宇宙刑事ギャバン全話解説

第32話 謎の地底迷路 ターゲットはWX-1

脚本:上原正三
監督:田中秀夫
トツゲキダブラー登場


 冒頭、ギャバンはサイバリアンでマクーの武器輸送ドラックを追走していた。魔空空間に降り立つステップ以外に使われるのは珍しい(笑)。
 荷台のクラッシャー達がバズーカ砲を放って抵抗するのをものともせず、サイバリアンロケッターでトラックを討ち果たしたのだがどこか不満げだった。

 そんな烈がドルギランに戻ったのを出迎えたのはミミーではなく、マリーンだった。何でも入院した母親の見舞いでバード星に帰ったとのことで、その代理として地球に来たとのことだった。

 場面は替わって魔空城。そこではドン・ホラーが先のギャバンによる襲撃で武器輸送車を失ったことによる損害を口にし、サン・ドルバにいつまでギャバンをのさばらしておくのか?と詰問していた。
 費用を気にするのは犯罪組織らしくて良いのだが、2週間前に着任したばかりの息子を捕まえて「いつまで?」と詰問していたのはチョット戴けなかった。そんなことを云えば、サン・ドルバがやってくるまでの約7ヶ月間、父親のあんたは何をやっていたのさ?という事になる(苦笑)。まあ、2週間も、7ヶ月も、放映話数からの計算で、作中経過時間まで詳細に触れられていた訳では無かったのだが。

 ともあれ、詰問を受けたサン・ドルバキバに何か良い知恵はないか?と問うた。それに対してキバは、今までの敗北は地球上の戦い故で、宇宙に誘き出すことを提案(←ホームレンジである魔空時空内で散々敗れて来たことは何なのさ?)。その為の材料として基地内のスクリーンに宇宙ステーションを映し、サン・ドルバはそれだけで母の云わんとすることを察したようで、円盤群に宇宙ステーション襲撃を命じた。

 常日頃、電子星獣ドルにあっさり一掃されてばかりの円盤群(苦笑)も、武装していない宇宙ステーションからすればその襲撃は充分に脅威で、搭乗員達は即座にスペースシャトルでの脱出を図ったが、そこにも宇宙船からのレーザー砲撃を加えた。
 この襲撃はマリーンを通じて烈の知るところとなり、烈は即座にドルギランでもって宇宙ステーション救援に向かった。

 モニターでそれを確認したサン・ドルバは、「俺の作戦は成功した。」とほくそ笑んでいたが、要するに事件を起こしてギャバンが来るのを待っていただけである。それって、「作戦」と云うほどのことか?

 ともあれ、サン・ドルバは円盤群にドルギラン襲撃を下知した。ここでBGMが「レーザーブレードのテーマ」になり、長くギャバンと敵の最終撃剣にカッコいいBGMを聞いて心躍らせてきた視聴者には違和感が抱かれるところだが、そもそもこのBGMはマクー襲撃時に使用される筈だったのが、そのカッコ良さからレーザーブレードを抜いてギャバン・ダイナミックを決めるまでの過程を彩るの定着したらしい(笑)。

 いずれにせよ、このBGMがこの場面で出て来ること自体はおかしな話ではない。ただよく分からんのが、ドン・ホラーの督戦を受け、母であるキバ共々ギャバンを呼び寄せて行う満を持した攻撃にしては、稚拙と云わざるを得なかった。
 何せ数機程度の円盤群で銃撃するだけで、普段魔空空間に降り立ったギャバンを襲いながら、電子星獣ドルやギャビオンに一掃されている攻撃と何ら変わらなかったのだから。
 的がでかいので円盤群からの掃射は命中し、慣れていないマリーンは狼狽えていたが、烈は平気の平左で、円盤群による攻撃を「うるさい蠅め。」としていた。

 結局、烈はギャバンに蒸着して宇宙空間に飛び出すとドルの頭上に乗ってドルレーザードルファイヤーで円盤群を全滅させ、普段と何の変化も無い展開で終わった。円盤群全滅を悔しがるサン・ドルバドン・ホラーは、ギャバンが正攻法で勝てる相手ではなく、彼を「WX-1」と評した。だが、それ以上のことは云わず、地上でも宇宙空間でも勝てなかったことを悔しがるキバにこの後どうするかを詰問し、キバは次なる陰謀でギャバンを誘き寄せんとした。

 場面は替わってとある河川敷。そこを警ら中だった一人の初老警察官が助けを求める声を聞きつけた。声の主を求めてとある建物のコンクリート壁に辿り着いた警察官は突如壁から突き出て来た腕によって壁の中に拉致され、その後も土木作業員や通りすがりと思しき人々が何人も壁の中に消えた。
 事件は忽ち「人食いビル」として町々の話題となり、丸で肝試しに来たかのような感覚で小次郎、わかば、陽一が探検ルックでやって来た。楽し気な小次郎、半信半疑のわかば、あり得ないと云いつつ同行する陽一、と3人の想いはそれぞれに異なっていたが、正直、シルバータイタン的にはここでの小次郎の在り様には首を傾げた。
 何人もの人が姿を消し、曲がりなりにも警察が見張りを立て、場を封鎖する事件沙汰となっている。百歩譲ってUFOルポライターである小次郎が職業柄好奇心が抑えられないという話ならまだニヤニヤしているのも分からなくはない(大事件現場で特ダネ遭遇に不謹慎にニヤニヤするマスゴミ関係者の話も聞いたことがある)。
 だが、警察の出張る危険(とされる)場にまだ小学生であるわかばと陽一を伴う小次郎には保護責任義務が伴う。それを物見遊山的にやってきているのは小次郎のキャラクターを考慮に入れても眉を顰めざるを得なかった。

 当然の様に入り口で警察官に立ち入りを禁じられ、小次郎はあっさり引き返そうとした。だが、陽一が勝手に別口から先行した。壁が人を拉致することは信じられなくても、事件そのものには興味があったようだ。結局、放っても置けない小次郎とわかばはそのまま探検することとなった。
 程なく、おっかばびっくりで探検を続ける3人の耳に少女っぽい声で助けを求める声が聞こえた。事件確定且つ、何とも不気味なシチュエーションだが、人の好い小次郎達は捨て置けず、声のする方向に向かい、遂には壁から上半身だけを出し、必死に助けを求める少女を発見した。

 こんな姿を見せられては否も応もない。即座に少女の腕を掴み、引き摺りださんとした小次郎だったが、何と少女の腕はもげてしまった。その異常に長い腕を手に、尻餅をついて狼狽える小次郎を小馬鹿にするように少女は笑い、やがてその姿はキバのものとなったのだった。
 這う這うの体で逃げ出さんとする3人だったが、そこにトツゲキダブラーが立ちはだかり、キバもやって来て、3人は地下の一角に監禁状態となったのだった。

 Bパートに入ると、月子に案内されて烈がやって来た。
 わかばと陽一の名を呼びながら地下道を探索する烈に壁から出た手が襲い掛かった。辛うじてそれを振り切った烈だったが、そこにクラッシャーやトツゲキダブラーが襲い掛かった。
 しかし、第13淮以降、ダブルマンとベム怪獣の良い所取りとして登場する様になったダブルモンスター、第3クール以降は動植物ではなく、事象や機能がモチーフとなったため、余程特徴的な攻撃をしないと印象に残り辛くなった。このトツゲキダブラーなんぞ、名前を呼ばれないとただただ体当たりを繰り返しているだけの敵にしか見えないだろうなあ(苦笑)。
 そんな没個性的なダブルモンスターに烈は蒸着もせずに相対していたが、突如姿を消し、気が付くと少し離れた位置にサン・ドルバが仁王立ちしていた。

 サン・ドルバは、烈が進むも地獄、退くも地獄の無間地獄に陥ったと宣言し、烈が飛び蹴りを食らわすと姿を消した。そして烈は自分の名を呼ぶわかばと陽一の声を頼りに地下道を彷徨い歩き、程なく3人が監禁されている扉に辿り着いたのだった。
 針金を合鍵代わりにして扉を開いた烈はそこに3人がいるのを確認した。わかばも陽一も怪我無く、小次郎だけが白昼夢状態だったが、それでも平手打ち2発ですぐに覚醒した。
 だが、事件自体が烈関係者を、そして烈を誘き寄せんとの罠である。みすみす見逃す筈も無く、扉を開いたところでトツゲキダブラーが襲い掛かって来た。

 烈はトツゲキダブラーに羽交い絞めにされた状態で自分に構わず3人に避難を促した。烈の身を案じつつも小次郎は2人を連れてその場を去った。いよいよ本腰入れてトツゲキダブラーと対峙しようとした烈だったが、トツゲキダブラーは姿を消し、3人が監禁されていた場が烈を嵌める為の罠であったことが分かった。
 監禁所の扉は閉ざされ、壁の中から出た手が烈を小突いたり、訳の分からない念動力(←キバが発したものの様だった)が烈を拘束して壁に打ち付けたり、妙な音波が烈を悶絶されたり、と云った攻撃が続いたのだが…………まあ、例によって決定力を欠いていたな(苦笑)
 さすがにそこに毒ガスが流し込まれると烈も焦りを感じずにはいられず、画面的にも緊迫したが、それでも蒸着するやあっさり脱出出来る様なものだったので、話にならなかった(嘆息)。烈を監禁するなら、何よりもコンバットスーツの電送を遮断出来る場にしないとな。

 ともあれ、地上に出たギャバンに襲い掛かるトツゲキダブラーとクラッシャー達だったが、明らかに劣勢だった。時折ショートテレポートの様な体術を駆使して体当たりを繰り返すトツゲキダブラーだったが、勿論決定打になる筈も無く、円盤群に乗り込んでギャバンを襲うも、ギャビオン召喚の前に手も足も出ず、ギャビオンからの砲撃に右往左往する姿は見られたものじゃなかった。
 この体たらくに対してドン・ホラーが下した判断はいつも通りで、その後の展開もいつも通りだった(笑)。

 サイバリアンで魔空空間に降り立ったギャバンを大きめの曲刀で襲ったトツゲキダブラーは、素手での殴り合いの時よりは少しはマシに応戦したが、それでもギャバンは徒手空拳で曲刀を弾き飛ばしていたから、トツゲキダブラーの格闘能力は完全にギャバンに劣っていた。
 他にも魔空空間のシチュエーションが炎や岩を飛ばしたりしてギャバンを苦しめたが、有効打にはほど遠く、得物を失ったトツゲキダブラーは(ホームレンジである魔空空間に威ながら)ディメンションボンバースパイラルキックにももんどり打って倒れ込む体たらくだった。
 シルバービームにも翻弄されるトツゲキダブラーを見かねて戦闘円盤群に加勢を命じるサン・ドルバだったが、これまた例によって電子星獣ドルの召喚とドルの3点セット(ドルレーザードルファイヤードルキック)によって壊滅し、乗り込んでいたトツゲキダブラーももんどり打って地面に落ちて来た。
 後はもう勝負になっていなかった。巨大な飛来物がギャバンを襲った隙に再度曲刀(そもそも切れ味が無きに等しく、当たった直後だけ電撃の様なものでギャバンを苦しめた)を手にした直後少しだけ優位に立ったが、それも僅かな時間で、ギャバンがサーベルを抜くと投げ付けて首に命中させたのが最後の一矢となっただけで、その後は優位に立つことはなく、前方宙返りからのギャバン・ダイナミックに粉砕されたのだった。
 トツゲキダブラーの敗死を受け、落ち込むキバと、ギャバンのことを「何としぶとい奴め…。」として臍を噛むサン・ドルバ………単純に遭遇したダブルモンスターを返り討ちにしただけなんだが(苦笑)。

 そしてラストシーン。そこではビルに呑まれた人々が次々と助け出されていた。それを心配そうに眺める月子、小次郎、わかば、陽一。それは自分達を逃がさんとしてその場に留まった烈の身を案じたもので、背後から現れた烈に小次郎はビルに食われた人々も助かったと告げた。
 そんな小次郎に「ビルが人を食う訳がない。」とからかうように云う烈。それでも警察沙汰になったり、行方不明者が続出したりしたのは事実で、そのことを指し、眼前でまた一人救出されたことを述べる小次郎はやはり人の良い小心者の役柄をしっかり担っていた。
 だが、小次郎がそう云いながら振り返った時には烈の姿は無く、次々と罠を張り巡らせてくるマクーに新たな戦意を燃やして第32話は終結したのだった。

 まあ、それは良いとして、サブタイトルにも謳われ、ドン・ホラーがギャバンを評して口にした「WX-1」って、一体何だったんだ?どうも、最近こういう消化不良が多い気がする………。


次話へ進む
前話へ戻る
「宇宙刑事ギャバン全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和六(2024)年四月一七日 最終更新