宇宙刑事ギャバン全話解説

第22話 黄金仮面と妹 太陽に向かって走るヨット

脚本:上原正三
監督:小林義明
クラゲダブラー登場


 冒頭、ヨーロッパ各地で大富豪が家宝の美術品を強奪される事件が相次ぎ、日本でも黄金の仏像が奪われ、烈は同様の事件を警戒し、悪徳富豪とされる石黒幸造(福山象三)をマークした。丸でアルセーヌ・●パンか怪■20面相だな(笑)。
 烈が石黒をマークしたのには根拠があり、事件の発生が石黒の旅行ルートと時間的にも一致していたからだった。

 かくして石黒邸に潜入した烈だったが、石黒邸は丸で怪盗の予告状を受け取った富豪みたいに厳重な警戒態勢を取っていた。烈はそんな鵜の目鷹の目状態の警戒態勢を掻い潜って宝物庫らしき部屋に潜り込んだのだが、そこでは黄金のマスク(←仮面舞踏会でも用いるタイプ)を付けた男らが天井からぶら下がって宝物を盗まんとしていた。
 烈と盗人は互いに顔を合わせて驚いたところに非常ベルが鳴り響き、両者ともぶつかり合ったりしつつも屋外に逃れた。翌日の新聞には怪盗Xと称する泥棒が厳戒態勢の富豪邸に潜入し、これに対して5000万の懸賞金が付けられていることが記載されていた。

 烈は引き続き石黒を怪しんで尾行し、石黒は屈強そうなボディーガードと共に映画やドラマに出て来るマフィアの取引然とした怪しい取引に臨み、「見事なエメラルド」を30万ドルで買い取るとし、商売相手もこれを快諾した。
 云うならば宝石の商取引で、公正な取引なら宝石店なり、寺社の事務所で行えば良いものを廃ビルのような場所で取引きしていたのだから、とても真っ当な商売とは思えなかった(←実際、石黒邸ではボディーガード達が拳銃を発砲してい)。
 案の定、石黒は30万ドルを払うと見せかけてアタッシュケースに仕込んだトラップで売人を殺害し、宝石を強奪。それを屋上から垂らしたロープに掴まって窓から見ていた烈は「マクーらしいやり方。」として、完全に石黒をマクーと見做していた。
 だが、ふと気が付くと烈と同様に昨夜の怪盗Xも配管を伝ってやってきており、Xは烈に愛想よく「いよ、失礼。」と云うとそのまま上部へ登って行った。

 Xはどうやら屋上から棟内に入ったらしく、石黒の側近が売人の死体を秘匿している間に石黒が一人になったのを見計らい、置き引きの要領でエメラルドの入ったアタッシュケースをロープで引き寄せて盗まんとした。
 済んでのところで気付いた石黒は側近に奪還を命じ、昨夜同様側近は拳銃を放った。銃弾を掻い潜り、バイクで逃げようとしたXだったが、どうやらバイクが被弾して走行不能になった様で、いよいよ追い詰められたところで相手が見せた正体はクラッシャーだった。
 そのせいでもないだろうけれど、あわやのところで烈がジープで割って入り、烈とXは共に逃走したのだった。

 場面は替わってとある港。そこにあるクルーザーの中で一人の少女・速水美知子(吉川理恵子)がフルートを吹いていた。そこにバイクで兄の速水力也(倉地雄平)が現れた(※「力也」の名は作中登場せず。Wikipedhiaより)。力也は美知子に新しいフルートを買うからもっと練習する様に語っていたところに、彼を「怪盗Xさん」と呼びながら烈が現れた。
 勿論力也は惚けた。烈の目的は石黒がマクーの一味で、相手すれば忽ち命を失うことを警告する為だったが、これは烈の接し方が悪い。力也がXで、烈に危ない所を救われたことを感謝していたとしても妹の前で「はい怪盗です、さっきはありがとう。」などと云う筈がない(苦笑)。
 結局、「帰ってくれよ!俺達、忙しいんだ、」と云う力也に烈は、「余り危ない橋は渡らない方が良いな。」と云い残して応じるしかなかった。

 勿論、烈が帰ったからと云って自体が進まない訳では無い。魔空城内ではドン・ホラーが奪われた宝石は必ず奪い返すとする石黒に、奪い返すだけでは不足で、ギャバンもコソ泥も殺すよう命じ、一方のドルギランではミミーが兄妹の身元を洗い出していた。
 ミミーの調査によると、兄妹の父は速水マコトと云い、宝石商とのことで、ロスアンゼルスで「アフリカの星」と呼ばれる宝石を何者かに奪われた上、殺害されていたとのことだった。まずここまでの段階で力也が世の宝石に詳しく、宝石の闇取引する者達をつけ狙っていたことが納得出来る。
 しかも石黒は一大オークションを展開して宝石を大々的に売ろうとしていたから、力也が取り戻しにかかる可能性は充分で、烈は兄妹が危ないとしてドルギランを飛び出した。

 再度クルーザーを訪れた烈は美知子に兄の行方を尋ねるが、彼女は知らないという。まあ、最前兄が危ないことに関わっていることを仄めかしていた男に知っていても行方を云う筈ないわな(苦笑)。だが、烈はテーブルにミミーが持っていた石黒大オークションについて掲載されたカタログが置かれており、烈は紙面に記載されていたオークション会場―巨大クルーザーに向かったのだった。

 誰にも読める展開だが、力也は当然潜入していた。クルーザーを繋留している鎖を登って入り込み、招待客や船員達の目を掠めて保管庫らしき一室に入ったが、それを秘かに見張る黒ローブを纏ったハグ(イギリス伝承に出て来る妖婆)風の男がいた。
 保管庫でアフリカの星を見つけた力也はガラスケースを外し、宝石を手にせんとしたが、かかる設備には警報装置か罠がつきものである。宝石に触れんとしたところで室内の四方から力也目掛けて青い光線が飛び、ダメージを負った力也は石黒と共に入って来た船員(←全員拳銃を装備)に取り押さえられた。
 力也の仮面を剥いだ石黒はアフリカの星を狙った力也を「目が高い。」としたが、苦痛と悔しさに表情を歪ませながら力也が石黒の父親殺害を詰ったため、石黒は眼前の若者が我が手に掛けた宝石商の息子であることを悟った。そして手下に力也を殴り倒させた石黒は彼をショーの見世物にしろと命じた。

 そしてBパートに入り、オークション兼ショーが始まった。
 ショーは拘束された力也をポリネシアンダンスに扮する手下が槍を投げ付けるという物で、マジック・ショーではナイフをぎりぎりで外す類のものが定番だが、勿論このショーに種は無い。力也の体には白いシーツが掛けられ、覆われた体をぎりぎり外すように槍が投げられ、その都度力也がうめき声を漏らし、そして最後に石黒が自ら槍を手にし、「とどめ」と云うので、それまで盛り上がっていた観客達も不安げに息を呑んだ。だがどてっ腹に槍が刺さるかと思われたその刹那、白布を破って太い腕が飛び出すと槍を制止した。
 白布を取り払って中から現れたのは、最前力也を見張っていたハグ風の男で、何者かと難詰する石黒に惚け、取り押さえに掛かった船員達を振り回した杖でもって瞬殺。軽業師の様に飛び交ったと思うと金髪美女に化け、ダンスをエスコートする様に船員達を翻弄した。
 話の展開や声質から烈が化けたものであるのは分かるのだが、正直、感の鈍い視聴者ならこの段階でも烈とは気づき得なかったのではあるまいか?少なくともシルバータイタンは最初に姿を見せた2,3秒ではそれが烈との確信を持てなかった。
 その後も烈は剣闘士やガンマンに扮して船員達や石黒を翻弄。ガンマンスタイル時には完全に烈と分かる状態で、石黒も「おのれ、ギャバン!」と悪態を突いた。そして石黒がクラゲダブラーの正体を現したところで、烈は招待客に石黒がダブラーで、すぐに逃げるよう促した。

 ところが、招待客は全員がクラッシャーで、クラゲダブラーはオークションこそがギャバンを誘き寄せる為の罠であったと云い放った。勿論烈は船内を移動しながらクラッシャー達と大立ち回りを演じることとなった。そして甲板上で力也と衝突。その時の会話から、烈が捕らわれた力也を助け、その際に早く逃げるよう告げていた様だったが、力也は船内に留まっていた。
 自分の助言に従わなかった力也に不満げな烈だったが、クラッシャー達が大挙して襲ってきては説教している暇はなく、クラッシャー達を蹴散らし、それに少し加勢する様に力也も続き、3年振りに曙四郎と志田京介が共闘したのだった(笑)(←道場主「このようなサイトを閲覧して下さる方々には説明不要と思います(笑)。」)

 程なく、クラゲダブラーが追い縋り、蒸着前の烈を相手にやや優勢に白兵戦を展開し、烈も早々にギャバンに蒸着した。すると船外に出た殺陣ではギャバンがクラゲダブラーに対してやや優勢に立ち、ドン・ホラーは魔空空間に引き摺り込むよう下知した。
 いつもの様にサイバリアンを召喚して魔空空間に降り立ったギャバンに対し、今度はクラゲダブラーの方がやや押し気味に勝負を展開。間合いを取ったギャバンはレーザーZビームで一撃食らわすとクラゲダブラーは円盤群に乗り込んだため、ギャバンは電子星獣ドルを召喚した。
 例によってドルファイヤードルレーザーで円盤群は一掃され、クラゲダブラーももんどり打って地面に投げ出され、ここに最終決戦が展開された。ギャバンは徒手空拳ではクラゲダブラーに対してやや劣勢だったが、サーベルを抜くと再々度有利に立ち、しばし時間はかかったが、クラゲダブラーの武器を弾き飛ばした次の瞬間、ギャバン・ダイナミッククラゲダブラーを粉砕して勝利を収めた。

 そして烈は笑顔でヨットにてアメリカに向かう速水兄妹を見送り、美知子は烈の名を叫び、力也は「またな!」返した。船主には大量の宝石が入っていると思しき袋が満載され、双方が笑顔で別れを告げているところからすると、恐らく数々の宝石の所有権が兄妹の父に在ったことが認められ、法的な問題は残らなかったのだろう。それとも、「宇宙刑事」的には管轄外だったのかな?(笑)


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新