仮面ライダーアマゾン全話解説

第7話 とける!とける!恐怖のヘビ獣人!?

監督:塚田正煕
脚本:伊上勝
ヘビ獣人登場
 冒頭、場面は郊外の樹上にてアマゾンが現況に思いを馳せているところから始まった。南米での平和な生活を奪われ、記憶にない故国日本で戦いの渦中に置かれたアマゾンは当初何故に自分がゲドンに狙われるか訳の分からないままマサヒコとの友情だけを心の支えに戦っていたが、前話にてキープからゲドンの企み、自らの腕に移植されたギギの腕輪の重要性を知り、平和を守る為にもゲドンと戦わなくてはならない使命感を抱いていた。
 訳の分からないまま戦うよりは戦わなくてはならない意義を熟知している方がまだマシと云ったところだろうか?そのせいか、幾分アマゾンの表情も穏やかになった様に見えるのだった。
 他方、その木の下ではモグラ獣人が苦悩していた。前話では命を救われ、最終的にアマゾンに重要情報をもたらす活躍を見せたが、どうもまだこの時点では「成り行き上そうなった。」という色合いが強かった。
 結果としてゲドンを裏切り、命を狙われる身の上を嘆き、「いっそのこと、あいつの腕のギギを盗んで、ゲドンの許しを乞うてまた仲間入りしようか……。」とも呟いていた。だがそれでもアマゾンから満面の笑みで「トモダチ」と云われると、「そう、トモダチ…。」と答えざるを得なかったのだから、事の是非はどうあれ、命を救われた恩義と組織に狙われる恐怖との狭間における苦悩は大きい様だった。

 程なく、マサヒコが友人の有馬ひろみ(杉野公子)を伴って現れた。ひろみはマサヒコからアマゾンの話を聞き、ファンとなっていたもののその存在に半信半疑だったようで、実際にアマゾンを目の当たりにして喜びと共にその実在を確信していた。
 当のアマゾンはそんな思いを意に介する様子もなく、マサヒコの「トモダチ」なら、ひろみもまた「トモダチ」として「トモダチの印」を交わすのだったが、そんな様子を赤ジューシャ達に間諜されていたことから今回の事件が始まった。

 赤ジューシャ達はひろみの身の上まで調べ上げて十面鬼に報告。ひろみが生物学者有馬精一郎の娘であるとの報告を受けた十面鬼は、これは使えると見て他の9つの顔もそれぞれに意見を述べた。
 要するに、生物学者なら野生児・アマゾンに興味を示す筈であろうから、その探求心を利用してアマゾンを捕えさせ、そこを始末しようとの企みで、その陰謀を担うのはゲドンの獣人の中で最も悪智恵に長けている者が良い、としてヘビ獣人が召喚された。

 そのヘビ獣人だが、その風体は巨大コブラそのものにフード下から二本の脚が生えたもの。従来の悪の組織の改造人間が「人間+動植物の能力」なのに対し、ゲドン獣人は「動植物+人間の脳」なので、その形態は歴代の悪の組織の改造人間の中にあって基となった動物に近いものが多い。このヘビ獣人はその色合いが特に濃く、これはこれである意味、独特の恐ろしさがあった。

 場面は替わって有間生物研究所。ひろみの自宅でもあり、ファンであるアマゾンに会えたことで上機嫌で帰宅したひろみだったが、ゲドンの魔手は迫っており、ひろみと入れ替わりに研究所から帰宅しようとした父の助手・井崎(瀬戸山功)がヘビ獣人に捕食された。
 その捕食振りは、実在する大蛇そのもので、長大な体で井崎を絡め取ると頭から丸呑みにするというもので、なまじ本来の生物に形態が近い分、ゲドンと野生生物双方の恐ろしさを具現化していたと云えよう。この辺りのリアリティが話数は少なくても『仮面ライダーアマゾン』を歴代作の中でも人気作たらしめている所以であるとシルバータイタンは考える。

 直後、研究所内ではひろみの父・有馬精一郎(高城淳一)が助手を襲った悲劇を知る由もなく、文献に目を通していた。そこに現れたのは帰宅した筈の井崎。視聴者にはそれがヘビ獣人の変装であることはすぐに察しが付くのだが、精一郎は直前に嗅ぎ取った生臭さも、井崎の生気ない顔色や抑揚のない喋り方を気にすることもなく、井崎に酒を勧める無警戒振りだった(苦笑)。
 偽井崎は精一郎に現代に生きる野生児であるアマゾンの存在を仄めかした。「藪から棒に何を云い出すのだね?」、「そんなバカな」と偽井崎の論をまともに取り合っていない様子の精一郎だったが、十面鬼が読んだ様に学者としての好奇心は充分で、アマゾンの様な者が実在すれば、「人類生物学にとっては大変な実験材料」としていた。
 そんな予想外の存在をひろみが知っていると聞かされた精一郎は怪訝な表情をしつつも既にゲドンの術中に嵌り、その陰謀の手先化していたと云えた。

 場面は替わってとある郊外。
 そこには岡村姉弟がアマゾンの為に食事を作って持ってきたのだが、そこにアマゾンはいなかった。モグラ獣人から今朝早くにひろみに呼ばれて出掛けて行った知り、意外に思うも、マサヒコは呼んだのがひろみなら安心とし、りつ子もアマゾンにとって日本に友達が増えるのは良いこと、としていた。
 ゲドンに対する恐怖と、とばっちりを厭う形で時にアマゾンに嫌悪感を向ける姿が目立つりつ子だが、相対的に見るとちゃんと「ゲドン=悪、アマゾン=善人」を理解しているし、基本は好意的である。それでもマサヒコを案じる余りアマゾンを厭うていたシーンの方が目立つのだから、彼女もなかなかに損な役回りである。

 ともあれ、そのアマゾンだが、ひろみに連れられて有間生物研究所にいた。
 眼前に現れた野生児・アマゾンに驚くとともにより一層の好奇心を増大させていた精一郎はアマゾンを歓待する様子を見せたが、その目は「客」ではなく「実験動物」を迎える目で、研究心の余り人心を薄れさせた者の典型だった。
 精一郎はアマゾンの求めに応じてひろみが水を取りに行った隙に罠(牢屋が頭上から落ちてくるベタなもの)に掛け、アマゾンを拘束してしまった。
 一応は、「実験材料」とは云え、相手が「人」であることを精一郎も完全に失念していた訳ではない様で、アマゾンに対して「長い時間じゃない。」としつつ、幾ばくかの罪悪感を滲ませていたが、アマゾンにとっても、ひろみにとってもこれは完全な「騙し」だった。
 父の姦計に驚いたひろみは持ってきたコップを取り落とし(←「あっ」と声を上げ、2、3秒してから取り落とすわざとらしさだった(苦笑))、アマゾンもまた自分を連れてきたひろみに対して、「ひろみ、トモダチ、ない!」と怒りの声を上げた。
 勿論、この姦計は年端も行かないひろみの与り知らぬところで、父に取り縋って抗議するひろみだったが、皮肉にも罠に落ちたアマゾンを後は殺すだけとしてヘビ獣人がその正体を現したことで有間父子へのアマゾンの敵意は断たれた。

 そこへモグラ獣人からの情報で藤兵衛と供にアマゾンを追って来たマサヒコが研究所のチャイムを鳴らしたことで局面が変わった。
 ヘビ獣人は自分が手に掛け、顔面を溶かされた井崎の様になりたくなければ「誰もいない。」と云って来訪者を追い返すよう、ひろみに命じた。云われた通りにしたひろみだが、マサヒコとの間に人差し指と中指を絡めるのが「嘘をついてごめんね。」という秘密のサインであることが決められており、そのことからマサヒコと藤兵衛はアマゾンがまだ研究所内にいると確信し、帰った振りをして研究所内に入り込んだ。
 結果、これがアマゾンを救うこととなった。ヘビ獣人も監視対象が5人となってはすべてを見張れない様で、マサヒコが(何の脈絡もなく察知した)檻のスイッチを押したことでアマゾンの監禁は解かれ、藤兵衛は「アマゾンなら負けやしない。」としてアマゾンとヘビ獣人が屋外に飛び出した隙にマサヒコ、ひろみ、精一郎の避難を誘導した。

 「アマゾンなら大丈夫。」的に云って屋外の飛び出したものの、やはりアマゾンが気になるのか、藤兵衛達はアマゾンとヘビ獣人の大立ち回りを遠巻きに見ていた。しばしの格闘後、珍しく傍らにあった木の枝を得物に打ち据えるとヘビ獣人は撤退したのだが、その間にマサヒコとひろみが赤ジューシャに攫われていた。
 それも、藤兵衛の真後ろで僅かな隙を突いて二人の口を塞いで気付かれぬ内に攫ったのだから、赤ジューシャは歴代悪の組織の中では待遇がいいだけではなく、そこそこ有能なのかもしれない(笑)。

 ヘビ獣人撤退後にようやく藤兵衛はマサヒコとひろみがいないことに気付き、アマゾンに二人の救出を要請。そこに精一郎も駆け付け、膝をついてアマゾンに前非を詫び、娘の救出を懇願した。一瞬は冷たい素振りを見せた風なアマゾンであったが、彼がマサヒコを見捨てないのは誰しもが確信するところで、藤兵衛に促されると、「マサヒコ、ひろみ、トモダチ。」と云ってジャングラーで二人を連れ去るゲドンの車両を追った。

 赤ジューシャ達がマサヒコ・ひろみを攫ってから発覚までにそこそこの時間があるにもかかわらずすぐに追跡され、おまけにバックドアを開けたまま車を走らすという逃げっぷりは何とも怪しいものだったが、これはいわば誘引で、車を追うアマゾンはやがて遊園地=富士急ハイランドに辿り着いた。
 アマゾンを富士急ハイランドに誘き寄せたのはヘビ獣人の悪智恵でである。来日(帰国?)から二ヶ月に満たず、当初は車やバイクすら得体の知れない存在としていたアマゾンにとって当然遊園地の遊具は初めて見るもので、アマゾンが乗った途端に動き出したことが彼にカルチャーショック的な驚きを与えた。

 加えてヘビ獣人と赤ジューシャ達は姿を見せてはアマゾンが追って来ると隠れ、アマゾンをジェットコースターの走路上やお化け屋敷に誘い込んだ。コースターにアマゾンを轢かせる試みは当然の様に(笑)躱されたが、お化け屋敷は場所と状況からアマゾンの方で作り物の幽霊や骸骨にも翻弄される形となった。
 更に赤ジューシャが時折マサヒコとひろみを抱きかかえて姿を見せたので、当然アマゾンの意識はそちらに奪われ、増々翻弄されたから、普通に考えて体力はかなり消耗させられると見られ、確かにヘビ獣人は知恵を使う獣人ではあった。
 ただ、惜しむらくは決定打に欠けた(苦笑)

 程なくアマゾンとヘビ獣人は正面から対峙。アマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身し、そのまま一騎打ちとなった。頭からアマゾンライダーを呑み込もうとしたり、10メートル近い長さに伸ばせる尻尾でアマゾンライダーを絡め捕ったり、締め上げたりで、腕が無い割にはヘビらしさを遺憾なく発揮して見応えある戦闘シーンを演じてくれたヘビ獣人だったが、どの攻撃もアマゾンライダーにこれと云ったダメージを与えた様子は無く、フットカッターで目の下を斬られ、大切断で鼻面を真っ二つにされると夥しい鮮血を噴出して絶命したのだった。
 アクションはなかなかだったが、「ゲドン一の悪智恵」を誇るなら、せっかくの人質をもう少し活かして欲しかった気はする(苦笑)。

 ラストシーンは無事救出されて行き掛け駄賃的に富士急ハイランドを楽しむマサヒコとひろみを満足気に見守ってこの第7話は終結したのだった。


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令和六(2024)年二月三日 最終更新