宇宙刑事ギャバン全話解説

第12話 遊園地へ急行せよ!UFO少年大ピンチ

脚本:上原正三
監督:田中秀夫
ゴーストモンスター登場


 冒頭、舞台は小山ゆうえんちで始まった。園内にある小山タワーの下で天体望遠鏡をのぞいていた少年・林真(斉藤雅晴)がいて、彼は偶然上空を飛ぶマクーの円盤群を目撃した。

 驚いた真は遊園地内の喫茶店で働く父(川島一平)のもとに急行し、UFOを見たと告げ、(仕事中なので)迷惑そうにする父を望遠鏡のところまで引っ張ってきたが、当然と云おうか、必然と云おうか、父が覗いたそこに円盤の姿は無かった。渋々ながらも息子についてきて、「どれどれ」と云いながら覗いていたことからも、父親は「怪獣が出たよ。」という子供の証言を頭から信用しない、特撮改訂版の分からず屋大人では無かった様だったが(笑)、いると云われた物が映ってなかったとあっては非難の声を零さない訳にはいかなかた。
 これだけなら特撮番組の定番で終わるのだが、店内にダブルガールの人間態がいたことが話を終わらせないこととなった。

 ダブルガールはアジトに戻った。そのアジトは小山市山中の石切り場に密かに建設が進められていたもので、地盤沈下発生装置なる物騒な装置を作っており、これが完成すれば人工地震で日本列島を沈没させられるとしていた………………だから、日本列島を沈没させたら、日本を犯罪市場とした儲けがパーになる思うのだが………まあ、「日本を滅ぼせます。」と云えば、買いたがる反日的国家元首や凶悪テロリストが装置を高値で買ってくれるかもしれんが、一回きりの利益でしかないな(苦笑)。

 アジト内では、ハンターキラーを前に、ダブルマン・バットが地盤沈下発生装置を完成すれば日本占領は成ったも同然、と高笑いしていた。だーかーらー!沈没させたら占領出来なくなるという当然の帰結が分からんのかな、こいつら?
 まあ、直後に日本政府を脅迫出来るとしていたから、沈没そのものは本意では無いとするなら、「楽しみだ。」としていたハンターキラーの台詞もある程度は理解出来る。
 そしてそこにダブルガールが戦闘機の発着陸を目撃されている可能性が有ることを注進してきた。ダブルガールの報告内容は明らかに真の目撃を取られたもので、これを受けてドン・ホラーは装置完成まですべての資材を陸送するよう命じていたから、なかなかに本気度が伺える展開だった。

 場面は替わってアバロン乗馬クラブ。
 馬の世話をしていた烈と豪介の元にわかばと陽一が小山に行きたいと云ってきた。冒頭で円盤群を目撃した真からUFOを見に来ないか?という誘いの手紙を受け取ったとのことで、真が偶然わかば・陽一の従兄弟であることから彼等は事件に巻き込まれることとなった。ちなみに真が父方の従兄弟か母方の従兄弟は不明なので、豪介の孫であるかどうかは不明である。
 だが、まだ夏休みになっていないことを理由に豪介は二人の願いを却下した。代わりに自分が行くとした烈は姉弟から「狡い。」と云われ、豪介からはさぼると給料を半分にすると云われては引っ込まざるを得なかった。
 ちなみにさぼりが祟って、第5話で渡された月給が3000円だったから、月給が6000円でない限り、痛くも痒くもないだろう(笑)。基本給を半分にすると云うなら物凄い痛手だが。

 ただ、豪介達の前では諦めた風を装った烈だったが、もし真の目撃したUFOがマクーのものであれば真の身が危ういと懸念し、やはり小山に向かうことになるのだった。自分が持ち場を離れる替わりを小次郎に託すとした手紙を当の小次郎に(笑)託していた。
 完全な無断よりはマシかも知れないが、小次郎への押しつけは勿論小次郎には無断だった(笑)。いつもは「烈ちゃん」と呼ぶ小次郎も、この時ばかりは声を震わせて「烈!」と呪詛していた(笑)。
 だが、今回、マクーの秘密保持はかなり本気だったようで、小山に向かう烈を電気工事者に化けて見張っていたクラッシャーは即座にこれをアジトに報告。これを受けてハンターキラーが即座に「よし、私に任せろ。」とし、ゴートモンスターと共に林父子を襲った。
 勿論口封じなのだが、「死人に口なし」の口封じではなく、脅迫による口封じだった。ゴートモンスターが白い泡を吹く掛けると、吹き掛けられた部位は妙な膨張・縮小を見せ、ハンターキラーは誰に聞かれてもUFO目撃を口外しない様に強要し、逆らえば今しがた見せた体の変化に襲われることを告げた。これには一般ピープルである林父子は恐れを為して応諾せざるを得なかった。
 この口封じはなかなか理に適っている。普通に考えるなら殺害した方が確実なのだが、真が藤姉弟の従兄弟であることを鑑みると、その命を奪えば烈は徹底的な調査をし、高い戦意をもって妨害して来るであろうことは想像に難くない。であれば、敢えて命を奪わず、知らぬ存ぜぬを通すよう仕向けた方が話は大きくならない。

 実際、小山タワーで真を見つけた烈は、陽一に贈られた手紙のことを元にか真に話し掛けたのだが、真は答えず、代わりに父親がUFOマニアである真がつい見た気になって虚偽の手紙を書いてしまったと告げた。この間、物陰から密かにハンターキラーが監視しており、父子は密かに真実を告げることも出来なかった。だが、烈は何かに怯えながら、何か云いたそうにしていた真の様子から、真が脅迫を受けて喋れずにいるのでは?と推測した。

 父子が去った後、烈は残された望遠鏡を覗いて、石切り場に照準があっていたことからそこが怪しいと睨み、遠巻きに様子を見ていたハンターキラーももう一手打つ必要があるとしていた。掛かる推測と用心の連発は見ていて面白い。この第12話はなかなかに良く出来た話である。
 だが、そんなハンターキラーの用意周到さも、他の奴等が阿呆過ぎて綻んでいった。烈とは別行動でミミーと月子も来園(ちなみに月子もアバロン乗馬クラブの作業着を着ていたが、同クラブで働くようになった経緯は描かれず)し、二人は一人佇んでいた真に烈の名を出して話し掛けた。
 話を聞かせるとした真は二人をお化け屋敷に連れ込み、そこにゴートモンスターが待ち受けて……………………これでハンターキラーやダブルガールが必死にマクーの存在を伏せようとしていた努力が水泡に帰したのは云うまでも無い(苦笑)
 直後、遊園地に再度現れた烈の前に現れたのは逃げ惑う子供達と助けを求める月子。それだけならまだしも、背後からゴートモンスターが現れたのだから、小山にマクーが潜伏していることは誰の目にも明らかとなった。やれやれ。

 ともあれ、烈は即座にギャバンに蒸着。格闘となった訳だが、このゴートモンスター、戦闘能力はなかなかである。殴り合いは大したことなさそうだったが、受け身が優れている様で、ぶっ飛ばされてもすぐに体勢を立て直し、口から吐く白泡でギャバンも容易に近づけなかった。そしてそこに真を人質状態としたダブルマン・バットが現れたことでまんまと逃げられてしまったのだった。

 Bパートに入り、手掛かりを求めて石切り場に向かった烈は迎撃に来たクラッシャー達を蹴散らし、インコに化けて真の懐に潜んでいたミミーの先導を受けてアジト内に潜入した。ミミーを入り口に残し、アジト内を潜行する烈だったが、かなり高い所から平然と飛び降りていた。元スタントマンであることを分かっていても大葉氏のアクション能力は驚嘆してしまう。
 程なく、烈は牢獄内に監禁されていた真を発見。これを救わんとするも牢獄前には落とし穴が仕掛けられていた。穴の上からダブルマン・バットゴートモンスターと共に見下ろしたハンターキラーは子供を救う為に橋の罠にも飛び込む烈を褒めていたが、随分皮肉っぽく聞こえた(←道場主「皮肉やがな。」)。
 そしてゴートモンスターに烈抹殺を命じ、白泡が放たれたのだったが、これに対して烈はギャバンに蒸着して対抗。当然泡はギャバンには効かず、対人間用としてはかなり深い落とし穴も、宇宙刑事のジャンプ力の前には全くの無意味で、堅牢な牢獄の扉もシルバービームであっさり破壊された。一条寺烈を嵌める罠としては優れていたが、宇宙刑事ギャバンを封じる罠としては丸でなってなかったな(苦笑)

 牢獄を破壊したギャバンは真の戒めを解き、入り口で待機していたミミーに真を託すと再度潜入した。この間、ギャバンは妨害らしい妨害を殆ど受けなかった。話前半の用意周到さや機密保持力の高さが嘘のような杜撰さだった(嘆息)。
 ともあれ、ハンターキラーダブルマン・バットゴートモンスターにギャバン迎撃を命じ、ギャバンは「スーパーヒーローぼくらのギャバン」をBGMにクラッシャー達を蹴散らし出した。
 初出のBGMがカッコよく歌われているためか、ギャバンは2対1にもかかわらず勝負を有利に展開し、ダブルマン・バットは(文字通り)切歯扼腕した。

 それでもゴートモンスターが白泡を吐いて粘っている間にダブルマン・バットは指令室に退き、日本列島を壊滅させるべく装置を発動せんとした。地盤沈下発生装置が既に完成していたのであれば、話後半においてマクーが機密保持にそれほど熱心じゃなかったのも多少は理解出来る。
 だが、結果的に詰めが甘かったと云わざるを得ない。発泡攻撃が多少ギャバンを苦戦させたとはいえ、ゴートモンスターはギャバンを抑え切れずにその場を去り、「その装置は何だ?」と詰問されたダブルマン・バットは、御丁寧にも「マグニチュード10の震度を起こす、日本列島を沈没させる装置だ!」と聞かれもしない作戦目的までべらべらと漏らした
 ギャバンを焦らすキーワードてんこ盛りである。マグニチュードは1上がるとそのエネルギーは32倍である。つまりマグニチュード10とはとんでもないパワーなのである。しかも、巨大なマグニチュードも、地下深くに震源地があることで大地震は極めて稀なものとなっているが、逆を云えば低いマグニチュードでも地表で起きれば歴史に名を残す大震災を上回る被害が起きてもおかしくない。
 こんなセリフを聴いては否も応も無かった。ギャバンは即座にシルバービームを放ち、装置は破壊され、誘爆からアジトも全壊した。装置完成まで機密を守れたのだから、もう少しこれが保たれれば日本壊滅を為せた可能性は充分だった。やはり今回のマクーは詰めが甘かった。

 ともあれ、最終決戦である。いつもの様に魔空時空が発生させられ、いつもの様にサイバリアンが召喚され、いつもの様にまずベム怪獣であるゴートモンスターが倒され(決まり技はレーザーZビーム)、いつもの様にダブルマンであるダブルマン・バットギャバン・ダイナミックで倒された(笑)。
 普段と少し異なる点があるとすれば、途中でダブルマン・バットが円盤群に乗り込み、電子星獣ドルが召喚された際に、ニューBGM「輝く王者ドルギラン」が流れたことだった。また前足蹴り・ドルキックも久々に披露された。

 かくしてマクーの陰謀は粉砕され、脅迫されている間ずっと顔面蒼白だった真に笑顔が戻った。この180度異なる心境を演じ分けた斎藤氏の演技力は年端も行かない子役としてはかなりのものだった。
 烈は熱心に望遠鏡の覗き続ける真に(マクーの作戦が瓦解したことで)「もう(円盤は)見えないと思う。」としつつも、真の御蔭でマクーの陰謀が防げたことでギャバンが感謝しているとした。
 これに対して真はギャバンの円盤が見つかるまで望遠鏡を見続けるとした。

 そしてラストシーン。せっかくきた遊園地でカートに興じるミミーと月子が烈の所在を真に尋ねると、既に帰ったとのことだった。置いてけぼりにむくれるミミーに対して、「追いかけちゃおう。」とする月子。これを見て軽い嫉妬を滲ませるミミーは可愛らしかった(笑)。
 うんうん、うら若き女性の軽い、適度な嫉妬は何処か可愛らしい。これが道場主のような男の嫉妬はただただみっともないだけで……うぎゃああああああああああああああああ!!!!!(←道場主のカンガルー・クラッチを食らっている)


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新