宇宙刑事ギャバン全話解説
第20話 なぞ?の救急病院!人類の大滅亡が迫る
脚本:松下幹夫
監督:田中秀夫
ケラダブラー登場
冒頭、とある河川敷で一人の少年・村田和広が一つの石をわかば達に自慢していた。「宇宙人に貰った。」と云う、出自的に怪しさ満点のその石(笑)は、紫水晶の原石に近い見た目で、女の子達は一様に欲しがったが、当然和広は拒絶し、翌日に控えていた妹・サチコの誕生日プレゼントするとしていた。
だが、掛かる石が事件を起こさない筈がなかった。自宅に持ち帰ったその石は明滅したかと思うと悪臭を発し、それは金魚鉢の中にいた金魚を白骨化させ、和広は一言助けを求めると人事不省となって救急搬送された。うーむ……金魚鉢の金魚が毒殺されるのは時代劇だけじゃなかったのね(苦笑)。
事件の起こりを小次郎から知らされ、持参された新聞で内容を知った烈は日本地質学鉱物研究所に向かった。だが、研究所で烈が見たのは所員達が大量に倒れている姿で、一人の所員が良き絶え絶え状態で石を奪われたことを告げ、烈は到着直前にすれ違った白い車の仕業に違いないとしてそれを追った。
案の定、事件にはマクーが噛んでおり、白い車にはハンターキラーが乗っていた。
これを追って廃車置き場に到着した烈にクラッシャー達が襲撃。これを蹴散らす中、スーツ姿の中年男性(上田耕一)が加勢。その男はケラダブラーの人間態で、見た目は中年パンピーだったが、石を片手に「取れるものなら取って見ろ!」と豪語するだけあってか、人間態でもそこそこ烈を苦戦させていた。
ケラダブラーの姿になると(蒸着前ではあったが)完全に烈を圧倒していたが、器用さや素早さでは烈=ギャバンに分があるようで、烈はケラダブラーの拳に蹴りを入れると空中に舞い上がった石の奪い合いを素早くギャバンに蒸着することで制した。
奪い返しに来るかと思いきやハンターキラーは早々に姿を消し、ケラダブラーも体を回転させて土煙を挙げるやそれを煙幕として姿を消した。勿論これは二人してドン・ホラーの叱責を受けることとなった。当初シルバータイタンはこの石をマクーがテロの為に地上に巻いたものと思っていたが、実際には「鬼火隕石」なる珍品で、ドン・ホラーが自ら調べようと楽しみにしていたとのことで、そのこともあって怒り心頭だった。
ハンターキラーは任務失敗を詫びつつ、石が鬼火隕石に違いないと告げ、これに対してドン・ホラーは鬼火隕石が本来もっと大きなもので、奪い合ったのは欠片に過ぎないとし、和広を尋問するよう命じた。
場面は替わってドルギラン内。
烈は奪った鬼火隕石の鑑定をコム長官に委託済みで、コム長官も鬼火隕石のことを知っていた(←烈は全く知らなかった)。長官の説明によると鬼火隕石には酸素を吸収する性質があり、周囲を酸欠地獄にする恐ろしいもので、6000万年前の恐竜絶滅の有力説候補とのことだった。
長官はもしこの鬼火隕石による恐竜絶滅が正しければ、鬼火隕石はまだ地球内部にあり、それが長年の地殻変動などで地表にせり出して来たのでは?と推測し、60度の熱が加われば酸素を吸収し出し、周囲の生物に致命的な影響をもたらすことを烈に警告した。
烈は即座に和広の入院する岬野病院に向かい、警察に病院の警護を依頼し、自らも警護役として張り込んだ。昭和の特撮番組では警察は影の薄い組織なのだが(苦笑)、烈の要請で警護してくれたのだから、警察との仲は良好なようだ。まあもしかしたら、銀河連邦警察と地球の警察が裏で繋がっているかもしれんが(笑)。まあ、どうせなら小次郎に警察官として張り込んで欲しかったものである(←道場主「『3年B組金八先生』じゃねぇ!!)。
ともあれ、烈に協力して月子は看護師に扮して自分も警備につくとし、ミミーはドルギランから鉱物探知機を使って村田邸を探索した。だが、これと云った進展が無いまま翌日―和広の妹の誕生日、和広の手術が行われることとなった。
手術室には月子も潜入した。番組紹介の星野月子の紹介でも少し触れたが、医師でも看護師でもない者が手術室に入るなど、現実ではあり得ない。社会的信用以前に、無菌状態が必須の手術室故、身体が完全無菌状態を保持されている者でなくてはならない故、第三者が入ることは事実上不可能なのである。月子、何者?(笑)
そして手術が始まり、前夜星に兄の生還を祈っていたのと同様にひたすら手術成功を祈るサチコを励ます烈。「きっと助かるよ。」とは放映当時良く行われた励ましで、実際、大葉氏はこの手の子供への接し方が堂に入っている。ただ、現実には難しい。下手に「助かるよ。」と云って、助からなかったら励ました相手を何倍も傷つける。完全な余談だが、コメディアン・高木ブー氏は、細君を失くされた際、余命五年の宣告がそれより早い1年9ヶ月で去られてしまったため、普段温厚な高木氏が周囲も驚く程医師に詰め寄ったらしい。根拠のない「助かるよ。」は、現実に簡単に声に出し辛いものである。
手術開始からしばし、和広の無事を祈る沈黙が続いたが、突如手術室の扉が開き、看護師の一人が助けを求めて来た。驚いた烈が室内に飛び込んだが、そこには和広の姿も、執刀医のそれも、月子のそれも無かった。行方を発った一行を追う烈は動力室の様な所で月子が変装用に掛けていた眼鏡を見つけたのだが、果せるかな、一行はそのままマクーに連行されていた。
そこではハンターキラーが和広を電子サイコネットなる機械に掛けていた。人間の脳内にある記憶を読み取る装置で、和広が鬼火隕石を拾った場所を探らんとしていたのだが、横たわる和広の周囲を医師達(←勿論月子を含む)が取り囲んでいたことから、恐らく鬼火隕石の所在地を探り当てるまでは和広を生かさんとしていたと思われる。
リーダーらしき医師=ケラダブラーの人間態が、「やれ」と号令して装置を発動させるとモニターには和広の記憶が映し出され、嵐ヶ原古戦場にて鬼火隕石の欠片を拾ったことが判明………………銀河連邦警察はマクー壊滅以前に全力を挙げてこの装置を奪うべきである!現実の警察に掛かる装置が存在すれば冤罪も未解決事件もなくなり、常時10数万人いるとされる行方不明者も激減するだろうに…………。
ともあれ、和広が鬼火隕石の欠片を拾った場所を突き止め悦に入るケラダブラーに、傍らにいた看護婦(阿知波悟美)=ダブルガールが祝意を述べ、周囲にいた医師もクラッシャー達の姿を現した。
ちなみに本物の医師達は傍らにて縛り上げられていた、月子を例外として。そしてこれにより、クラッシャーに姿にならない月子の正体がケラダブラー達にバレたのだった。
結局、ケラダブラー達が潜んでいたのは病院の地下で、程なく烈も辿り着いたのだが、そこには月子が縛られていた。彼女が殺されなかったのは、時限爆弾が仕掛けられていたからで、それを月子から聞いた烈は解除に掛からんとしたが、外せなかった。
早々に解除を諦めた烈は月子や医師達の縄を解き、和広を背負ってその場からの脱出を試み、辛くもこれに成功。小舟で川を渡るケラダブラー達をジープで追うのだった。
先回りに成功した烈は鬼火隕石探索に掛からんとしたケラダブラー一行を迎撃。緒戦同様、膂力では烈を押しまくるケラダブラーだったが、体裁きでは蒸着前の烈にも一歩劣っており、崖下の川中に烈を放り込んだが、烈は即座にジャンプしてそこを飛び出し、空中にてギャバンに蒸着した。程なく、ギャバンはクラッシャー達を蹴散らし、ケラダブラーとの一騎打ちに臨んだのだが、素早さや体裁きで烈にも後れを取っていたケラダブラーは膂力ではギャバンに対しても優勢だった。どうやら典型的な脳筋キャラの様だが、それでも服胸部から弾丸を発射したりもしていたので、そこそこの器用さも見せていた。
もっとも、この調子では勝利は覚束ない。例によってドン・ホラーは魔空空間を発動させ、ギャバンはサイバリアンを召喚して魔空空間に降り立ったのだが、ここで少し展開がいつもと違った。しばし格闘の後、円盤群が現れてギャバンを襲撃し、ケラダブラーもこれに乗り込んだ。いつもならここで電子星獣ドルが召喚されるのだが、ギャバンはケラダブラーの乗った円盤に追いすがり、円盤の屋根上でギャバンとケラダブラーとの格闘が展開された。
円盤の屋根上は決して広くなかったのだが、ギャバンは首を振り回して戦うドルの鼻面上に頻繁に立っているので、円盤の上がとても安定した場所に見えた(笑)。
しばらくして、ギャバンはケラダブラーを円盤から叩き落し、そこに大量の円盤群が加勢に駆け付けたので、ここでドルが召喚された。そしていつもの様にドルの上に乗ったが、本当にいつもいつもとんでもなく不安定な足場に立つ奴である(笑)。いつものようにドルレーザーやドルファイヤーで円盤群を殲滅したギャバンにケラダブラーは背中からバズーカを発し、ギャバンは地上に降り立つと最終決戦に臨んだ。
決戦は格闘から撃剣に展開。特にこれと云った特徴のない戦いからジャンプ一番、空中回転から打ち下ろすギャバン・ダイナミックで勝負は決したが、事態はこれで終わりではなかった。
ケラダブラーが大爆発を起こして姿を消すとそこには巨大な鬼火隕石が明滅していた。勿論、放置していてはどんな大惨事が起きるか分かったものじゃない。ギャバンは目から凍結ビームを発して鬼火隕石を冷やすとドルにこれを掴ませて宇宙空間に運び、ドルレーザーで粉砕した。
かくして、いつ地球上の生物を絶滅させるかも知れなかった鬼火隕石の脅威は去り、これがマクーに悪用されることも防がれた。岬野病院では一命を取り留めた和広が誕生日に何もプレゼントをしてあげられなかったことをサチコに詫びていたが、勿論サチコは兄の生還が何よりだった。
そして和広に替わってミミーが花束をサチコにプレゼントし、月子からも見舞いの花束か和広に贈呈され、歓喜の内に第20話は終結した。関係ないが、このとき何故ミミーは和服だったのだろうか?ま、良いんだけどね、綺麗だから(笑)。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新