宇宙刑事ギャバン全話解説
第23話 闇を裂く美女の悲鳴!霧の中の幽霊馬車
脚本:上原正三
監督:小林義明
クモダブラー登場
冒頭は夜の幹線道路から始まった。飲み会帰りの酔客達を乗せたタクシーから一人の美女・恵子(日夏万鯉子)が降車し、自宅へ帰る途中、人気のない道で今時馬車に遭遇した。馬車は何をするでもなく彼女の眼前を通り過ぎただけだが、御者席に座る紳士(山本昌平)に驚いた恵子はすっかり怯え、慌ててアパートに帰ると歯磨きしながら挨拶した隣室の小次郎にも悲鳴を上げる始末だった。まあ、下手なや●ざより遥かに強面な山本氏と夜中に顔を合わせたら、大人の男でも怖いと思う……何?山本氏に失礼?いやいやその強面とそれを活かした悪役振りが山本氏の魅力且つ演技力の基なので、山本氏を「怖い顔」と見るのは敬意でこそあれ、決して侮辱ではない。
ともあれ、恵子のただならぬ様子に不安を抱いた小次郎はアパートの天井裏伝いに圭子の部屋に侵入………おいおい完全に不法侵入だぞ小次郎、しかも下着姿で昭和の泥棒風頬かむり………マクーと違う意味で怪しい男と化した小次郎だったが、天井裏から恵子の体にまとわりついた蜘蛛に驚き、注意を促さんとしてバランスを崩し、天井を踏み抜いて転落してしまった。
普通、天井裏から頬っかむり・下着姿の男が落下してくれば、「きゃー!痴漢!!」と大声を挙げられることになるが、我に返った小次郎が見たのは気を失って怪紳士に担がれた恵子の姿で、小次郎の方が怪紳士の強面に悲鳴を挙げて気絶してしまったのだった………やはり、山本氏は芸能界でも屈指の強面である(笑)。
一夜明けて場面は替わって留置所。
そこには小次郎が収監され、面会人として烈と月子が訪れた。誰が通報したかは不明だが、若い女性の部屋で青年とも中年ともつかない男(←放映時の鈴木氏は36歳)が上述したスタイルで倒れていれば、誰がどう見ても怪しい(苦笑)。
もっとも、殆んど間を置かずに釈放されたところを見ると、警察も小次郎を本気で誘拐犯と疑っていた訳では無かったのだろう(誘拐犯が犯行現場に怪しい格好で気絶している方がおかしい)。ただ、異様なカッコの隣人が倒れていたため、小次郎が怪しい人物ではないとする第三者の証言が必要で、小次郎が烈を身元引受人になることを頼んだのだろう。
とはいえ、心配が昂じたからと云え、小次郎が怪しい手段で恵子の部屋を除き、入り込んだのは事実で、呆れ顔の月子に小次郎も反省の弁を述べた。だが、恵子が黒マントの男と共に宙に消えたという小次郎の証言に烈は半信半疑で、自分の言が信用されないことにブチ切れた小次郎は自力で真犯人を捜す、と息巻き、アバロン乗馬クラブにてわかば・陽一・その友人達に恵子を探す協力を依頼した。
だが、その後も同様の事件が相次いだ。
横浜埠頭で、クラブの女子トイレで、テニスコートのシャワー室で、馬車に乗った怪紳士と蜘蛛が現れ、次々と若い女性が拉致された。しかも埠頭では一緒にいた彼氏が一部始終を見ており、こんな特徴ある連続誘拐なら銀河連邦警察以前に警視庁が動きそうなものだが(苦笑)、案の定、事件は新聞沙汰になっていた。それでも警官の一人も出て来なかったのは、通常の警察では宇宙を股に掛けた犯罪組織マクーの行動力・科学力に全く抗し得ないのだろう。ま、しょうがないか……。
ともあれ、囚われた女性達はとある建物内に箱状の物体から首だけ出した状態で、額に蜘蛛を貼り付けられ、無表情に鎮座していた。怪紳士=クモダブラーは人間獣星化計画の為に獣星ホルモンを注入すべき対象を誘拐し、ダブルマンに新たな血を入れることを任務としていた。
上手く行くか否か怪訝にするハンターキラーに、クモダブラーは自分の人選はきっと満足してもらえると豪語していたが、その選択基準が美しいか否かと云うのがいかにもベタだった(苦笑)。
一方の烈は、テニスコートの更衣室でクモの糸を見つけた以外、これと云った手掛かりを得られずにいた。手詰まりなのは小次郎も一緒で、見かねた月子は囮捜査に出た。早い話、おしゃれをして小次郎とデートを装い、誘拐犯を誘き出そうという物だが、盗聴器らしきもので二人の様子を窺っていた烈も、(眼鏡を外し、そこそこ良い格好していたのだが)小次郎のムードの無さに、「マクーも逃げ出す。」とあきれ顔だった(つまり既にマクーの仕業と睨んでいた訳ね)。
だが、夜になっても何の変化もなく、諦めムードだった2人の前に遂に馬車が現れた。異変を察知して駆け付けた烈が見たのは、蜘蛛を見て気絶した小次郎と、月子が残したハイヒールだった。
そして月子の名を叫びながら駆けずり回る烈に怪紳士がレイピア(洋細剣)で襲い掛かってきた。怪紳士は加えて投網も用い、烈の動きを封じ(←古代ローマで剣闘士奴隷の網闘士の闘法である)、更に地面をレイピアで突くと火花が真っ直ぐに走って烈の足元を襲った。
丸で仮面ライダーストロンガーのエレクトロ・ファイアの様な攻撃による煙幕が晴れるとそこには蒸着を済ませたギャバンが立っていた。するとそこに3人の抜刀したクラッシャーが加勢。勿論簡単に蹴散らしたのだが、その時には怪紳士の姿は消え、レーザースコープを駆使して後を追うも見つけることは出来なかった。
Bパートに入ると夜は明けており、夜を徹して探索を続けていた烈は何とか月子のスカーフを見つける等して橋梁内部に作られたマクーのアジトに潜入した。
アジト内では怪紳士に攫われた女性達が一様にウェディングドレスを着せられ、一人が怪紳士と腕を組んでヴァージン・ロードを歩き、他の女性達もそれに付き従い、クラッシャー達が祝福していた。その顔には表情が無く、ある種のマインド・コントロール下か、催眠状態にあることが推察された。
その間、捜索を続ける烈をアジト内のクラッシャー達が迎撃していたのだが、このクラッシャー達はなかなかに優秀で、さすがに烈を倒すには至らずとも、襲撃直前まで宇宙刑事である烈に気配を感じさせず、アジト内の物陰を巧みに利用して攻撃を仕掛けていた。
そんな厄介な迎撃を掻い潜り、何とか怪紳士と対峙した烈。どうも怪紳士の持つ蜘蛛は武器や通信装置であると同時に女性達を催眠状態に置く役割もあった様で、烈が蜘蛛に一撃を加えると月子が意識を取り戻した。
怪紳士はクモダブラーの姿となり、やがて格闘は屋外に場を移り、クモ型怪人らしく糸を武器に烈を雁字搦めに縛り上げたが、烈はギャバンに蒸着することで戒めを断ち切った。そして相手がギャバンとなると、クモダブラーは明らかに戦闘能力で劣り、投網を少し活かしたぐらいを除けば押されっ放しで、ドン・ホラーは早々に魔空空間発動を命じた。
後はサイバリアン、電子星獣ドルの召喚から、最終一騎打ち迄見事なまでのワンパタだった(苦笑)。そして最終決戦となったが、例によって3倍のパワーを発揮するホームレンジでありながら、クモダブラーは殴り合いでは完全にギャバンに劣り、蜘蛛の巣状の場を活かした攻撃を繰り出したぐらいで、レーザーZビームで地上に叩き落され、その後は糸を網・ロープとして抵抗した。
再三に渡って投網を活かしはしたが、それもギャバンショックで断ち切られ、遠方から投げたロープでギャバンの足を絡め捕って引き摺るなどした。だが、サーベルが抜かれると糸は切られ、クモダブラーは抜刀して対抗したが、撃剣となると殴り合い以上にギャバンに劣っていて(苦笑)、レーザーブレードを発動から程なくギャバン・ダイナミックによってクモダブラーも粉砕されたのだった。
山本昌平氏と云う、数々のドラマで難敵を演じた俳優さんが人間態を演じた怪人としてはチョット弱かったかな?
かくしてマクーの女性を獣星化する計画は阻止され、誘拐されていた女性も帰還することが出来た。最終シーンで、小次郎は正気を取り戻した恵子に声を掛けるも、ナレーションの云う通り、小次郎の夢は叶わなかった(苦笑)。
まあ、純粋な心配から取った行動とはいえ、天井裏伝いに忍び込み、覗く行動を取ったとあっては好かれないだろうし、仮に助けて貰ったことに恩義を感じていたとしても、それが好意や愛情に結びつくとは限らない。
ただ、小次郎が何を話し掛けたかは分からなかったが、それに対する恵子の反応が黙殺だったのは戴けなかったな。大山小次郎は確かに三枚目キャラで、女性にモテる役所が似合うとは云い難いが、三枚目だからと云って、女性から不当な対応を受けるのは少し違うとシルバータイタンは考える。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新