宇宙刑事ギャバン全話解説
第29話 電撃マジック合戦!暗殺のプログラム
脚本:上原正三
監督:田中秀夫
マジックダブラー登場
冒頭、二代目引田天功(本人役)のマジック・ショーが披露されていた(観客の中には小次郎と月子がいた)。次々とマジックを披露する中、ステッキを浮遊させるマジックの途中で一人の初老の男(中田博久)がそれを遮った。
ポール一星と名乗ったその男は天功のマジックをインチキとし、自分のマジックこそが本物と云い放った。超能力を名乗るならいざ知らず、種も仕掛けもあるマジック・ショーにインチキもへったくれも無いのだが、いずれにせよ他人のショーを妨害して、侮辱する行為は無法である。
当然、天功はその非を鳴らし、最前列にいた小次郎と月子も抗議の声を挙げた。これに対しポール一星は、天功のマジックを「小手先」として、もっと大掛かりなマジックを披露すべきとした。まあ、力量を過小評価する言ならまだ分かるが、それでも「インチキ」呼ばわりは酷いし、他人のショーに割り込むのは非礼だ。まあ、マクーのモンスターにそんなことを云っても無駄だが…………えっ?何?この時点ではまだマクーとは断言出来ない?チッチッチッ、昭和中期に中田博久氏が怪しく出て来たとあっては鉄板でしょう(笑)。
この中田氏がどんな俳優さんであるかは、この様なサイトを見て下さる方々にいちいち説明しません(笑)。どうしても説明して欲しいと云う人は、過去作「悪の組織の大幹部に学ぶリーダーシップ」か同じく過去作「仮面ライダーアマゾン全話解説」を閲覧して下さい(笑)。
ともあれ、ポール一星は天功に、もっと危険を伴う脱出系の「マジック−火炎地獄からの脱出」、「出口なき水中密室」、「人間ワープ」を披露して見せろと迫った。特にマジックの中でも至難とされる人間ワープをしてみせろと挑発し、その難易度・危険度から表情を曇らせる天功に、出来ないなら二代目・引田天功の名を返上・廃業しろと迫った。
実際、脱出マジックをメインとする引田天功さんは過去に何度も負傷している。また、脱出王と云われた稀代の奇術師ハリー・フーディーニはマジックに対する準不足による負傷が遠因で命を落としてる。難易度の高いマジックに危険を懸念してもおかしな話ではない。
だが、この挑発が腹に据えかねたものか、二人の助手は「やりましょう!」と云い、スリルを求める無責任な観客達もやれ、やれ、と唆し、こう云われては天功は勝負を受けざるを得なかった。
当然と云おうか、必然と云おうか、案の定と云おうか、ポール一星はマクーの手先だった。ある一室に入るとそこにはハンターキラーとダブルガールがいた。「上手く挑発したようだな。」とするハンターキラーにポール一星はその後の展望を語った。
当然勝負は自分が勝ち、勝つことで「日本一のマジシャン」の名声を得て、マジック学院を立てて名声を元に生徒を集め、マクー流のマジックを仕込むのとマインド・コントロールを施すことでマクーの尖兵とする気の長い作戦だった。
長期展望はまあ犯罪組織らしくてなかなかに興味深いのだが、手先養成後の目的が、マジックを装って銀行・宝石店の襲撃、集団催眠で人間どもを自由に操る、だったから恐れ入る(笑)。まあ、人間集団をそこまで意のままに動かせる時には社会そのものを意のままに出来ると睨んでいたので、荒唐無稽な話でもなかった。
一方、ポール一星と勝負する予定の天功周辺にはマクーの魔手が迫っていた。難易度から強い自信を抱けずにいる天功を励ます二人の弟子―時田と秋葉サチオだったが、バイクでの帰宅途中にマクーの襲撃を受けた。
眼前に虎が現れたことに驚き、二人の乗っていたバイクが転倒し、時田が負傷した。そこに偶然烈が通りかかったことで、「虎が現れた!」という二人が「何を寝惚けたことを…。」と云われることも無かった(笑)。
だが、烈が追う頃には敵は姿を消し、虎の毛皮が残されていただけだった。そして怪我を免れたサチオも、自宅マンションで妙な鳩に襲われ、それを振り払おうとしている内に扉前の柵を乗り越えて地面に転落してしまったのだった………。
時田は腕を負傷しただけで済んだが、さすがに4階から真っ逆さまに転落したサチオは助からなかった。ドルギラン内でニュースを見てサチオの訃報を知った烈はサチオが殺されたと断じ、彼の霊前で悲しみに暮れる天功にポール一星のことを尋ね、勝負を受けない方が良い、と諭した。
だが、勝負と事件の因果関係は不明である(警察の調査ではサチオの転落死を自殺とも事故とも断定しかねていた)。結局、自分を励ましてくれたサチオに応える為にも人間ワープを成功させ、勝負に勝たなくては、とする天功の想いを烈には止めることが出来なかった。
烈は日本マジシャン協会に行き、ポール一星のことを調べた、結果、彼の存在は記録されておらず、天功もアメリカやヨーロッパで修業を積んだことを耳にしただけだった。そして更にはサチオのマンションも調べた。
そのマンションの屋上で鳩の羽を二枚見つけた烈は、「マジシャンなら鳩を自由に操れる。」として、「もしかして、マクー…。」と推理した………否、作品的には正解なんだけど、論理が飛躍し過ぎているだろうに(苦笑)。
意を決した烈は、天功に自分をサチオの代役に使って欲しいと申し出た。いきなりそんな事云われて「じゃあ、頼みます。」となる訳も無いが(笑)、烈はでんぐり返りから直った状態で飛ぶととんぼ返りして見せた。多少身体能力に優れているか、充分な訓練を積んだに人にとってとんぼ返りはそんなに難しい技ではないかも知れないが、でんぐり返り直後の不充分な体勢から決めたのは凄いと思う。大葉氏がJACでスタントマンの訓練も積んでいたのは有名だし、数々の特撮番組でスーツアクターを務めたのも今更云うに及ばずだし、この『宇宙刑事ギャバン』でもロープワークを駆使した壁下りを披露しているが、何気ないワンシーンに優れた身体能力が垣間見えるのも大葉氏の凄い所だとシルバータイタンは思う。
結局これが認められて烈は天功の助手となったが、それを物陰から見ていたダブルガールが即座にドン・ホラー達に注進した。ハンターキラーはそれを聞いて忌々しそうにしたが、ポール一星は平気の平左だった。むしろ、ワープ・マジックに参加するとなると必ず絡繰りのある箱に入ることになるので、そこに分解光線装置を仕込んでおけば、ギャバンを電子分解することで、蒸着ならぬ蒸発させることが出来ると、図解をもって豪語した。
そして場面は替わって決戦会場。「引田天功VSポール一星 銀河スケールマジック合戦」と銘打たれた勝負が行われる場にて天功と烈達はリハーサルを行っていた。
小次郎と時田が見守る中、観客に恭しく頭を下げる所作も堂に入っている烈、丸で役者さんみたいだ(笑)。リハーサルは成功し、小次郎と時田のみならず、天功も絶賛。その後一同は地下室に入り、そこの仕掛けを片付けた。
人間ワープとは、人の入れる二つの箱を用意し、片方に入って拘束したところで箱を銃撃し、次の瞬間にはもう片方の箱にワープしていると云うものである。地下室の存在を知ってしまえばどうってことないマジックに見えるが、実際には地下室の存在を意識させなかったり、瞬時の移動を為したり、したように思わせる為には高度な体術が求められるのだろう。
二つの大箱の地下には小さなトランポリンが置かれており、これを用いて素早い移動を為していたと思われるが、確かにこれはかなりの体術を求められそうだ。
ともあれ、烈は後片付けを終えた。そこにはポール一星の名が書かれたワープ・マジック用の箱も置かれていたのだが、案の定、後刻ポール一星と助手達が入って来た。
天功用のボックスの上部に何らかの装置を仕掛け、これでギャバンも一巻の終わりだとほくそ笑むポール一星。だが、その一部始終をピノキオ人形に扮した何者かが見届けていたのだった。
Bパートに入り、ショー対決が始まった。観客席には小次郎に加えて、月子、当山、わかば、陽一達もいた。その観客席最後方ではポール一星が、箱に入った直後に火花を散らして本当に姿を消す烈の最期を想像してニヤニヤしていたが、マジックは見事に成功した。
何故蒸発しない?と訝しがるポール一星だったが、それを口にする訳にもいかず、自らが行うブラックホール・マジックの出番が来た。
ブラックホール・マジックとは、箱に入った者が圧縮されて出て来ると云うのである。言葉ではそう説明されたが、実際にどんな結果になるのかは分からなかった。と云うのも、マジックは失敗し、大箱に入った助手は背中から火を挙げ、悲鳴を上げながら飛び出し、クラッシャーの正体を見せた途端に消滅してしまったのだったから。
勿論観客席は悲鳴の坩堝と化し、小次郎達も避難した。訝しがり、狼狽するポール一星を物陰からニヤニヤしながら見ていた烈は既に彼等の悪巧みを御見通しであること、大箱に仕掛けられた装置をポール一星側のそれに移していたことを告げた……………見張りぐらい付けておけよな、ポール一星さんよぉ(笑)。か、マジック開始前に点検するかだよな(笑)。
ともあれ、クラッシャーが姿を現した以上、ポール一星達がマクー一味であることは確定だった。ポール一星は男爵ディーノばりに………じゃなくて(笑)、ジェネラル・シャドゥばりにトランプを手裏剣代わりに投げ付けるとマジックダブラーの正体を現し、烈と殺陣を展開した。
遊園地遊具上の足場の悪さをものともしない両者の大殺陣。恐らくマジックダブラーにとってはホームレンジとしての有利さがあったのだろう。だが、身体能力は烈の方が優れている様で、シチュエーション上の不利を匂わせつつも互角以上に烈は戦った。
ターザンの如くロープに掴まり、移動しているところをマジックダブラーの投げたトランプ手裏剣でロープを切られて落下した烈はギャバンに蒸着。蒸着前から互角以上の殺陣を展開していたギャバン故、勝負は明らかに優勢だった。高所から叩き落されたマジックダブラーはゴミ箱に頭から突っ込む体たらくで、業を煮やしたドン・ホラーは魔空空間発動を命じた。最近、魔空空間発動が本当に早いよな………(苦笑)。
いつもの様にサイバリアンを召喚して魔空空間に降り立ったギャバンに襲い掛かるマジックダブラー。余りにいつものことなので省略しているが、毎回戦闘舞台が魔空空間に移る度にダブルモンスターが魔空空間のエネルギーを得て3倍にパワーアップされることが今回も述べられた。
そしてその「3倍のパワーアップ」を感じさせられることが毎回毎回ほぼなかったのだが(苦笑)、マジックダブラーはそこそこ善戦し出した。元より名前の通り、マジックを主体としたモンスターなので、トリックを駆使するのはお手の物なのだろう。マントを巧みに利用してはギャバンの動きを封じたり、不意打ちに利用したりした。
加えて、昨今のダブルモンスター同様、シチュエーション利用も行い、エレクト●・ファ■アの様な電火走りや空飛ぶ丸鋸がギャバンを襲い、爪や鎌を駆使した格闘戦にも冴えを見せた。
これらの攻撃をヒット&アウェーで駆使されてはさすがにギャバンも苦戦を感じ、高次元戦闘車ギャビオンを召喚し、これにマジックダブラーを砲撃・加勢させた。ギャビオン、第10話以来の出番である。
ギャビオンはマジックダブラーの指ミサイルも、円盤群からの加勢も物ともせず、空中を飛ぶとギャビオンレーザーで円盤群を一掃して登場していたマジックダブラーを叩き落とし、ギャバンは更にギャビオンミサイルもぶっ放した。
これには堪らずマジックダブラーは大岩に化け、擬態して周囲に溶け込んだが、ギャバンのレーザースコープは誤魔化せず、ギャバンはそこにギャバンショックを放った。この技、第23話で使用された際はギャバンの体に絡みついたクモダブラーの糸を断ち切るのにつかわれたが、この第29話では純粋に敵にショックダメージを与えるべく指先から放射された。
その後、マジックダブラーが尚もトランプ手裏剣を駆使すればギャバンはシルバービームで対抗し、遂に両者は刀剣を抜いての撃剣に及んだ。撃剣に及べば勝負は決まったも同然だった。それでもマジックダブラーは一撃とはいえ、斬撃をギャバンに当てては見せたが、レーザーブレードが発動するとその後は秒殺に近く、最後はいつもの様にギャバン・ダイナミックで粉砕されたのだった。
そして事件解決後、引田天功は別のマジックを披露していた。がらんどうの樽の様な物に紙を張り、中央に蛇口を取り付けると中からジュースが出て来るという物で、喝采する小次郎、月子、当山、わかば、陽一達に振舞われ、それをジープから遠巻きに見ていた烈は満足そうにその場を走り去ったのだった。
脱出マジックも確かにそれを為す技術や装置の精緻さは見事だが、物を出すマジックもまた基本的だけに千変万化、種類も多く、平和に人々を楽しませ続けてくれることだろう。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新