宇宙刑事ギャバン全話解説
第26話 人形は見た!! 毒ガス殺人部隊の正体
脚本:上原正三
監督:小林義明
ガスダブラー登場
冒頭、とある外国(←東南アジアっぽかった)にて山村がドリーム・バードなる武装集団に襲われるというショッキングな始まり方をした。毒ガスと銃で武装したドリーム・バードは出会う人々を容赦なく襲い、略奪・殺戮を欲しい侭にしていた。
場面は替わって日本のとある喫茶店。
そこでは烈が小次郎からドリーム・バードについての説明を受けていた。普段役柄上典型的な三枚目ムード・メーカーを担う小次郎だが、ルポライターという設定上、こういうときは頼りある人物に見える。もっとこういうシーンは多くて良いと思う。
そしてそのドリーム・バードだが、小次郎の持つ記事によると裏で糸を引いているのは日本人で、組織の本部も日本にあるとの噂だった。
数々の写真を如何にして小次郎が手に入れたのかを烈が尋ねたところ、小次郎が街中で偶然遭遇した半酩酊状態だった人物(深見博)と揉み合っているところで相手が落として行った資料で、封筒には「都南大 坂田」の名が記されていた。
これを手掛かりに、烈はミミーと共に都南大学に向かい、ミミーを女子大生に扮させて潜入させた(放映当時の叶和貴子さんの年齢は26歳(笑))。学内では一宮教授(頭師孝雄)が関西弁で講義をしていた(←頭師氏は大阪出身)。
その内容は、人間工学に関するもので、その発展為には多少の犠牲―有り体に云えば、人体実験も辞さないことを仄めかす、少々危ないものだった。ショッカーやGODが喜んで勧誘しそうだ(笑)。
講義終了後、烈は一宮教授に例の写真を見せ、ドリーム・バードのこと尋ねたが、一宮は知らないと云う。ミミーはドリーム・バードが恐ろしい毒ガス集団であることを告げ、烈は写真を坂田が落としたもので、坂田がドリーム・バードの一員ではないか?と問い掛けた。
だが、一宮は坂田のことを「モルモットを殺すのすら嫌がる」という人物であると証言し、坂田がそんな恐ろしい組織に所属しているなど信じられないとした。確かに人体実験を必要悪と考える人物から見れば、実験動物の代表とも云えるモルモットを殺せない坂田は人畜無害の代表選手に映ることだろう。
だが、結局この二人は悪事に加担していた。
書庫らしきところで顔を合わせた二人だったが、坂田はこれ以上協力出来ないとした。一宮はそれを了承した様に見せつつ、抜けるなら前払いした契約金を返せと告げた。だが、坂田はそれを妹の手術費用に充てており、返そうにも返せなかった。パンチパーマにちょび髭面と云う怪しい風貌ではあったが(笑)、確かに坂田は一宮が烈に告げていた様な人物の様である。
そんな坂田に一宮は、彼が人類の進歩に大きく貢献出来る人物として持ち上げ、もっと物事ゆとりを持って考えるよう促し、遠回しに協力体制から抜けるのを制止した。決して恫喝的でもなく、高圧的でもなく、それでいて外堀を埋めるように協力を強要する人間……………世の中、こういう人間が一番心許せないかも知れない。特におだてに乗り易いうちの道場主は要注意だ(苦笑)。
その後、大学を後にした坂田を烈は尾行した。その道々、坂田を見張る烈を、覆面をした男達が見張っていた。そして無人の食堂っぽい所に坂田を見掛けた烈を男達が数名、槍を振りかざして襲い掛かり、辛くもこれを蹴散らした烈は壁を叩いて呟いた。「マクーめ…。」と。特撮場番組のお約束で、風が吹いても敵対組織の仕業である(笑)。ま、実際その通りなのだが、通常テロリストや犯罪集団の可能性は欠片も考えないものかいな(苦笑)。
場面は替わって魔空城。そこではドン・ホラーがドリーム・バードの構成員達を、「豊かな知識と冷酷非情な野獣の心を兼ね備えた若者」と評し、そんな若者を世界中に派し、各地で戦争を起こすことを一宮に命じていた。
それを聞いて、普段は奇声を挙げるだけで喋らないホラーガールが「戦争だ!戦争だ!」と喋り、興奮を隠せない様だった。犯罪組織であるマクーが死の商人も担っているのは想像に難くなく、戦争があちこちで勃発するのは商売繁盛の端緒で、組織が反映するか否かを決める重要なファクターでもあるのだろう。
その命令を椅子に座し、パイプを燻らせながらという、おおよそ神妙とは云い難い態度で一宮は聞いていて、やがて立ち上がると「第三次世界大戦やで。」と牢獄内にいる坂田に呼び掛けた。その坂田は椅子に拘束され、ヘッドホンを付けられた状態で座し、妙な光線を照射され、優しさを捨てよとの暗示に襲われていた。
その優しさを破壊せんとすることに抵抗してか、坂田は相当な苦しみに襲われており、やがては「毒ガスをばら撒きたい………。」と呟く程に洗脳されたのだった。
場面は替わってとある喫茶店。ミミーの調査で一宮がアメリカ帰りの高名な教授で、TV出演も多く、彼のゼミは特に優秀な学生しか入れず、その傍らで社会事業も行っていることを説明された烈は、関係箇所と思しき場に潜入したが、何の手掛かりも見つけられないまま、とある部屋に仕掛けられた罠に陥り、魔空城にいた坂田同様、椅子に拘束され、洗脳光線に曝された。
辛うじて椅子を振り切り、扉を開けた烈だったが、何故か採石場のような場所に繋がり、崖を転落する途中でギャバンに蒸着し、バズーカまで持ち出したクラッシャー達の襲撃を受けた。
レーザーZビームを放ったことでこれを躱したギャバンだったが、気が付けば彼は洗脳椅子の側に立っていて、仕掛けられた装置の恐ろしさを痛感するのだった。
Bパートに入ると坂田がとある病院に現れた。一宮との会話通り、彼には年の離れた幼い妹・マリがいて、多くの人の寄付を得た、仕事で海外に行くと云った偽りを並べ、妹を見舞うと病室を後にした。彼が一宮によってどこまで洗脳されたかは不鮮明だが、どうやら妹を想う心まで消されはしなかったようだった。
その坂田が病室を出ると、そこには烈が待ち受けていた。逃げようとする坂田を引き留め、烈は坂田の説得を試みた。ドリーム・バードの名前は出さずとも、その行動を非難し、知れば妹が悲しむ灯したが、それに対して坂田は幾ばくかの気まずさを見せつつも、烈の呼び掛けには答えず、迎えに来た一宮の車に乗り込みその場を後にした。
烈はこれをジープで追跡。一宮達は港でボートに乗り換えると沖合に向かい、烈も何とかこれを追って小島に上陸した(泳いだのか、船舶を利用したかは不明)。島は銃を持った兵士がうようよ警護してる物騒なところで、兵士の一人を殴り倒した烈はそのヘルメットを奪って、鵜の目鷹の目の警護を掻い潜って、更に深部へ侵入した。
本部らしきところでは防護服を着込み、獣とガスで武装した兵が並び、その一員となっていた坂田が一宮を「隊長」と呼び、「またジャングルに行くんですか?」と尋ねたが、一宮はそれに対して、「やらなあかんことがある。」としていた。
と云うのも、一宮は烈の侵入を察知しており、沿岸部で下半身が水に浸かった状態の烈に十数人で銃口を向け、坂田に「ギャバンに毒ガスをお見舞いしなさい。」と命じた。
命じられて銃口を向ける坂田に対し、烈は「マリちゃんが悲しい思いをするぞ。君のそんな姿を見たらな。」と投げ掛けた。
どうもこの第26話におけるマクーの洗脳は弱かった様で、坂田は「僕には撃てません!」と叫んで一宮の命令を拒んだ。業を煮やした一宮が坂田の銃を奪って自分で烈を討とうとしたが、坂田は突っかかってこれを止め、バランスを崩して転倒した一宮がガスダブラーの正体を露わにすると、坂田以外のドリーム・バードの面々までもが正気に返り、逃げ出した。だが、坂田はガスダブラーに毒ガスを浴びせられ、海中に叩き落されると、「妹を……。」と云うもその続きが云えぬまま烈の腕の中で息を引き取ったのだった…………。
怒り心頭の烈は、ガスダブラーの命を受けた、逃げずにいた兵士(早い話クラッシャー達)が掛かって来たのを蹴散らすとギャバンに蒸着。ガスダブラーも先端にマジックハンドがついた様な棒で相対したが、陰謀家のカラーが強いガスダブラーは戦士タイプではなかったと見え、ドン・ホラーは早々に魔空時空の発生を命じた。
確かにガスダブラーは白兵戦に優れていた訳では無かった(極端に弱くも無かったが)。ただ、大学教授に成りすますだけあってか、知恵は回るようで、魔空空間のあちこちから噴出する毒ガスを活かしてギャバンを苦しめた。
だが、決定力には欠け、円盤群に乗り込んで襲撃するもいつも通り、電子星獣ドルのドルレーザーで撃墜され、二刀流で戦うも、怒りに何度も目を赤く光らせてたギャバンは早々にレーザーブレードを発動し、ギャバン・ダイナミックでガスダブラーを粉砕したのだった。
そしてラストシーン。
病院の屋上で車椅子に座していたマリを見舞った烈は坂田の死を告げることが出来ず、「長い旅」に出たと告げ、深い悲しみとマクーへの怒りを静かに滾らせて第26話は終結した。
戦いが描かれる以上、どんな特撮番組でも悲しい犠牲の伴う話の一つや二つは含まれてしまう。『宇宙刑事ギャバン』は客演に子供が多いこともあってか、人死には少ない方だが、この第26話は第16話以来の悲しい終わり方で、時にはそんな話も必要であることは分かっていても遣り切れなかった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新