宇宙刑事ギャバン全話解説

第14話 愛と悲しみの別れ とどめの一撃!!

脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
サイダブラー登場


 冒頭、話は当然前回のおさらいから始まった。何せ生体合体装置がマクーの手に渡ったことにより、ダブルモンスターと云う今までになかった難敵が続出することとなり、これにはコム長官も危機感を抱き、ギャバンに作戦と特訓を伝授すべくマリーンと共に地球に向かった。
 一方、全話終盤ではどんな強敵もどんと来いとばかりの強きを見せていた烈だったが、今まで通りにはいかないとの危機感はあり、自らを鍛えていた。

 その鍛え直しは、基本は腕力を鍛えるものだった。前話にてギャバン・ダイナミックで切り裂かれたサイダブラーの盾を手掛かりに、コム長官はまずは敵の硬い盾や表皮を切り裂くためにも基礎となる腕力の鍛え直しを第一とした。
 同時に、撃剣の鍛え直しにも付き合った。普段時代劇で部下となるチンピラ達が蹴散らされた後に申し訳程度に主人公に抵抗して斬られたり、刀を弾かれて降参したりする役どころの多い西沢氏(笑)が、訓練シーンとはいえ、見事な殺陣を展開していたのには唸らされた。
 悪役、それも黒幕的な役が多い故、アクションシーンの少ない西沢氏だが、水泳・スキーを趣味とし、殊に北海道旭川市出身という事もあってか、スキーの腕は『太陽にほえろ!』にて神田正輝氏と共にかなりの腕を発揮したと云われている。役所に関係なく、叩き上げの役者さんだったことが伺えるシーンと云えよう。
 勿論、若く、スタントマンの修業も積んでいた大葉氏と比べれば多少の見劣りはしたかもしれないが、それでもそれなりの殺陣を展開していたのだから、普段から役者修業そのものに余念が無かったのだろう。

 そして長官は体術特訓のみならず、前話の戦いにおける分析も行い、マリーンはダブルモンスターの戦闘能力を、これまでのベム怪獣の三倍と分析し、烈も道理で手強い筈だと声を漏らした。
 こうなると今まで通り戦ったのでは必ず勝てるとは云い切れず、コム長官は弱点を突いた戦い方を勧め、ミミーに至っては戦死への懸念からギャバンに一緒にバード星に帰ることを勧める始末だった。
 とはいえ、そんなことで戦意を萎えさせる烈ではない。弱音を見せず自分は勝つと宣言し、そんなギャバンにコム長官は映像からダブルモンスターが常に右胸を庇っていることを指摘し、心臓が人間とは逆の右にある可能性を指摘し、ギャバンもそれを狙うとした。

 場面は替わってとある河川敷、そこでは人間態のサイダブラー(潮健児)がギャバンの姿を探し求めていた。前回ノンクレジットだった潮氏が今回は素顔を出していることもあってOPでもクレジットされていてホッとしたのだが(笑)、シルクハットに、マントに、カイゼル髭……………『魁!!男塾』マニアとしては、男爵ディーノスタイルと云いたくなるところだが(笑)、潮さん、『人造人間キカイダー』でのカイメングリーン人間態でもこの格好で出てたよな(笑)。

 それはさておき、連戦に次ぐ連戦で腹を空かせていたサイダブラーは大好物である牛肉に飢えていて、肉の匂いを嗅ぎつけると(川の水面を歩いて渡って)その発生源に向かった。そこにいたのは子犬を可愛がる月子。飢えの余り牛と犬、肉と乳の匂いを嗅ぎ分けられなかったことに苦笑いするサイダブラーは月子に茶かステーキでも食べないか?とナンパするが、これで応じる女性がいたらお目に掛かりたい(苦笑)。勿論月子は丁重に拒絶してアバロン牧場に逃げ帰ったのだった。一体何をしたかったのやら。

 そしてギャバンに対する束の間の特訓と助言を終えたコム長官とマリーンは、改めてギャバンに命懸けの戦いになることを警告し、握手を交わし、ギャバンの無事を祈っていた。この台詞を鵜呑みにすると、これまでのダブルマンやベム怪獣は敵と見られていなかったという事かな(苦笑)
 ともあれ、その横でギャバンと一緒にバード星に帰りたいとミミーがこぼしていたのだが、さすがにこれは父であるコム長官が窘め、ギャバンの決意に水を差さないよう告げて、コム長官とマリーンは地球を後にしたのだった。

 一方、サイダブラーはギャバンが姿を見せないのは密かに特訓をしているからだと踏んで、自分も訓練を積んでいたのは良かったのだが(前話の緒戦敗北時に幽閉を宣告していたドン・ホラーも、そのありようを「頼もしい」としていた)、その特訓相手がクラッシャー達では効果があるとは思えなかった(苦笑)。
 実際、クラッシャー達は完全な及び腰で、サイダブラーも特訓よりも空腹の方が気になり、牛肉を食らわんとして、地上の牧場を襲いに掛かった。
 翌朝、アバロン牧場に出社した烈は、牛が三頭も殺されたという話を聞いた豪介から調査を命じられた。開口一番「クビだけは勘弁して下さい。」と云っていたが、どれだけ仕事してなかったのだろう、この男(苦笑)。
 ともあれ、現場に残されたのは綺麗な白骨で、豪介は「熊か、野犬の仕業か。」と云っていたが、野犬なら相当な数で襲わないと牛三頭が綺麗な白骨になることはあり得ず、熊なら間違いなく獲殺した獲物の死体をその場には残さない(途中で銃で追われたりした場合はその限りでは無いが、絶対に取り戻しに来る)。
 当然、烈はダブルモンスターの仕業と踏み、実際、その夜UFOの姿を求めて山中に張り込んでいた小次郎がそれを目撃した。小次郎に連れられて山中に牧場に残されていたのと同様の白骨を発見した烈は、山中を歩く怪しい紳士(←勿論サイダブラー人間体)とすれ違い、凄まじい殺気と居合の技にとてつもない強敵であるとの認識を新たにした。
 その後、烈は子犬のサブに取り付けられた挑戦状(呼び出しに応じないと東京にて無差別爆撃テロを起こすとしていた)を見ると、ドルギランにてミミーに金を貸してくれと懇願した。

 使用用途は「子供達と派手に遊びたい。」とのことで、云っている内容はお茶らけていても、その視線に決死の覚悟を感じ取ったミミーは借金を快諾した。恐らくは烈が最後の戦いになるかも知れないことを覚悟して、その前に子供達と最後の時間(となるかも知れない)を過ごそうとしているのを感じ取ったのだろう。
 実際、烈は当山・月子と共に子供達を動物園に連れ、途中で子供達に美味しいものを食べさせてやって欲しいと大金を渡しながら当山に告げて、子供達に見送られながら動物園を後にした。

 そして途中でミミーからお守りを受け取った烈は呼び出された通りに岬に現れるとサイダブラーと対峙した。ディメンションボンバースパイラルキックを弾かれつつも、やはり右胸を庇う構えが見えていた分、前話よりは互角以上の戦いを展開するギャバンに対し、ドン・ホラーは魔空空間の発動を命じた。今までも3倍のパワーを発揮出来る魔空空間でダブルマン達はことごとくギャバンに敗れていた訳だから、ベムモンスターが強力でも当社比三倍ではまだまだ不安と云ったところだろうか(苦笑)。

 その後の展開は今までと変わらなかった。ギャバンはサイバリアンを召喚して魔空空間を駆け巡り、円盤群が加勢すると電子星獣ドルがこれを迎撃した。ただ、ギャバンとサイダブラーの一騎打ちはそれなりの時間が割かれ、どちらが優勢とも云えなかったが、撃剣はそれなりに見応えがあった。
 結局、レーザーブレード発動後、ギャバンはサイダブラーの盾を弾き飛ばすのに成功し、盾を失ったサイダブラーの腹部に突きを入れて怯んだところにギャバン・ダイナミックを発動。前話では盾を犠牲に難を逃れたサイダブラーも、盾を失った状態では一刀両断を避けられなかった。

 かくして決死の覚悟で挑んだ死闘、初の二週に渡る戦いに勝利した烈はまた子供達とサッカーに興じる日々を取り戻したが、魔空城では、ドン・ホラー一同がより強力なダブルモンスターを生み出してギャバンを倒すと息巻いていたのだった。やはりストーリー構成上、生体合体装置の存在は大きかったと云えよう。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新