宇宙刑事ギャバン全話解説

第24話 ミミーの悪夢か!? 吠える切り裂き魔獣

脚本:上原正三
監督:田中秀夫
サーベルダブラー登場


 冒頭、山道でジープを走らせていた烈は崖上から岩石を落とされ、サーベルダブラーの襲撃を受けた。尚、サーベルダブラーと云う名だが、剣をモチーフにしたダブルモンスターではなく、サーベルタイガーをモチーフとしている。但し、第25話以降、ダブルモンスターは動植物ではなく、道具や事象がモチーフとなる。
 ともあれ、烈は早々に蒸着したが、鋭い爪を得物とするサーベルダブラーに圧倒され、崖上から激流に叩き落された。インコに化けていたミミーは即座に元の姿に戻ると自らも激流に身を投じ、何とか岸まで引き上げた者の烈に意識は無く、そこにとどめを刺さんとしてサーベルダブラーが現れた。

 ミミーに出来ることは烈に取り縋り、「ギャバンを殺さないで!」と懇願する事だけだった………………というところでミミーは悪夢から目覚めた(笑)。
 そう、冒頭からの一連の流れはミミーの見ていた夢だった。恐らくかなりリアルなものだったのだろう。うなされ様を心配する烈にギャバンがコンバットスーツをいとも簡単に斬り裂く強敵によって殺される内容だったのを不安げに訴えたが、勿論烈がまともに取り合うことは無かった。

 地上に降り、珍しく牧場での仕事に取組み(笑)、小次郎に誘われて天野山にUFO探しに行こうとしていた烈だったが、ドルギラン内に残っていたミミーの胸騒ぎは尋常ではなく、目の前の鏡が突然割れ、そこに小次郎から変身したサーベルダブラーが烈を襲う幻覚まで見る始末だった。
 ここまで来ると幻覚と現実の区別もつかない様で、地上の烈に無線を送り、烈が小次郎と出掛けると聞くと先の幻覚を思い出して、「小次郎さんなんかといかないで!」と絶叫して気絶する有様だった。
 普通に言葉だけを見れば、「小次郎さんなんか」とは随分失礼な物云いだが、それだけミミーの精神状態はパニック状態にあり、烈も心配の余り小次郎の誘いをドタキャンしてドルギランに戻ってしまったのだった。

 元気な姿でも出ってきた烈に安堵したミミーだったが、烈への案じ様が尋常ではなく、バード星への帰還を促す有様だった。ここまでのシーンだけで見れば、たかが夢に何をここまで不安がるのかと思ってしまうところだが、ミミーが云うには、彼女には地球人で云うところの予知能力があり、このままでは今に取り返しのつかないことになるとしていた。
 そう云われたところで、烈が「じゃあ帰ろう。」と云う筈もなく、夢は夢でしかないと烈は突っぱねた。だが、ミミーはバード星人である自分が地球の為に命の危機を冒す気はなく、過去のフィルムを見せてギャバンは地球の為に充分戦ったとした。
 だが、周知の通り烈にとって地球は母の出身星で、自分にとっても「第2の故郷」としてミミーの申し出を拒んだ。まあ、宇宙刑事の任務を(いくら長官の娘であっても)カノジョの一言で放り出す訳にはいかんだろうし、父ボイザーの生死・行方もつかめていない。拒絶は自然な展開だが、錯乱し、緊張が頂点に達したミミーは昏倒する有様だった。

 昏倒後ドン・ホラーハンターキラーとがギャバン抹殺に全力を尽くす名を発する夢を見、元気になれば烈が自分の元から離れることを案じる余り、烈の介抱すら拒絶するミミー。烈がしばらく外出せず、一緒にいることを述べるやようやく幾ばくかの落ち着きを取り戻した。
 ここまでの展開だけを見れば、今回のミミーは只の我儘女に見えかねない。そもそも地球に来たのは任務ではなく、男(ギャバン)の尻を追ってのことで、普通なら強制送還されてもおかしくないのを恐らくは「長官の娘」という事で大目に見られているのだろう。
 ギャバンの手助けはするが、弱気になると「(自分と一緒に)バード星に帰りましょう。」と云って、自分のエゴで彼に任務放棄を促す始末である。だが、さすがに交流ある人物の危機は見過ごせず、小次郎と共に天野山に向かったわかばと陽一がサーベルダブラーに襲われる予知夢を見ると即座に烈にその救援を促したのだった。

 ミミーに導かれるままにアバロン乗馬クラブに戻った烈は当山からわかばと陽一が小次郎と共に天野山に向かったと聞くと自身も急行した。
 その頃、天野山では小次郎の持参した探知機がマクーの円盤が発する電波をキャッチして受信・反応していた。遂にUFOを探知したと興奮する小次郎達だったが、その姿はマクーの防犯カメラに捉えられており、サーベルダブラーが迎撃に出た。
 ほぼ同時に烈も現場に到着し、サーベルダブラーと対峙したが、鋭い爪を得物に斬り掛かってくる攻撃方法を見て、烈はそいつがミミーの夢に現れた相手では?と感じた。ドルギラン内ではミミーが烈とサーベルダブラーとのエンカウンターを感じ取ってか、増々強い不安に囚われていたが、自分が現場に行けば予知夢が正夢になると考え、その場を動けず悶絶していた。
 そして現実でも烈はサーベルダブラーにぶっ飛ばされ、激流に叩き込まれた。ただ、最前のミミーの悪夢と異なっていたのは、ミミーが現場にいないことと、烈が蒸着していなかったことだった。
 自力で川岸に辿り着いたところで意識を失い、気絶状態をサーベルダブラーに襲われたのは悪夢と一緒だったが、ミミーの必死の叫びを脳裏で聞き付けた烈は済んでのところで意識を取り戻し、ギャバンに蒸着してサーベルダブラー&クラッシャー達と殺陣を展開した。

 だが、クラッシャー達を蹴散らし、いざ一騎打ちになると、ミミーの悪夢に有った強敵振りは何処へやら(苦笑)。サーベルタイガー型の怪人らしく、俊敏性に優れて良そうなアクションを見せてはいたが、目を見張る程ではなく、格段優勢に勝負を勧めるでもなく、レーザーZビームに怯む様子も見せていた。
 これを受けてドン・ホラーは魔空空間の発動を命令。例によってサイバリアンを召喚して降り立ったギャバンはサーベルダブラーと殴り合いの格闘をしばし展開した。緒戦にてサーベルダブラーは空間内の巨大な虎挟みたいな罠でギャバンを一時拘束し、幾度となく斬撃を加えたが、ミミーの悪夢に現れた様な鋭利な破壊力は見せなかった。
 ただ、それでもギャバンが云うには、爪に対して及び腰になっていたようで、これでは埒が明かないと見たものか、積極的な猛攻に出て、程なく両者は撃剣に転じた。爪は一体何だったのやら(苦笑)

 やがて業を煮やしたものか、サーベルダブラーは巨大化した。手榴弾の様な物を幾つも投げるサーベルダブラーに対して劣勢に立たされたギャバンはここで電子星獣ドルを召喚し、その頭上に飛び乗るとサーベルダブラーに接近するよう命じて自身はレーザーブレードを発動させた。
 いつもと違う展開だったが、ここからは呆気なかった。ドルの突進力を利したと思われるが、ギャバンはレーザーブレードの一閃で巨大化したサーベルダブラーの爪を切り落とした。
 するとサーベルダブラーはほぼ戦意喪失状態となり、ギャバンは空中回転からの勢いをつけたギャバン・ダイナミックで秒殺に近い勝利を収めたのだった。というか、巨大サーベルダブラー、弱過ぎるだろ(苦笑)。

 サーベルダブラーが戦死すると同時に天野山中にあったマクーアジトも爆散・崩壊し、小次郎の探知機も反応がなくなった。だが、雲散霧消したのはアジトだけではなく、ミミーの悪夢もすっかり解消され、烈が激流の中を泳いで魚を取られ、それを投げ寄越されたミミーが河原で食す用意をするという楽しいひと時が展開される形で第24話は終結した。
 結局悪夢の要因、現実でのサーベルダブラーの存在意義とマクーの目的は触れられず終いだった(悪夢通りなら純粋にビジネスの障害となるギャバンを抹殺せんとしたものだった訳だが)。
 勝利したことでミミーの不安が消えたことは分からないでもないが、チョット尻切れトンボだったのは拭えなかったと云えよう。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新