宇宙刑事ギャバン全話解説
第38話 包囲された輸送部隊 正義の太陽剣
脚本:上原正三
監督:服部和史
ギャングダブラー登場
冒頭、ドン・ホラーの御前に呼び出されたサン・ドルバは太陽の剣なる秘宝の奪取を命じられた。ユラシア王国なる国に秘宝が横浜で開催される秘宝展で展示されるとのことで、ホラーガールの示した図には鞘や鍔にダイヤ、ルビー、サファイヤが散りばめられていた。
そしてその剣の存在を知っていたキバによると、ユラシア王国はその秘宝が持つ力で千年の栄華を誇ったとのことだった。
場面は替わって横浜港。大きめのジュラルミンケースとはいえ、警備員が2人掛かりで運び、それを警備員の隊列が挟む警戒態勢に、突如キバが駆使するネズミが赤い毒ガスを吐いて襲い掛かった。
毒ガスは人体を瞬間硬直させる効果があるようで、警備員達は苦しんでいた途中の体制で固まってしまい、太陽の剣はあっさり奪われた。余りにあっさりドン・ホラーの御前に運ばれたことで多くの視聴者が予想したことだとは思うが、案の定、持ってこられた剣は偽物だった。
ドン・ホラーから、地球の皇帝には必ず影武者がいる様に、秘宝にも偽物があることを先刻承知していなかったことから「まだまだ未熟」と告げられ、むくれるサン・ドルバだったが、「頭を使え。」と云うキバに何か耳打ちされるとやる気を取り戻した表情となった。
場面替わってとある港。そこで太陽の剣がトラックに積み込まれるのをサン・ドルバはギャングダブラーと共に遠巻きに見ていた。果たして今度こそ本物か否かを訝しがるギャングダブラーに対してサン・ドルバは近辺を見回る烈の姿を指して本物が警護されているに違いないとした。
そこへダブルガール(東まり子)がやってきて、太陽の剣の輸送ルート―国道15号を経て国立銀行の地下倉庫に運ばれる―を知らせた。そして警護は先頭を2台の白バイ、そのすぐ後ろをパトカー、そしてパトカーと護送車の間に太陽の剣を載せたトラックを挟むと云う体勢で、サイレンを鳴らしながら走行すると云う、物々しいものだった。
そこを銃火器で武装した数名のクラッシャーと共に強襲したギャングダブラーだったが、偽物を守っていてあっさり無力化された警官達とは裏腹に、今回警護していた警官達は精強で、銃撃にも怯まず、大盾を持った警官達が先頭に躍り出ると別の警官がトラックに乗り込んで、ギャングダブラーと大盾隊が対峙する間隙を縫ってその場を離脱した(←輸送任務としては正しい)。
そんな警官・警備員達の尽力も空しく、工事資材置き場のような場所でギャングダブラーとクラッシャー達は先回りしており、トラックに―正確にはその周辺に―何発もの砲撃が加えられたが、そこにジープを走らせてきた烈が乱入した。クラッシャー達を容赦なくジープで撥ねて蹴散らす烈(←チョット、酷い?)だったが、そこにギャングダブラーが飛び乗って組み付いて来た。
取っ組み合いにおいて、ギャングダブラーは蒸着前の烈に対しては明らかに勝っていた。烈は幾度となく投げ飛ばされ、僅かな足払いを食らわせた以外は殴られっ放しで堪らずギャバンに蒸着した。
この後、しばしクラッシャー達と大立ち回りを演じて場面が変わるのだが、その直前、トラックに乗っていて襲われた警官と警備員達が巨大な土管の陰から見ていて、宇宙刑事ギャバンの名を口にして嬉しそうにしていた。
昭和後期、主人公が等身大である特撮番組において警察の存在感は薄く、ヒーローの存在自体を知らないことも多いのだが、宇宙刑事が地球の警察に認知されているのは少し嬉しかった。考えてみりゃ、地球も宇宙における一つの存在で、宇宙の治安を考えれば銀河連邦警察と協力関係を持って然るべきである。ましてマクーは地球各国の政府に脅迫を仕掛けるような組織なのである。ギャバンと警察の共闘はもっと描かれて良かったと思った。あ、そうなると小次郎さんに警察官役を振らなくてはいけなくなるな(←道場主「何の話だ、それは?」)。
閑話休題。突如場面は替わってかもめ幼稚園。
そこでは園児達が帰宅するところで、引率の直子先生(山本容子)に連れられてスクールバスで園を発ったところだった。直後、バスの中に妙なガスが流れ込み、車内の一同が狼狽える中、車内にドン・ホラーと魔女キバの笑う映像が投影され、直子先生も園児達も悲鳴を上げて気絶。バスは次の瞬間に現れたダブルガールに乗っ取られた。
この間も、ギャバンとギャングダブラーとの格闘は続いており、両者は互角に殴り合っていた。だが徐々にギャバンが押す様になり、シルバービームを受けてギャングダブラーは撤収した。
これを受けて警官達が笑顔でギャバンに礼を述べた。うん、やはり銀河連邦関係者と日本の警察関係者が笑顔でいるのは、微笑ましく、且つ新鮮だ(笑)。だが、ホッとしたのも束の間、マリーンから園児バスがマクーにジャックされ、中央倉庫にて人質状態にされたとの知らせが入った。
ギャバンはこれがマクーによる、彼を警護から引き離す為の見え透いた手であることを見抜いた。が、勿論分かっていても見過ごせないのがギャバンで、マクーもそれを承知の上でかかる汚い手を打ったのだろう。
サイバリアンを召喚し、中央倉庫に辿り着いたギャバンはそこでガスにやられて硬直した数人の警察官、「さくらぐみ のたけかずこ」と記された名札を発見した。ギャバンは胸部に有るらしいガスセンサーを発動し、名札に残留した排気ガス濃度から、園児達がこの場を通過して然程時間は立っていないと推測した。
だが、ギャングダブラーの行動は素早く、マンホールを抜けて工事資材置き場に現れるとそこに園児達を軟禁したバスとダブルガールが待っており、合流するとバスを発進させて警備隊の前に立ちはだかると、抵抗せんとする警備員達に園児バスに爆弾が仕掛けてあるとしてその動きを封じ、自らはトラックを乗っ取るとそれに乗って移動し、ダブルガールはその背後に園児バスを走らせた。
二人の警官がライフル銃を放たんとした隊長らしき人物がそれを止めた。呆気なく警備対象物を奪われたのは些か惨めだが、それでも御宝より園児の命を優先した姿勢は認めたい。
幸い、空中からサイバリアンにて状況を追っていたギャバンがギャングダブラーの駆るトラックと、ダブルガールの駆る園児バスを発見。ギャバンは白銀の球体となってバスに乗り込むとダブルガールとクラッシャー達を蹴散らし、時限爆弾を車外に投げ捨てるのに成功。縛られていた運転手を介抱すると直子先生共々園児を連れて逃げるよう促した。うんうん、悪と戦えずとも子供達を守る為に一般ピープルが出来る限りの尽力をするシーンは何度も観ても良いものだ。たとえそれがどんな簡単な作業であっても。
一方、ギャングダブラーはその隙を突くようにトラックを走らせ、一刻も早くその場を逃れんとした。だがそれを指くわえて見ているギャバンではない。即座にサイバリアンに乗り込み、ギャングダブラーが上手く負けたと思った次の瞬間には先回りしていた。
それにしても奪ったトラックの性能で片を付けようとしてたギャングダブラーの考えは些か甘いと云わざるを得なかった。重宝護送用の特殊車両であることを考慮に入れても、それで宇宙刑事御用達の高性能車両を振り切れるとは思えないし、しかもそれでギャバンを轢き殺そうとしたのは余りにも思慮が浅かった。
ギャバンは体一つでトラックを押し留め、ギャングダブラーは業を煮やして車外に飛び出してしまう体たらくだった。
先に白兵戦を展開した時、蒸着前のギャバンを圧倒していたギャングダブラーだったが、蒸着されると徐々に劣勢を強いられ、二度目の戦いでは完全にギャバン優位だった。それ故ドン・ホラーも早々に魔空空間を発動し、いつも通りギャバンはサイバリアンを召喚して魔空空間に降り立った。
今回、魔空空間はホームレンジとしての優位さをきっちり、ギャングダブラーにもたらしていた、珍しく(笑)。設定通り3倍の力を得てか、ギャングダブラーはギャバンと互角以上に殴り合い、巨大な磁石を得物や罠に利用しての攻撃・防御はそこそこギャバンを苦戦させ、やがて磁力でギャバンが拘束されるとそこには太陽の剣(←ギャバンとギャングダブラーが戦っている隙にダブルガールがトラックから持ち出していた)を手にしたサン・ドルバが待ち構えていた。
サン・ドルバは拘束状態のギャバンを太陽の剣で刺殺せんとしてその胸部に刃を突き立てた。誰がどう見ても万事休すだったが、どうしたことか剣はギャバンにダメージを与えず、逆にサン・ドルバの方が電撃の様なダメージを食らい、更に太陽の剣は丸で意志を持っているかのようにサン・ドルバを襲い、サン・ドルバは誰が持ってもいない剣の単体攻撃に三又鉾を駆使して尚、苦戦を強いられ、円盤群にギャバンを討つよう命じた。
即座にギャングダブラーが乗る物を含めた円盤群がギャバンを襲ったが、太陽の剣はギャバンを戒めていた鎖を断ち切り、ギャバンはギャビオンを、その中に格納されているスクーパーを、そして電子星獣ドルを召喚して円盤群を迎撃させた。
円盤群の大方はドルキック、ドルファイヤー、ドルレーザーで撃滅され、ギャビオンレーザーにてギャングダブラーも円盤から叩き落された。
ギャングダブラーは曲刀を抜いて抵抗を続け、ギャバンもサーベルを抜いた。撃剣においてもギャングダブラーは二、三回斬撃をギャバンに食らわすことに成功し、目立つダメージは与えられなかったものの、技量的に決して弱くはなかった。だが、ギャバンがレーザーブレードを発動させると勝負は徐々にギャバン優勢となり、程なくギャバン・ダイナミックを食らって、粉砕されたのだった。ま、殺陣的には頑張った方だったが。
肝心の太陽の剣だが、ギャングダブラーを討ち果たしたギャバンが高所に仁王立ちしていた時、片方にサーベルが握られ、もう片方に太陽の剣が握られていた。その後、太陽の剣については剣の持つ奇跡の力がマクーの陰謀阻止の一助となったことが述べられただけで、結局正義の剣であるそれがマクーのものにはなる由もなかったと類推されるのみで、何処に治められたかも、奪い損ねたことに対してドン・ホラーがどう思ったかも触れられずじまいだった。
烈はマリーンと共に平和を取り戻した園児達を見届けてかもめ幼稚園を後にしたところで第38話は終結したのだった。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新