宇宙刑事ギャバン全話解説
第30話 ドンホラーの息子が魔空城に帰って来た
脚本:上原正三
監督:小林義明
ケイビダブラー登場
冒頭、火星と木星との間のアステロイドベルトから怪電波を発信されているのをキャッチした烈がそれを調査に向かっていた。アステロイドベルトとは、日本語で「小惑星帯」とされ、小惑星の公転軌道が集中している領域のことで、太陽系では火星と木星各々の公転軌道間に存在するものを指す(当然宇宙全体では他にも多数ある)。
ミミーから怪電波の発信源はテラスなる小惑星から出ていると告げられた烈はギャバンに蒸着した状態でテラスに降り立ち、妙な発信機を発見した。
するとそこに「ようこそギャバン。」と云いながら、三又の鉾を持った赤い甲冑姿の男(西田健)が現れ、三又鉾を駆使したり、赤い球体となって体当たりしたりしながら襲い掛かって来た。相手を強敵と見たものか、ギャバンも早々にサーバルを抜き、相手が球体になれば自らも青い球体となって対抗した。
どうも相手にとって勝負は小手調べだった様で、何者かと問われると、「宇宙の魔王ドン・ホラーの息子」、「マクーの行動隊長サン・ドルバ」と名乗り、ギャバンの父・ボイザーが地獄に落ちたこと、ギャバンもいずれはそうなることを予告して姿を消した。
場面は替わって魔空城、ドン・ホラーの御前。赤い球体でやって来て姿を現し、「ただいま戻りました。」と告げる息子サン・ドルバに「待ちかねたぞ。」として歓迎の意をドン・ホラーが表したことで御前は突如酒宴の場となった。
顔を銀塗にしたレオタード姿の4人のダブルガールが剣舞を舞い、宴席には久々にダブルマン達も顔を見せ、クラッシャー達も何人か酒に興じていた。皆、(歓迎の宴という事もあるのだろうけれど)それなりに上機嫌なところ、そこへやってきたハンターキラーだけ無表情だった。
ハンターキラーに気付いたサン・ドルバは自分を歓迎する宴であるからとしてハンターキラーにも酒を勧めたが、ハンターキラーはこれを辞退。それをサン・ドルバは「生真面目」、「片意地を張っている」と揶揄し、そのガチガチな姿勢故にいつもギャバンにしてやられているとした。一応、ハンターキラーをマクーの陣頭指揮に立っている者としてそれなりに丁寧な言葉を使っていたが、云っている内容は全く敬意を払っていなかった。
一方のハンターキラーも、一応は敬語を使って接していたが、揶揄された際には「失敬な!」と云って声を荒げていた。そして尚も飲めと勧めるサン・ドルバの手を静かに払おうとしたところ、盃の中の酒をぶっかけられたのだった。
さすがにこれにはハンターキラーも激昂。銃を抜き、サン・ドルバはそれを弾き、拾おうとしたハンターキラーの手を三又鉾で押さえつけ、更には顔面を殴打し、立ち上がったところで鉾を突き付け、一触即発の空気に場は静まり返った…………。
結局、ハンターキラーが銃も拾わずその場を辞し、一触即発は避けられた。サン・ドルバが彼を揶揄し、挑発したのも、「虫の好かないスパイ野郎」と見てのことだった。恐らくは宇宙刑事でありながら銀河連邦警察を裏切ったハンターキラーを、マクーのことも裏切りかねないものと見ていたのだろう。
サン・ドルバが「さあ、飲み直しだ!」と云ったことで場は再度盛会となったが、この諍いはドン・ホラーの御前で展開されたものだった。正直、息子、サン・ドルバを咎めなかったドン・ホラーは組織の長として失格である。はっきり云って、ドラ息子の横暴を黙認したに等しい。もし、一般企業である日突然会社にやって来た社長の息子が、如何に気に入らないとはいえ、部長・課長を侮辱し、それを見ていた社長が咎めなかったら、部下は社長の息子を厄介な虎の威を借る狐としか見ないだろうし、社長もそれまでの敬意を失うだろう。
勿論かかる侮辱を受けたハンターキラーは怒り心頭。退出時にすれ違っただけのクラッシャー達を次々張り倒す大人気なさで、アジト内のとある一角に来ると「このままでは済まさないぞ……サン・ドルバ……。」と独り言を漏らしたが、それを頭上には妙な飛行体が目の様な物を赤く光らせていた。
宴も終わりを迎え、剣舞を待っていたダブルガール達も退出すると、サン・ドルバは椅子にしていたホラーガール(←ひでぇ…)から立ち上がると、「ギャバンにはほとほと手を焼いている。」としていたドン・ホラーの前で、ギャバンと一騎打ちをして、必ず勝つ、と(酒を飲みながら)豪語した。
父親、それも組織の長を前にしてかなり不遜な態度だが、恐らくドン・ホラーは多少素行に問題があっても蛮勇が功を奏することを期待してか、そんな息子を頼もしい、としていたが、突如制止の声が上がった。
サン・ドルバが現れた時同様、赤い球体が飛来するとそれは一人の老婆(三谷昇)となり、彼が一騎打ちに挑むのを「いかん、いかん、とんでもない。」とした。その老婆に、「黙れ、キバ!」と叱責するドン・ホラー。
老婆の正体は魔女キバと云い、ドン・ホラーの黙れとの声にも、「「黙れ!」とは何じゃ?!サン・ドルバはわしが腹を痛めて産んだ子じゃ。」と返した。つまりキバはドン・ホラーの妻(両者の雰囲気から側室か妾的な色合いが濃い)で、サン・ドルバの母という事で、いくら老婆とはいえ、男性である三谷氏に女役を演じさせたのも凄いが、 MATの岸田文夫隊員(西田健)と、ZATの二谷一美副隊長(三谷昇)が母子と云うのはもっと凄いシチュエーションである(笑)。
キバは半ばドン・ホラーを無視して、如何に息子が武芸に秀でていても、ギャバンと戦えば相打ちになる公算が強いと告げた。勿論母親が相手とはいえ(母親が相手だからこそと云うべきか)、そんな風に云われて面白い息子などどこの世界にもいない。
サン・ドルバは今まで一度も勝負に負けたことはないと反論し、その戦果が母の言に従ったものとするキバに対する不貞腐れ振りを見ると、実際それまでの戦果はキバの云った通りだったのだろう。そんな息子にキバは自分が妖術でギャバンを金縛り状態にするので、その隙に打て、と囁いたが、さすがにこれは武人としてのプライドが許さなかった様で、彼女(……違和感半端ない……(苦笑))のことを「キバ」と呼び捨てにして、その助けを不要とし、マクーの行動隊長である自分をいつまでも子供扱いするなと愚痴った。
そしてそんな母子の論争(?)を尻目に、ハンターキラーが愚痴をこぼしていた時と同じ飛行隊がその場を飛び去った(キバだけがそれに気付いていた)。
場面は替わってドルギラン内。そこに妙な通信が届き、それを見たミミーは宇宙刑事だけが使える暗号電文であると口にした。早速それを解読機に掛けたところ、「モリガウゴクトキ ミルナシャレコウベノメ」という文章になったが、増々訳が分からなかった(苦笑)。
ともかく、ミミーはこの電文を烈に報せ、特に「ミルナシャレコウベノメ」を強調して用心するよう促した。それを了承した烈は意味も、送信者の正体も図りかねてジープを走らせていたが、そこにサン・ドルバが立ちはだかった。
そして次の瞬間、周囲の木々―森が動いて見える幻覚に襲われ、酩酊した様にジープから崩れ落ちて出てきた烈はそれが「モリガウゴクトキ」ではないか?と推測した。だがそれで状況が好転した訳では無い。サン・ドルバが持つ三又鉾の穂先の付け根は髑髏になっており、その眼窩部に映るキバがギャバンの最期を告げていた。
だが、次の瞬間、烈はこれが「ミルナシャレコウベノメ」であると悟り、両手で視界を遮ることで酩酊状態を脱し、間一髪サン・ドルバの攻撃を躱した……………「助けは要らん。」と云いながら、手を借りてんじゃんかよ、サン・ドルバめ(笑)。
ともあれ、シャレコウベから飛び出したキバとサン・ドルバは二人して金縛りが効かないことを訝しがったが、次の瞬間烈の足元からケイビダブラーが飛び出し、烈の体をリフトアップした。
見るからに「馬鹿力だけが売りです。」と云っている様な存在であるケイビダブラーは怪力を振るって烈を投げ飛ばし、頭突きを連打し、羽交い絞めにしてその動きを封じた。キバはこの隙に烈を討ち取る様サン・ドルバを促し、サン・ドルバも三又鉾を槍の様に突き出しながら突進したが、次の瞬間、烈とサン・ドルバの間に数発の火花が発せられ、攻撃は阻害された。
何者の仕業か?と訝しがる両者が見上げた丘の上には、黒い帽子、黒いジャケットを纏った「気障」を絵に描いたような男(宮内洋)が立っていた。
Bパートに入ると、サン・ドルバはクラッシャー達に丘の上にいる早川健風の気障男(笑)を撃て、と命じた。ジャンプ一番銃撃を躱したその新命明風の気障男(笑)はジャケットを脱ぎ捨て、ドルギランにいるときの烈に似たいで立ちを見せ、剣を抜くとクラッシャー達を次々と斬り伏せた。
そして手にしたサーベルをレーザーブレードの様には発光させたその風見志郎風の気障男……………すみません、さすがにわざとらしい上にくどいですね(苦笑)………コホン、その男は発光体を光弾の様に烈とケイビダブラーの間に飛ばし、間合いを取らせると、「蒸着せよ!ギャバン!」と呼び掛けた。
さすがに言動と云い、服装と云い、配役と云い(笑)、ここまでくれば味方確定である。烈は笑顔でそれに応じると蒸着した。蒸着を終えたギャバンは再度サン・ドルバと一騎打ちを展開した。勝負はどちらが優勢とも劣勢とも云えない展開を見せた。だがギャバンは剣を抜いておらず、徒手空拳のままにもかかわらず互角に戦っていた故か、キバはこのままでは相討ちになると懸念し、ケイビダブラーに横槍を入れることを命じた。
両者の間に割って入ったケイビダブラーは体を球状に丸め、大玉となってギャバンを押し潰す様に攻撃を仕掛けたが、烈は剣で斬り付け、このタイミングにドン・ホラーは魔空空間の発動を命じた。
いつもの様にサイバリアンを踏み台に(笑)、魔空空間に降り立ったギャバンにケイビダブラーは怪力に加えて首を飛ばした攻撃を行ってきた。特に体がギャバンを取り押さえ、そこに頭部が頭突きする攻撃はそれなりにギャバンを痛めつけたが、やはり決定力を欠いていた。
ケイビダブラーは円盤群も動員し、ギャバンが2週連続となるギャビオン召喚でこれを迎撃すると別動隊である円盤群に乗り込んでギャバンに襲い掛かった。だがこの別動隊も電子星獣ドルの迎撃を受け、ドルレーザーでケイビダブラーは地面に叩き落とされた。
その後、サーベルを抜いたギャバンに、見た目のイメージらしく棍棒を得物に、頭部と胴体の連携攻撃で襲い来るケイビダブラーだったが、やはり決定力に欠けた。程なくギャバンはレーザーブレードを発動。忽ち棍棒を真っ二つにされたケイビダブラーは尚も曲刀を武器に抵抗したが、これと云った見せ場を見せることなく、前方宙返りからのギャバン・ダイナミックで粉砕されたのだった。
場面は替わって魔空城。そこではサン・ドルバが不機嫌に酒を煽り、そこにハンターキラーが現れて、もう少しのところでギャバンを打ち損ねたことに対する慰めを口にした。
それを聞いて、「まだ負けた訳では無い。」と云って憮然としていたサン・ドルバだったが、そこにキバが「裏切者がいては勝てない。」と口を挟んだ。
「裏切者」と云う単語にその場にいた全員が色めき立ったのだが、自分の妖術の秘密を洩らされたことが相当頭に来ていたキバはハンターキラーに誰が裏切者か知っている筈だとし、「知らぬとは云わせぬ!」と云ってその名を云うよう迫った。もう完全に犯人扱いの言で、苦痛に顔を歪めつつ尚も沈黙するハンターキラーにキバは例の飛行体を眼前に突き出し、宇宙刑事にしか使えぬ物と云って、裏切りの証拠として突き付けた。
これを受けてドン・ホラーもハンターキラーを裏切者として暗黒銀河への永久追放を宣言。周囲を囲まれ、逃げようとしたハンターキラーだったが、ドン・ホラーの発する怪光線に体の自由を奪われ、宙を何度も舞わされた挙句、何処かに放逐されたのだった………。
ハンターキラーの裏切りを看破したキバに、今度は名前を呼び捨てにせず、「おばば」と云って、よく見破ったことを褒めるサン・ドルバだったが、キバに云わせると、裏切りの有無に関係なく、ハンターキラーの利用価値はもうなくなっているとのことだった。所詮はこれが背信故に敵からも味方からも信用されない裏切者の末路という事だろうか。
そしてラストシーン。烈の危機を救った気障男は「宇宙刑事アラン」と名乗った。礼を述べる烈にアランはそれ程のことをしていないとして、彼がある任務故に地球に来たと告げ、烈に協力を求めた。
勿論それが何なのかは次回に持ち越されることとなったが、危ない所を助けられた上、同じ宇宙刑事である仲間の要請を烈が断る筈も無く、二人の宇宙刑事は笑顔で握手を交わし、第30話は終結したのだった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新