宇宙刑事ギャバン全話解説
第21話 踊ってチクリ大ピンチ ハニー作戦よ!
脚本:上原正三
監督:田中秀夫
ミツバチダブラー登場
冒頭、ハニー治療センターなる施療施設から始まった。そこでは多くの病人・怪我人が踊っており、それをハニー萬田なる女性(曽我町子)が主導していた。この様なサイトを見て下さる方には説明不要と思われるが、『電子戦隊デンジマン』・『太陽戦隊サンバルカン』とスーパー戦隊シリーズで連作にて主人公達と敵対したヘドリアン女王を怪演された女優さんである。
レオタード姿で、例によっておばけのQ太郎やドクター・ケイトの声も当てたあのだみ声(笑)で「ダンシング!」と叫び、踊ればこの世は天国で、どんな病気も治ると宣っていた。
傍目から見れば丸で胡散臭い新興宗教にしか映らんが(苦笑)、勿論これにはマクーが噛んでいる(ハニー萬田の両脇で踊っていたのはダブルガール。ちなみにこの方々もレオタード姿(嬉々))。
ハニー萬田が手を翳す様に踊ると怪我人達は忽ち体が動くようになった。実際に自分や家族がこのような形で難病を治してもらえたら即座にその人物を信じるだろう。もっとも、中世ヨーロッパにて免罪符乱発や宗教裁判で腐敗していた頃のキリスト教会の一部にはサクラに盲人を演じさせ、神の奇跡で治療したように見せかける茶番をやっていた例もあるので、シルバータイタンも傍目で見てるだけでは絶対に信じないだろう(苦笑)。
話を聞いた烈も胡散臭そうにしていたが、そこに釣に行っていた当山が怪我をした豪介連れて帰ってきた。何でも岩場で足を滑らせ、足と首をやってしまったとのことで、烈にハニー治療センターの話をしていた少年がこれを勧めた。
ちなみに豪介を演じる多々良純氏は独特の渋面もあってか、数々の刑事ドラマや時代劇でも人に疑いの目を向けたり、胡散臭そうに訝しったりする役が似合うのだが(苦笑)、やはり云われた瞬間は思い切り胡散臭そうにしていた(笑)。
それでもハニー治療センターにやってきた一行。ハニー萬田が手を翳すや一瞬にして豪介の怪我は治り、さしもの豪介もハニー万度と共に踊り出し、わかば・陽一・当山も呆気に取られた。
勿論、特撮作品を見てる視聴者の立場では怪しいのは悪分かりで、その魔手は小次郎にも及んだ。街中で原付を走らせていた小次郎はしゃなりしゃなりと歩くハニー萬田&その側近に見とれて壁に激突。腰の痛みと救急車を訴えたところ、即座に駆け付けたハニー萬田の施術(←浣腸した様にしか見えず、それを気持ち良さそうにする小次郎が不気味だった(苦笑))で怪我は去り、誘われるままに踊り出す始末だった。
場面は替わってとある郊外。ジープを走らす烈に2人の少年が助けを求めて来た。少年はハニー治療センターで腰を治してもらった男性の息子で、豪介にハニー萬田の施術を勧めた者だった。求めて来たのは夫婦喧嘩を仲裁して欲しいという物。
実際、戸口では夫婦が掴み合いの喧嘩をしており、宥めながら聞いたところ、腰を治してもらった夫がハニー萬田に全財産を寄付すると云うのである。長年苦しんできたぎっくり腰を治してもらったことですっかりハニー萬田に心酔した夫は、「より多くの人々を救うために巨大な治療センターが必要」とするハニー萬田の言に共感したとのことだが、それでも「全財産」は異常である。
実際、難病・持病を治してもらったならそれに感謝し、治してくれた人物の力になりたいと考えるのは全く自然な話と云えよう。同じ立場ならシルバータイタンだってそれなりに可能な額での寄付に協力しようと考えるだろうけれど、それでも「全財産」は行き過ぎである。
話を聞いてた烈は、豪介もハニー萬田に多額の寄付を行おうしていたのを思い出し、訝しがった。
ハニー萬田を調べんとしてハニー治療センターに急行した烈だったが、そこで見たのはすっかり彼女に心酔し、踊り狂う豪介・小次郎・ぎっくり腰を治してもらった男・その他大勢の人々だった。
ハニー萬田がプールにいると教えて貰った烈はジャーナリストに変装してインタビューと云う形でハニー萬田に接触せんとしたが、彼女は烈を無視するかと思いきや、「よく見ると可愛い」としてキスを迫り、プールに突き落とすなどして煙に巻いた。
プールに落とされた烈が気を取り直して話を聞かんとしたが、ハニー萬田及びその助手の姿はかき消すように消えていた。
場面は替わって魔空城。
ハニー萬田=ミツバチダブラーを呼び出したドン・ホラーは、烈が接触を図ってきたことで大丈夫か?と問い質した。問われたミツバチダブラーはギャバンなど歯牙にも掛けていたないとし、現代日本で消費されている医療費・11兆9800億円の半数に当たる6兆円を吸い上げると豪語し、「大きく出たな。」とするハンターキラーにも自分の催眠能力をもってすれば容易なこととして高笑いするのだった(ちなみに一緒になって高笑いするダブルガールもいつもとやや容姿が異なっていた)。
呵々して大笑いし、尊大に振舞う曽我氏のその姿はまさにヘドリアン女王で、やはり独特の存在感を持つ女優さんであることを今更ながらに感じさせられる。ちなみに前話の終わりにて次回予告が流された際、いつもナレーションが読み上げるサブタイトルを曽我氏が読み上げていた。曽我氏は惜しくも平成18(2006)年5月7日に膵臓癌の為に享年68歳で孤独死されたが、令和の世にも「特撮界の悪の女王」と呼ばれた怪演をもっともっと見せて欲しかったものである。合掌。
閑話休題。
ハニー萬田の正体を突き止めんとした烈は、月子にビデオカメラを仕込んだブローチを託してハニー治療センターに潜入させ、その行動を負わさんとしたが、ハニー萬田を尾行する様に踊ったせいか、すぐに気づかれ、彼女がカメラに向かってアカンべーをした次の瞬間映像は途切れ、烈は慌ててセンター内に入り込んだ。
そこでは小次郎が一人で踊っていた(←触れたくないが、レオタード姿(毒))が、月子の行方を聞かれても「帰った。」と答えるだけ。勿論これは大嘘(←本当に知らなかっただけかも知れんが)で、屋上に駆け付けた烈はもう少しのところで飛び降りようとしていた月子を阻止した。
月子は目覚めず、ドルギラン内でミミーが調べたところ、催眠薬を注入されていたとのことだった。ただ、月子の潜入は無駄ではなく、コム長官からのビデオ通信が入り、月子の送った映像を元にハニー萬田の正体がダブルモンスターであることが判明した。
ハニー萬田は1000分の1秒だけミツバチダブラーとなり、首筋に強烈な麻薬を射ち込むという、コンバットスーツ蒸着もびっくりの早業を展開していた。コム長官によると麻薬が射ち込まれたことで痛みが消え、怪我や病気が治った気分にさせられるとのことだった。だが、痛み止め効果はともかく、何故に全財産寄付したり、云いなりになったりするかまでは誰も解せなかった。
だが、直後に突如月子が起き上がり、踊り出すような仕草を見せたため、烈はこれを止めんとして月子の首筋に残る針状の物を見つけ、コム長官はそれが受信機となって人々が操られていると断じだ。
コントロール電波の発信源を追って、烈とミミーはハニー治療センターに潜入し、発信源を突き止めんと個々に捜索していたが、ミミーはあっさりダブルガールに捕らえられ、ベッドに拘束された。
拘束されたミミーに対し、ハニー萬田はミミーが自分より若く美しいとして嫉妬し、敵意をむき出しにした。丸で『仮面ライダーストロンガー』にて、首を取るべきストロンガーよりも同性である電波人間タックル・岬ユリ子への敵意を露わにしていたドクター・ケイトを思い出させる言動である。
そしてミミーの頬を抓り上げ、レーザービジョンを奪い、センター内のアナウンスで烈に対して大集会を開き、その血祭りにミミーを捧げると宣した。放映開始以来最大の危機に早くギャバンが助けに来てくれることを心中で求める。そしてその横では豪介・小次郎・ぎっくり腰親父が踊り狂っていて、縛られているミミーを意にも解していなかった。
一方、烈はセンター内外を彷徨いつつも、音を頼りに何とか発信源を突き止めようとして、ミツバチダブラーのアジトらしく、蜂の巣の如く穴の多いアジト内を探り、数々のデス・トラップ(レーザー光線や槍が飛んでくるもの)を潜り抜けていた。
そして儀式を前にハニー萬田は信者然とした信奉者達は寄付を募った。それがまた奇妙で、家宝のダイヤを献じるとした初老女性には満足気で、妻の反対で金を出せないぎっくり腰親父(苦笑)にビンタを食らわせたのは分かるのだが、「私はこの若い体でダンス教師となり、協力致します!」としていた豪介に満足気だったのがけったいだった。
要は金ではなく、行動で奉仕するという物で、全く分からない話ではないが、豪介の「この若い体」に納得していたのがけったいだった(苦笑)。どうやらハニー萬田は金銭欲もある一方で、本当に一大組織を築かんとしていたと見受けられた。
ともあれ、ハニー萬田は「これもみんなの御蔭。」と一応の例を述べ、「面白いショー」を見せると宣言した。事の善悪はどうあれ、良くも悪くも集団のトップとして振舞おうとしている姿は興味深かった。
そして、ショーとは前言したようにミミーの処刑だった。ミミーは小次郎に助けを求めても小次郎は無表情で立ち尽くすだけだった。だが、間一髪烈の乱入が間に合った。
ミミーの首を刎ねんとして曲刀を手にしていたクラッシャー3人を手早く蹴散らした烈は奪った曲刀でミミーの枷を切り、レーザービジョンを渡すと洗脳者達の避難誘導を託した。洗脳された者達は無表情なまま、それでも促されるままに基地外に誘導されていった。
肝心なところで邪魔されたことに怒り心頭のハニー萬田はミツバチダブラーの正体を現し、毒針型の弾丸や投げ縄で烈を苦しめ、烈もギャバンに蒸着した。多彩な技を駆使し、クラッシャー達を指揮して猛攻を加えるミツバチダブラーはそれなりに強い方ではあったが、それでも格闘では僅かにギャバンが優勢でスパイラルキックを決めるのを見てドン・ホラーは魔空空間を発動させた。
勿論この後の展開はいつものワンパタである(苦笑)。
サイバリアン召喚 → 魔空空間に降り立つ → 格闘 → 円盤群加勢&乗り込み→ 電子星獣ドル召喚 → ミツバチダブラー円盤から離脱 → 撃剣となり、ミツバチダブラーはハチの怪人らしくフォイル状の細剣を得物にギャバンと打ち合った。
だが、「いつものワンパタ」は突如打ち破られた。レーザーブレードを発動したギャバンに対し、ミツバチダブラーは突如巨大化。ベーダー怪物・巨大モンガーだな、丸で(笑)。まあ、ベム怪獣の中には巨大化可能な者も数名いたから、ベム怪獣とダブルマンの良い所取りであるダブルモンスターが巨大化するのは分からない話ではないが、人間態を曽我氏が演じていたことからどうしてもデンジマン・サンバルカンの世界を思い出さずにはいられなかった(笑)。
そしてベム怪獣巨大化時同様、ギャバンは再度ドルを召喚し、スクリューキックやドルファイヤーを食らわせ、最後はドルレーザーでミツバチダブラーを木端微塵にした。ギャバン・ダイナミック以外がとどめとなったのはこれが初めてだった。やはり曽我氏の縁で変身体であるミツバチダブラーにも特別観が授与されたのだろうか。
ともあれ、勝負を決めたギャバンは地下にあったコントロール電波発信装置をレーザーZビームで破壊。これにより豪介・小次郎達の体から針が抜け、彼等は正気を取り戻した。
そしてラストシーン。どうやら犠牲者達に洗脳されていた時の記憶は無いらしく、それでも楽しかった感覚は残っていたものか、豪介は自分の考えた新リズム体操と称する踊りを当山や子供達に差せて、烈にも踊るよう促していた。烈にしてみればまさに「人の気も知らないで。」で、珍しく烈が豪介に呆れ顔をして第21話は終わったのだった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新