宇宙刑事ギャバン全話解説
第33話 新怪物誕生 エイリアンを拾った少年
脚本:上原正三
監督:田中秀夫
カイブツダブラー登場
冒頭は魔空城内で始まり、そこではサン・ドルバが8つの卵をドン・ホラーに披露していた。サン・ドルバの語るところによると、卵はダブルマンとモンスターの染色体を繋ぎ合わせたことで生み出されたダブラーの新受精卵で、孵化後数時間で60mもの巨躯に成長し、凄まじい怪力を持つとのことだった。
そしてサン・ドルバは卵を地球で孵化させるとした。何故地球で?と訝しがるにドン・ホラー対して、サン・ドルバとキバは亜硫酸ガスで待機が汚染された環境と、餌となる犬・猫・牛・馬・人間が大量に存在する地球は最適な場所としていた。
卵はまず1個目が工場排水口という如何にも公害に曝されているような場所に放置された。だが、他の卵をばら撒かんとしていたダブルガール(東まり子)とクラッシャー達はとある交差点で偶然烈と遭遇した。
勿論普通の地球人の振りをしてやり過ごさんとしたのだったが、さっきを読まれたことで廃工場に先回りされ、マクーであることがバレた。いっそ烈に遭遇したことに気付かない方が良かったのかも知れなかったかな。
結局、クラッシャー達が迎撃している間に卵を持ち去らんとしたダブルガールだったが、ギャバンの追跡を撒けず、シルバービームで車ごと粉砕され、自身は唯一人魔空城に逃げるのが精一杯だった。
そしてその排水口に沈められた卵は、石川ヒロシなる少年に拾われた。そしてこのヒロシが偶然陽一と知り合いだったために、烈が後々絡むこととなった。
ダブラーの卵はシェパードが吠え、猫が逃げる等、動物が異様な反応を示すものだったが、ヒロシと遭遇した買い物帰りの小次郎は(その大きさから)「鷲の卵」と推測し、一緒にいた月子とともに、これをおやつのオムレツにせんとした。
だが、ダブラーの卵は頑丈だった。普通の卵を料理する要領で割ろうにも割れず、ハンマーで叩いてもビクともしなかった。業を煮やした小次郎はそのままレンジにかけたのだった(←※普通の卵であっても絶対真似しないで下さい!!)
案の定、卵は料理されるどころか孵化が促され、ひび割れたかと思うとレンジを壊しながらカイブツダブラーの幼体が飛び出し、襲われた小次郎は腕を負傷した。
堪らず3人が屋外に飛び出したところに、偶然烈と出くわした。しどろもどろに異常事態発生を訴える小次郎に烈も戸惑い気味だったが、現実に腕に酷い裂傷を幾つも作った小次郎の傷を見せられては放置出来なかった。
小次郎、月子、ヒロシ、帰宅した洋の姉・友子(村上里佳子)、そして遠巻きに様子を窺うダブルガールが見守る中、単身烈は屋内に入り込んだ。カイブツダブラーは既に姿を消していたが、レンジには卵殻が残っており、それを烈は冒頭でマクーの車両を破壊した際に残された卵殻と同じものであることを悟り、一同に怪しい怪物を見たらすぐに逃げるよう告げ、単身捜索を開始した。
だが、勿論簡単に見つからない。一方、ダブルガールから報告を受けたサン・ドルバとキバは楽観視していた。幼獣とはいえ、ダブラーには知能を初めとする充分な生存能力があり、やがては頼もしい成獣となってマクーに戻ってくると見ていた。
一方の烈は、相手がマクーと云う以外何者か分からず落ち着かない。マリーンに諭されても居ても立ってもいられず、夜も小次郎を訪ねて彼やヒロシの周辺に異常が無いかを尋ね歩いた。
だが、異変は静かに起こっていた。ヒロシの飼う猫が落ち着かなげで、卵に吠えていたシェパードのジョンが首輪を残して行方不明になっていた。それを泣く泣く訴える飼い主・宮崎君から聞いた烈は周辺を捜索し、犬の毛が転々と落ちているのを見つけた。
直後、殺気を感じた烈はそれを頼りに東都倉庫に潜入。するとそこには成長したカイブツダブラーがいた。サン・ドルバ達が満を持した遺伝子組み換え卵から生まれただけあって、カイブツダブラーは格闘能力で(少なくとも蒸着前の)烈を凌駕し、烈も投げ飛ばされるやギャバンに蒸着した。
だが、蒸着した途端に形勢は逆転し、カイブツダブラーはあっさり遁走した。まだまだ成長途上という事だろうか?
Bパートに入ると、魔空城内でサン・ドルバが訝しがっていた。当初の計算では卵から孵化したダブラーは生後数時間で60mもの巨体となり、「ギャバンを一捻りしてもおかしくない。」とのことだったが、そこまでいかずとも60mものモンスターが現れれば大騒ぎが起きている筈である。
訝しがる息子にキバは、初めての試み故失敗作だった可能性もあるとしていた。だが一般人にはかなりの脅威だった。
結局、カイブツダブラーは孵化した場所を巣と見たものか、ヒロシ宅の台所内に潜んでいた。飼い猫の反応から異変に気付いた姉弟にカイブツダブラーは襲い掛かり、友子を捕食せんとしたが、そこに烈が乱入した。
烈は友子とヒロシを屋外に連れ出し、小次郎の部屋に連れて行くと二人を託してカイブツダブラーと対峙。隠れている間に増々力を付けたものか、カイブツダブラーは膂力で烈を圧倒し、得物まで駆使して烈を痛めつけ、烈もこれを受けては早々に蒸着せざるを得なかった。
いざ蒸着を果たすとギャバンがやや優勢で、カイブツダブラーは加勢させたクラッシャー達を早々に蹴散らされ、大爪の付いた棒を駆使しても徒手空拳のギャバンに対して優位に立てず、ドン・ホラーは魔空空間発動を命じた。やはり期待の遺伝子を持っていても、経験が不足していたと云うことだろうか。
だが、それでも魔空空間でギャバンと対峙したカイブツダブラーは、得物失って尚、徒手空拳同士の取っ組み合いでギャバンと互角以上に戦っていたから、素質はかなりのものがあった手見えた。何せ今までギャバンのスパイラルキックを得物を駆使して打ち払ったものは何人かいたが、素手で払いのけたのはこいつが初めてだった。
やがてカイブツダブラーは円盤群に乗り込んでギャバンを攻撃。例によってギャバンはギャビオンを召喚・駆使して円盤群を壊滅させ、叩き落したカイブツダブラーにもギャビオンミサイルを何発も浴びせて翻弄した。
その後、再度得物を取り出して一時は優位に立ったカイブツダブラーだったが、健闘もギャバンがサーベルを抜くまでだった。業を煮やして投げ付けた得物はシルバービームで叩き落され、曲刀を取り出して抵抗するも、レーザーブレードが発動されると撃剣は完全にギャバン優勢で、ここ最近のパターン通りに前方宙返りからのギャバン・ダイナミックで粉砕されたのだった。
そしてラストシーン。橋の上を通りかかった烈は小次郎、陽一、友子、ヒロシがどぶ攫いをしているのを見掛けた。彼等は二度とあんな怪物(←「恐竜」と呼んでいたが)が出て来ないよう、卵の内に見つけて退治しようとしていた。「一度食べてみたい。」とする小次郎を例外として(笑)。
ちなみにヒロシの姉・友子を演じたのは村上里佳子さんで、後に芸名をRIKACOと改めて様々な番組で活躍し、シルバータイタン的には『ここが変だよ日本人』でのパネラーとしての活躍が最も印象に残っている。ただ、この第33話での存在感は決して大きくない。放映当初弱冠16歳ではまだまだ成長途上だったと云う事だろうか。
それはそれとして、結局、本来なら数時間で60mもの大怪獣に育つ筈だったダブラーが何故にあの程度の成長に留まり、ギャバンに敗れ去ったのかは未解決のままだった。ただ、個人的にストーリーに救いがあったのは傷だらけになりながらもジョンが生きていたことだった。
特撮に限らず、ドラマ自体単発で出た動物は、事件や怪物の残忍性を際立たせるために犠牲になり易い。しかも大量の毛や血痕を残した状態では大型犬であるシェパードといえども状況的に生存は見込まれないと思っていたから、傷だらけでも生きていたのはホッとした。
ともあれ、人間や動物をダブラーの餌にせんとしたマクーの悪巧みに烈は怒りを滾らせつつ第33話は終結したのだった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新