宇宙刑事ギャバン全話解説
第39話 学校から帰ったらぼくの家はマクー基地
脚本:上原正三
監督:服部和史
ノットリダブラー登場
冒頭、何処にでもある平和そうな家庭・山口家から始まった。山口家にはこのとき主婦と乳飲み子がいたのだが、そこに配達員に化けたマクー一味がやって来た。
みとめを押さんとして戸口に出た主婦は余りに大量の荷物が待ち受けていたことに驚き、そんなに買い物した覚えは無い、としたが、配達員のリーダー(原口剛)は委細構わず他の配達員と共に荷物を持って山口邸に入り込んだ。
勿論この怪しい動きに主婦は抗議の声を挙げ、警察を呼ぶ、と告げたのだが、配達員はノットリダブラーの姿を見せ、揺り籠ごと赤ん坊を持ち上げることで、暗に逆らえば赤ん坊を殺害しかねないと見せてその抵抗を封じた。それにしてもノットリダブラー…………ダブルモンスターが生き物モチーフじゃなくなって以来、テロップで名前を出すようにしたのは絶対正解だな(笑)、名前を見せてくれないと男のダブラーかさっぱり分からん(苦笑)。
ともあれ、名前の通り山口家を乗っ取ったノットリダブラーとその配下達は黙々と武具を整え出し、主婦に対してはクリーニング屋が来たときには自然に対応するよう命じた。
シルバータイタンの記憶が正しければ、昭和中期には指名手配犯や脱獄犯が一般家庭に乗り込み、家人を脅して外部には自然に振舞うように命じて潜伏した事件がちょくちょくあった気がする。
そんな事件の中には自然に振舞いつつ、来客を追い返す様命じられた主婦が巧みにクリーニング屋にメモ書きで苦境を伝え、見事に犯人がお縄になったケースもあったのだが、この話ではそこまで咄嗟に機転を利かすことは出来ず、クリーニング屋も時に異常を察知することなく帰り、ノットリダブラーは「その調子だ。」とした。
その直後、サン・ドルバが現れ、ノットリダブラーに首尾を尋ねた。
ノットリダブラーは室内に据え置かれた大型銃の様な物を指し示し、それが照準を当てている個所を確認したサン・ドルバは満足そうだった。ノットリダブラーもこれ以上のベストポジションは無いとしていた。
サン・ドルバ達の狙いは、ずばりギャバン狙撃に有った。スコープを覗くサン・ドルバの視界には公園で遊ぶ三人の子供が映っていたが、サン・ドルバの想像の中には足の不自由そうな少女の歩行訓練に突き合う烈の姿があり、ノットリダブラーによると烈が少女の歩行訓練をそこで行われているのはここ最近の日課で、待っていれば必ず照準内に烈が現れるとのことで、それが山口邸の狙われた所以だった。
計画の的確さにほくそ笑んだサン・ドルバは程なく、揺り籠に赤ん坊がいるのに気付き、主婦を跳ね除けると「ぺろぺろぺろぱ〜」と云って、赤ん坊をあやし出した。だがこれは逆効果で、赤ん坊は泣き出し、しばし茫然としたサン・ドルバが「うるさい!」と一喝すると泣き止むという普通とは異なる反応が展開された(笑)。
個人的に謎なのは、かつて道場主がリアルタイムで『宇宙刑事ギャバン』を見た際、最初の放映を一回見ただけで、ケーブルTVで再度視聴するまでの間三十数年の間があり、大半のシーンが記憶から失われていたのだが、何故かこのサン・ドルバによるあやしのシーンだけは当時からしっかり脳裏に残っていた………何でこのシーンだけ覚えていたのか激しく謎である…………。
場面は替わって魔空城内。狙い通りに事が運んでいるかを尋ねるドン・ホラーに、サン・ドルバは自信満々に作戦内容を説明した。少女の歩行訓練に突き合うギャバンは少女の動きに集中する為、隙だらけであることを説明したのだが、その実演に少女役を演じるキバが笑えた(笑)。説明を受けたドン・ホラーはギャバンが蒸着しても聞くのか?と尋ねたが、銃の威力はそれを上回る、として、サン・ドルバはいつになく自信満々だった。
場面は戻って山口邸。ここに長男のツトム(坂詰貴之)が帰宅し、サブタイトル通り我が家がマクー基地になっていることに絶句した。ノットリダブラーは大人しくするよう命じ、母も云われた通りするよう告げた。まあ、家の中に屈強な男が三人もいて武装し、母が人質に等しい状態にされていれば、余程の馬鹿でない限り叫び出したりはしないだろう。
これら一連の脅迫を極力余計な発言抜きで行うノットリダブラーはなかなかに優秀なエージェントなのだが、この直後からぼろが出始めた。空腹を覚えたノットリダブラーは母親に腹が減ったから寿司を注文するよう命じた。「買ってきます…。」と云った母親だったが、さすがにそれを認めるような馬鹿ではなく、出前を取らせたのだが、これを見たとき、シルバータイタンは、「事前に籠城日数分の食糧ぐらい用意しておくか、宅内分で済ませろよ。」と思ったのだが、そうしなかった理由はすぐに分かった。
それはノットリダブラーがとんでもない大食漢であることに在った。注文された寿司は何と100人前。確かに大量の武具と一緒にそれだけの食糧は持ち込めないだろう。しかも、この、ノットリダブラー、自分が満腹になるまで部下達が寿司に手を付けることを許さず、一人で黙々と何十人前分も平らげて行った…………子の生態、絶対隠密活動には向かないな(苦笑)。
貪るように食いまくるノットリダブラーと、自分達の食べられる時がいつ来るのか固唾を飲んで部下達が待機することで隙が出来、ツトムは二階にある自分の部屋へ籠ると何とか外部に助けを呼ぶ方法が無いものか考え、風船に助けを求める手紙を添えて宅外に放った。そして自らもカーテンを命綱に階下に降りて脱出せんとしたが、これは待ち構えていたノットリダブラーに見つかり、母共々縛り上げられた。
その間、部下達による準備はすっかり整い、後は烈が来るのを待つだけだった。だが、そこにツトムの父が帰宅、ノットリダブラーがカーテンの隙間から様子を窺うと、父はツトムの野球仲間と話しており、ツトムに早く出て来るよう促していた。ノットリダブラーはツトムの縄を解きながら、上手く仲間を追い返す様命じ、失敗すれば弟の命がないことを暗に示した。
母親からも云われた通りにするしかないと告げられたツトムは友人達を邪険に追い払い、訝しがった父親が息子を追いかけて宅内に入るも、銃口を突き付けられ、人質状態の妻子を見せつけられては並行して大人しくする他なかった。異常な大食漢振り(←この間もリンゴを食っていた)で外部に怪しまれかねないことを除けば、ノットリダブラーはなかなかに優秀だった。
そしてサン・ドルバの狙い通り、烈が小次郎・マリーン共々、クミコなる少女の歩行訓練の為に照準をセットされている公園に現れようとしているのがダブルガールから知らされた。
クミコはスケートで足を挫き、この時代のドラマやアニメによくあった(笑)、「もう歩けない……」との思い込みに囚われていた。烈は小次郎に頼まれてクミコの歩行訓練に協力していたとのことで、こういうことを頼られているところを見ると、例え三枚目でも小次郎はやはり周囲から人柄を信用されているのだろう。
そして烈が公園前でやってくる間に、ツトムが飛ばした手紙が交番に届けられたものの、それを持って訪ねて来た警官も脅しを受けて応対した父親のごまかしを受けて退去し、遂には歩行訓練が始まり、烈の体が照準中央に入り、引き金が引かれてしまっただった………。
ところが、次の瞬間、レーザー照射は何の脈絡も無く割って入ったトラックの荷台に命中し、満を持した作戦は完全に瓦解した。目的が狙撃である以上、最初の一発を外されては、もう作戦の成功はあり得なかった。
ノットリダブラーは配下のクラッシャーと共に屋外に飛び出してギャバンを迎撃せんとし、殺陣が始まった最初こそ、複数の火器を利したことでやや有利に立っていたノットリダブラーだったが、どうも格闘は得意では無かった様だった。
恐らくノットリダブラーは銃手としては優秀でも、格闘は苦手なタイプなのだろう。スパイラルキックを受けて灯火台の様な所に頭を突っ込まれる体たらくで、ドン・ホラーは早々に魔空時空の発生を命じた。
いつもの様にサイバリアンで降り立ったギャバンに斧と、空間内に仕掛けられた銃器を得物に襲い掛かるノットリダブラーだったが、それ等を躱されるとホームレンジで3倍のパワーを得て尚、格闘では全くギャバンの敵ではなかった。
途中、戦線離脱したと見せかけて距離を取り、レーザーライフルを駆使した際はさすがに優勢を一時取り戻したが、まあ、間合いがあり、片方が飛び道具を持っていては有利で当たり前である(苦笑)。さすがにギャバンもそのまま戦うのは不利と見て、円盤群が出てもいないのに、電子星獣ドル・ギャビオンを召喚・駆使して対抗した。
そしてノットリダブラーが銃を取り落とし、それを拾う前にレーザーZビームで破壊したことで勝負はついたに等しかった。
一応は円盤群に乗り込んでの抵抗もしたノットリダブラーだったが、すぐにギャビオンレーザーに叩き落され、サーベルを抜いたギャバンに曲刀を抜いて対抗せんとしたが、互角に見えた撃剣も一時だけで、レーザーブレードを発動させると一度も優位に立てなかった。
二、三撃の斬撃に耐えたのは立派だったが、結局前方宙返りからのギャバン・ダイナミックの前にノットリダブラーも粉砕されたのだった。
そしてラストシーン。公園でのクミコの歩行訓練に烈、マリーン、小次郎、クミコの母、山口一家も見守り、直前まで怖がっていたクミコも多くの人々の励ましを受け、両足を交互に出してあることに成功。どうやらそれまで片足を出すのが精一杯だったようで、両足が使えたことを見るや、一同は丸で完治したかのような歓喜に包まれたのだった。
かくして第39話は終結した。狙撃の瞬間まで烈がどうやって助かるのだろうか、とやきもきした緊張感は作中屈指だったのだが、結局トラックが割って入ったのが「偶然」で片付けられていたのには恐れ入った(苦笑)。まあ、一回ぐらいはそんな偶然も良いかもしれないが、シルバータイタンは思わず、「二度はやるなよ……。」と呟いてしまったものだった………。
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令和六(2024)年四月一七日 最終更新