宇宙刑事ギャバン全話解説
第17話 走る時限爆弾!白バイに乗った暗殺者
脚本:高久進
監督:小林義明
ヒョウダブラー登場
冒頭、ミミーの日常から始まる。珍しく私服(?)を着たミミーがショッピングを楽しみ、それを烈がナレーションで「地球に慣れた」証左としていた。
そのアニーが暴走するバイクと白バイのカーチェイスに巻き込まれ、せっかく買った帽子を台無しにされ、転倒。幸い、白バイ隊員(藤堂新二)は犯人逮捕に躍起になって巻き込まれた人を無視するような者ではなく、程なくミミーの元に駆け寄り、介抱に勤めた。
思わぬ優しさに絆され、御姫様抱っこされたことでぽーっとなるミミー。少々尻軽い物を感じないでもないが、一時のテレを感じる気持ちは分からないでもない。バード星では密航してギャバンを追って来たことからギャバン以外の男は眼中になかったと思われるし、地球で知り合った男が豪介(=爺)、当山(=影薄)、小次郎(=三枚目)、進一(=まだ小学生)とあっては(苦笑)、男に免疫が無いのも分からないでもない(←道場主「男性俳優諸氏の皆さん、お許し下さい。」)。
実際、ミミーにギャバンから乗り換えるような気持などこれっぽっちもなく、単にカッコイイ男から(職務上とはいえ)優しくされたことを楽しげに烈に語っていた。
話を半分聞いている意のか聞いていないのかよく分からない様子の烈に少々苛立ちつつもミミーの話は続き、彼女は後日白バイ隊員と偶然に遭遇していたとのことだった。やはりショッピング中で、荷物を取り落とした時に拾ってもらった際にミミーは最初気付かなかったが、「お嬢さん」と云われて相手に気付いた。
その時に白バイ隊員は交通機動隊の大条寺豪と名乗ったのだが、正直、藤堂氏が一般人としての姿を見せるのは珍しい(気がする)。ここで少し話が逸れるが、特撮ファンなら藤堂新二氏となると『スパイダーマン』の主演・山崎拓也役をいの一番に上げると思われるが、道場主的には『電子戦隊デンジマン』のへドラー将軍、大河ドラマ『徳川家康』の武田勝頼、『水戸黄門』第25部の桑島伊十郎役が特に印象深い(詳細は長くなるので割愛)。
眼光の鋭さが印象的なので、善玉役も悪玉役も卒なくこなし、数多い幅広い活躍を続けている俳優さんゆえ、(敗れる役や、失敗する役は多いが)まず無能者の役を演じることは無い。そしてこの第17話に関して言及すれば、ミミーに見せた親切な好青年然とした笑顔は良くも悪くも稀有で、改めて藤堂氏が演技力に優れた俳優であることが実感された。
閑話休題。
そしてあろうことか、ミミーは烈と大乗寺を合わせた。その際に、ミミーは烈を「兄」という事にして、ゲームセンターで顔を合わせた際に大乗寺は烈とミミーを(実際に兄弟ではないからそうなのだが)「似てませんね。」としていた。
その後もミミーは大乗寺とデートを重ね、二人は手を繋いで笑顔で公園を走り回ったりしていたのだが、そんなミミーの新たな日常に、烈も、コム長官も、マリーンも個々に様々な想いを抱いていたのだが、考えて見りゃ変な流れである。
単純にミミーが大乗寺に惚れただけなら、烈を大乗寺に紹介する必然性は無い。報告を受けたコム長官は娘の新たな成長としつつも、複雑な思いを抱いていた。それに対して少々呆れるのは烈の鈍感さと極端さである。
烈はコム長官に「結婚させましょうか?」と述べたが、これは長官ならずとも乱暴且つ性急な話で、それを受けるや「じゃあ、別れさせましょうか?」と抜かす。これに対して長官は、それはいくらなんでも娘が可哀想とする。
長官にしてみれば、密航する形でギャバンについて自分の元を離れたミミーが地球人の男と一緒になるのは諸手を挙げては喜べないだろう。とはいえ、ボイザーと一条寺民子の例もあるから無理矢理介入して引き裂く訳にもいかない。父親として結論を下し難い所にギャバンの極論を聞かされては何とも云えない気分だろう。
そしてそこに横槍を入れたのはマリーンである。マリーンはミミーが本当に好きなのはギャバンで、彼の気を引く為に大乗寺と一緒にいる姿を見せているのだと指摘したのだが、ギャバンはそんな女心を丸で気づかず、マリーンに呆れられていた。もっとも、「(女心が)分かっていりゃあ相談なんかしませんよ。」と述べていたから、ミミーに対する想いが無い訳でもないのだろうけれど、ミミーの自分に対する想いには全くの無頓着だった。密航してついて来ただけでも分かりそうなものだが。
ともあれ、そんなマリーンの推測がどこまで正しいかはさておき、ミミーは半ば大豪寺の追っかけと化し、彼が白バイで違反車両を送るに声援を送る日々だったが、そんなある日、怪しい車を追跡していた大豪寺は煙幕を食らって事故り、人事不省状態で拉致された。それをインコ状態で見ていたミミーはつい人間の言葉でしゃべってしまうのだが、事故はマクーが起こしたもので、ミミーとの関係は先刻承知だった。
ダブルガールはインコが人間の言葉を喋ったのに驚いた様子もなく、大豪寺を助けたければ所定の場所にギャバンが来るよう告げた。
報告を受けた烈が指定の場所に駆け付けるとそこには放置車両が待っていて、中からハンターキラーの声がした。ハンターキラーは大豪寺を助けたければ車に乗り、車の行く場所に向かうよう告げ、罠丸出しの提案に怪しむ烈だったが、大豪寺を助ける手掛かりは他になく、云われるが儘に従うしかなかった。
烈が車に乗ると当然の様にかぎが掛かり、云われるままにエンジンを掛け、発進すると車はブレーキが利かず、ハンターキラーからの通信で車に乗ったことが罠で、30分後に爆発すること、大豪寺をサファリパークに監禁していることを告げた。
ブレーキの効かない車は、辛うじてハンドル操作は可能で、烈は周囲の所領や通行人を何とか避けながら車を走らせ続けるしかなかった(その過程で何件もの小事故が巻き込まれる形で起き、怪我人も少なからず出た)。
巻き込まれた人々の多くの罵声を浴び、心ならずも道交法も無視し、パトカーに追われ、それでも止まれない烈。何とか大事故や重傷者が出るのを防ぎつつ走り続けざるを得ない烈は、並走するパトカーに、車に時限爆弾が仕掛けられているので止まれない旨を告げた。
意外にも、あっさりパトカーは引き下がってくれた。と思ったら、再度並走してきたのだが、そこに乗っていたのは警察官ではなく、クラッシャー。いきなり銃撃された烈は腕に被弾し、地雷原と思しき草原に誘導され、草むらを抜け、最後には断崖に身を躍らせる車輛から寸前で脱出した(勿論車輛は崖下で大破・爆発)。
怪我した体を引き摺ってサファリパークに入り込んだ烈は、動物達が闊歩する園内を徒歩で彷徨い、やがて倒れている大豪寺を発見した。大豪寺を介抱した烈だったが、突如大豪寺は烈に殴り掛かり、これを受けて烈は大豪寺が自分達を罠に嵌める為にわざとミミーに近付いたと見做し、大豪寺は「女は故意に弱いもの。」と嘯いて烈の怒りに火を注いだ。
烈と大豪寺の殴り合いは手負いながら烈に分があり、もんどり打って倒れた大豪寺はヒョウダブラーの正体を露わにした。これを受けて烈もギャバンに蒸着。クラッシャー達を率いるヒョウダブラーとの間で殺陣が展開されたが、ギャバンがやや優勢だった。かなりの強敵感を醸し出しつつ登場する様になったダブルマンとベムモンスターの融合体・ダブルモンスターの強敵感もここまでか………(苦笑)。
業を煮やしたドン・ホラーはいつもの様に魔空空間を発動。これを受けてギャバンもいつもの様にサイバリアンを召喚し、円盤群が迎撃して来ると電子星獣ドルを召喚して迎撃し返した。
一騎打ちに持ち込んだギャバンはヒョウダブラーに対して明らかに優勢だった。ヒョウダブラーもギャバンが丸腰の内は両端に虎挟を備えた杖を得物に多少有利に立つこともあったが、ギャバンがレーザーブレードを抜くとその優勢も消え失せ、ギャバン・ダイナミックを受けて討死した。藤堂氏が人間態を演じる様な相手なら、もう少しギャバンを苦戦させて欲しかった気がする。ダブルモンスターが登場する様になってそんなに話数も経過していないのだし………。
そしてラストシーン。
待てど暮らせど現れない大道寺を待って途方に暮れるミミー。どうやら大道寺の正体はミミーに伏せられていたようで、そんな彼女を励ますように現れた烈にミミーはいつものミミーに戻り、そんな彼女の気持ちを今度こそ知り、それを利用し、踏み躙ったマクーへの新たな怒りを烈が抱いて第17話は終結したのだった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新