人造人間キカイダー全話解説

第9話 断末魔!妖鳥レッドコンドル

監督:畠山豊彦
脚本:長坂秀佳
レッドコンドル登場
 冒頭、林の中に現れたレッドコンドルは昆虫採集に来ていた少年達を襲い、更にはそれを目撃した女性、助けに現れた村人たちを次々に殺害した。
 このレッドコンドル、名前の通り赤い頭部を持ち、コンドル光線なる赤色の光線を口から吐いて人々を蒸発させてしまう。見た目のデザインはダサダサなのだが、場面が変わったダークの基地内では天神村の村民を皆殺しにしたと報告していたから、恐ろしい奴である。

 村人皆殺しの背景には、天神村がダークにて進行中である生物兵器の開発にぴったりの環境にあり、それを邪魔されない為に行われたものだった。村を訪れる者に気付かれるなとの忠告を行うプロフェッサー・ギルだったが、村民全員を殺害していれば忽ち重大事件として周囲に広まり、当局の干渉を受けると思うのだが(苦笑)。新聞配達員や郵便局員が来ただけで発覚しそうだ(苦笑)。
 ともあれ、プロフェッサー・ギルの忠告に心配無用と豪語するレッドコンドル。それを証明するかのように、村の入り口に仕掛けたセンサーが彷徨いこんで来た光明寺博士を捕らえた。勿論、博士の頭脳を求めるダークにとっては僥倖で、レッドコンドルは嬉々として博士を拉致したのだった。

 場面は替わって天神村近くの山道。
 光明寺博士らしき人を見たという目撃情報を頼りにミツ子とマサルがやって来ていた。その場までは半平の車で送ってもらったのだが、辺鄙な山村では儲けとなる話になりそうにないと判断した半平は姉弟の聞き込みへの協力要請をやんわり拒絶した(←その割には、探険隊員の様ないでたちだった(笑))。
 仕方なしに2人だけで入村した姉弟だったが、当然村内には猫の子一匹いない。更には村人を探して家々を訪ね歩く2人の前にはレッドコンドルが現れた。いきなりコンドル光線を吐くレッドコンドルは殺意満々で、姉弟は慌てて逃げ惑うしかなかった。

 とある民家の前でミツ子の体力が限界に達したが、そこには生き残りの親切な村人がいて姉弟を宅内に導き入れてくれたが、程なくレッドコンドルが追い付いた。
 「袋のネズミだ。」とほくそ笑むレッドコンドルだったが、例によって、ギターの音が響き渡り、ジローがその雄姿を現した。

 ちなみに、ストーリーに関係はないのだが、この時のジローを演じていた伴大介氏……………誠に申し訳ないが、暑苦し過ぎ(苦笑)。この第9話の放映が9月9日で、2ヶ月前の7月に撮影したとして、放映中に伸びた髪とジージャンが実に暑苦しかったことだろう(苦笑)。この文章を綴っている日(2018年8月2日現在)も猛暑の真っただ中で、ミツ子のカラフルなワンピースとの対比から余計に暑苦しさを禁じ得なかった(苦笑)。

 フィーリング的な所感はさておき、レッドコンドルはアンドロイドマン達にキカイダー殺害を命じ、自身も参戦した。一時はジローを抑え込むなど、そこそこ強そうに見えたレッドコンドルだったが、結局は変身していないジローを抑え込み続けられずに弾き飛ばされ、キカイダーに変身されると全く敵わなかった。
 手裏剣攻撃はただでさえキカイダーの足下に落ちるだけで当たらない上に、キカイダーが拾った丸太をキカイダーコマ回しで回すやすべて吸い取られ、ダブル・チョップで左羽根をもがれてほうほうの態で逃げ出す有様だった。

 一方、民家に隠れていたミツ子とマサルだったが、何故か戸口が開かず、最前の村人の姿も見えず、おまけに家が崩れ落ちんとしているという危機的状況にあった。
 幸い、レッドコンドルを撃退したジローが駆け付け、屋外への脱出に成功したのだが、家は倒壊するわ、直後に銃撃を受けるわ、で依然予断を許さない状況にあった。
 ジローは銃撃の主を追い、待機を命じられたミツ子とマサルだったが、そこに最前の村人達が現れた。自分達だけ一足先に逃げたことを詫びる姿を見て、特段怪しみもしなかった姉弟だったが、光明寺博士の写真を見せられや、彼等の色が変わった。
 ミツ子・マサルの聞き込みに、「見たことない。」と答える村人達だったが、互いに目を見合わせ、笑いながら頷き合う姿から、洗脳の有無は不明ながらも彼等がダークの手先と化しているのは明白だった。

 一方、ジローが追った銃撃の主はまだ少年で手にした猟銃で必死の抵抗を試みていた。少年−洋一(五島義秀)の言によると、村人達は「やられちゃったんだよぉ(泣)。」とのことで、敵じゃないと告げるジローも信用ならず、猟銃をぶっ放す始末だった。
 まんの悪いことに、人造人間であるジローに猟銃が通じなかったことから、洋一はジローを化け物と見做して益々警戒を強めた。

 場面は替わってダーク基地。そこでは光明寺博士がダークへの協力を誓うよう拷問に掛けられていた。だが、苦痛にのたうち回りながらも記憶喪失の光明寺博士には事態が呑み込めない。そんな光明寺博士の記憶喪失を詐病と見做すレッドコンドルは(←ちなみに片翼は修復済み)光明寺博士を「強情者」としつつも、プロフェッサー・ギルに博士の子供であるミツ子とマサルを捕獲済みであるから安心するよう告げていた。

 場面は戻って天神村。猟銃の効かないジローに脅え、逃げ惑う洋一は村人に取り押さえられた。村人達は洋一を嘘吐きとし、精神病院から退院して来たばかりとも述べ、また入院したいのかと叱りつけながら洋一を連行した。
 一方で、ジローにはミツ子・マサルが峠で待っていると告げた。その場で待機するよう言っておいたのに峠に移動したことを訝しがるジローだったが、この時点で村人達を疑う要素もなく、彼等の案内に応じて追随した。

 だが、案内というよりはジローを連行するように歩く村人3人の目付き・仕草は怪しく、「峠はまだですか?」と尋ねるジローを黙殺し、「何とか言え!」と声を荒げても無視し続けた。
 業を煮やしたジローが腕を回転させてバズソー(鋸歯)を出して脳天チョップを決めるとようやくアンドロイドマンの正体を現し、村人達を皆殺しにしてすり替わったものであることも判明した。直接描写が少ないとはいえ、一村丸々皆殺しとは酷い展開である。

 その頃、ダーク基地に連行されたミツ子とマサルは拷問に掛けられようとしていた。その目的は、我が子を眼前で拷問に掛けられた光明寺博士がいつまでもすっ惚けていられないだろうと踏んだものだったが、本当に記憶喪失症であるとは考えなかったのだろうか?(笑)
 まあ、実際に記憶喪失症の人が大切な肉親を眼前にして記憶が蘇ることは考えられないことではないので、レッドコンドルがミツ子とマサルを抑えたことは戦略的に間違いではない。
 そんな危機的状況にあって、恐怖よりは生きている父に会えることに幾許かの期待と歓喜を滲ませたミツ子とマサルだったが、光明寺博士は逃げた後だった(拷問中にじわじわ縄抜けを進めていた)。

 肝心の重要人物に逃げられたことを憤るレッドコンドルは、RV3号なるアンドロイドマンに責任を取らせると称してコンドル光線で文字通りに消してしまった。だが、これは誠にけったいな責任所在だ。RV3号は村人(女性)に化けてミツ子達に接近し、彼女を拉致して来た。
 つまり光明寺博士の拉致・監禁には全くタッチしていなかったのである。任務に失敗した者を許さない悪の組織によくある残忍さを示したかったのだろうけれど、処刑するなら拷問係や警備係だったと思う。

 その頃、数に物を言わせて執拗に襲い掛かるアンドロイドマン達に手を焼いていたジローはミツ子とマサルの身を案じ、サイドマシーンで戦線離脱したのだったが、姉弟には意外なところから救いの手が伸びていた。
 それは来村した服部半平だった(笑)。いつものようにすぐに動かなくなる愛車に手を焼き、山道を押しながらやって来た半平は村が入り口からしておかしいのに気付き、中に忍び込んだらそこではミツ子とマサルが拷問に掛けられようとしていた。
 危険は冒したくないが、かと言って顔見知りの2人を見殺しにする程には冷血ではない半平は自身の為すべきことが決まらず逡巡しながら室内に忍び込んだところで、縛られている洋一に躓いて転んだことで、数々の薬品が零れ、数々の誘爆が起きたことで結果的に2人を助けることとなった。
 普段、軽く見ている相手とはいえ、自らの危機に駆け付けたとあってはミツ子も感激を隠せず、「助けに来てくれたのね?」と問えば、「拙者、服部半蔵の一六代目であるぞ!」との大上段を欠かさない半平。丸で『ドラゴンボール』におけるミスター・サタンだな(笑)。

 一方、戦線離脱し、ミツ子・マサルの下に急がんとしてサイドマシーンを走らすジローにはレッドコンドルプロフェッサー・ギルの笛の音が襲い掛かっていた。苦痛に呻き、万事休すのジロー。今回はどうやって笛の音を発つのだろうか?と楽しみにしていたら、サイドマシーンのエンジンを吹かし、その音で笛の音をかき消すという極めて単純な方法で危地を脱した……………そんな方法でかわせるなら常時大音量機能を持つラジカセでも持ち歩け、ジロー(怒笑)!!!

 ともあれ、最終決戦が展開された。
 といっても、ジローに対してもさして優位に立てないレッドコンドルは決して強くなかった。特にこれといった特徴のない格闘戦が続いた後、いつものようにダブル・チョップ大車輪投げが炸裂した。
 最後の手段とばかりにコンドルブーメランなる技を駆使するレッドコンドル。といっても、翼を飛び道具として飛ばすだけで、両翼を叩き落とされた後に残ったのはダルマ状態で為す術をなくしたレッドコンドルだった(苦笑)。直後にデンジ・エンドを食らって御くたばりになったのは言うまでもない。

 レッドコンドルを失ったダーク基地はお約束の様に爆発・炎上した。だが、中にいたミツ子・マサル・洋一は半平の先導で脱出に成功していた。最前まで基地内にいた父が爆発に巻き込まれたのでは?との不安に駆られたミツ子だったが、半平が基地内には誰もいないことを証言した。既に基地内を探索済みだったとのことで、あれほど脅えながらも探索をきっちり済ませていたのなら、脱出に際して全く迷うことなく3人を先導できたのも納得である。何だ、そこそこ有能じゃないか半平(笑)。

 かくして第9話は終結した。難を言えば、最後の最後も気絶状態で台詞もなかった洋一がこの後どうなったかの言及がなかったことと言える。現実に即すなら、生まれ育った村の人々が皆殺しにさらたのだから、その後の身の振り方を巡って相当な艱難辛苦が待っている筈なのだが。



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 最終更新令和元(2019)年一二月四日