宇宙刑事ギャバン全話解説

第13話 危うし烈!大逆転

脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
サイダブラー/サイモンスター登場


 冒頭、魔空城の地下牢獄から始まった。ナレーションにより、ドン・ホラーが銃声定刻に君臨する帝王でもあり、それに絶対服従を誓うダブルマンの中にも例外がいることが語られた。当然そう云うものを待つ運命は処刑である。不平分子を全員人の世から追放すれば全臣民が絶対服従者になるのは必然である(笑)。
 もっとも、処刑と云っても死刑とは限らない。今回登場するダブルマンは牢獄で立ったまま鎖で雁字搦めにされたまま一生を終えることを義務付けられていたというから、見せしめにされていた可能性が高い。
 ともあれそんな獄中のダブルマン・リノマンの元にハンターキラーが訪れた。

 リモコンで扉を開いたハンターキラーにさっさと殺せ、と啖呵切るダブルマン・リノマン。ちなみにクレジットされていなかったが、その声は潮“地獄大使”健児氏である(笑)。これに対して解放しに来たと告げたハンターキラードン・ホラーの前に連行した。
 手鎖を掛けられた状態でドン・ホラーの御前に出たダブルマン・リノマンはまだ状況が呑み込めていない様で、ハンターキラーに強引に跪かされ、このまま終身刑で石牢に繋がれ続けるか、宇宙刑事ギャバンの首を取って自由と大幹部待遇を得るかの二者択一を迫られた。
 興奮し、取り押さえる他のダブルマンやクラッシャー達を蹴散らすなど、従順とは云い難い態度を取るダブルマン・リノマンだったが、念を押す様にギャバンの首を取ればいいのだな?として応諾した。

 このダブルマン・リノマン、石牢に繋がれても不遜な態度を取っていただけあってかかなり好戦的で、円盤群を率いては海岸の石油コンビナートを空襲した。まあ、地獄大使の声で大人しい役をやられても嫌だがな(苦笑)。
 ともあれ、この襲撃はドルギラン内にいた烈とミミーの知るところとなった。直後、円盤群はドルギランにまで攻撃を仕掛けて来たから、かなり好戦的で、ダブルマン・リノマンは円盤から飛び出すと、襲撃がギャバンを呼び出す為のものであることを暴露して一騎打ちに挑んだ。
 好戦的なのも、膂力に自信があってか、ダブルマン・リノマンはギャバンをして「手強い」と云わしめる手合いだった。殊に盾を駆使しての防御に自信があったと見え、スパイラルキックダブルパンチを弾き返し、ディメンションボンバーをまともに食らっても怯まなかったが、レーザーZビームで盾を破壊されると捨て台詞を残して撤収した。

 だが、かかる撤収の印象は悪く、ドン・ホラーハンターキラーに今一度ダブルマン・リノマンを石牢に閉じ込めるよう命じた。ハンターキラーもこれに従おうとしたが、ダブルマン・リノマンは自分にモンスターのパワーを融合させればギャバンに勝てると訴えて再戦を申し出た。
 これに対してドン・ホラーはダブルマンとモンスターの融合を画期的として再戦を許可したのだった。

 場面は替わって香月宇宙電子研究所。そこでは香月教授(西本裕行)と助手達が生体電送装置の実権に挑んでいたいた。香月教授を演じる西本氏は『仮面ライダー(スカイライダー)』では筑波洋の父・筑波教授の親友である長沼博士を、『仮面ライダーBLACK RX』では南光太郎にライドロンの設計図を渡すワールド博士を演じた人物である。やっぱり博士役が似合うね。あ、『帰ってきたウルトラマン』ではシーモンスの脅威に被害を訴える赤木工場長も演じてましたね。
 ともあれ、マウスを用いての実験は電送させるところまでは上手く行ったが、結局分解されたマウスは元の姿に戻らず、助手達は落胆した。しかし香月教授的には「80%成功」とのことで、この経過をわざわざ妻(一柳みる)と子に電話して報せる程だった。
 だが、その通話途中、教授はハンターキラー達に拉致された…………………阿呆だよりによって通話中を襲うとは。終わってから襲えばいいものを、途中で襲ったから拉致は忽ち烈の知るところとなった。阿呆過ぎる

 烈がこの研究所とどういう縁故があったかは詳らかでは無いが、警察も動いていたから、ハンターキラー達の悪巧みは隠密活動の隠の字も無かった。しかも消えた状況概要過ぎて、一人の刑事が「丸で異次元空間にでも迷い込んだような話です。」と宣うものだから、烈は即座にマクーの仕業と断じた。

 そのマクーの本拠である魔空城では、ドン・ホラーが香月教授に生体電送装置を応用した生体合体装置の開発を要請していた。勿論要請するかのような丁寧な物云いをしていたが、実質は強要である。
 ドン・ホラーの要請によると、生物の体を原子に分解し、それを再構成することで電送する原理を応用すれば、分解した生物同士を組み合わせることで、生体合体が可能と踏んでいた。ドン・ホラーは「牛と馬、蛇と猿の合体も自在の筈だ。」と例示していたが、趣味は良くないな(苦笑)。まあ、馬と鹿を合体するよりましかも知れんが(笑)。
 戯言はさておき、電送装置を来たる宇宙時代において宇宙旅行を容易なものにすることを目的として開発に取り組んでいた香月教授によって、生体を合体させる等という物はかなり禁忌な話だった様で、かぶりを振って拒否したが、勿論それを容認するマクーでは無かった。
 マクーは烈と会話している香月の妻子の現状をモニターに映し、脅迫。教授はこれに屈したことで帰宅を許された。だが、その帰宅は息子・ナオヤと烈が父を連れ帰るという指切りを交わした直後だったので、周囲の人々には極めて不自然に映った。

 勿論、妻もナオヤも父の帰りを喜んだが、今の今までどうしていたのかを香月は語らず、「マクーでは?」と云う烈の問いかけに憮然として「関係無い!」と返したのだから、これで、「ああ、マクーじゃなかったんだ。」と納得する宇宙刑事がいたらお目に掛かりたいものである(苦笑)。

 ともあれ、脅迫に屈した香月教授の元に、ダブルマン・リノマンサイモンスターを合体候補に選んだことを告げに現れ、すぐに融合するよう強要したが、烈が見張っていることに気付いたダブルガールが今はまずいとした。
 教授を完全に疑っている烈は電子研究室の扉を針金で開け、研究の邪魔だからと云って体質を促す教授に対しても、ナオヤと交わした教授の安全を守るという約束をたてに室内に居座った。

 一方、香月夫人とナオヤはテニス教室にいるのをミミーと月子が一緒に参加することで護衛していたのだが、そこにダブルマン・リノマンとダブルガールが現れ、二人はあっさり拉致された。コメディーリリーフの小次郎がダブルマン・リノマンに抗し得ないのは仕方ないにしても、月子はあっさり気絶し、ミミーも戦力とならなかった。
 護衛を担う以上、少しは抵抗して欲しい所だったが、ともあれミミーはインコに化けて烈にこのことを急報。即座に助けに向かわんとする烈の後を香月教授も追おうとしたが、ハンターキラーに止められた…………灯台下暗し過ぎるだろうが(苦笑)…………と思っていたら、烈もすぐに引き返した。この辺りの読みは、さすがに二つ名通りの宇宙「刑事」と云えよう。

 そして研究室では遂にダブルマンとベム怪獣との融合が行われんとしていた。
 香月教授は装置が未完成であることを訴えたが、ハンターキラーも、ダブルマン・リノマンも構わんとばかりに装置発動を強要した。3つ並んだ巨大カプセルの両端にダブルマン・リノマンサイモンスターが入り、煙に包まれると中央のカプセルに向かって電流の様な物が流し込まれ、程なく両者が融合されたダブルモンスター・サイダブラーが誕生したのだった。歓喜の声を挙げるハンターキラーによると、地球人の何倍もの生命力がある獣星人ゆえに融合に成功したとのことで、ここに獣星人の知能と、ベム怪獣のパワー、という両者の良い所取りをしたダブルモンスターという難敵が生まれた。悪の組織がパワーアップに成功した稀有な例と云えよう。

 自らの発明が悪の組織の戦力増強に加担してしまったことに困惑を隠せない香月教授の元にダブルガールに連れられて夫人とナオヤがやって来ると、ハンターキラーは香月ファミリーを「特別ゲスト」として、魔空城で過ごさせると宣言した。好意的に見れば組織に貢献した教授の命だけは助けるという、契約に忠実な組織らしい恩情と取れるが、まあ、普通に考えるなら完成したばかりでまだまだ改善の余地があり、故障も考えられる装置のメンテナンス要員として押さえておきたいと云ったところだろう。
 だが、香月ファミリーにとっては故郷を離れ、得体の知れない空間に幽閉され、場合によっては悪への加担を強要され続けられる日々を意味し、教授本人一人ならともかく、妻子までもが同様の目に遭い続けることは到底耐えられないことだった。
 教授はダブルガールとクラッシャーを突き飛ばすと妻子と共に屋外に飛び出した。勿論それをサイダブラーが追ったのだが、タイミング良く烈とミミーが戻ってきており、烈はミミーに香月ファミリーを託すと自らはサイダブラーを迎撃した。

 だが、ただでさえ膂力と耐久力に優れる傾向の強いサイ型怪人が融合でパワーアップしたとあっては、蒸着前の烈では手も足も出なかった。サイダブラーは怪力を誇示する様に傍らにあった自動車の扉を引き千切っては烈に投げ付け、パワーに押される烈は直後に襲い掛かってきたクラッシャー達にも(遅れこそ取らないものの)普段よりは蹴散らすのに苦闘気味だった。
 圧倒的優勢を誇るサイダブラーはクラッシャー達を邪魔だ、とばかりに跳ね除け、遠巻きに見ていたハンターキラーサイダブラーに任せるよう告げた。サイダブラーは更に車内に転がり込んだ烈を車ごと転がし、車内から引きずり出し投げ飛ばす怪力を発揮し、事ここに至って烈もようやくギャバンに蒸着した。

 だが、ナレーションも語っていたが、ダブルマンの知能とモンスターのパワーを併せ持つダブルモンスターは強敵で、蒸着後のギャバンに対しても、電柱をぶん回したり、コンクリート塀を突破するハリケー●ミキ●ーを敢行したり(不発)、大岩を投げ付けて蹴り返されてもこれをキャッチして再度投げ付けたり、と引き続きパワーでギャバンを圧倒し続けた。まあ、融合体が弱かったら話にならんところではあるが(苦笑)。

 掛かる苦戦を受けて、ギャバンは珍しくも通常空間でレーザーブレードを抜いて対抗。これに対してサイダブラーは盾を構えてギャバンの撃剣を凌ぎ、ギャバンはレーザースコープサイダブラーの動きを観察するとレーザーZビームを発動し、直撃こそ盾で防がれたが、ようやくサイダブラーをよろめかせることに成功した。
 そしてここでギャバンはレーザーブレードにダイナミックレーザーパワーを注入。即座にギャバン・ダイナミックを敢行した。だが、これまで数多のダブルマンを一刀両断にしてきたギャバン・ダイナミックですら、サイダブラーを倒すに至らなかった。
 サイダブラーは盾でギャバン・ダイナミックを防いだが、さすがに盾は切り裂かれ、そのまま戦うのは不利と見て自分は負けないとの捨て台詞を残して撤収した。

 直後、ミミーが香月ファミリーを連れて戻り、一家の無事が確認されたものの、教授より生体合体装置の存在を知らされた烈は即座に教授達と共に研究所に駆け付けたが、装置は既にマクーによって持ち去られた後だった。
 今後、サイダブラーの様な強敵をマクーが次々作っては送り込んでくるであろうことに不安げなミミーと、心ならずもとんでもない装置の開発に加担してしまったことへの罪悪感に打ちのめされる教授。そんな香月教授を励ます様に、宇宙刑事ギャバンがやっつけると宣言し、それを自らに云い聞かせるかのように夕日に向かってマクーへの戦意を宣し、第13話は終結した。
 視聴者的には次週以降に期待したくなる良い終わり方だった(笑)。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新