宇宙刑事ギャバン全話解説

第8話 正義か悪魔か?銀マスク大ヒーロー

脚本:上原正三
監督:奥中惇夫
カエンザルモンスター登場

 冒頭は魔空城内から始まった。ドン・ホラーの前で今回の作戦を3週間ぶりに登場したハンターキラーが説明したのだが、それはギャバンに汚名を着せて人類、特に子供達の敵として位置付けることで社会的に抹殺せんとしたものだった。ドン・ホラーは直接的な抹殺よりも社会的な抹殺を「押してもだめなら引いてみなという事か。」としてそれなりに称賛していた。
 ハンターキラーは今回の作戦に従事させるものとして、ベム怪獣カエンザルモンスター、スペースマガジン社の荒山編集長(岩城力也)に化けたダブルマン・メルカン、同社秘書に化けたダブルガールを選出した。


 早速スペースマガジンはUFO特集を掲載し、はっきり映った円盤の写真にアバロン牧場に集まった子供達はこれを否定的に見る者、肯定的に見て宇宙人への憧れを抱く者に別れたものの、全員がかなり興味津々だった。そんな中、烈だけが写真を見て顔色を変えた。というのも、掲載されていたのがマクーの円盤そのものだったからである。自らの手で正体を晒していいのか?マクーよ(笑)

 ともあれ、UFOのこととなると俄然張り切るのは大山小次郎である。数々のUFO写真が掲載されたことに対して「先を越された。」と悔しがる小次郎は「こうなったらUFOだけじゃなく、宇宙人の写真も撮ってやる!」と息巻き、烈に剣山に連れて行ってくれとせがんだが、逆に烈に牧場の仕事を押し付けられ(苦笑)、烈はスペースマガジン社に向かったのだった。

 編集室で編集長と会った烈は彼から剣山のUFO基地があるであろう場所を聞き出した。どうやらこの時点では烈は出版社自体には疑念を抱いておらず、純粋にマクーのアジトを突き止める手掛かりを掴まんとしていた様だった。
 立ち去る烈を見て、彼が自分達の正体に気付かず、用意した作り話を信じ込んだ様子にほくそ笑むダブルマン・メルカンとダブルガールだったが、ハンターキラーだけは油断するな、と窘めた。

 場面は替わって剣山山中。
 そこで烈はマクーの手掛かりを捜索していたのだが、入山していたのは烈だけではなく、小次郎や子供達、他にも登山客ともUFOマニアともつかない人々が大挙して押し寄せていて、その中に例の編集長と秘書も潜んでいた。
 程なく、小次郎達をカエンザルモンスターが襲撃。助けを求める声を聞き付けた烈は即座にギャバンに蒸着して火炎攻撃に曝される子供達を一人、また一人と助けたが、その様子を編集長と秘書がカメラにて何度も撮影していた。
 そして二人は下山した少年達を助けるのに託けてスペースマガジン社の車にてそのまま連れ去り、それを見届けたハンターキラーカエンザルモンスターとクラッシャー達に撤収を合図したのだった。

 冒頭にあった様に、今回のマクーが目的としていたのはギャバンの社会的抹殺である。ダブルマン・メルカンは先の戦いで撮影した、ギャバンが子供達を助ける為に抱えていた写真を新聞各社にばら撒いた。
 勿論、ギャバンが子供達をカエンザルモンスターから助ける為に取った行動だが、写真だけを見れば単に異形のロボットの様な正体不明の人物が子供を小脇に抱えて連行しているとだけしか分からない。宇宙刑事は、ウルトラマンや一部の仮面ライダーの様に世間には認知されていない。それゆえ、報道をテレビで見ていたわかばや陽一もギャバンを(名前も知らずに)人攫いと決め付け、豪介も用心を促す始末だった。
 その間、烈も手を拱いていた訳では無く、再度スペースマガジン社を尋ねたが、同社は既にもぬけの殻で、辛うじて同社が怪しい存在であることが分かっただけだった。

 かかる事態をコム長官も深刻に受け止めていた。長官はマクーの狙いを正確に読んでおり、「人間の敵」というレッテルを張られたギャバンの汚名を晴らすには、攫われた少年達を見つけ、証言させるしかないとした。勿論居場所が分かれば苦労は要らない。手掛かりがほぼない状態だったが、烈はまだ子供達は剣山にいると見て(←根拠レスの直感である)、同山に急行した。
 剣山にて小次郎と遭遇した烈。小次郎は子供達を攫ったとされる謎の銀マスク異星人を追っていたのだが、事前に謎の怪物に襲われる子供達をギャバンが助けるのを見ており、攫ったのは銀マスクではないと証言した。烈的には非常に心強い証言なのだが、当の烈はそんな小次郎の言はほぼスルーして、山の上から見掛けた剣山ダムに手掛かりがあると見た。というのも、烈はスペースマガジン社再訪時に同社の罠が仕掛けられた鏡にてコンクリートの壁に囲まれた部屋に軟禁された子供達の姿を見ていたからだった。

 小次郎を置き去りにして(苦笑)ダムに向かう烈。一方でこれをハンターキラーもモニタリングしていた。彼等はギャバンの名を更に貶める気でいて、監禁していた子供達を連れ出すと、目隠し・束縛状態でダムに立たせた。
 これを見掛けた烈は、さすがにこれを罠だと見た。普段なら一も二もなく、子供達の元に駆け寄るところだが、マクーの狙いがギャバンの信用失墜にあることを先刻承知していたのだから、そこは目測に誤りが無かった。

 案の定、子供達が立たされた傍らには更なる烈の「犯行」を掴まんとしてマクー一味が潜んでいた。烈はジープを自動操縦で走らせ、マクー一味をそれに注目させる陽動作戦で絶壁に等しいダムの壁を登って子供達の元に駆け付けた。
 車中に烈がいないことに気付いたダブルマン・メルカンとダブルガールは一杯食わされたことに気付き、即座に子供達を解放しようとしている烈にクラッシャー達が襲い掛かった。クラッシャー達を簡単に蹴散らした烈だったが、直後にカエンザルモンスターが急襲。さすがに人間体でこれに抗するのは分が悪く、高所に飛んで降り立つとギャバンに蒸着した。

 ギャバンに対してハンターキラーはその場にいた一同に迎撃を命じた。だが、名前の通り炎を吐く技を持ち、敏捷性に優れた猿型モンスターにしてはカエンザルモンスターの能力はイマイチで、目隠し・束縛された少年5人を庇った状態で、高所・狭所にいるギャバン相手に有利な殺陣を展開するでもなく、ギャバンはあっさり5人を連れてその場を脱した。
 そこにタイミング良く小次郎が現れ、クラッシャー達に囲まれて狼狽しつつも荷物を振り回して抵抗する彼に子供達を託した。世間から(少なくともこの第8話では)怪人物扱いされているギャバンに狼狽えながらも子供達を連れて避難に掛かったのだから、本当に小次郎は人が良い(←注:小馬鹿にしているのではない。褒めているのである)。

 謀略を目的として組まれた陣容ゆえかは定かではないが、カエンザルモンスターも、ダブルマン・メルカンも戦闘能力は大したものではなく、2人掛かりでもギャバンに対して劣勢だった。当然の様にドン・ホラーは魔空空間を発生させ、ギャバンをそこに引き摺り込んだ。
 いつものようにサイバリアンを召喚して機動力を補うギャバンにダブルマン・メルカンは円盤群を率いて迎撃したが、ギャバンはドルギランを召喚してこれに乗り込み、程なく電子星獣ドルを召喚し、ドルレーザードルファイヤーの連打で円盤群を壊滅させるとダブルマン・メルカンは地上に放擲された。
 そして前述した様にダブルマン・メルカンはこれまでのダブルマン達と比べても明らかに膂力でギャバンに劣り、自身はホームレンジである魔空空間で刀を振るいながら徒手空拳のギャバン相手に優位に立てずにいた。たまりかねてカエンザルモンスターに加勢させたが、それでも優位に立てなかった。
 と云うのも、上述した様にカエンザルモンスターも大して強くなかったからである

 そのカエンザルモンスター、確かに強くなかったが、アクションはそこそこ面白かった。特に、ギャバンの、空中から落下しながら両腕でジャンピングパンチを放ちつつ体当たりする技・ディメンションボンバーで吹っ飛ばされた際に土星の環っかに捕まって難を逃れんとしていた様は本作ならではのものがあって見応えがあった。
 このように、ホームレンジを活かすことでカエンザルモンスターは確かに通常よりは善戦していた。だがそれでも基本、ギャバンの敵ではなく、二度目のディメンションボンバーと、それに続くレーザーZビームの前に討ち死にした。
 直後にギャバンに襲い掛かるダブルマン・メルカンだったが、勿論勝ち目のあろう筈がなかった。一時的には幻術らしきものを駆使して自身を様々な石の置物に擬態させてギャバンの攻撃を躱していたが、所詮はその場しのぎの目くらましに過ぎなかった。
 レーザースコープで居場所をあっさり捕捉されるや、ギャバン・ダイナミックを食らって戦死した訳だが、斬撃そのものはほぼ一太刀で終わっていたから、ダブルマン・メルカンは御世辞にも強いダブルマンとは云えなかった。

 ともあれ、戦いに勝利したギャバンは無事子供達を救い出し、汚名も返上した。
 ラストシーンにて子供達と共に宇宙刑事ギャバンを見送った小次郎は、ギャバンの写真を撮り忘れたことを悔しがりつつ、烈がギャバンではないか?と彼にしては珍しく勘の良い所を見せかけたが、直後に烈が背後から現れたことで完全に自分の直感が外れたと思い込んだ。まあ、人柄の良いコメディーリリーフが大山小次郎の魅力と存在意義だから、余り冴え過ぎても良くないのかも知れないが(苦笑)。


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令和六(2024)年四月二四日 最終更新