宇宙刑事ギャバン全話解説
第4話 死を呼ぶ魔人兜
脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
サソリモンスター登場
冒頭、それをかぶった者は決して敗れることのないという宇宙伝説の魔人兜が紹介された。その在り処は杳として知られていなかったが、宇宙考古学の神永教授(宇南山宏)が長年の研究から得た数々の手掛かりからその所在に迫りつつあり、その探索に小次郎も強引に頼み込んで(笑)、同行していた。
宇宙コンパスなる器具を駆使して遂に兜の眠る洞窟の入り口を探し当てた一行だったが、魔神兜を狙っていたの彼等だけではなかった。洞窟内ではハンターキラーとサソリモンスターが一行を襲い、魔人兜入手の為のキーパーツである三つの珠を強奪せんとした。
神永教授によると、その珠を入手するのに15年の歳月を掛けたとのことで、当然引き渡しを拒まんとしたのだが、サソリモンスターは見せしめにするかのように毒針で調査員の一人を殺害。毒によるものか、悲惨な犠牲者の体は煙となって消え失せた。
これを見て脅しに屈したかのように珠玉を差し出す一行だったが、ここで意外な活躍をしたのが小次郎。「あれは何だ?」という古典的且つベタな方法でその場にいた全員の隙を付いて珠玉を取ると全員でその場を逃げ出した。レギュラーメンバーの特権だな(笑)。
だが、ハンターキラー達は事前に潜入したいたことで洞窟内に罠を巡らしており、降りてきた隔壁によって教授達と小次郎は分断され、教授は小次郎に珠を持って逃げるよう促し、小次郎も必ず助けを呼んでくることを誓ってその場を去った。
当然追撃を受けた小次郎だったが、林道から足を踏み外すと云う三枚目属性の為に辛くも虎口を脱したのだった(苦笑)。
かくして虎口を脱した小次郎は這う這うの体で川辺に転落し、偶然ハイキングに来ていた烈・豪介・数名の子供達に助けられた。何があったのかを問う烈に対して小次郎が指差した先にはサソリモンスターとクラッシャー達が追ってきていた。
勿論烈は豪介と子供達に避難を促し、小次郎を庇いつつ応戦した。負傷した小次郎を抱えながらの大立ち回りは分が悪かったが、そんな状態でも小次郎は神永教授から託された宝珠を必死に守り、烈に託すと気絶した。コメディーリリーフである小次郎に群がる敵を千切っては投げ、千切っては投げ、という活躍を期待は出来ないが、それでも託された物を必死こいて守る姿は好きである。
程なく、烈は小次郎が気絶したの見計らった様に(笑)、ギャバンに蒸着。結果、ギャバンは状況的にも優勢に転じ、サソリモンスターはけしかけたクラッシャー達を我が元に投げ飛ばされる始末で、サソリモンスターがスパイラルキックを食らってダウンする様を遠巻きに見ていたハンターキラーは撤収を命じたのだった。
撤収したハンターキラーから報告を受けたドン・ホラーは「全宇宙の富と権力を握る」ことを目的として魔人兜を欲している意を述べていた。確かに如何なる戦いにも必ず勝てるアイテムを手に出来れば天下無敵である。この意を受け、ハンターキラーはダブルマンの一人に簡易改造(光線を浴びせるもの)を施した。光線を受けたダブルマンは神永教授そっくりの姿となった。
その頃、烈はコム長官との通信で、小次郎から託された珠がバード星の古代コンパスで、光コンパスと呼ばれるものであることを知った。三つのカラーからなるそれは貴重なものを隠すのに最適で、同時にその色が持ち出す際のキーともなっていた。
何故そんなものが地球に在るのか、というミミーの疑問に、コム長官は魔人兜を隠したためとした。魔人兜は5000年前の戦乱に明け暮れたバード星に勝利をもたらしたものの、兜さえ被れば誰でも天下無敵の勇者になれることからそれを巡る争いが絶えず、争いの元となる物として地球に隠され、それによってバード星は平和と知性の星になったのだという。ドン・ホラーが欲しがるのも当然である。というか、野心家なら誰でも欲しいだろう。勿論そんなものをマクーの手に渡らせる訳にはいかなかった。
Bパートに入り、手掛かりを求めて山中に入ってきた烈を見つけたハンターキラーは、神永教授に化けたダブルマンを銃撃する自作自演で烈を誘き寄せた。
河原で倒れていた(振りをしていた)偽神永教授を見つけた烈は、当然の様に介抱に向かった訳だが、まあ一言で云ってまんまと騙されていた。
恐らくは小次郎からすべてを聞いていたのだろう。烈は相手が神永教授と知るや、手当てを終えた途端に光コンパスを返却した。本来の持ち主に返す姿勢は間違ってはいないが、この光コンパスが隠匿している物がどんな代物かを知っているのであれば、安直に過ぎる気がしないでもない。
(偽)神永教授はこれに感謝し、こうしている間にも掘り出し、盗まれようとしているかも知れない、として烈と共に隠し場所に向かった。宝も大事だが、ヒーローとしてはまだ助手達が閉じ込められていると云われては放っておけない。重傷の(偽)神永教授を一旦その場に置いてでも助手達の閉じ込められている場に向かうよう誘導された烈は忽ち毒ガスに巻かれ、苦悶する内に足を踏み外して崖下に転落した。
幸い、セキセイインコに化けていたミミーがこれを発見し、早々に介抱したため死は免れた(ミミー曰く、あと少し遅かったら死んでいたとのこと)が、毒ガス濛々状態にあって神永教授が倒れもせず、姿を消したことを受けて、烈は教授が偽物であることを察し、一杯食ったことに臍を噛んだ。
事態を打開せんとしてミミーを振り切る様に偽神永の後を追う烈だったが、その頃偽神永は光コンパスの作動に成功し、幾ばくかの試行錯誤の末、大岩扉を動かし、その奥に安置されていた魔人兜がその姿を見せた。
直後に烈が駆け付け、慌てて烈を心配していたものの、居ても立っても居られずここまで来た旨で欺かんとした偽神永だったが、烈は「マクーだ。」と云い、その証拠に自分は本物の神永教授と会ったとした。
偽物は驚いて、洞窟に閉じ込めた神永と会える筈がないと口走ったが、当然これは誘導尋問に引っ掛かった失言で、自分が偽物であることを認めたに等しかった。どうやら、このダブルマン、頭は悪そうだ(笑)。
とはいえ、バレた以上は正体を現し、抵抗してきた。勿論それに遅れを取る烈ではないが、背後からはクラッシャー達が、次いでサソリモンスターが襲ってきた。だが、ギャバンは巧みに立ち回り、誰も魔人兜に近付けず、業を煮やしたドン・ホラーは魔空空間を発生させ、サソリモンスターが落石や剣山でもってギャバンを倒さんとしたが、ギャバンはサイバリアンを駆ってこれらを悉く躱した。
はっきり云って、このサソリモンスターは弱過ぎた。岩石を初めとする飛び道具は次々と返され、何度もスパイラルキックを食らい、怪光線が僅かにギャバンを苦しめたことを除けば明らかに格闘でもギャバンに劣っていた。ホームレンジである魔空空間でこの有様である(苦笑)。
堪らず保護色で姿を隠すもレーザースコープであっさり発見され、不意打ちせんとするもレーザーZビームに迎撃され、牽制技に過ぎない筈のこの攻撃で絶命した。よ、弱過ぎる……(厳密には明らかな絶命を描かれた訳じゃなかったが、この後サソリモンスターが姿を見せることは無かった)。
この間、ダブルマンが悲願であった魔人兜を入手し、これを被ってギャバンに打ち掛かってきた。だが、魔人兜は伝説に謳われたほどの効果を発揮せず、レーザーブレードでしばしの打ち合いを経てギャバンがギャバン・ダイナミックを繰り出すや勝負はあっさり決し、さしもの名器も5000年という歳月の中で魔力を失っていたと見られた。
ともあれ、ギャバンは閉じ込められていた神永教授一行の元に向かうとエレクトロソナーでギャビオンなる重戦車を、そしてその中からスクーパーなる地底戦車を召喚して一行を救出したのだった。
結局魔人兜は神永教授の手に渡った。既に魔力がないことを知る者には無用の長物にしか映らなかったが、真相を知らない者には「研究材料」としての価値が残った。まあ、教授の15年の労苦を思えば、これは方便と云えるのかも知れない。
そしてラストシーン。束の間の平和と綺麗な夕焼けに安息&デート気分のミミー。烈も満更ではなさそうだったが、それを邪魔するかのようにハンターキラーが近くをバイクで通り抜け、表情を一変させた烈はこれを追跡に掛かった。
「ほっときなさい。」とたしなめるミミーだったが、ハンターキラーがすべての元凶且つ親の仇と見る烈には聞こえない。結局これは「マクーある限りギャバンにはデートの暇もない」=「悪の組織ある限りヒーローに休息はない」を云いたかったものなんだろうけれど、チョット唐突で、脈絡が無さ過ぎたな。
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令和六(2024)年四月一九日 最終更新