宇宙刑事ギャバン全話解説

第37話 おてんばひょうきん姫の地球冒険旅行

脚本:筒井ともみ
監督:田中秀夫
アナホリダブラー登場


 冒頭、烈の回想ナレーションで始まったそのシーンで、烈は久々で馬で遠乗りしていたところで一人の少女(森田理恵)と衝突しそうになった。まあ、見た目から「少女」と表記したが、演じた森田理恵さんは当時24歳である(苦笑)。
 どうでもいいが、昭和後期の日本に遠乗りで馬を走らせられる様な場所ってあるのだろうか?ともあれ、烈が「奇妙な子」と評したその少女は馬を避けようとして坂道を転がり落ち、足を負傷した。心配して駆け寄った烈を「無礼者!」と時代がかった物云いで怒鳴りつけるや平手打ちを食らわせた。
 まあ、それを見れば大した怪我じゃないのは分かるが、少女の方がいきなり飛び出したとも見ていた烈は戸惑い、一応は少女の落ち度を述べ、負傷箇所を見ようとしたが、「何をする!」と云って突き飛ばされた。まあ、負傷箇所が太ももじゃしょうがないか………。

 だが、やはりまともに歩けず、「ぼやっとしていないで手を貸せ!」ととにかくエラソー。さすがに今度は烈がハンカチを巻くのを拒まず、馬に乗せて運ばれて至った。そしてそんな様子を、作業着を着た初老の男(天本英世)と、数人の男達が見ていた。
 初老の男の顔=天本氏の顔を見た瞬間、「ああ、死神博士が今週のダブラーね。」と思う視聴者はごまんといると思われるが(笑)、そんなことを想う暇もないほどその姿はアナホリダブラーとクラッシャー達のそれになった。
 余談だが、サン・ドルバが登場し、ただでさえ影が薄くなったダブルモンスターが動植物ではなく概念や事象がモチーフとなって外観では何者か分かり辛くなったためか(苦笑)、前話のウラミダブラーから登場時にテロップで名前が出る様になった。

 場面は替わってとある教会。
 烈はその扉を激しくノックし(←無礼だな)、少女は親切な神父(松本朝夫)の手当てを受けた。その間、少女は終始無表情で、烈に名前を聞かれても、先に名乗るものだと云い放ったり、自分の代わりに神父に礼を云うように命じたり、と高飛車な態度が続いた。
 とは云え、人の名を名乗る際に自分から名乗るのは確かにその通りだし、烈が名乗ればちゃんとリララと名乗り、烈が礼を云った後に自分でも御礼らしき言葉を口にしてはいたから、全くの礼儀知らずでは無いのだろう。ただ、その際に発した「ダクダクタレビダクーア」という奇妙な言葉から烈は彼女が宇宙人ではないかとの疑念を抱いた。まあ、実際に舞台が地球なだけで、地球人以外のヒューマノイドは何人も登場しているからそう考えるのは無理もない話である。
 ただ、親切な神父はそんなリララの様子を意に介さず、傷が癒えるまで逗留するよう勧めた。しかし、普通に病院に搬送すると云う選択肢はなかったんかいな?

 場面は替わって魔空城内。そこではサン・ドルバキバの見つけた古文書についてドン・ホラーに説明していた。古文書は地球をも上回る豊かな星・ホープ星の物で、ホープ星人が地球に秘宝を埋めたとしていた。ドン・ホラーも、サン・ドルバも、ホープ星人が重宝するからには相当なお宝と期待してたが、地図が無いため、正確な場所が分からなかった。但し、古文書にはサムシガ森の教会付近であることが記されており、サン・ドルバは既にアナホリダブラーに周辺の虱潰しに探索するよう命じていた。そう、烈がリララを担ぎ込んだ教会が偶然その教会だったのである。
 直後、そのアナホリダブラーが現れ、教会にギャバンが現れたことを報告。ドン・ホラーは何としてもギャバンに嗅ぎ付けられる前に秘宝を探し出すよう命じたのだった。

 場面は替わってドルギラン内。そこでは烈がリララの発した言葉を元にその正体を考察していた。その言葉をマリーンが掛けた解析機によって、彼女の発した言葉がホープ星のものであることが分かり、烈もホープ星は知っていた。ただ、烈はホープ星人が地球にいることをかなり訝しがり、マリーンに銀河連邦警察への問い合わせを促すと自身は再度教会に向かった。

 だが、その教会にはマクーの間の手が延びており、リョウタ少年が負傷の身であるリララが何処に行ったのかを案じていたところ、御祈りの時間を告げに来た神父共々クラッシャー達に取り押さえられてしまった。
 そしてその頃、リララはホープ星における本来の姿(←一般的な宇宙人のイメージ像に蝶々の羽が生えていると思って下さい)でいたが、穴ぼこの落ちるやヒューマノイドスタイルとなり、自分が落ちた穴ぼこをクレーターと思っていたのだから、かなり世間知らずの様だった。そんな彼女が教会周辺をうろついていたのも、マクー同様に秘宝を求めてのことだった。
 必然、秘宝を求めて来たマクー一味と遭遇することとなった。どうもアナホリダブラーの方ではリララの存在を認知していなかった様で、彼女をただの通りすがりと思いつつも、自分達の姿を見た者は生かしておかじとばかりに襲い掛かってきた。
 自分の首を絞め上げる初老の男の手が異形の物なのを見たリララが悲鳴を上げたところに烈が駆け付けた。

 アナホリダブラーは名前も、見た目も全く強そうではないのだが、烈もリララを庇いながらでは手を焼いたようで、危うくクラッシャー達に手間取る間にリララを連れ去られる所だった。さすがに天本氏の演じる怪物に弱い役を当てては失礼と思ったか(笑)。
 それでも何とかギャバンに蒸着することでリララを奪い返し、アナホリダブラー達を撃退するのには成功した。まあ、アナホリダブラー達も目的は秘宝奪取なので、無理にギャバンと事を構える必要はなかったのだろう。

 危ういところをまたも助けられ、気絶から覚めたリララは宇宙刑事を名乗った烈に対して少しは心を開いたかに見えたが、それでもホープ星の王女かと尋ねられると助けを求めた覚えは無い、とした。
 そんな無礼な振る舞いを烈は何かを隠している故と見て、一方のリララも御礼に自分のペンダントを差し出したりしていたので、全くつっけんどんだった訳でもなかった。だが、リララは良くも悪くもマイペースで、同行を求められても、「デートする気はない。」と邪険に振舞い、去って行った。
 それを追わんとした烈だったが、そこにマリーンからの緊急通信が入り、ドルギランに呼び戻された。マリーンから知らされた情報によると、マクーがホープ星の宝探しを行っていると云う事と、ホープ星からは王女が宝の地図とともに行方を暗ましており、家出人捜査願いが銀河連邦警察に出されているとのことだった。
 そんな内容なら、ドルギランに呼び戻さずに通信で伝え、その場でリララ姫を無理にでも保護した方が良さそうに思えたが、ドルギランにはリララ姫の件でギャバンを訪ねて来たホープ星人がいた。

 ジッタンと呼ばれたその人物の、ホープ星人としての姿に怪訝な顔をした烈だったが、ジッタンは烈を安心させるかのように初老男性(林孝一)の姿になると、姫の爺やと名乗り、烈に捜索への協力を求めた。
 視聴者的には烈の遭遇した少女がリララ姫なのは丸分かりだが、まだ確信しかねていた烈はジッタンの申し出にどちらかと云えば消極的だった。ジッタから姫の写真を手渡されるも、ホープ星人としての姿だから初見の烈には何とも云えなかった。だが、写真の隅にある紋章が烈の渡されたペンダントと同じデザインだったことから確信を得た。

 そしてそのリララ姫だが、行く宛の無さ故か再度教会に戻ったところ、神父に化けたアナホリダブラーによって教会内に招じ入れられ、本物の神父・リョウタ少年共々監禁された。偽神父を見て、本物の神父とは別人であることには気づいたリララだったが、その面が最前自分の首を絞め上げた現場監督と同じであることに気付かなかったのを間抜けと云っては可哀想だろうか?ホープ星人から見れば、地球人の顔なんて見分けがつき辛いかもしれないだろうから。
 ともあれ、烈がホープ星からの情報を得ていたように、マクーでもその後情報を得て、サン・ドルバが教会に来ていて、アナホリダブラーにリララ姫の情報を伝えた。アナホリダブラーは驚き、自分の捕らえた女性がリララ姫かも知れないと告げ、彼女を見たこと有ると云うキバが、もしそうならアナホリダブラーの大手柄とした上で、首実検に臨んだ。

 勿論リララ姫は地球人の少女に扮していた訳だが、キバサン・ドルバの三又鉾越しに光線を発してリララ姫の変身を解除。ホープ星人としての姿を見たキバはリララ姫に違いない、と認定した。
 これを受けてサン・ドルバはリララ姫に宝の地図を寄越すよう強要。リララ姫はシラを切ったが、サン・ドルバは神父とリョウタの首を絞め上げて地図の在り処を云うよう強要した。
 普通に考えれば、神父とリョウタはある日突然やって来た宇宙人間のトラブルに巻き込まれ、暴行を受けた訳で、リララを怨んでもおかしくなかったが、サン・ドルバ達・マクー一味を悪魔と認めてか、リョウタは「こんな奴等の云う事を聞いちゃダメだ!」とし、神父もマクーを「神聖な教会を汚した悪魔」としてリララ姫を咎めず、マクーを非難した。良い人達だ…………。

 そんな二人の健気さが気に食わなかったものか、サン・ドルバは二人に三又鉾で打擲を加えた。一方、烈はその頃再々度教会に舞い戻っていた。庭先でウサギを可愛がる偽神父=アナホリダブラーにリララを尋ねると意外にも偽神父はあっさり教会の中にいることを認め、烈を招じ入れた。
 もっとも、それは罠で、階段を上る途中で床板が抜け、毒ガスらしきものが充満する中に烈を蹴り落とさんとするアナホリダブラーだったが、烈は何とか落下を免れ、脱出に成功し、地下室にいるリララ達の元に駆け付けると三人の戒めを解いた(←見張りぐらい付けとかんかい)。

 直後、サン・ドルバが乱入し、アナホリダブラーにギャバン迎撃を命令。てっきり地図を奪う為に神父とリョウタへの拷問を続けていたと思っていたのに、何をやっていたのやら。しかも、烈は三人を庇いながら屋外に逃がすように大立ち回りを演じたのだが、普通、これは圧倒的に不利である。サン・ドルバでもアナホリダブラーでも、誰か一人烈を迎撃している間にクラッシャー達に襲わせ、一人でも取り押さえて人質化出来れば即座に優位に立てるのに、少々時間がかかったとは云え、三人が屋外に脱出するのを許したのだから、全く人海戦術を活かせていなかった。

 ただ、烈が三人を非難させ、クラッシャー達を全員蹴散らしたと思った瞬間の隙を突いた攻撃はなかなかだった。木立のあちこちに隠れていたロープに四肢を拘束され、上空に吊り上げられた烈はロープを走る火花にダメージを受け、地面に落下したところで穴倉に潜むアナホリダブラーから地中に引き摺り込まれた。だがこれも落下中の烈がギャバンに蒸着するや、何の役にも立たなかった。
 ホームレンジである筈の中でも白銀球体状態のギャバンに散々翻弄され、地上への脱出を許し、その後もクラッシャー達共々散々に蹴散らされ、ディメンションボンバーを食らって坂道を転げ落ちる体たらくにドン・ホラーも早々に魔空空間発動を命じずにはいられなかった。

 その後の展開はほぼいつも通り(笑)。サイバリアンで魔空空間に降り立ち、円盤群は電子星獣ドルとギャビオンに迎撃させた。アナホリダブラーが魔空空間内のシチュエーションを利して戦わんとしたのは予想通りだったが、罠や、手持ちの蔦やドリルと云った得物を利用しても優位に立てず、はっきり云って、加勢した二匹のコウモリの様な生き物の方がよっぽどギャバンを苦しめていた(苦笑)。そんなアナホリダブラーのあんまりな体たらく故か、この第37話では魔空空間発動後に毎回為されていた魔空空間内で3倍強くなると云うナレーションも為されなかった(苦笑)。0を3倍しようが、300倍しようが、0は0と云う事だろうか(苦笑)。

 ギャビオンによって地面に叩き落された直後こそはそこそこ穴倉を利用して善戦していたが、レーザーブレードが発動されると(プロ野球ニュースっぽく云って)反撃もここまでだった(笑)。結局アナホリダブラーは斬られ、突かれ、得物を断ち切られ、前方宙返りからのギャバン・ダイナミックで粉砕されたのだった。
 そしてその爆死の衝撃で崩れた岩壁の中に、お宝は偶然存在した。

 烈、リララ、ジッタン立ち合いの下、開かれた宝箱の中に入っていたのは、赤・青・黄色の石に見える花の種だった。烈の推測によると、ホープ星の先達達が、母星が環境破壊に見舞われた際の用心として花の種を地球に避難させていたとのことで、ジッタンは「何よりの宝」とした。同時に作中での言及はなかったが、マクーには何の価値もなかったであろうことを思うとちょっと痛快だった。
 結局リララ達はお宝を持ち帰らなかった。恐らくホープ星は異星に避難させた種子を頼らなければならないような状況には陥っていないのだろう。そしてリララは烈に「楽しい思い出をありがとう。」と告げ、冗談混じりに烈に共にホープ星に来ることや、自分の婿になっても良いなどと、何処か茶目っ気ある言葉を残してジッタンと共に地球去ったのだった。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新