宇宙刑事ギャバン全話解説
第27話 先生たちが変だ!学校は怪奇がいっぱい
脚本:上原正三
監督:小林義明
ジャアクダブラー登場
冒頭、陽一は学校で買われているウサギの世話をしていた。帰宅途中、給餌を忘れていたのを思い出した陽一はウサギ小屋のある学校の屋上に向かった。しかし、TV番組で学校の屋上で喧嘩や逢引きや密談が行われるシーンを見るたびに思うのだが、普通、学校の屋上って、先生方の許可が無いと上がれないよな(苦笑)。
まあ、それはともかく、陽一がウサギ小屋に着くとそこに居る筈のウサギが二羽ともおらず、気が付くと校長先生が耳を掴んでぶら下げて運んでいたのを陽一は見掛けた。そしてその校長先生を演じるのは……………汐路章氏……………この番組放映の前年『仮面ライダースーパー1』でドグマの首領・帝王テラーマクロを演じた人物であることは特撮マニアの常識だが、時代劇ファンにとっても、顔を見た瞬間、「ああ、今回の敵役はこいつか。」と云いたくなる人物である(笑)。
もっとも、Wikipedhiaによると、「役のイメージとは裏腹に、実生活では故郷の京都で、無料の書道教室を開講して子供たちと触れ合うという一面を有する温厚な人柄であった。」とのことなので、悪役とはいえ、校長先生に塩路氏を配役したのはナイスチョイスと云える。
ともあえ、ウサギを連れた校長を尾行する陽一だったが、校長はある教室の前(何故か窓に南洋の魔除けに有りそうな不気味なお面が列挙されていた)でかき消すようにその姿を消した。
茫然自失とした陽一だったが、程なく教室からは先生達が出て来て、その中の一人の女教師(呉恵美子)が陽一に気付いた(恐らく担任なのだろう)。放課後、しかも教師達が会議していたような場所に陽一が一人ぽつねんと立っていたことを訝しがる女教師に陽一は校長先生がウサギとともに消えたと告げたが、女教師は露骨に疑った(そりゃそうだろう)。
だが、女教師は口頭上では陽一が嘘をついたとは云わず、確かめましょうとして陽一と共に教室内に戻るとそこには消えた筈の校長がいた。女教師が事のあらましを告げると、校長は別段咎めるでも、詰るでもなく、「丸で私がインベーダーではないか?」と怪しげにほほ笑む。
その様子にたじろぎ、女教師の尻の後ろに隠れつつ(苦笑)も、陽一は校長がウサギとともに消えたのを確かに見たと云い張った。
結局、「TVの観過ぎ。」と一笑に付されたのだが、収まりの付かない陽一は女教師を屋上に引っ張って行ったのだが、小屋の中には消えた筈のウサギが二羽ともいる。女教師は「思い違いは誰にでもあるものよ。」として別段陽一を嘘つき呼ばわりした訳でもなかったが、陽一は自分の見たのは絶対の真実だと頑強に云い張った。
「嘘」と「間違い」は違うから、特撮番組における、「怪獣(または怪人)を見た!」とする子供をすぐに嘘つき呼ばわりする大人に比べれば、まだこの女教師の対応はマシな方なのだが、それでも陽一は完全にむくれ、教師不振に陥り、学校を飛び出すと河川敷で子供達とサッカーをしていた烈の元に駆け寄り、その胸に飛び込むと自分の言を信用されない悔しさに号泣した。
勿論烈もわかばも心配するが、ただ泣いていたのでは分からない。何とか宥めながら事情を聴いた訳だが、実情を確かめに烈と陽一は一緒に学校に戻ったが、校長は普通に存在し、花壇で誰もいない放課後の校内は不気味で、白昼夢は想像力豊かな子供特権と笑うだけである。こうなると烈もそれ以上問い詰めようがない。
すっかりむくれた陽一は優しく頭に置かれた校長の手を振り払い、烈に対しても、「大嫌い。」。、「馬に蹴られて死んじまえ。」と罵って駆けだしてしまった。「ぐれる」と云うのはこんな風に始まるのだろうか?しかし、「馬に蹴られて」なんて台詞が出て来るのも、やはり牧場主の孫だからだろうか?
だが、烈は陽一を完全に疑っている訳では無かった。自分の云い分が通らないことに「誰も信じてくれない!」の念に陽一が凝り固まっていただけで、烈は陽一を信用しないとも、嘘つきとも云っていない。
烈は学校から出て来た校長を尾行した。そして校長の様子を見て、「穏やかな人物」としていた。まあ、「ウサギと一緒に消えた。」という陽一の証言以外、現時点では全く怪しい言動は無い。配役上「怪しいに決まっている。」と視聴者的に云えるだけである(笑)。
ドルギラン内で話を聞いたミミーも立派な人物だとして、陽一の見間違いではないか?としたが、烈はあくまで陽一を信じるとしていた。
場面は替わって双葉ヶ丘小学校。夜中にもかかわらず「緊急会議」という事で先生方が呼び出されていた。余談だが、道場主はかつて務めていた会社で、本当に夜に「緊急会議」で呼び出されたことがあるそれも22時に。夕方に始まった会議が日付が変わるまで長引いたことや、どうしても時間が取れずに予めその時間であることが決められたことで夜中に会議をしたことはあるが、「緊急」でそんな時間に開催されるのは本当に堪ったものじゃなかった、それも月に複数回………。
閑話休題。
例の女教師がこんな時間に会議が行われることを訝しがっていたが、実のところまともなのは彼女だけで、他の先生方は何も云わず入室し、教室の中に魔方陣を囲むように置かれた椅子に着席した。
その様子に異様なものを女教師が感じていたところに、校長先生が現れた。ウサギを連れて………。尚も訝しがったが、「黙ってお座り下さい。」と云われ、両脇から男性教諭二人に取り押さえられるように座らされては否も応もなかった。
そして巨大な数珠をみんなで回すように持たされ、それだけでも怪しいのに、校長が唱えていた呪文の様な物の内容は「邪悪の神よ我等に宿り給え。」……………どう見ても悪魔崇拝にしか見えなかった。
さすがに祭壇の様な物に捧げられた赤い液体を回し飲みするよう促されると女教師も悲鳴を上げて拒絶せざるを得なかったが、校長が数珠を投げるとそれは蛇に変じて女教師の首を絞め上げ、液体を飲まさせられるや女教師も他の教師達と同様無表情で校長の指示に唯々諾々と従うようになっていた。そして先生方が回していた巨大な数珠はいつしか大蛇となっていた………。
やがて場面は魔空城、ドン・ホラーの御前に移り、そこで怪僧スタイルとなった校長が円を描く大量の蝋燭と、輪になって回る蛇の真ん中で「邪悪こそマクーの未来。」と叫びながら踊っていた。
マクーの狙いは、教師達を、次いで子供達を洗脳し、平和を嫌い、悪に走り、やがては侵略戦争に走らせることにあった。確かに犯罪組織であるマクーにとって、戦争が多発すれば敵対する双方の国に武器を売りつける、「死の商人」としての利潤増大も見込めることだろう。だが、利益目的にはある程度の平和や治安も必要で、その隙を突けてこそ儲けが期待出来る。つまり、完全に壊滅した社会では奪うべき利益も、商売相手も存在しなくなる。
完全に地球征服を目論む悪の秘密結社か、侵略目的の宇宙人なら既存の地球社会を破壊し尽くす考えも分かるが、「犯罪組織」がそれをやっては意味が無い。その辺り、犯罪組織である宇宙刑事シリーズの悪の組織には、すべてを無に帰すような殲滅・破壊、完全な平和・治安の崩壊は避けてほしいものである。
閑話休題。場面は替わって双葉ケ丘小学校。そこでは陽一がいじめに遭っていた。先日の件で嘘つき野郎呼ばわりされ、囃し立てられていた訳だが、級友相手に何かを騙し取ったり、讒言をしたりしたのならともかく、校長とウサギが消えた云々でこんな槍玉上げを行ったりするものだろうか?陽一の孤立を描きたかったのだろうけれど、如何せんリアリティが無い。
ともあれ、いじめは担任が到着したことで止められ、それを見ていると女教師はまともに見えるのだが、何故か被害者である陽一は廊下に立たされ、級友達は更に囃し立てた。一応、女教師はそれを窘め、教室に戻るよう促していたが、陽一は「授業を受けずに済んで清々すらあ。」と完全にやさぐれていた。改めて、「グレる」と云うのはこういうところから始まるんだろうな。ストーリーに全く関係ないが、少年の頃に道場主は両親に「ぐれてやる!」と云ったところ、「ボケてやる……。」と云い返された苦い記憶がある(苦笑)。
そんな陽一が何気なしに窓の外に目をやると、スコップとバスケットを持った校長がどこかに行こうとしていて、陽一はそれを尾行した。勿論授業中に無断で郊外に出る行為は褒められたものじゃないが、校長を怪しみ、嘘つき呼ばわりを何としても払拭したい陽一の立場に立てば無理ない行為である。
程なく、校長とそれを尾行していた陽一は採石場に到着。校長がそこに何かを埋めるのを目撃した陽一は後日それを掘り出し、バスケットを開けようとしたところで校長に捕らえられた。
その陽一が帰宅しないことを案じたわかばは学校を探索し、校長と先生達の怪しい儀式を目撃。同時に校長がジャアクダブラーに変じたのも見てしまったことで洗脳された教師達に追われることとなった。
洗脳されたものの定番で、先生達の動きはトロかった(苦笑)。つまりはゾンビ状態だった訳だが、これまた定番通り、緩慢な動きでも数に物を云わせ執拗にわかばを追い、窓や扉も開かなかった。
偶然、わかばを襲おうとしたところ教師の一人が窓ガラスをぶち破ったことで校外に逃れたわかばだったが、採石場の水溜りで一人の教師に捕まり、そこには校長と教師達に取り押さえられてもがく陽一がいた。 校長は水溜りから這い上がろうとするわかばを蹴り落とした。わかばを取り押さえんとしていた教師諸共(笑)。そして陽一も同じ水溜りに放り込まんとしたが、そこに烈が現れ、間一髪これをキャッチした。御都合的なタイミングだが、事前に陽一の身を案じて学校に行こうとしていたわかばと顔を合わせていたので良しとしよう(笑)。
姉弟を助け上げた烈はわかばに陽一を連れて逃げるよう促すと校長達と対峙。烈は完全に校長をマクーのモンスターと決め付けており、事ここに至ってはジャアクダブラーも隠す気が無かったのか、校長の姿のまま腕を伸ばして烈を絞め上げた。
だが、どうもこのジャアクダブラー、耐久力が大したことない様で、蹴り一発で絞め上げていた手を放し、尻餅をつく体たらく。おまけにそのショックでかジャアクダブラーの姿が露わになると、先生方への洗脳も呆気なく解けてしまった(苦笑)。
そして先生方が逃げ散るのと入れ替わりにクラッシャー達が集まると烈はギャバンに蒸着。藤姉弟を初め、子供達の集う学校と云う場を狙ったマクーへの怒りからか、ギャバンはクラッシャー達如きにディメンションボンバーを敢行して早々に一網打尽に。次いで先端が蛇状の杖を得物としたジャアクダブラーとの白兵戦となったのだが、やはりジャアクダブラーは武よりも謀のタイプの様で、得物を駆使しながら徒手空拳のギャバンに対して優位に立てず、ドン・ホラーも早々に魔空空間発動を命じた。
恐らくジャアクダブラーも自分の格闘能力が大したことないのは自覚していたのだろう。例によってサイバリアンで着地したギャバンにホームレンジを利した奇襲を繰り返した。
魔空空間ではあちこちから大蛇が飛び出し、学習机や崩壊する校舎がギャバンを襲った。ポルターガイスト現象の様な、人工地震のような攻撃が続いた訳だが、シチュエーションを活かして戦う奴も珍しい。あ、他の奴等が3倍パワーアップに慢心してただ殴りかかるケースが多いからか(苦笑)。
だが、様々な得物やシチュエーションを駆使して尚、ジャアクダブラーは優位に立てず、円盤群に乗り込んで対抗するも、例によって召喚された電子星獣ドルのスクリューキック&ドルファイヤーの二点セットで円盤から叩き落された。
曲刀を抜いたジャアクダブラーは、同じくサーベルを抜いたギャバンと撃剣を展開。しかし武の上におけるジャアクダブラーの劣勢は否めず、幾度となく斬り付けられた後に、空中回転からのギャバン・ダイナミックを受けて木端微塵に粉砕されたのだった。
かくして陰謀の首魁は倒され、先生達の洗脳も解け、双葉ケ丘小学校には平和な日常が、そして行方不明を繰り返したウサギが烈の手によって戻された。陽一と女教師が和解した様子が描かれたのは良いのだが、この小学校の校長がどうなったのか?(つまりジャアクダブラー戦死で校長が一時的でも不在になったのか?校長は憑依などで取って代わられていただけで無事に復帰したのか?)、度々ウサギが行方を発っていたことに何の意味があったのか?等は分からずじまいだった。
恐らく早期にジャアクダブラーが倒されたことで描かれなかったと思われるが、子供を邪悪に走らす洗脳教育がどう行われるものだったのかも不明のままで、何とも消化不良な感じで第27話は終結した。24分程度の話でそこまで描くのは難しいかもしれないが、教育現場を洗脳して長期の悪事を目論む長期作戦展開が何とも犯罪組織らしかったので、そこは前後編にしてでもしっかり描いて欲しかったものである。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新