人造人間キカイダー全話解説

第10話 サソリブラウン 人間爆発に狂う

監督:畠山豊彦
脚本:押川国秋
サソリブラウン登場
 冒頭、山中において2人のハイカーがダーク破壊部隊の1人、サソリブラウンによって無惨にも殺された。「世界最強のアンドロイド」を自称するサソリブラウンはハサミと尾針が極端にぶっとく、蠍の人造人間にしては見るからに鈍重そうだが、蠍の武器であるハサミと尾針を極度に強化していると思えば分からなくはない。
 そしてその尻尾から発する殺人高熱エネルギーなる銃弾(?)は、人間の体を僅かな骨片しか残さない程に焼き尽くす恐ろしい武器だった。

 だが、強力な武器とはそれに見合った余波を残すもので、殺人高熱エネルギーの発した余熱とエネルギーをジローが察知していた(現実においても、密かに行う核実験があっさり他国に察知されるのは核爆発が起こすエネルギーの動きが隠し切れないことによる)。
 殺害現場に駆け付けたジローは遺留品からダークが人間を殺害したことを推測したが、当然そこにサソリブラウンの姿はなかった。

 場面は替わってダーク基地。サソリブラウンが用いていた殺人高熱エネルギーの能力はプロフェッサー・ギルをも御満悦ならしめるものだった。プロフェッサー・ギルは殺人高熱エネルギーさえあれば世界征服も可能、としてサソリブラウンに中堀特殊高熱研究所の中堀博士を拉致してくるよう命じた。つまり、量産化する術までは未取得なのね(苦笑)。
 ともあれ、サソリブラウンは即座に行動を起こした。中堀特殊高熱研究所に赴くや、中堀博士(山本廉)を研究資料共々ダーク基地へ連れ去らんとした。その間の中堀博士とサソリブラウンの応酬を見ていると、サソリブラウンの駆使した殺人高熱エネルギーはダークが中堀特殊高熱研究所から盗んだもので、中堀博士も盗難の事実を察知していたことが分かった。
 となると、ダークは盗んだ物を試してから、改めてその開発者と研究データを奪っての量産化を考えた訳で、恐るべき泥縄と言えた(笑)。そんなダークもダークだが、盗難の事実に気付きながら、金庫1つで事後の被害を防ごうとしていた中堀博士も中堀博士だった(苦笑)

 余談だが、特撮番組に1話限りで登場する博士と呼ばれる人物の研究所は概して一戸建てに毛が生えた程のこじんまりしたものが多いのだが、中堀特殊高熱研究所はかなり規模も大きく、所内には何台ものPCが並べられていた(←当時としては珍しい光景である)。
 そんな大規模な研究所なのに、助手が3名のみで、しかもアンドロイドマン達に入れ替わっていたのに気付いていなかったのだから、中堀博士も専門分野以外では鈍い人だったのかな(苦笑)。

 ともあれ、中堀博士はトラックに乗せられて拉致された。その瞬間を娘のカズコ(遠藤薫)が目撃するもどうすることも出来なかった(と言うか事態すら把握できていなかっただろう)。愛娘の名を呼びつつ連れ去られる中堀博士だったが、そこにギターの音が鳴り響いた。
 サソリブラウンは運転していたアンドロイドマンにスピードを上げて振り切るよう命じたが、ジローはキカイダーに変身し、トラックに並走して、サイドマシーンからドリル状の突起物を伸ばしてトラックのタイヤをパンクさせるという荒業を敢行した。

 タイヤのパンクしたトラックは運転を狂わされた果てに崖下に転落。崖下に降りたジローは残骸を前に中堀博士の身を案じていた(←だったらあんな荒技使うなよ)が、中堀博士は逸早く車外に脱出していたサソリブラウンによって連れ去られていた。
 ジローはタイミングよく駆け付けた服部半平に中堀博士の娘の保護を託し、自分はサソリブラウンを追ったが、わざわざ王子様の様ないでたちで(笑)フェンシングフォイルを引っ提げて研究所に向かった半平はカズコを攫おうとしていた数名のアンドロイドマン達に抗し得ず、気絶(苦笑)。結局はジローがこれを助ける羽目になった。

 場面は替わってダーク基地。そこではサソリブラウンが中堀博士にダークへの忠誠を強要すべく彼を拷問に掛けんとしていた。自らへの脅しには屈しない中堀だったが、娘・カズコへの危害を仄めかされると心が折れかけた。
 そのカズコは、父の身を案じ、あてもなく父の姿を求めて彷徨するのをミツ子・マサル・半平が励ましていた。半平は魚を取ってあげると持ち掛けてカズコを元気づけようとしたが、その魚を取りに行っている隙にカズコは父を求めてその場を去ってしまった。

 場面は替わってダーク基地。いきなりカズコが中堀博士の前に現れた。一介の少女がどうやって、あっさりとダーク基地に?と言いたくなったが、結論を先に言えば博士の前に現れたカズコはサソリブラウンの変身だった。
 最前サソリブラウンに「娘を目の前で八つ裂きしてやる。」との文句で脅されていた博士はカズコの姿を前にして完全弱気状態。囚われの自分にカズコを守ること等叶わないことを力なく詫びるのだった。そんな父に対し、一緒にいられるだけでいいと述べるカズコ。これにすっかり気を許した中堀博士は、「高熱エネルギーを作るウラトニウムは白竜谷にある。」ということを漏らしてしまった。
 そんなものがダークの手に渡れば忽ち世界はダークの手に落ちるであろうことを思って項垂れる博士だったが、偽カズコはそれを素晴らしいことと喜び、驚愕する中堀博士の眼前にその正体=サソリブラウンの姿を現した。サソリブラウンが中堀博士に白竜谷への案内を強要したのは言うまでもない。

 その頃、ジローはカズコが待機しているであろう場所にてミツ子・マサル・半平と合流したが、勿論そこにカズコの姿はなかった。せっかく魚を捕まえて来たのにとぼやく半平だったが、夜遅くまで魚を捕まえていたとしたら、その執念を褒めるべきか、そんな時間までカズコを一人にしていた迂闊さを呆れるべきか(苦笑)。
 ともあれ、カズコを探しにかかったところでミツ子が変わった石の付いたペンダントを発見し、ジローがそれを体内の分析装置にかけたことで石がウラニウム鉱=カズコの持ち物であることを断定した。

 そのカズコだが、意外にも無事で翌朝一人で車道を歩いているところをジロー達は発見・保護し、最前のペンダントの石が博士と供に行った白竜谷で見つけたものであることが判明し、ジローは白竜谷にウラニウム鉱脈があることを察知した。
 ちなみにこの直前のシーンでカズコは光明寺博士と遭遇しており、光明寺博士はカズコに会った記憶が有るような無いようなで頭を痛めていたのだが、恐らくともに高名な博士同士として中堀博士と面識があったのだろう。だがカズコに光明寺博士の記憶はなく、一過性のすれ違いで終わったのだが、余りくどいとイラつくワンパタだな(苦笑)。

 半平達に後からカズコを連れて来るように託したジローは単身白竜谷に急行し、ジープで移動するサソリブラウン達に追い付いた。この時サソリブラウン達はジローがサイドマシーンで前に回り込むまで何のアクションも起こさなかったのだが、サイドマシーンの様な目立つ車体による追跡が前に来るまで本当に気付いていなかったとしたら恐るべき鈍感さと言える(苦笑)
 ともあれ、戦闘に入ったのだが、どうもサソリブラウンは特殊武器で勝負するタイプらしく馬鹿デカい鋏と尻尾を抱えてのアクションは明らかに鈍重で変身前のジローでもそこそこ太刀打ち出来ていた(苦笑)。
 が、そこへ例によってプロフェッサー・ギルの悪魔の笛が鳴り響いた。

 もはやワンパタ化したギルの笛攻撃だが、今回はかなり執拗に「ダークに還れ」との念を繰り返しつつ笛は鳴らされた。だが、サソリブラウンが余計な攻撃を加えたことで、落雷が笛の音をかき消すというこれまたワンパタ化した笛の音遮断が為された(苦笑)。
 かくして危地を逃れたジローはキカイダーへの変身を遂げ、これといった特徴のない格闘の果て、いつものダブル・チョップ大車輪投げデンジ・エンドの三点セットでサソリブラウンは葬られた。

 ラストは無事カズコと中堀博士が再開したシーンで締められた。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日