宇宙刑事ギャバン全話解説
第19話 午前6時蒸着!Zビームチャージ完了
脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
キョウリュウダブラー登場
冒頭、場面は磐梯山で始まった。烈は18時に磐梯山で決闘せんとしたキョウリュウダブラーの挑戦状を受けて単身その地に来ていた。18時のその時までいつものジープで待機する烈に対し、キョウリュウダブラーはヘルメット、ライダースーツ、バイクすべて黒一色の黒ずくめの男(大西徹哉)として待機し、それをキョウリュウダブラー、ダブルガール、クラッシャー達が見守っていた。
そして18時ジャストになるや、両者は自らの駆る車を走らせた。両者は車のまま互いにすれ違い、やがてキョウリュウダブラーが手榴弾を投げる付けると烈は車外に飛び出し、ロープを投げるとキョウリュウダブラーをバイクから引きずり下ろし、地面に降り立ったキョウリュウダブラーは悪態を突くとダブルモンスターの正体を見せた。
そしてキョウリュウダブラーは自らの体に絡められたロープを逆用して何度も烈を投げ、地面叩きつけた。その姿はさながら、富樫源次を鬼相剛怨面で鎖につないで何度も投げ飛ばした宝金棠の様だった(←道場主「だから、『魁!!男塾』のファンにしか分からん表現は止めろ。」)
何とかロープを振り解いた烈はギャバンに蒸着。それを見たハンターキラーはクラッシャー達に加勢を命じた。勿論ギャバンがクラッシャー達に遅れを取ることはなく次々と蹴散らしたのだが、この加勢は有効に生き、キョウリュウダブラーは間隙を縫ってギャバンの右胸に槍を突き立てるのに成功した。
位置的に心臓ではなく、致命傷と云う程でもなかったが、穂先はギャバンの体内にある回路状のものを損傷し、それによってパワーの発揮を削がれたようで、まだまだ戦えるように見えたギャバンだったが、レーザーZビームがキョウリュウダブラーに届かず、それはさながら、最終回直前に連戦の疲労でエメリウム光線が双頭怪獣パンドンに届かせられなかったウルトラセブンの様だった(←道場主「うん、これなら多くの特撮ファンに通じるだろう(笑)。」)。
次いでレーザーブレードを抜いたギャバンだったが、ダイナミックレーザーパワーの注入が叶わず、すぐに輝きを失う状態だった。これは右胸部の負傷にてコンバットスーツのエネルギー装置が破損したことによるもので、こうなっては数々の技の発動が不可能で、さしものギャバンも戦線離脱し、ミミーにコム長官への救援要請を告げざるを得なかった。
一方、マクー側にとっては待ちに待ったギャバン抹殺の好機で、烈の姿に戻った彼を追撃しない筈なく、キョウリュウダブラーは背中から発射する3本の槍で烈を断崖絶壁から転落せしめた。
転落を見届け、大笑いするキョウリュウダブラーだったが、さすがにハンターキラーは用心深く、死体を確認するまでは安心出来ないとして一同に捜索を命じた。勿論烈が死んでいる筈もなく(笑)、岩陰と小川を利して巧みに姿を隠してマクーの探索を逃れ、ミミーの通報を受けたコム長官とマリーンも地球に向かった。
結果的には取り逃がしたことになったのだが、それでも正面切ってギャバンに勝利したことは快挙だった様で、ハンターキラーはドン・ホラーに「ギャバンは尻尾を巻いて逃げた。」と報告し、ドン・ホラーも重ねてギャバンの首を持ってくるよう命じつつも、報告自体は嬉しそうにしていた。
場面は移ってとある河川敷。そこには虫取りに興じる母と娘・ルミとその弟・ユウイチがいて、偶然河原に倒れる烈を見つけた。烈は自力で歩けない程ではなかったが、母子の泊まるリゾートホテル・リステル1猪苗代に連れられて来て手当てを受けた。
自分に親切にしてくれた仲の良い親子を遠めに見て目を細めつつ、幼き日に良心と共に遊んだ懐かしい日々を思い出す烈だったが、彼自身懸念した様に、自分の為にその親子が危機に陥った。
キョウリュウダブラーとダブルガールが烈を追ってホテルまでやって来て、母子に「怪我をした男を見なかったか?」と問うた。ついルミが口を滑らし掛けたが、母親は知らないと述べ、子供達に見なかったよね、と念を押し、子供達も同意したが、キョウリュウダブラーは娘の微妙な反応を見逃さなかった様で、ルミを絞め上げながら本当に見なかったのか?と詰問した。
勿論そんなシーンを見て黙って隠れていられる烈ではない。姿を現し、自らが捕まることで子供達を介抱するよう求め、取引は成立した。キョウリュウダブラーとダブルガールは海岸の大木に鎖で烈を縛り、射殺せんとしたが、そのとき上空にドルギランが現れ、牽引ビームを発して烈の戒めを解き、機内に連れ去った。それを見て、逃げる烈を卑怯者の様に罵るキョウリュウダブラー………子供を人質に取るような真似をしておいてどの口が云うのやら(苦笑)。
ともあれ、危地を脱した烈。ドルギラン内ではマリーンの手でコンバットスーツの修理、エネルギーであるバードニウムのチャージが行われる一方でコム長官はここまでコンバットスーツが傷つけられたのは初めてで、それ程までにダブルモンスターのパワーがアップしていることに驚いていた。既に強敵感が薄れつつあったダブルモンスターも少しは面目が立ったようだ(苦笑)。
修理を終えたギャバンは早速パワー測定に臨み、ギャバンパンチが10pの鉄板を綱抜き、エレクトロソナーが10q先の音を聞き分け、ジャンプ力が300mに達することが披露され、解説された。昭和ライダーの中でジャンプ力に優れた仮面ライダーアマゾンのジャンプ力が40mであることを思うと、文字通り桁が違った。
レーザーZビームやギャバン・ダイナミックが元通りの破壊力を取り戻したことも確認された。余談だが、道場主は『宇宙刑事ギャバン』をリアルタイムで見て、CATVで再度見るまで内容の殆どを忘れていたが、このときのテストで放たれたギャバン・ダイナミックは何故かはっきり覚えていた。
完全にパワーを取り戻したギャバンはコム長官への例もそこそこに、「まだ決着はついていない。」として基地外に飛び出した。
烈が向かったのはリステル1猪苗代で、そこではルミ・ユウイチ・母親がキョウリュウダブラーの人質状態にされていた。恐らく逃げたギャバンが母子を見捨てられないのを見越して監禁状態にしたと思われるが、この母親を演じた女優さん、キョウリュウダブラーも尋問に烈を守らんとして咄嗟に惚け、微妙な所作で子供達にも伝えたことや、監禁状態にあって尚子供達を庇ってキョウリュウダブラーとの間で立ちはだかるシーンなど、なかなかの名演を展開していた。女優さんが特定出来ないのが恥ずかしく、申し訳ない。
ともあれ、リステル1猪苗代に到着した烈。偶然避暑に来ていた月子についてくるなと云って、母子の泊まる部屋に飛び込んだが、母子の姿はなく、待っていたのは時限爆弾だった。爆弾そのものは屋外に投げ出されたことで人や物への被害は防がれたが、母子の救出を急がなくてはならない。
烈は月子に母子を見なかったかを問い、黒ずくめの男に連れていかれるのを見たとの証言を得て、猪苗代湖に向かうも、タッチの差でキョウリュウダブラーと母子はボートに乗せられて湖上に連れ去られたところだった。
「ここまで来い!」と挑発するキョウリュウダブラーを、波止場に遇ったもう一つのボートで追う烈。
追ってくる烈に自分と戦えというかと思いきや、人質の身柄をたてにするキョウリュウダブラー。正々堂々としているのか、卑怯なのか分からん奴である。
ともあれ、カーチェイスならぬボートチェイスが展開され、何度かすれ違った果てに烈はキョウリュウダブラーのボートに飛び乗り、クラッシャー達を蹴散らしてキョウリュウダブラーとの取っ組み合いになった。その間、マクー側が人質を有効活用することは無かった。本当に分からん奴等である。
程なく、キョウリュウダブラーに湖中へ叩き込まれた烈は湖底で蒸着。湖上に飛び出すと隙を付いて母子を介抱し、湖岸に駆け付けた月子に母子の避難を託すとキョウリュウダブラーに立ち向かった。
パワーチャージを終えた直後とあってか、ギャバンは優勢に勝負を展開。緒戦で右胸を傷つけた槍を繰り出されてもそれを踏み台にしてキョウリュウダブラーの頭を蹴り、キョウリュウダブラーが大木を得物に打ち掛かってきたのにもスパイラルキックで大木を真っ二つにしてキョウリュウダブラーをダウンさせた。
明らかに不利な展開を受けてドン・ホラーは魔空空間の発動を命令。例によってサイバリアンを召喚し、円盤群が現れるとサイバリアンと電子星獣ドルにて迎撃した。ドルがドルファイヤーを吐くとこれを受けて円盤からキョウリュウダブラーが飛び出し、ドルの頭頂部でしばしの格闘となったが、やがてギャバンがキョウリュウダブラーを地面に叩き落とし、これを追ってギャバンも大地に降り立ち、最終決戦に移行した。
いつものようにナレーションが魔空空間ではダブルモンスターが通常の三倍のパワーを発揮することが告げられていたが、キョウリュウダブラーが優勢を見せることは無かった(苦笑)。背中の三本の槍を飛ばすも、二本は躱され、最後の一本は逆に投げ返された。
ギャバンはディメンションボンバー、ギャバンアッパーパンチ、レーザーZビームを次々に炸裂させ、キョウリュウダブラーが曲刀で打ち掛かって来るとレーザーブレードを発動し、最初の一合目で曲刀を弾き飛ばし、(文字通り)返す刀でギャバン・ダイナミックを炸裂させて勝負を決めた。
かくして母子は解放され、烈と月子は親子と共に湖上での遊びに興じ、烈も久々の休日を満喫した。善意で烈を介抱し、それが為に危険に巻き込まれた母子が些かも烈を怨むことなく、取り戻した平和を享受していたのは良い終わり方だった。
かくして第19話は終結したのだが、少し勿体なかったのは、素顔の大西徹哉氏をもっと活躍させて欲しかったことと云えようか。大西氏はこの第19話の1年前に『仮面ライダースーパー1』でドクマ怪人ギョストマの人間体・大石秀人を演じ、主役・沖一也を演じる高杉俊介氏と共に見事な拳法アクションを展開し、特撮界屈指の殺陣を見せ、沖一也に初敗北の辛酸を舐めさせたキャラとして多くの特撮ファンに記憶されているだろう。
実際、大西氏は優れた少林寺拳法の腕を持ち、俳優の後にそのままプロゴルファーになったのだから、素の運動神経が突出している名優である。もっと素顔の活躍シーンを見せないとギャランティが勿体ないだろうに(苦笑)。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新