宇宙刑事ギャバン全話解説

第5話 ミミーは泣く 猛毒コブラ弾が烈に命中

脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
ドクジャモンスター登場


 冒頭、一人の海外有名人が来日して新東京国際空港を出た途端に狙撃された。
 狙撃したのはハンターキラーで、狙撃されたのは世界的に有名な平和主義者のジョー・スミス博士(ラシム・ワハブ)だった。

 宇宙犯罪組織であるマクーが地球上で為す商売の一つに武器商人、つまりは「死の商人」としての業務もあるので、戦争のストッパーを為す平和主義者に毒牙を向けるのはよく分かる。ただ、この狙撃、博士に命中したものの、命中したのは腕で、明らかに急所を外している。
 現在マクーの一員とは云え、元が銀河連邦警察の宇宙刑事である経歴から、ハンターキラーに求められるのは腕の確かさであり、命中したとはいえ、見るからに致命傷に至っていないのは端から怪しい展開だった。

 場面は変わってアバロン乗馬クラブ。
 そこでは本日給料日である烈が子供達に食事をおごるとして、ラーメンや餃子や炒飯を求める子供達にステーキをねだるぐらいのことは云えないのか?と大口を叩いていたのだが、彼に手渡された月給は3,000円だった(苦笑)
 計算が間違っていないか?と問う烈に豪介が返したのは、何かあるとすぐ姿を消す烈の実働時間からするとその額になるとのことだった(笑)。
 実際のところ、アバロン乗馬の時給がいくらで、月の所定労働時間が何時間かは作中で明らかにされていない。一応、1980年代とはいえ、社会人である烈に対して時給が800円を下回ることは無いと思うとして、これで3000円を割ると、烈は3時間45分しか働いていないことになる(苦笑)
 乗馬クラブは生き物である馬が相手故に、牧場自体は年中無休の交代制として、1日8時間、月25日の200時間労働と考えるのが妥当だろうか?いずれにせよ烈は1日分も働いちゃあいない(苦笑)
 就業すべき時間の1%チョットしか勤務しなかったとあっては普通解雇される。それを分単位まで計算して実働分の給料を払っているのだから、藤豪介は何て心の広い人なのだろう(笑)

 ともあれ、豪介にもっとまじめに働けと叱咤されたのは当然として、当山にまでそれに追随される始末。当然、子供達に太っ腹なところを見せる烈の目論見はものの見事に瓦解(苦笑)し、子供達の憧憬は瞬時に冷めた訳だが、そこに大山小次郎が現れたことで騒動は水入りとなった。
 冒頭のスミス博士狙撃の記事を見せながら、既に知っているとした烈に小次郎は博士の護衛を依頼した。小次郎によると今日退院するスミス博士が狙われるのは濃厚としてのことだが、そこに豪介が割って入った。
 豪介は、烈がすぐ仕事を抜けてしまう元凶は小次郎にあるとして、小次郎に烈と共に馬の世話を命じた。それに不承不承従ってしまう小次郎、人が良過ぎだが(苦笑)、まあ直後に彼自身が云っていたの様に、危ないところを烈に助けられたことのある身としては否も応もないのだろう。
 実の所、警察関係者でもない、ルポライターに過ぎない小次郎が博士の(頼まれもしない)護衛を烈に委託するのも変な話だが、UFOを追っているだけのことはあってか、小次郎は烈に宇宙人的なものを感じており、そんな烈が張り付くことで博士を守り、取材も可能になると見ていた様である。
 結局、その小次郎の見立てを利用する形で烈は馬の世話を小次郎に押し付けてその場を去ったのだった。人の良い小次郎が半泣きになりながら、なし崩し的に応じたのは云うまでもない(苦笑)。

 場面は替わって東都大学附属病院。そこでは退院するスミス博士がSPに左右を挟まれながら病院がから出て来たのだが、少し離れたところでドクジャモンスター率いるマクーの襲撃を受けた。
 1980年代の特撮番組における警察の能力にシルバータイタンも期待していた訳では無いが、それを考慮に入れても呆気なさ過ぎた(泣笑)。ドクジャモンスターに拳銃が効かないのは仕方無いにしても、クラッシャーの一人にもろくに抵抗出来なかったんだもんなあ………。
 かくして護衛の警察官達を打ちのめし、車ごとスミス博士を拉致したマクーだったが、そこにサイバリアンに搭乗したギャバンが迎撃してきた。ギャバンはサイバリアンに搭載された機銃・サイバリアンレーザーで群がるクラッシャー達を蹴散らし、ドクジャモンスターにはギャバンキック(←ただの飛び蹴り)を決めた。
 格闘ではギャバンに一歩引けを取る様子だったドクジャモンスターはコブラ型特撮怪人のお約束とも云える黄金パターンで右腕を蛇の尾の如く駆使し、ギャバンの首に巻き付けることで何とか互角の殺陣を展開した。
 だが、程なくハンターキラーから撤収の合図を下され、姿を消した。これに対してギャバンはエレクトロソナーを発動してドルギラン内のミミーに追跡を託すと自身は車内に残されたスミス博士を介抱した。

 その夜、ホテルの一室らしきところに匿われたスミス博士は、自分を守るとする烈に警察関係者か?と尋ねた。「まあそんなものです。」と極めて曖昧だが、一応銀河連邦警察に属する宇宙刑事だから、取り敢えず嘘はついていない(笑)。地球的に通るかどうかは別だが(苦笑)。
 ともあれ、自分を襲った者達が日本に密かに集結している武器商人に違いなく、商売の邪魔者にしていると訴えるスミスに対し、烈はその背後にマクーの陰を感じるのだった。

 場面は替わってとある郊外。
 そこにはバイクに乗ったハンターキラーに先導されたマクーのトラックが走っており、それをミミーがジープにて追跡していた。程なく、ハンターキラー達は豪邸を模したアジトに入り、そのまま追随しては見つかるとみたミミーはインコに変身して潜入せんとした。
 アジトは一目見ただけで高圧電流と地雷で守られていることが見て取れ、ミミー自身コブラに襲われそうになったのでそれ以上は探り得なかった。
 這う這うの体でミミーは逃げ帰ってきた訳だが、烈はその情報を基にアジトに潜入せんとした、だが、そこにはハンターキラーが待ち構えており、狙撃を受けた烈は早々にミミーに助けられて引き揚げざるを得ない体たらくだった。
 冒頭の狙撃に続いて、またも命中はさせつつも仕留めるに至らないハンターキラー。そんな彼に「逃げられたですね?」と声を掛けて来たのは、何と冒頭で撃たれた筈のスミス博士その人だった。

 だが、弾丸にドクジャモンスターの猛毒、それもコブラの200倍という強烈な毒を仕込んでいるとしてハンターキラーはギャバンが死んだも同然だとしていた。治療されるという可能性は考慮せんのか、こいつは (苦笑) ?

 ともあれ、魔空城に戻ったハンターキラーは、ダブルマン・スペクタクルの姿となったスミス博士とともにドン・ホラーの御前で戦果を報告。ギャバンを討ち取ったとするも、「罠に嵌めて致命傷を負わせた。」という内容だったので、これも取り敢えず嘘では無い(笑)。
 報告内容からすると、通常ならきっちりと生死を確かめていないことを難詰されそうなところだが、ドン・ホラーは「でかした。」としていたので、ドクジャモンスターの猛毒はその効能をかなり信頼されていた様だった。

 実際、毒の効き目は強烈で、ドルギランに戻った烈は顔面蒼白の人事不省で、ミミーが射った手持ちの血清では効き目がなかった。堪らずコム長官に助けを求めるミミー。周章狼狽して父親に泣きついている様にしか見えないと云いたいところだが、話の展開から既に状況は報告済みだった様で、猛毒の成分もコム長官には伝わっていた。
 娘に落ち着くよう宥めたコム長官は、コブラの200倍の毒性があることを説明し、マリーンに特効薬を持って地球に向かうよう指示した。
 ワープ航法を駆使して急遽やってきたマリーンの御蔭で一命を取り留めた烈だったが、投与直後は助かるか否か分からない状態で、二人は献身的な看護を続けた。その甲斐あって、程なく烈の顔に血の気が戻っただが、そうなると余裕が出て来たのか、ミミーは看護の為とは云え、マリーンが烈に触れるのを好ましく思わない様で、烈の汗を拭うのに妙な争いを見せるのだった(苦笑)。

 マリーンが烈のことをどう想っているのかは不明だが、コム長官の側近を務めている様な人物故、任務に忠実で、それ故にミミーが途中から看護に介入するのを疎んじたり、意識を取り戻した烈に抱き着くのを安静の必要を理由に止めたりしていたのが実態の様で、恐らくミミーの様な独占欲は無かったと思われる。
 一方のミミーは自分ではなくマリーンの御蔭で烈の命が助かったことを「悔しいけれど」としており、一過性の事柄が対象でも嫉妬心を隠そうしていてなかった。まあ、麗しき女性の軽いやきもちは適度な分には可愛らしくも映る。その点、うちの道場主の嫉妬深さなどただただみっともないだけで…………ぐえええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇえぇっぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇ……………(←道場主の骨破筋交い絡みを食らっている)。

 ともあれ、回復した烈は早速リベンジに出た。
 ミミーにヒッチハイカーを装わせてマクーのトラックを止めさせ、「北海道まで連れてって。」というトンデモ申し出に運転手が呆れて「阿呆か、お前?」とミミーを罵っている隙に烈は荷台に乗り込むとマクーアジトへの潜入に成功した。

 積み荷に潜み内偵していた烈の前にハンターキラーの案内を受けて数人の外国人が現れた。烈の眼前で展開していたのは商談で、ハンターキラーが商品である長距離ミサイルの性能を語っていた。
 普段、傍若無人な卑怯者のハンターキラーもさすがに商売相手の前では礼儀正しかったが(笑)、そんなことよりもその場にスミス博士がいたことに烈は目を見開いた。しかも彼はマクーが大量の武器を売る為に世界大戦を画策していることまで口にしていた。

 ここで少し個人的感傷をば。
 世の中には警察や自衛隊の様に武器を扱う、または扱う技術を習得することを義務付けられている仕事もある。それ故、シルバータイタンは武器を製造するメーカーや流通関係者を「死の商人」と安直に揶揄するつもりは無い。
 しかし、儲けたいが為に無用の戦争を起こしたがっているとすれば、稼ぎの為に人々の血が流れることを喜ぶ唾棄しても唾棄したりない極悪人どもと云わざるを得ない。フィクションとはいえ、この話においてハンターキラーの前で商談に臨んでいた連中も、恐らくは「自分達が儲かる為にどんどん戦争が起き、血が流れればいい」という考えで、自分達は安全な場で敵対する双方の国に武器を討って肥え太る様な屑野郎どもなのだろう。
 ただの武器メーカー・武器商人は立派な職業だが、販促の為に戦争を起こす武器メーカー・武器商人は「人間の敵だ!」と(筑波洋っぽく)断言する。

 閑話休題。
 スミス博士が平和主義者どころか、マクーの一員にして死の商人と結託する極悪人と知った烈は隠れていられないとばかりに箱から飛び出し、「ペテン師」とまで云って、彼を罵らずにはいられなかった。
 これを受けてスミスは高笑いしながら獣星人ダブルマン・スペクタクルの正体を現し、ハンターキラーはクラッシャー達にギャバン迎撃を命じた。勿論クラッシャー達に烈を取り押さえられる筈はない。この間にハンターキラーはバイヤー達の避難誘導をしていたが、人としては間違いまくっているこの男も、商売人としては正しい行動をしているな(笑)。顧客の安全を図るのは良いことだ(笑)。

 程なくクラッシャー達を蹴散らした烈に背後からドクジャモンスターが襲撃。更にそこへダブルマン・スペクタクルも加勢し、「二度も死ぬか?」と云って、猛毒弾を放ったが、次の瞬間ギャバンはあっさりとそれをキャッチしていた。
 そのプロセスとして、いつもの蒸着が0.05秒で行われるとの解説が為され、銃が撃たれたのを見た烈は即座に蒸着を敢行し、ドルギランから電送されたコンバットスーツを纏って宇宙刑事ギャバンとなり、直後に弾丸をキャッチする展開が描かれた。
 多くのヒーローが変身に何秒何十秒という時間を要する中、僅かな時間でそれを為す宇宙刑事ならではの瞬間変身能力を活かした見事な展開だった。ただ、蒸着直後に「宇宙刑事ギャバン!」と(ポージング付きで)名乗ってから弾丸をキャッチしていたのに対しては、「余裕あり過ぎだろう?!」と突っ込まずにはいられなかった(苦笑)

 ともあれ、こうなるとドクジャモンスターはギャバンの敵ではなく、ドン・ホラーは即座に魔空空間に引き摺り込むことを下知。これを受けてギャバンも即座にサイバリアンを召喚し、魔空空間内を疾走し、迎撃してきたダブルマン・スペクタクルと撃剣を展開した。
 右手に持った長剣で撃ち掛かるよりも左手に持つ楯を投げ付けるという謎の剣術(笑)を駆使するダブルマン・スペクタクルに、砂の中から飛び掛かって襲う攻撃で加勢するドクジャモンスター。この点はこれまでのベム怪獣よりはホームレンジを活かしているな(笑)。
 ただ、小技で多少ギャバンを苦戦させることは出来ても、格闘ではギャバンに利があり、ドクジャモンスターは砂中に姿を消すもレーザースコープで居場所を察知され、レーザーZビームで討ち取られた。
 直後、戦闘円盤に乗ってダブルマン・スペクタクルがギャバンを襲撃。しばらくは上空からの機銃照射でギャバンを苦しめたものの、例によってギャバンが電子星獣ドルを召喚すると円盤群はドルファイヤードルレーザーに一掃され、機外に放り出されたダブルマン・スペクタクルもしばしの撃剣の果てにギャバン・ダイナミックを受けて戦死したのだった。

 戦いを終えた烈は命を救ってくれた御礼とばかりにマリーンに対して好きな服をプレゼントするとしてショッピングに連れ出していた。もっとも、冒頭でさぼり減給により3000円しか月給をもらっていない烈に金のある筈もなかった(苦笑)。金がないのは仕方ないにしても、自分の懐具合を把握していない金銭感覚は地球(それも日本)で過ごす上では致命的である(苦笑)。
 マリーンが選んだ服の掛けられた83000円の値札に顎を落とす烈だったが、プレゼントすると云った手前、引き下がる訳にもいかず、金を借りんとしたのだが、その相手がミミーなのだから、空気読め無さ過ぎである(苦笑)。ただでさえ、ギャバン救命の展開で軽いやきもちに囚われているミミーが応じる筈もない(苦笑)。
 そしてそんな二人を尻目にマリーンは隣の宝石店でバード星から持ってきた宝石を大金に監禁し、それをギャバンに渡すとドレス購入の為に店内に連れ込んだ。それを悔しそうに見送るしかないミミー。もっとも、マリーンはその日の夜にはバード星に帰って行ったのだから、ミミーのやきもちは杞憂と云えなくもない。面白かったが、チョット蛇足なラストだったかな?


次話へ進む
前話へ戻る
「宇宙刑事ギャバン全話解説」冒頭へ戻る
特撮房『全話解説』の間へ戻る
特撮房へ戻る

令和六(2024)年四月二四日 最終更新