宇宙刑事ギャバン全話解説

第35話 マクーの若獅子 サンドルバの反抗

脚本:上原正三
監督:小笠原猛
ガッツダブラー登場


 冒頭、崖に囲まれた荒野にギャバンは立っていた。そこに数体のロボットダブラーが襲い掛かって来たが、これは対マクー戦に備えた特訓で、ギャバンはこれらをレーザーZビームギャバン・ダイナミックで撃破した。
 この特訓をドルギラン内で観察していたマリーンは、技が示した数値も充分なもので、ドルギラン内に戻って来た烈に「パーフェクト」と激賞した。そして烈はそんなマリーンを労い、ギャバンの助手に徹して地球に来星して以来ほとんど外出せず、休んだ様子もない彼女に休暇を月子とのショッピングでもして楽しむよう勧めたのだった。

 場面は替わって魔空城内。ここでも特訓シーンが展開されていた。
 特訓していたのはガッツダブラーで、新月刀を得物としていたが、名前イメージ通りと云うべきか、突進力が身上で、特訓を観察していたサン・ドルバも、その突進力ならギャバンにも勝てるとして磨きを掛けるよう特訓続行を促した。
 そしてその観察だが、寝そべって、ダブルガール達を侍らし、酒を飲みながらという物で、「観察」と云うよりは、「見物」に近かった。助言を行い、それがガッツダブラーの長所を伸ばすよう勧めるものだったことからも、態度が悪いだけで、サン・ドルバサン・ドルバなりに真面目に観察していたと思われるが、やはり傍目には感心出来るものとは云い難く、丸でそれを突くかのようにドン・ホラーからの呼び出しが掛かった。

 ドン・ホラーの御前では、サン・ドルバがやって来た時と同様、ダブルガール達が剣舞を為していたが、やって来たサン・ドルバを待っていたのは叱責だった。ギャバンが特訓を欠かしていないのに引き換え、部下を訓練させ、自らを鍛えない息子を情けないとし、その云い様を「何たる侮辱」としたサン・ドルバが反発すると、大口を叩きたければギャバンの首を持ってこい、とした。
 そう云われては、戦士としての誇りをそれなりに保持しているサン・ドルバとしては引き下がる訳にはいかない。ギャバンの首を持ってくることを宣言し、ドン・ホラーも首を持って来るまで魔空城に戻って来るなとした。
 そこにキバが突如現れ、息子を庇い、ドン・ホラーに対して「それでも親か!」と詰ったが、当のサン・ドルバは独力で望みを果たすと宣してドン・ホラーの御前を辞した。だが、サン・ドルバがその場を去ると、ドン・ホラーは息子が立派に任務を果たしてこの場に戻ってくることを望んでいる胸中を吐露したのだった。悪逆非道で、慈悲の欠片も無い輩が相場の悪の組織の首領に在って、父親としてのカラーを見せたドン・ホラーは稀有な存在である。

 一方、もう片方の親であるキバは息子への愛情を隠しもせず、ひたすらその身を案じ、ギャバンとの対決も「一人では無理。」として息子に追随した。特にギャバン・ダイナミックの前にはどんなダブラーも真っ二つにされており、食らえば一巻の終わりだと告げた。
 確かにギャバン・ダイナミックを食らって生き延びた者はいない。唯一サイダブラーが最初に食らった際に凌いだことがあったが、それは強靭な盾を犠牲にしてのもので、二度目に盾の無い状態で食らった時は耐え切れなかった。さすがにサン・ドルバも食らわないためにはどうすればいいか?とキバに尋ねずにはいられず、それに対してキバは知恵で対抗すべしとして、自分に任せるように云うと不気味にほくそ笑むのだった。

 場面は替わってショッピング街。そこでは烈の勧めに従ってマリーンが月子とショッピングを楽しんでいた。二人の様子を窺っていたサン・ドルバはマリーンと月子の身元(前者がコム長官の秘書であることはマクーでも把握されていた)を知らされると格好の人質になるとして、花屋に扮したダブルガールを利用して二人を拉致した。
 要するに花を持ったダブルガールがわざと二人にぶつかって、慌てた二人が謝罪しながら花を拾い、花屋のワゴン車に積み込むのを手伝わんとしたところでダブルガールが背後から二人をガッツダブラーの待つ車内に放り込んだのであった。ミミーもそうだが、さすがに秘書まで格闘に長ける程御都合主義ではなかったか(苦笑)。

 二人が拉致されたことを烈はドルギランに寄越されたサン・ドルバからの通信で知った。サン・ドルバは二人の身の上をたてにオニツカハラに来るよう、サン・ドルバの名で促した。勿論烈はジープでもってオニツカハラに急行。そこは特撮番組の定番舞台・採石場だった(笑)。
 勿論、待ち合わせ場所は罠で、リモート地雷有り、狙撃手の潜伏有りだった。烈がやって来たその場には人っ子一人姿を見せず、サン・ドルバの名を呼んでも返事が無い。さすがに烈も焦らされた。
 やがて、烈の耳に助けを求めるマリーンと月子の声が聞こえ、振り返ったところで狙撃が襲った。リモート地雷も次々と爆発を起こし、間接的とはいえ烈の体が何度も宙を舞い、何度も地面に打ち付けられて呻きながら立ち上がった烈の目に映ったのは拘束された状態でジープにて連れ去れるマリーンと月子の姿だった。

 相手がジープで逃げれば誰だったジープで追うだろう。烈もそうした訳だが、車内には烈がサン・ドルバの姿を求めて焦れている間にガッツダブラーが潜んでいて、運転中の烈を襲った。やがて烈は車外に放り出され、そこにアラブ人風の装束を纏った男達がファルシオン(偃月刀)を得物に襲い掛かって来た。
 不意を討たれた直後は両足を投げ縄で引き摺られ(途中で奪った刀で止めないと立ち木に股間を衝突させられるところだった)、倒れ伏したところを次々と刺突で襲われた烈だったが、さすがに体勢を立て直すと敵ではなく、やがて一掃することに成功したが、直後、烈の耳に再度二人の助けを求める声が聞こえた。

 慌てて声の方に目を転じると橋の上から二人がクラッシャー達に突き落とされたところだった。大事な人質を、烈を倒すなり、拘束するなりしない内に殺すものかいな?と思っていたら、案の定、二人は人形爆弾だった。得意のロープアクションで落下する2人を受け止めた烈は、2人の目が赤く光ったのを見て罠を察知し、即座にその体を放り出したことで危うく難を逃れたのだった。

 その様子を、2人を連れ込んだ洞窟風の基地でモニタリングしていたサン・ドルバは烈をしぶといと嘯いていた。そのサン・ドルバにマリーンも月子もギャバンがこんなことで倒されなどしない、必ずたちをやっつけると一喝した。
 そんなマリーンに平手打ちするガッツダブラーが小物過ぎるし、月子に三又鉾を突き付けるサン・ドルバも何だかである(苦笑)。それに引き換え、さすがにキバはマリーン・月子を人質にしていることから、ギャバンは必ずやって来るのでまだまだ罠に嵌める等の打つ手があることを仄めかし、マリーン・月子の髪を撫でてからかっていたので、まだ余裕ある感じだった。偏に年の功と云えようか。

 やがて山中を探索していた烈はアジトの入り口を発見。見張りや巡回中のクラッシャー達を次々と張り倒し、トラップも掻い潜って深部に潜入していったが、そこにガッツダブラーが強襲。ガッツダブラーの持つ棒は洞窟内の壁に電火走りを為す効果を発揮し、これにより烈は洞窟外へ放り出され、崖を転げ落ちるとそこは最初にジープでやって来た場所だった。
 当然の様にガッツダブラーはリモート地雷を発動。だが、烈はギャバンに蒸着して難を逃れた。そしてギャバンはいつになく早々にレーザーブレードを発動。二人の身を案じて早々に勝負を付けんとしていたと思われるが、そこにサン・ドルバからの制止の声が飛んだ。

 サン・ドルバが指し示した崖上にはマリーンと月子が十字架に架けられ、2人にはクラッシャー達が銃を突き付けていた。サン・ドルバは二人の身柄をたてにギャバンにレーザーブレードを捨てるよう要求。勿論、ここで「お願い、ギャバン、レーザーブレードを捨てて!」と二人が叫ぶ筈なく(笑)、マリーンはギャバンに戦うよう懇願した。
 恐らく、コム長官の秘書を務め、銀河連邦警察で働くマリーンにはこういう時の覚悟があったのだろう。サン・ドルバがクラッシャー達に命じて威嚇射撃を行った際にも、悲鳴一つ上げなかった。一方の月子は、助けを請うたりはしなかったが、やはり撃たれて悲鳴を挙げずにはいられなかった。
 逡巡するギャバンに対してサン・ドルバは「次は外さないぞ。」として、尚も躊躇うギャバンを前に射撃の合図を送らんとしたが、それを見てギャバンはサン・ドルバに制止の声を送るとレーザーブレードの発動を解き、サーベルを投げて寄越さざるを得なかったのだった。

 サーベルを受け取ったサン・ドルバは、これでギャバンの戦闘能力が半減した、としては以下に攻撃を命じた。クラッシャー達の砲撃が襲い、そこにガッツダブラーが攻撃を敢行。
 ガッツダブラーは、見てくれはこれと云った特徴も無く、強そうにも見えなかったが、特訓を見たサン・ドルバが褒めていただけのことはあった様で、徒手空拳のギャバン相手に武器持ちとはいえ、魔空空間でもないのにギャバン相手に優勢に勝負を進めていた(まあ、人質を取られ、武器を奪われたギャバンの戦意低下もあったとは思うが)。
 だが、次第にギャバンも抵抗力を高め、徐々に互角となり、ディメンションボンバーも食らわせた。この展開に業を煮やしたサン・ドルバキバは三又鉾の髑髏眼窩から魔空空間の発動を促した。
 だが、魔空空間発動の権限はドン・ホラーだけに有るようで、サン・ドルバは父にその発動を呼び掛けたが、ドン・ホラーは応じなかった。サン・ドルバから要請を伝えたダブルマン・ゾンビに対し、ドン・ホラーは息子が自力で戦うと宣言したのだから、自分の助けは不要としたのだった。

 そして魔空空間が発動しないことをサン・ドルバが訝しがるところに隙が出来た。
 徐々に優勢を取り戻し、それでも決め手に欠けることで勝機を見出せないギャバンだったが、程なくサン・ドルバが地面に突き刺したサーベル周辺に人がいないこと気付いた。
 ギャバンはレーザーZビームでサーベル近辺を撃つとサーベルを上空に飛び出させた。サン・ドルバも「しまった!」と云いつつも、これに気付き、両者はサーベルを奪わんとして上空に飛び上がった結果、争奪戦はギャバンが制した。

 サーベルを奪い返し、空中でレーザーブレードを再発動させたギャバンはそのまま二人が拘束されている場に降り立ち、文字通り返す刀でクラッシャー達を蹴散らし、マリーンたちの拘束を断ち切った。
 改めてサン・ドルバガッツダブラーと対峙したギャバンはギャビオンを召喚して砲撃で加勢させ、スクーパーも出動させた。これに対してマクー側でも円盤群が加勢したが、これらには次いで召喚された電子星獣ドルが、ドルキックドルファイヤードルレーザーの三点セットで壊滅させ、円盤群から叩き落されたガッツダブラーの曲刀とギャバンのレーザーブレードによる撃剣が展開された。

 思うに、ある程度サン・ドルバが褒めるだけあって、ガッツダブラーは弱くはなかったのだろう。だが、魔空空間で戦わせてもらえなかったことで、極端に弱く描かれなかったにせよ、やはりギャバンに勝ち目はなく、ギャバン・ダイナミックの露と消えたのだった。
 そして魔空城に帰還したサン・ドルバドン・ホラーは「良くもおめおめと逃げ帰ったな。」と詰った。これに対してサン・ドルバは片膝をついて次こそは必ずギャバンを倒すと宣言。そして同じ親でも、母で傍らにいたキバは息子の戦い振りを褒め、敗因はドン・ホラーが魔空空間を発動させなかったからだと云って、夫を詰った。

 驚いたのは、このとき、キバドン・ホラーを「お前」と呼んでいたことだった。公式設定上、ドン・ホラーの正体・生態は不明で、キバも同様である。息子を巡る在り様から両者が夫婦であるとの推認は容易だが、(息子に対する接し方の違いがあるとはいえ)仲が良いといは云い難い両者はどうも正式な夫婦関係にあるとは思えず、例えて云うなら、絶対者であるドン・ホラーが一人の魔女に手を付けた結果、サン・ドルバが生まれたと思われるのだが、もし妻と云うより、妾と云うカラーが強いのだとすれば、キバドン・ホラーに反抗的な態度が取れるのが解せない。
 いずれにせよ、敵対関係に陥った訳でもないのに、首領が(妻妾とは云え)組織内の者からお前呼ばわりされたのは極めて稀有と云えよう。

 そしてラストシーン。
 解放され、無事を取り戻したマリーンと月子は自然を愛で、烈はそれを守り抜かなければいけない旨を示して第35話は終結したのだった。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新