宇宙刑事ギャバン全話解説

第42話 烈よ急げ!父よ

脚本:上原正三
監督:田中秀夫
バファローダブラー登場


 最終回まで残り3話とあってか、この第42話から多くの事柄が急展開を見せた。
 まず第32話で母の看病の為にバード星に帰国していたミミーが地球に戻って来た。ミミーの母(つまりコム長官の妻)はもう大丈夫とのことで、ミミーは同寺のもう一つ吉報を持って帰ってきた。
 それはハンターキラーが銀河連邦警察のパトロール隊に保護されたとのことだった。

 視聴者的には第30話のラストで、形の上では機密漏洩を為した裏切り行為で、内情的にはもはや用済みとされてドン・ホラーによって暗黒銀河に永久追放されたことが記憶に残っているが、烈の立場に立てば、サン・ドルバ達が現れるようになってから姿を見なくなった程度の印象だった。
 だが、それでも元宇宙刑事で、ギャバンの父・ボイザーの仲間でもあったハンターキラーは彼の行方・生死を知っている可能性が高い者で、その身柄を押さえているとなると問い質したいことは烈にも、銀河連邦警察にも数多いことだっただろう。実際、ミミーによると暗黒銀河を漂流していたハンターキラーの体力回復を待って尋問を始める予定とのことで、恐らくこれらの情報はコム長官からもたらされたものだろう。烈は両親の写真が治められたロケットを手に、静かに闘志の炎を燃やすのだった。

 場面は替わって魔空城内。そこではサン・ドルバがホシノスペースカノンなるレーザー砲についてドン・ホラーに説明していた。その威力は地球にいて他の惑星を破壊出来る程と云う。
 惑星を破壊出来ると聞いたドン・ホラーは、バード星、アンドロメダ第3惑星、そして他にも破壊したい邪魔な惑星は数多くあるとして、その完成に期待を寄せ、1日も早く完成させるよう命じた。
 だが、それには障害があった。ホシノスベースカノンの破壊力を為すレーザー増幅システムの設計図をどうしてもボイサーが吐かないと云うのである。

 話がここまで来ると見えて来るものがいくつか出て来た。
 以前にもマクーがボイサーを捕えていることを匂わす発言が為されたことがあった。だが、生け捕りにしているなら犯罪結社であるマクーが彼の身柄をたて銀河連邦警察やギャバンに対して脅迫や交渉を持ち掛けないのが解せなかった。
 だが、ボイサーが親友であった星野博士(月子の父)から星のスペースカノンについての機密を託され、それをマクーが欲しているなら、その機密を得るまでボイサーを殺す訳にはいかず、さりとてその身柄を奪われる訳にもいかないから、その身柄を交渉材料に使わず、ただただ拷問等で白状させることを優先していたのだろう。

 その頃、銀河連邦警察ではコム長官がまだまだ憔悴振りの激しいハンターキラーを尋問していた。息も絶え絶えで尋問途中に息を引き取る有様のハンターキラーだったが、それでも「]計画」と「剣山」という2つのキーワードを聞き出すことが出来た(裏切った理由は不明のままだった)。
 コム長官からそのことを聞いた烈は第11話で自分の父・ボイサーと、月子の父・月野博士が親友で、博士がその研究を強奪せんとしたマクーの手に掛かり、直前に娘と重要機密をボイサーに託していたことを知っていた。そしてハンターキラーはボイサーと銀河連邦警察を裏切った際に、ホシノスペースカノンの機密をマクーへの手土産としていた。
 そしてそれ故、ボイサーから機密を聞き出し、ホシノスペースカノンが完成すれば、マクー的にはボイサーにも、仲間を裏切りかねないハンターキラーにも用はなくなる訳で、第30話ラストにてキバが彼を用済みとしていたこととも符合するのであった。

 ともあれ、まだまだ雲をつかむ様な手掛かりとはいえ、虱潰しに調べ尽くす覚悟で剣山にやって来て、まずは南から調べんとした。だがその矢先に突如樹上から一人の若者(渡洋史)が拳法の様なアクションを駆使して襲い掛かって来た。
 若者はとにかく身軽で、烈に飛び掛かって攻撃してはすぐに飛び上がって須賀を消すヒット&アウェーを繰り返した。烈は若者に、何者で何故襲うかを巣生かしたが、若者はロクに応えず、辛うじて分かったのは彼が烈を密猟者と見做しており、動物達の仇として襲っていることだけだった。
 ただ、全くの分からず屋や、聞く耳持たずという訳ではなく、烈が今日初めてこの山に入ったこと、何より身にも、車にも密漁に仕えるような道具など何一つ持っていないと告げると、態度が変わり、素早く車中を探ると土下座して早とちりを詫び、思う存分自分を殴るよう求めた。

 勿論、そう云われたからと云って「じゃあ、殴るね。」と云う烈ではない。「人を殴るのは余り好きじゃない。」する烈に、若者は「じゃあ自分で。」と云って、自分の早とちりを責めながら自分を殴り始めた。
 いきなり眼前でそんなマゾ行為を始められては烈も困るだけで、若者を止め、腕の「F・P」と描かれた紋章を見て、動物達の仇について尋ねた。恐らく「F・P」は「Forest Patrol(森林探査)」の略なのだろう。実際、若者は自然動物保護に勤しんでおり、鳥の数まで把握していると云う。そして若者の口から鹿や兎が次々と姿を消していることが述べられていた。
 結局、若者は仕事のことは口にしたが、自分のことは一切語らず、密猟者は必ず見つけて殴りつける、と爽やかに物騒なことを云って、駆け上るように木々を渡って去っていき、烈はその動きを野生動物の様だとして感心したのだった。

 そして、動物の様に木々の間を動いて若者………名乗らないので、ずっと「若者」と記して来たが、彼こそが次作『宇宙刑事シャリバン』にて主人公となる伊賀電だった。表記の都合上、ここからは名前で書くが、電が保護対象としていたのは動物だけではなく、植物も同様で、不自然に傷ついた枝に治療を施し、丸で人に接するように話しかけてもいた。
 するとそこに鳥達の慌てふためくような鳴き声が響き、電は、すわ密猟者か?状態となって、脱兎の如く怪しいと思われる地点に向かった。

 やがて絶壁を駆け登った電は密猟者と思しき男を見つけた。相手は銃火器を持っているのにも関わらず電は怯まず、組み付くと殴りかかったのだが、相手は一人ではなかった。勿論次回作で主人公となる男のこと(笑)、数人相手に殴り合いでも優勢だったのだが、現時点では相手が悪かった。
 詰まる所、怪しい連中はマクーで、殴り合いにバファローダブラーが加勢してきたのだった。

 半ば狼狽しながらも果敢に立ち向かう電だったが、如何せん生身の人間が放ったパンチではダメージを当るに至らず、持ち前の身軽さで樹上に逃げるも、バファローダブラーは双角から仮面ライダーストロンガーのエレクトロ・ファイアに似た技を駆使して殿を樹上から突き落とし、双角による刺突迄加え、これには現時点で生身の人間に過ぎなかった電では為す術がなかった。

 それからしばらくして、剣山を散策していた烈は河岸に倒れている殿を発見した。何ヶ所もの傷を負い、蒼白な顔色で、全く意識も無く、次回作主人公であることを知らなければ画面的には死体に見えてもおかしくなかった。だが、烈が胸に耳を当てるとまだ生きていることが確認され、烈は彼を担いで移動しようとしたのだが、そこに襲撃が為された。
 襲撃者は赤いベレー帽をかぶり、銃でもって襲い掛かって来た。恐らくアメリカ陸軍特殊部隊群、通称・グリーンベレーを真似たものと思われるが、早い話マクーで(笑)、背後にはバファローダブラーもいた。
 勿論、電を庇いながらバファローダブラー達とやり合う事となり、不利な形勢は否めず、結局は崖から落とされたと見せかけて得意のロープワークを駆使してその場を離脱した。この間、動けない電に足を引っ張られているようでいて結構烈はバファローダブラーをあしらっていたので、最終回間際に出て来た最後のダブルモンスターとして、バファローダブラーは大したことなかったとも云える(笑)が、ボイサーとの再会が迫り、長く行方を暗ましいたハンターキラーによる謎解明、次回作主人公の登場、マクー滅亡への道を想えば、ダブルモンスターの影が薄くなるのも止むを得ないのかも知れない(苦笑)。

 ともあれ、大葉健二氏によるスタント無しのロープアクションには何度も唸らされたが、峡谷を舞うこのシーンはそれ等の中でも屈指と云えた。さすがに担いでいた伊賀電は体の反り具合から人形を用いたと思われるが(笑)、それでも見事だった。
 しかし、制作陣としては毎回毎回やきもきしたことだろう。素顔の主演者がスタント無しで危険なアクションをこなせば、作品のカッコ良さは否が応にも増す。単純に云っても、主演者の身体能力が少しでも優れているに越したことはないし、それがアクションとして反映されればいうことなしである。だが、『仮面ライダー』における藤岡弘、氏のバイク事故にもみられるように、万一のことが起きれば作品そのものを瓦解させかねない。制作陣にしてみれば、大葉氏のアクション能力は頼もしくもあり、戦々恐々とさせるものでもあったこっとだろう。

 話を戻すが、ターザンの如くロープを駆使したのは烈だけではなかった。レッドベレーも二人ほどロープを駆使して烈に襲い掛かり、爆薬まで投げて来た。結局烈はギャバンに蒸着して白銀の玉となるいつもの何でもあり(笑)で、電を河原に寝かせるとバファローダブラー達と対峙。
 当然の様に大立回りが展開された。バファローダブラーは弱くはなかったのだが、さりとてギャバンに対して格段優位に立つでもなかった。これはもう幾多の戦いを経てギャバンに対してダブルモンスターでは抗し得なくなったと見るべきだろう。しばらくしてドン・ホラーは魔空空間発動を命じた。

 後はほぼいつも通りである(笑)。
 ギャバンはサイバリアンを駆使して魔空空間に降り立ち、巨大な槍状の杭が飛ぶシチュエーションを活かしてそこそこ善戦するバファローダブラーに対しても劣勢に立つことなく、円盤群による攻撃が為されれば電子星獣ドルが召喚され、スクリューアタックドルファイヤーで円盤群は次々撃たれ、バファローダブラードルレーザーで地面に叩きとおされた。
 パワーでは猛牛モチーフのバファローダブラーはそこそこギャバンと互角だったが、アクションで完全に後手で、ギャバンキックレーザーZビームに圧倒された。巨大岩石に化けて体当たりを敢行するも、ギャビオンの砲撃に怯み、爆戦の中に姿を消すも、スクーパーに追われた。

 追い詰められたバファローダブラーは曲刀抜いて撃剣に臨んだ。だが、何度か記したように、パワーはともかくテクニックでは明らかにギャバンが上だった。殊にレーザーブレード発動後は滅多斬りにされており、タフネスでもってそれなりの時間戦い続けたことがかろうじてバファローダブラーをして弱者と思わしめなかったことと云えようか。
 結局、前方宙返りからのギャバン・ダイナミックに最後のダブルモンスター・バファローダブラーも粉砕されたのだった。

 決着直後、ギャバンは断崖中腹に空く洞窟を見つけ潜入。防犯カメラでサン・ドルバとダブルガール(東まり子)がそれに気づいたが、どうやら見つかったこと自体がかなりの痛手の様だった。
 身長に潜入を続ける烈はやがて妙な一室を見つけた。そこにはホシノスペースカノン完成予想図、そしてそれが惑星を次々と撃ち滅ぼすX計画の図、更にはホシノスペースカノンを作る為、その機密を聞き出さんとしてボイサーが拷問に掛けられたと見られる拘束椅子等を烈は次々と目の当たりにした。
 拘束され、拷問を加えられ、悶絶する父と、それを下卑た笑いで見ている魔女キバサン・ドルバの姿を想像した烈は怒りの余り、拘束具を覆っていた布を拘束具に叩きつける程だった。

 するとそこへ烈に対して罠に落ちたな、と嘲笑うサン・ドルバの声が響いた。父は何処か?と詰問する烈にサン・ドルバはとっくに別の基地に移送済みだと告げ、「この基地はお前にくれてやる。」と云って自爆装置を発動させた。恐らく見つかったこの基地は用済みだったのだろう。だが、この推測以上に確実に云えることが一つある。それは、基地を自爆させてのヒーロー抹殺が成功しはしないと云う事である(笑)

 案の定、烈はギャバンとなって、例の白銀球体にて基地を脱出。電を連れてドルギランに帰還したのだった。その電は、マリーンとミミーの介抱を受けていたのだが、その顔面は蒼白のままだった。マリーン曰く、毒が注入されており、このままでは助からないとのことだった。だが、バード星の医学なら助けられる可能性はあるとのことで、マリーンは電を連れてバード星に帰って行った(ちなみにこの時のナレーションで初めて「伊賀電」の名前が出た)。

 そしてラストシーン。烈は剣山の見える山中の車道にジープを止めると、姿の見えないサン・ドルバに向かって、何処に連れて行こうと必ず父を助けると宣言して第42話は終結したのだった。


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令和六(2024)年四月一七日 最終更新