。だが、そこに彼を探していた藤兵衛とりつ子が現れたことで話は急展開した。
 呼び止められた要件が分からない内は人間嫌いを理由にアマゾンに帰るとしていたアマゾンだったが、マサヒコが攫われたと聞いては、話は別だった。いくら分からず屋な警察や身勝手なマスコミの為に一時的な人間嫌いに捉われたとは云え、自分を慕うマサヒコの安否やりつ子の涙を無視するような薄情な人物ではなかった。

 展開的にはしばしの沈黙が藤兵衛とりつ子を不安にさせていたが、言葉が少ないだけで、アマゾンがマサヒコを「トモダチ」と思っていて、それを助けんとする意志に疑いの余地はなかった。
 そして「トモダチ」であるマサヒコを助ける意を明確にしたアマゾンだったが、丸でそれを待っていたかのようにゲドンの赤ジューシャオートバイチームが現れた。

 これが陽動なのは明らかだったが、他に手掛かりもなく、アマゾンは躊躇うことなくジャングラーでこれを追った。果せるかなオートバイチームはマサヒコが縛られている海岸までアマゾンを誘導するとバイクを残して姿を消したのだった。
 勿論、赤ジューシャの行方などアマゾンの知るところではなく、アマゾンは即座にマサヒコの元に駆け寄り、マサヒコもアマゾンに気付いた。だが、これが罠であることを知るマサヒコはアマゾンに来てはいけないと叫ぶのだが………止まる訳ないよな(笑)。

 案の定、モグラ獣人が地中から奇襲してきた。今度は相手のホームである地中に引き摺られない様逸早く地上に飛び出したアマゾンだったが、モグラ獣人は地中を掘り進む為のシャベル状の爪を利してアマゾンの体に幾つもの擦傷を負わせた。
 血塗れになったアマゾンだったが、仮面ライダーアマゾンに変身すると形勢は逆転した。どうやら地中をも自在に動き回れる能力は地上戦にて素早さという有利さをもたらし、時には魍魎拳幻瞑分身まで駆使したが、組打ちには弱かったようで、アマゾンライダーに体のあちこちを噛みつかれると黄色い体液を垂れ流してグロッキーとなった。

 終盤、フルネルソンに捕らえられるとそのまま肩の関節をやられたようで、モグラ獣人は両腕が利かなくなり、戦意喪失した。飛燕が首天童子にやられた技だな……………何?男塾ネタが過ぎる?………すんません、好きなんで(苦笑)。
 ともあれ、フットカッターのよる大切断で鼻面を斬られたのがダメ押しとなり、モグラ獣人は出て来た穴に戻って遁走し、マサヒコは救われたのだった。

 ストーリーの流れ的に、マサヒコとの友情を重んじる形でアマゾン帰還を見送ったアマゾンだったが、その辺りの考えはナレーションでは語られず、ゲドンの狙いが自分の持つギギの腕輪にあることを確信したことだけが語られて第5話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新