仮面ライダーアマゾン全話解説

第8話 学校を襲ったワニ獣人!!

監督:塚田正煕
脚本:村山庄三
ワニ獣人登場
 冒頭、とある河原にて一人の少年(早川勝也)がハーモニカを吹いていた。そこに木の葉を器用に笛とするアマゾンが現れ、少年にハーモニカを貸して欲しいと告げる。借りたハーモニカを上手く吹けず、「こうやるんだよ。」と云って「春の小川」を吹く少年に合わせて嬉しそうに木の葉笛を吹くアマゾン。何てことない歓談シーンだが、当然この少年は後々ストーリーに絡むことになる。

 場面は替わって城南小学校。
 担任の女性教諭がマサヒコとミツルという少年に生物資料室からカンガルーの標本を持ってきて欲しいと告げた。何てことの無い会話に聞こえるが、「カンガルーの標本」って、めちゃくちゃ珍しくないか?それにもし成獣の標本や剥製なら小学二年生二人に運ばせるのは(文字通り)荷が重い気がする。

 実際に生物資料室においてあったのは小型の剥製で、もしかしたら幼獣であるカンガルーの剥製かも知れなかったが、その実態が判然する前に事件が起きた。
 入室直後、マサヒコとミツルは棚に横たわるワニに驚き、しばらくしてそれが剥製であると断じたのだが、サブタイトルからも見え見えな様に(笑)横たわっていたのはワニ獣人である。
 そしてそのワニ獣人が用務員の叔父さんを捕食してしまったのである!

 ワニ獣人が捕食に夢中になっている間隙を縫うようにマサヒコとミツルは教室に駆け込み、担任に事の仔細を告げ、まさか、と思いつつもマサヒコに手を引かれながら先生は生物資料室に急行し、級友達もそれに続いた。うん、信用してないな。本当に信用していたら人が猛獣に食われる事件現場に児童達がついてくるのを止める筈である(苦笑)。
 お約束の様に、マサヒコ達が生物資料室が戻って来た時にはワニ獣人の姿は消えていた。勿論用務員のおじさんもである。当然マサヒコ達の言は誰にも信用されなかった。普通かかる内容の虚偽で大人をからかい、授業を中断させたとあってはこっぴどく叱られるのだが、先生は教室に戻って授業を再開すると宣言。恐らく、話が突拍子も無さ過ぎて良い意味でも悪い意味でも相手にされなかったのだろう。
 だが、こうしてはおけない、ゲドンの仕業かもしれないと思ったマサヒコは学校を飛び出してしまった。

 マサヒコの出奔に怒りの声を上げる担任の先生。これは難しい問題である。
 現実の世界には日本の学校にいきなりワニが現れて人を食べたなんて話は、当然無い。クマが学校に侵入したり、猛獣が脱走して周囲を恐怖に陥れたりした事例はあるが、そんなごつい奴が現れて騒ぎにならない筈がない。
 それ故、マサヒコの証言は普通信用されないだろうし、話は終わったと思っていたのに虚偽を通報した(と思われる)当の本人が授業中に教室を飛び出したのである。
 一方で、マサヒコにして見れば、「人が食い殺される。」という大事件が実際に起きたのを目の当たりにしている。ワニも用務員も消え失せ、現場に血痕や着衣も無いとはいえ、人一人が行方不明となれば普通に大事件で、後々大騒ぎになる。先生が信用してくれないとなると、これまで共にゲドンと戦ってきたアマゾンを頼るのは無理のない思考である。
 幸い、現実には改造人間を操る悪の組織が学校を襲ったケースが無いから、何とも云えないが、いきなり児童が、「ワニが現れ、用務員おじさんを食べちゃった!」と叫んだら周囲の大人はどう反応するのだろうか……………これを読んでいる学生さん、疑問だからと云って試しに嘘の通報するのは止めて下さいね(苦笑)。

 ともあれアマゾンを探して心当たりと思しき河原を探して回るマサヒコだが、アマゾンは見つからない。直後、アマゾンを探していた藤兵衛と合流し、学校にゲドンが現れたと告げ、ともにアマゾンを探すこととなった。
 その頃、アマゾンは冒頭で知り合ったシゲヤと鬼ごっこ(のような遊び)で遊んでいた。ちなみにこのシゲヤ役の子役は早川勝也氏。この『仮面ライダーアマゾン』放映の6年後に『仮面ライダー(スカイライダー)』の第47話にゲスト出演し、その翌年の『仮面ライダースーパー1』ではレギュラーである草波良を演じた。
 正直、このシゲヤを凝視しても草波良の面影はシルバータイタンには感じられない。まあこの第8話での早川氏は5歳で、良役の時は11歳だから、6年もあれば子供の顔は随分変わることに驚かされる。
 そして5歳故にまだ就学していなかったと思われるが、そこにシゲヤの母親が帰宅を促す為に現れ、当然の様にアマゾンを怪しんだ。まあ、僅か5歳の息子が半裸の見知らぬ男と一緒にいれば、母親としては肝を潰すのが当たり前だろう。
 当然の様に母親はシゲヤを抱きかかえると彼を叱ったのだが、その内容が少々ぶっ飛んでいた。

 「シゲちゃん、何度云ったら分かるの?知らない人と口を聞いちゃいけないといつも云っているでしょ?」

 …………「知らない大人について行っちゃいけません。」は道場主も幼少のみぎりに両親や恩師から云われた記憶は確かにあるし、防犯教育としては普通に教えられることだが、「口を聞いちゃいけない。」は少々頂けない。謂わば、「何を云われても黙殺しろ。」と云っているようなもので、道を聞かれたり、落とし物を告げられたりしても無視し、転んだり怪我したりしたところを助けられても礼も云うなと教えているに等しい。それって、教育上どうなのかなあ?
 そんな母親に対し、シゲヤもアマゾンも「トモダチ」という単語の連呼で自分達がトモダチであることを告げるのだが、勿論母親は増々警戒心を強めてシゲヤを離さない。令和の世なら即座にスマホで110番通報されるんだろうなあ………。

 ともあれ、そこにアマゾンを見つけたマサヒコと藤兵衛が駆け付け、学校がゲドンに襲われたと聞いたアマゾンは即座に城南小学校に向かった。
 その頃、城南小学校はパニックになっていた。姿を消していた筈のワニ獣人が臆面もなく現れ、先生に誘導されながら逃げ惑う子供達の中に赤ジューシャも散見され、襲撃に加わっていた。ゲドンの目的は人間の大量捕獲で、アマゾンとワニ獣人が大立ち回りを演じている間に多くの児童達、担任の先生、アマゾンを追って来た藤兵衛、母親が止めたにも関わらずついてきたシゲヤも攫われ、辛うじて先生に物置小屋に押し込まれたマサヒコだけが難を逃れた。

 ワニ獣人は剥製に擬態出来た様に、見た目一発現実に存在するワニそのまんまで、長大な口吻や尻尾で相手を打ち据える攻撃もワニそのものだった。ただ、弧を描くような攻撃力こそそこそこ高そうだったが、アマゾンが仮面ライダーアマゾンに変身して上下からの攻撃を仕掛けると忽ち逃げ出してしまった。

 場面は替わってゲドンアジト。そこでは珍しく十面鬼が御満悦だった。
 ワニ獣人に学校を襲わせ、児童・教諭・通りすがりの立花藤兵衛(笑)と、誰かれなく拉致した目的は「食糧確保」で、拉致してきた人数は当面食うに困らないだけの「食材」確保を達成していた。
 だが、同時に命じてあったアマゾン抹殺・ギギの腕輪奪取をワニ獣人に問うたところ、忽ちワニ獣人はしどろもどろ(苦笑)。その様子に腕輪奪取が未達であることを察した十面鬼は忽ち怒り心頭となった。
 任務に失敗したワニ獣人に対して、9つの顔の中には処刑すべしと述べる者もいれば、人間の生き血が得られさえすれば満足として不問の者もいたが、頭であるゴルゴスは一喝して他の9人を黙らせると、ワニ獣人にもう一度だけ機会を与えると宣告した。勿論再度失敗すればクモ獣人獣人吸血コウモリと同じ運命になるのは明白で、ワニ獣人も今度こそ使命を果たすと誓うのだった。

 結局攫われた子供達と教諭と藤兵衛は燻製にされることとなった。燻製にするのは保存食にする意味合いもあるのだろうけれど、赤ジューシャ達が「今夜は美味しい燻製が食べられる。」と楽しげに話していたことからも首領・獣人・ジューシャのいずれにとってもゲドンにあって食人はスタンダードな習慣であることが分かる。過去作「本当は怖い『ゲドン』」でも触れたが、食人を日常行為とする組織が身近に潜んでいるとしたら、かなりの恐怖である。
 しかもこの燻製作り、生きたまま煙で燻していたのだから藤兵衛・先生・児童達の恐怖や苦痛はかなりのものだったと思われる。途中多くの者が気絶したり、意識を朦朧とさせたりしていたが、普通に考えて密閉空間で燻されていたのだから、救助が送れていれば窒息死か、CO中毒で命が助かっても重篤な後遺症を残していたことだろう。

 そんな藤兵衛達の受難を知らず、ただただその行方を追っていたアマゾンとマサヒコだったが、途中でシゲヤの母親と遭遇した。母親が一連の騒動をどこまで見ていたかは不明だが、彼女は完全に「この男が化け物を操ってシゲヤ達を攫った!」と思い込んで、共に捜索していた城南小学校の教師達に声を掛け、アマゾンを縛り上げてしまった!
 当然アマゾンは抵抗こそしないものの、僅かに分かる日本語で自分じゃないことを叫び、マサヒコもゲドンの仕業と訴えるのだが、ゲドンを知らない者達が信用することは無かった。そこにりつ子が駆け付け、アマゾンがそんな人間でないことと、悪いのはゲドンであることを告げた。うん、りつ子さん、本当に巻き添えを厭うていただけで、人としてのアマゾンは最初から信用していたんだよね(しみじみ)。

 大人であるりつ子(作中での設定年齢は不明だが、演じた松岡まり子さんは放映当時二十歳)が駆け付けたことに多少は聞く耳持つかに見えた群衆だったが、やはり聞いたこともないゲドンの存在を受け入れられず、シゲヤの母は息子を返してくれと(文字通り)泣いてアマゾンに懇願する有様だった。母親やなあ………。
 ともあれ、当然、人々のために働いているにもかかわらずかかる仕打ちを受けるアマゾンは大いに悲しんだ(ナレーション談)。だが、彼への疑惑は意外な形で解消された。「(ゲドンを)知らなきゃ教えてやる。」として当のワニ獣人がその姿を現したのである……………うん、ゲドンの存在を大勢の人々に明かしたワニ獣人、任務の成否にかかわらず処刑確定やな(笑)

 まあ、ワニ獣人の考えも全く分からないでもない。
 何せ分からず屋な群衆のお陰でアマゾンは拘束されているのである。つまりもっとも組し易い状況で、前言を撤回する訳ではないが、首尾良くギギの腕輪を奪えて、ゲドンの世界征服達成に貢献したとなれば、組織の存在隠匿の必要性がなくなるから、充分罪は購えると云えなくもない。
 案の定、群衆は突然現れた化け物を見て逃げ惑った。一人の男性(教諭と見られる)が大木に身を隠しながらも、りつ子と共に縄を解こうとするマサヒコに逃げるよう促していたが、当然逃げるマサヒコではない。だが、ワニ獣人はマサヒコとりつ子を払いのけて束縛状態のアマゾンを食い殺さんとした。

 結局、怪力で引き千切ったのか、それとも鋭い犬歯を逆用したかは不明だが、アマゾンは拘束を解き、仮面ライダーアマゾンに変身し、二度目の格闘戦が展開された。だが、緒戦同様、アマゾンライダーとワニ獣人とでは戦闘能力に差があり過ぎた(というか、基本、ギギの腕輪を持つアマゾンライダーに獣人達の戦闘能力は大きく劣っていた)。大して抵抗も出来ないままにワニ獣人は再び逃げ出した。
 それを追うも見失ったアマゾンライダー。そこにモグラ獣人が現れ、攫われた人々は砂の山にいると伝えた。こうなるとワニ獣人などアマゾンライダーにとって二の次、三の次である。即行でジャングラーを走らせ、砂の山に急行するのだった。

 そしてこの急行が逃走するワニ獣人を捉え、最終決戦となった。上述した様に、単純戦闘能力はアマゾンライダーの方が格段に上である。ワニ獣人の大顎はアマゾンライダーの体を捉えることはなく、戦闘中にアマゾンライダーが尻餅をついた直後こそ噛み殺せそうな有利態勢を垣間見せたが、それ以外では頭部や喉笛を何度も噛まれ、最後には大切断を脳天唐竹割式に食らい、鮮血を流して川中に転落してその骸を晒したのだった。

 決着直後に現れたモグラ獣人の案内でアマゾンライダーは今度こそ砂の山に急行。調理役の赤ジューシャ達はアマゾンライダーを見ただけで逃走し、ようやく捕らえられていた人々は救出され、命の危機を脱した。一方の十面鬼ギギの腕輪を奪えず、一旦確保した「食糧」も奪い返されてしまったことに切歯扼腕するのだった。
 しかし、アマゾンが多くの人々に誤解された悲劇や、攫われた人々が約30分間の燻しに苦しんだ描写に目が行きがちだが、この第8話って、モグラ獣人が多くの人々の命を助けた最初の活躍回でもあるんだよな


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令和六(2024)年二月三日 最終更新